私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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遅くなりました11話です。そろそろ日常回を少な目にして物語をどんどん進めていくとしましょう。


ランデブーwith熟しすぎた少女

「あ、明斗さん。おはようございます!」

 

「ん。智花か…おはよー」

 

たまたま会った智花と一緒に登校する。最近は朝に魔導書読んだり訓練のために早起きだったり野薔薇に朝から薔薇園の手入れを手伝わされたりしていたのでこの時間の登校は久しぶりだ。智花も智花で陸上部の朝練もあるだろうから朝に会うのはかなり珍しかったりする。

少し前に一房だけ紫のような色を残した白髪のゴスロリ少女が見える。なにか独り言を言っているようだ。

 

「うーっ…やる気が出んわ…ぶつぶつ…なんでわざわざ妾を…ぶつぶつ… 」

 

「アイラちゃん? どうしたの? 」

 

アイラ…東雲アイラか。この学校…いや、全世界を通しても希有な魔法センスを持ち魔法の撃ち合いだけなら生徒会長をも超えるとされる人物だ。

ついでに自分のことを「吸血鬼」と言い張り天文部のミナと同じ病気を患っているとの噂もある。

 

「おー、智花か。いやのう、聞いても涙、語るも涙のいやーな話でのう。 」

 

「そ、そんなに嫌な話なんだ… 」

 

「執行部のヘボがの、妾に魔物の討伐に行って来いとゆーたんじゃ。 」

 

「執行部が? おかしいですね…普通、クエストは生徒会を通して… 」

 

普通、クエストは軍から執行部へ要請が来た後、一度生徒会を通して情報やどの生徒が適正かを精査しクエストとして発令される。しかし今回はそれをせず執行部から直接アイラへと要請が来ているそうだ。これは生徒会と執行部で確執がありそうだな。

執行部としてもこれで生徒が死亡などすれば責任問題にされるため相当な猛者にしか直接など送れないだろう。ともすれば東雲アイラが世界トップレベルの戦闘力を持つとされるのは噂ではなく事実なのだろう。

ちなみにグリモア学園だと生徒会長、生天目つかさも世界中の魔法使いでも上から数えた方が早いくらいのランクである。アタマオカシイヨコノガッコウ…

 

「そこはホレ! 妾って吸血鬼じゃから! 特別扱いじゃからのう!…おっ。そうじゃそうじゃ。智花。そこの転校生をちょいとばかし借りるぞ。 」

 

「え!? か、借りるっていうか、それは転校生さんの意思で… 」

 

「ほーかほーか。んじゃ少年、妾と一緒にクエストに行こうぞ。」

 

「いいよ。」

 

世界トップレベルの戦闘力。興味が湧かないはずがない。

 

「お主の体質、一度試してみたかったんじゃ。

すんげぇ量の魔物…妾が搾りつくせるかどうか、試してみようではないか。 」

 

こいつ中身BBAなのでは…

 

「そうと決まれば早速でっぱつ! なんかおもろうなって来たぞ! 」

 

 

 

「会長! 副会長! 執行部が東雲アイラに直接クエストを…! 」

 

扉を勢いよく開けながら生徒会室へ入ったのは書記の結城 聖奈。

 

「……知っている。問い合わせている所だ。 」

 

それを一瞥し即座に対応に戻るは生徒会長である虎千代その人である。

 

「会長…返答が来ました。【東雲アイラ1人で討伐は可能と判断】

【生徒会を通してのクエストは最低2人以上の登録が必要なれば…】

【厳戒態勢にある学園から、必要以上の戦力を削るのは不適当である】」

 

副会長の水瀬 薫子が執行部から来た返信を読み上げる。

 

「…もってまわった言い回しだな。つまりなんだ? 」

 

「私たちの対応が生意気なので意地悪してきた、ということです。 」

 

対応…つまりこの間やった執行部に対する仮想…第七次侵攻時のための資金繰りの時のこちらの態度が気に食わなかったといったところだろう。

 

「ふむ…それで、東雲は請けたのか。

人に命令されて、素直に従うようなやつじゃないだろ? 」

 

「ええ、それは私も知っています…簡単には頷かないと。 」

 

「それが、つい先ほど出発しました。 」

 

「はぁ? どうしてだ? 」

 

聖奈から驚くべき報告が上がる。あの東雲アイラが…どういう風の吹き回しだろうか。

 

「その…よくはわかりませんが、転校生を連れて…

呼び戻しますか? 」

 

この場合の転校生とは渡 明斗のことだろう。

 

「…いや、いい。東雲がいれば転校生も安全だろう。魔物が現れたなら討伐すべきだ。こっちは執行部へ抗議するぞ。 」

 

本人が乗り気ならば止める必要はないな。こっちはやるべき仕事をやるだけだ。

 

 

 

 

「ぶははははは、よく来たな少年!

