私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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文才が欲しい


お姉さんといっしょ

なんか朝から生徒会に捕まったと思ったら他人に聞かれたくないと生徒会室に連行されクエストを受けることになった。場所は【大垣峰】。風飛の街の近くにある街として栄えている、ように魔法を使って見せかけているらしい。実際は魔物に占拠されタイコンデロガ級がわんさかと湧く特級危険区域であるようだ。今回のクエストはそこから魔物の原種である【ブルイヤール・ドゥ】が漏れたらしくそれを討伐してこいとのことだ。

今回のクエストの同行者は転校してきたばかりの生徒であるらしいが実力の方は折り紙付きですでに学園でもトップレベルに位置しているらしい。

ということで装備を整える。今回の魔物はどちらかと言えば獣寄りなのでメインはノコギリ鉈を持っていく。前回のクエストでまともに扱えていなかったし落葉はお留守番だ。あとは腰の後ろに散弾銃を左側に連装銃をそれぞれホルスターに格納しマントのような外套の内側へと投げナイフを仕込む。

準備が完了し同行者の待っている校門へと行く。そこには青い巫女装束のような戦闘服を纏った女性がいた。

 

「貴女が今回の同行者、であってますよね?渡 明斗です。よろしく」

 

「ああ…君が…そうか。君が渡 明斗か。なるほど、魔力量が凄いわね。

挨拶がまだだったかしら。私は朱鷺坂チトセ。君と同じ転校生よ。

私はまだ転校してきたばかり。腕試しということでクエストを受けたけれど…

いろいろ教えてね、渡君。魔法は得意だから心配しないで。 」

 

「あぁ。じゃ、行きますか」

 

 

 

目的の場所へと向かう道中チトセが話しかけてきた。

 

「で、さっそく…実は私、辺鄙なところの出であまり情勢を知らないのよ。

世界はどんな状況になってるのかしら。魔法使いとして興味があるわ。

例えば、アメリカはどの程度侵食されてる? イギリスは?

魔法学園は6つとも全て現存しているかしら?」

 

「そのくらいのことならテレビ見てればわかるはずだけど…」

 

「…そうね、テレビも新聞もない田舎だったから。

魔法使いに覚醒しても、しばらくこの学園に見つからないくらいの。」

 

「すごい所から来たんだな」

 

「ふふ、そんな場所もあるのよ。この世界にはね。しかもたくさん。 」

 

そんな話をしていたら大垣峰へと到着する。

 

「このあたりは…懐かしいわね…あ、ゴメンなさい。来たことはないのよ。

この辺、もといたところに雰囲気が似ててね。よく見ると全然違うんだけど。

やだ、いきなりホームシックなのかしら…」

 

「帰れそうにないところなのか?」

 

「まぁ、しばらくは帰れないわね。

…君の故郷は無事? 魔物に攻め込まれたりはしていない?

私の故郷は魔物に攻められたわ。みんな避難できたからまだマシだけどね。

だから私は、そこを取り戻すために強い魔法使いになりたいのよ。

できないことを言う馬鹿だって思う? 」

 

「いや、魔物と戦ってる人はみんなそう思うんじゃないか。」

 

「…フフ、否定してくれてありがと。

このくらいの敵なら大丈夫よ。学園に来る前はもっと強いのばかりだったから。

…まあ、魔力を節約しながらだったのもあるけれどね。

その【体質】。羨ましいわ…でも代償として魔法がほとんど使えないなら…

私の境遇だったら死んでただろうから、複雑ね。一人で戦ってたから。

…でも君の力、きっとみんなの役に立つわよ。わかってると思うけど。

強い魔物を倒すには、君が必要。君のその膨大な魔力が。

…どうやら、君が選ばれるのはそれだけじゃなさそうだけどね? 」

 

「今回の魔物は…ふうん…あんまり興味ないわ。

なんだって魔物は嫌いなの。すっごくね。大事な人が何人も殺されたし。

私がいなくなるからって、地元の人たちは住居を捨てないといけなくなったし。

悔しいでしょう? 友達も、みんな死んじゃった…どうしたの、元気出して。

そういう人がでないように、私たちは強くなるんでしょう?」

 

少し気分が滅入り過ぎたか。顔に出るとは思わなかった。

 

「逆に奮起してもらわないと困るわ…そういえばちょっと聞きたいんだけど。

君、どこの生まれかしら? この辺ではないと思うのよね…」

 

「この辺じゃないのだけは確かだけど…なにかあるのか?」

 

「いえ、少し気になっただけ。カンよ、カン。嫌ならいいけどね。

グリモアには世界中から集まってくるでしょう? ちょっと珍しくて。

…あら、長話しちゃったわね。敵さんのお出ましよ。

行きましょ。まずは一発お見舞いしてやるわ。人類代表として。 」

 

「おでましか」

 