この最凶にして最強な妾と組めることをありがたく思え!」

 

仮面ライダーの社長かお前は…

 

「なにを隠そう、妾ってば超強いんじゃ。真祖だし。多分学園で一番。普段は猫被って大人しくしとるがな。

今日はクエストついでに、そのおっそろしい力の一端をみせつけてやろう。

どっかんどっかん蹴散らしてやるからどんと任せるがよい!」

 

これ俺の出番ないな?

 

「まかせた」

 

「…で、討伐対象はなんだったか。なんでも一緒だから気にしとらんかった。

…サワガニ? サワガニとは、あの佃煮にしたらうまいヤツか?」

 

やっぱり中身BBAなのでは?こういうのなんて言うんだったか…のじゃロリだっけ?

 

「ん?サワガニということは、妾たちはどこに向かえばいいのじゃ。

…うう、なんかイヤな予感がするが…まあよい。行くぞ少年。

どこであろうと構わん。先導しろ!なんか出てきたらクチャッとやってやる! 」

 

「なんか不安になってきたわ…」

 

サワガニだし川いけば良いよな?丁度下流に当たるのが近くにあるし辿っていけば目標も見つけられるだろう。

 

 

 

「うう…きいとらん!妾はきいとらんぞ!

こんな川だらけの場所などとはきいとらん!

くっそ、あのヘボめ。なんかやけにニヤニヤしとると思ったら…

妾の唯一の弱点である【流れる水】がスゴいたくさんあるではないか!」

 

「カナヅチかよ…」

 

「ぐ…吸血鬼は流れる水を越えることができんのじゃ。

どうしても越える気にならん、というのが正確じゃな。

理屈は知らんがそういう設定になっとる。真祖でもそれは変わらん。」

 

設定って言っちゃったよ。

 

「こればっかりは妾も無理じゃ。少年、おぶれ。

ようするに自分で渡ることができんのだから、誰かに移動させてもらえばよい。」

 

「ありなのそれ?」

 

やる必要性ある?普通に恥ずかしいんだけど…

 

「だーいじょうぶじゃ! 見りゃわかるがコンパクトボディでめっちゃ軽いぞ!

ほれほれ、恥ずかしがっとる場合ではない。さっさと乗せろ。」

 

ツルペタだしな。

 

「肩車でいいか。」

 

「うむ、うむ…よっしゃ、ベストポジションじゃ! 無駄に乗り心地がよいな!」

 

「そりゃどーも」

 

絵面が完全に兄妹のそれだがな。

 

「では行け…おい、ありゃなんじゃ。 デカいカニがおるぞ。

…おおっ!あれが討伐対象か!おろせ!おろせ!」

 

「あポイーっと」

 

「よーく見ておけ。 これが吸血鬼の戦いかたじゃ!」

 

東雲アイラが手を前に出すと空中に複雑な魔方陣が現れ炎が放たれる。それはサワガニの魔物に向かっていくとその身を文字通り消し炭にと変え霧に戻っていく。

上級魔法…というレベルじゃない。すでに10冊ほど魔導書を読み漁ってきたがそのどれよりも複雑な魔方陣だ。もはやサワガニの魔物が不憫で仕方ない。

しかも炎だけでない。自然魔法と呼ばれる遠距離で有効な炎や雷などの自然現象を魔法で再現するものだ。普通、自然魔法は人によって得意不得意が出るものだ。しかし東雲アイラという少女はそのどれをも使いこなしている。ただ威力が高いだけでない。魔法のコントロール技術がずば抜けている。

魔法使いのなかでも魔法の得意不得意が出るのはもちろん自然魔法では魔法との融和性とも言うべきか相性が良すぎて威力や精度のコントロールに手間取ってしまうことがあるらしい。

しかし東雲アイラはあらゆる自然魔法をコントロールしきっている。威力はもちろん精度も凄まじくこちらには余波以外は飛んでこない。世界最強と自称するだけはあるということだろう。

 

一帯のサワガニを殲滅し終え再び肩車で川を移動する。浅瀬だし移動にはそう時間はかからなかった。

 

「おう、もういいぞ少年。 ここから先は水場もなかろう。たぶん。」

 

ようやく肩車から解放された。べつに軽いから問題はないのだがちょくちょく狩り装束の帽子をいじるのはやめてほしい。

 

「できるだけ低いところにいたいんじゃ…日光がな…

妾の唯一の弱点である日光が少しでも弱まるところがよい…すなわちだ。

お前の影に入らせてくれんか。 このあたり。

妾は影の似合う女じゃからな。ミステリアスなフェロモンむんむんじゃろ。

トランジスタグラマーな妾の魅力にメロメロになっちまうじゃろ。」

 

ナニイッテンダコイツハ…

 

「…そこは頷かんか。 妾がバカみたいじゃ。」

 

「実際バカ発言だったけど…」

 

「うっさいわ! 見ろ、カニがおったぞ! 今夜は佃煮じゃ! 」

 

BBAか…。というかあのサワガニとはシルエット以外似ても似つかない魔物を佃煮にしてもな。というか目玉たくさんついててキモイ。

 

再びアイラによる一方的な殺戮が始まる。出番がなさすぎる。暇だ。

一応ももちゃんの時のように抜けてくるやつがいるかもしれないから身構えてはいるがそんな気配は塵とも感じない。アイラが魔法を放つ度にサワガニの魔物は消え失せその数を0にした。

 

「…話は変わるが、お前みたいな体質の人間は人類史始まって以来じゃろう。

魔力を大量に貯蔵できる。さらにそれを分け与えることができる。」

 

殲滅し終えたところでアイラが話しかけてきた。その雰囲気は先ほどまでと違い真面目なものだ。

 

「いつの時代も、その技術を確立しようと多くの人間が努力してきた。

だがついぞ、そんな便利で安直な技術はうまれんかった。…どうじゃ少年。なんかすごく都合がいいと思わんか。

妾はお前に興味があるぞ。なぜお前みたいなのが突然出てきたのか。

ただの新種なのか、それともなにか超自然的な裏があるのか…某国の人体実験で生み出された生体兵器かもしれんな!」

 

「それはない…だろ」

 

「…冗談じゃ冗談。そんな顔をするな。 いじめすぎた。

まあ、実際のところは突然変異とかそんなんじゃろ。

300年くらい生きとるが、魔法は奥が深いからな。気にするな。」

 

こいつがいうとホントに300年生きてそうなんだからな…

 

「綺麗に締めたところでカニ発見じゃ! 今度こそ佃煮にしてやるわ!

続け少年!季節の味覚は我らにあるぞ! 」

 

そんなことを言いつつ最後の一匹であろうサワガニの魔物を発見し魔法を放つアイラ。

さっきから我慢してきたがそろそろ言うか…

 

「というか魔物倒したら霧に戻るから佃煮にはならんて」

 

「わーっとるっつの! 少しは空気を読めっつの!

魔物を倒したら霧に戻ることくらい知っとるっつの!」

 

「あとで学食で佃煮食べような」

 

「慰めの言葉なぞいらんわ! 妾を食いしん坊キャラにするな!

…まあ、お前の魔力のおかげで妾も久しぶりにストレス発散できたし。

多少いじるくらいは許してやろう。 妾は心も広いのじゃ。…さて、当たり前のようにカニを屠ってやっちゃったわけだが…

ま、とりあえず戻ろう。妾の魔物は威力はあるが消費も大きい。

だいぶ残量が減ったじゃろ。気持ちよく使わせてもらったからな。」

 

別に減った感じしないんだけど?

 

「いくら魔法を使っても干からびんというのはいいのう。いい気分じゃったぞ。 」

 

このあとまた川渡らされた。

 

 

 

正門についた。あとは報告すれば終わりだが…

 

「ふむ。このまま報告をしてしまえばクエスト終了なんじゃが…

おい少年! 報告は後じゃ! めんどくさいから先に屋上でサボるぞ!

なぁに、今回は執行部も反則手を使ったんじゃ。構わん構わん。」

 

というアイラの提案により報告は後にして屋上にてサボタージュ実施中だ。

 

「のう少年。妾はクエスト中、お主に【人類史始まって以来の体質】と言った。

その危険性を、念のため伝えておくぞ。大規模侵攻が確実となれば…

その混乱に乗じて、お主に近づいてくるヤツが出てくるかもしれんからの。

魔導科学研究所…通称【科研】は、その名の通り、魔導科学を研究しとる。

宍戸結希が魔法使いに覚醒する前、3ヶ月だけ所属しとったとこじゃ。

いいか、科研っぽいヤツらが近づいてきたら注意せないかんぞ。

あいつら、魔導科学の発展のためには人権無視が基本じゃからな。

実のところ、お主が科研に攫われる前に、虎千代と宍戸が手を回したんじゃ。」

 

マジかよ。もう宍戸さんと会長からなんか頼まれたら断れねーよ。

 

「学園に入学してしまえば、その生徒は自治の名のものに保護されるけんの。

お主の体質を理由に接触してくるヤツら、学園内にもおるじゃろ?

お主が実感しとる以上に、お主を欲しがっとるヤツらは多いのよ。

野薔薇の縦ロールなんかは比較的お気楽な方じゃけどの。

まだ結婚のなんたるかもわからんまま伴侶だのムコ探しだの言うとる。

まぁ、そんな悪いヤツでもない。気が向いたら相手にしてやれ。」

 

もうすでに絡まれてるんだよなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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