廃墟の影から現れる魔物の原種【ブルイヤール・ドゥ】はしかしこちらに襲いかかるより先にチトセの放った魔法により即座に霧散した。

驚いた学園のトップレベルに位置しているとは聞いていたがこの間クエストを一緒したアイラと同等レベルだ。つまり俺の出番はない。たぶん。

 

魔物というのは出現する際に霧が近くの動植物の体内に入り侵食しその体構造を変化させる場合と霧自体が固まり人間が空想でしか知らないような竜やケンタウロスなどの形を取る場合が多い。では原種とは何かというと元になる動植物も空想や伝説もない人類が初めて出会った形状をしている魔物を原種というわけだ。【ブルイヤール・ドゥ】の形状を無理やり地球上の生物に当てはめるなら蜘蛛が近いだろうか。多足、頭と胴部をつなぐ小さな胸部。その全身は影で作られているかのように醜悪な黒色をしている。

しかしその【ブルイヤール・ドゥ】もチトセの魔法の前に次々と撃破されていった。

 

「あの規模と威力の魔法を使いこなして…すごいな。」

 

「そうね、センスはあるのかもね。魔力量も普通の人より多いみたい、私。

でも、一人で戦い続けるには全然足りないわ。だから仲間というか…

協力してくれるような人を探しに学園に来た、というのが正解かしら。

可能であれば、クエストとして故郷を救いたいわ。可能ならね。

もちろん、今は難しいことはわかってるわ。私は新参だし、危険だもの。

まずは実績作り。そして土台作り。地道に行かなきゃってね。

でも、こんな考えがうまれたのよ。きいてくれる? …たとえばの話…ね。 」

 

チトセは続ける。

 

「自分の故郷が魔物に襲われているとして…そう、私のことよ。

ここに理想的なパートナーがいました。多分その人を連れて行けば…

その人の魔力量と自分の魔法技術を駆使すれば…

明日にでも故郷が救える。そうなったとき、私はどうすればいいと思う?」

 

「…」

もし自分が同じ境遇だったら…

 

「…卑怯だったかしら。故郷を出すと否定しにくいわよね。

大丈夫よ、言ってみただけ。今は私も学園生だし、校則違反はしないわ。

だから卒業したら、ね。約束よ? 」

 

「わかった。今は俺も狩人だ。約束は必ず果たすさ。」

 

その後も俺は魔力供給以外にすることもなくチトセが魔物を屠っていくのを見ていた。

 

「それにしても魔力を他人に受け渡せる人がいるなんて、知らなかった。

…フフフ。そうね、私の地元は田舎だから。他にはいるかしら?

他人に魔力を与えられる人。宍戸さんは機械を使ってなんとかできてる?

東雲さんは貴方の体を弄りたがっている?

でしょうね。あなたの魔力量はとんでもないもの…数百倍、いえ…

そんな数字で表せられるものじゃないわ。魔力量が多すぎるのね。

みんな正しく把握できないから【数百倍】なんて言葉でごまかしてるのよ。」

 

「チトセの見解は?」

 

「私が見たところ、人類全員の魔力量とほぼ同等。少なくてそのくらい。

それ以上は私にもわからない…」

 

「流石に冗談だろ」

 

「あら、冗談なんかじゃないわ。

じゃあ、私が本気を出して魔法を使ってみましょうか?

それであなたの魔力が尽きるかどうか、試してみようじゃない。 」

 

そういうとチトセは新手の魔物に今までの比ではないレベルの魔法を連続で行使し始める。魔力供給本当に追い付くのかよ。ガス欠でお陀仏とか笑えないぞ。

 

チトセといえば先程のは冗談ではない…と証明するためだろう。見るからに魔法の威力と範囲が上がり次々と出てくる魔物を殲滅していく。ここまで来るとただの蹂躙だ。

 

「あー、気持ちいいわ。覚醒したとき以来ね、こんなにぶっ放せるの。

で、どう? ちなみに今の戦いで成人が50人は空になったわよ。

魔力を無駄遣いしてるからね。わずかでも疲れたりしてる?」

 

「いや、全くそんな感じはしないな」

 

我ながらなんという魔力量だろう。変化すら感じられないとは…

 

「…でしょう? じゃあどんどん使っていくから、気分が悪くなったら言って。

多分、そんなことはありえないでしょうから。

…それにしても…魔物が現れる頻度はどのくらいなの?

私も転校三日目で請けたけど、君は頻繁に出ていると聞いたよ。」

 

「多いときは週1くらい」

 

「そう、このあたりも随分多いのね…【ゲート】に近いから…」

 

「【ゲート】?」

 

「ゲート、知らない? そこから魔物が出てくるっていう穴みたいなところ。

もしかしたら知らずに言ってるかもしれないけど…知らないならいいわ。

知ってても、どちらでもね。とにかく、この辺に魔物が多く出るのはね…

その【ゲート】のせいだって、私は知ってるわよ。 」

 

その後ほどなくして戦闘は終わる。チトセはあのあとも派手な魔法を連発していたが結局俺の魔力は自覚できるほど減ることはなかった。

 

「…まだ、弱い…

ああ、お疲れ様。どこか怪我してる? 大丈夫なように戦ったけど。」

 

チトセが何か呟いたようだが…

 

「いや、問題ない。むしろ持ってきた装備が全部無駄になったくらいだ」

 

「あら、それはごめんなさいね。まあ、これだけが取り柄だからね。なんか魔法の技術が高いとか言われて。

この学園でも上位なんだって。おだてられてるのかしら。

でも、生徒会長の武田さんとか、東雲さんとか、生天目さんとか…

凄い人がいっぱいいるんでしょう? まだ井の中の蛙ね。

…念のためなんだけど、もう一度、君の名前、きいていいかしら?」

 

「渡 明斗」

 

「…偽名じゃないわよね? 確かに? 名前を変えたとかはしてない?」

 

「なんでそんなことしないといけないのさ」

 

「そう…いえ、ごめんなさい。馬鹿にするつもりなんかはないのよ。

ただ、本当にちょっと気になっただけ。気を悪くしないで。

そうよ。その証拠に、これからお友達になりましょう♪

クエストの後は授業免除でしょう? このあたりでどこかに連れて行ってよ。 」

 

 

 

 

 

あのあと学校で今回のクエストの詳細は伏せるよう通達を受けた。そしてチトセの提案の通り街へと遊びに出た。侵攻については一応は警戒をしているがバラ園の一件のあととりあえずタイコンデロガ級の出現までは交代制で警戒を続けるに留まっている。街へと出たチトセはというとクエストの時とはうってかわり買い物などを楽しんでいたようだった。

結構な時間を遊んだ気がしたが学校に戻ってきたのが丁度学校の授業などが終わったあとだったのでひさしぶりに天文部へと顔を出す。

 

「おひさー」

 

「あっ、サーヴァント!なんでもっと我の召喚に応じないのだ!」

 

変なことを言いながらいの一番に近づいてきたのは部長である風槍 ミナ。銀髪のツインテールと右目の眼帯が特徴の少女である。

極度の中二病であり俺のことをサーヴァントと呼んでくる。

 

「おい、ミナ!あまり渡に迷惑をかけるなと言っとるじゃろ!」

 

そんなミナの面倒を見る古風な話し方をする少女は南条 恋。この変人集団である天文部のブレーキ役だ。

 

「ひぇっ!すみません!視界に入ってすみません!土下座しますからぁ!」

 

いきなり土下座を始めたのは双美 心。勘弁してくれ…。別に俺だけにこういう態度な訳ではなく誰に対してもこれなので別に俺がいじめているわけではないということは覚えておいて欲しい。

 

「…zzZ」

 

部屋の隅で寝ているのは立華 卯衣。白髪の美少女であるが常に寝ている。今は目を瞑って寝ているようだがたまに目を開けたまま寝ているときもある。宍戸博士と共に魔法学園に入学したらしく実際はどうか知らないが人工生命体であるという。

 

「おっ!センパイじゃないですか~。こっちで会うのはひさびさっすね~」

 

最後に話しかけてきたのは風紀委員も兼任しているNINJAの服部 梓である。

ちなみに天文部以外だと風紀委員の手伝いでよく会っている。別に風紀委員長に脅されているわけではない。断じてそうじゃない。

 

「よし!サーヴァントも来たことだし。攻め込まれる前に【組織】の本拠地を攻撃するぞ!

聖戦の始まりだ! 大垣峰に行くぞっ! 」

 

「…!?」

 

ミナが大垣峰の方面を見ながらそんなことを言いだす。

いつも中二病でテキトーなことを言うミナであるが…なぜ?よりにもよって大垣峰なのだ。タイムリー過ぎるだろう。

クエストの情報が漏れた?いや、俺の口からは「クエストに行ってきた」という程度の情報しか出していない。チトセや生徒会の誰かが口を滑らせた?ありえないだろう。生徒会以外でも知っている者はいるだろう。しかしだからといってミナにそれを話すメリットがあるとは思えない…

 

「たわけ! ここから大垣峰までどれだけ時間がかかると思っとるんじゃ!

なんの根拠があるか知らんが、許可なしで行けるわけなかろう! 」

 

思案に耽っていたところでいつも通り恋がミナを止めに入る。服部は…あの様子だと大垣峰のことは知っているようだな。目配せをして「トイレ」と言いながら廊下に出る。

 

「ミナの言っていること…どう見る?」

 

「偶然…にしては出来すぎてるっすよね。でも現状だと様子見しかないのも確かっすね。」

 

「それもそうだな。すまない忙しいだろうけど様子見てやってくれるか。俺も暇なときにまた天文部に顔出すから…」

 

「了解っす。」

 

話を終え部室に戻る。中ではまだ暴走するミナとそれを止める恋、それを見守る心と隅で熟睡している卯衣がいた。

 

なんというか、心配のしすぎなのかもしれない…

 

 

 

 

 

 

 

 




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