私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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遅くなりました。なんと今話は文字数1万近くになりました。いつもの倍くらいですね。
思いの外投稿が遅れたのは私が体調管理も出来ずに貧血でぶっ倒れたからです。申し訳ない


天に愛されし軍神

10月もほぼ終わり季節も冬へ移り変わろうとしていた頃それは来た。

 

「転校生。登校すぐですまないが手を貸してくれ。

アタシとクエストに行くぞ。魔物が出た。正確には昨日出たんだが…」

 

会長が直々に俺を呼びに来たってことは…とうとう来たか…

 

「どうやらタイコンデロガらしくてな…いや、まだ正体不明なんだ。

普通は出現してすぐ、執行部がだいたいのデータを出すものなんだよ。

それがない。そしてそのまま、生徒会に出撃要請が出た。

様子がおかしいだろう?

しかも出現場所は洞窟の奥深く。人的被害はまだ出ていない。」

 

データを出さないんじゃなく出せないのか?それだけその魔物が強大なのかそれとも…

 

「こういう魔物は、軍が余裕をもってあたるものだ。

国軍は第7次侵攻の準備に手を取られているから…

マニュアルに従えば、通常の魔物はいったん放置される。

力量がわからない相手との戦闘はしないのが学園の方針だ。

だが来た。この魔物は【すぐ退治しなければならない】と判断された。

しかも生徒会長のアタシを御指名の緊急出動だ。

十中八九タイコンデロガだな。そういうわけで、アタシはすぐにでかける。」

 

「そしてアタシからお前への頼みだ。同行してくれ。

生徒会役員を始め、万全の態勢で臨む。お前の力が必要だ。

さあ、みんなを守るぞ。 」

 

 

 

生徒会室ではチトセと聖奈が話していた。

 

「…私が仲間はずれなのは、新参だからかしら。 」

 

そう呟くのはチトセ。今回のタイコンデロガのクエストには諸事情から参加出来ないのを不服に思っているようだ。

 

「そうではなく、特級危険区域に行ったばかりだからだ。 」

 

そう返す聖奈は事務的である。

 

「あの程度の魔物で疲れたりしないわ。ええと…もう何年も戦ってるもの。 」

 

「その申告を額面通りに受け取るわけにはいかない。

我々は生徒を守り、学園の秩序を守るための組織だ。

可能な限り、生徒の規範でなければならん。

すなわち【役目を果たした後は休め】だ。 」

 

「…つまんないわぁ。」

 

「自信に見合う実力があるのは知っている。だから万が一にも…

第7次侵攻の時、体調不良で動けないなどということがないようにすべきだ。

わずかな疲れもためないための措置と考えてくれ。」

 

「第7次侵攻をダシにするなんてズルいじゃない。仕方ないわね。 」

 

そう。今回警戒すべきはタイコンデロガではない。このあとすぐにくる第7次侵攻である。

 

「わかってくれてなによりだ。では私は出発の準備をする。

学園を頼んだぞ。 」

 

 

 

聖奈のいなくなったあとの生徒会室に一人の生徒が入ってくる。

 

「お姉さまーっ…あれ? いない。 」

 

赤毛のポニーテールを携えた少女は辺りを見回すが探している人物はいなかったようだ。

 

「みんな、クエストに行ったわよ。知らなかったの? 副会長補佐さん。 」

 

「むぅ。えらそーなヤツだな。アタシのこと知ってんの? 」

 

「JGJのご令嬢でしょう。ちょうどよかったわ、頼みたいことがあるの。 」

 

「なんだ? 金欲しいの? 」

 

軍事複合体企業であるJGJ。軍用品から魔導品果てはホテル・結婚式場・娯楽施設までをも運営する大企業だ。チトセがそんな大企業の令嬢に求めるのはもちろん金、などではない。

 

「いいえ、クエストに出た討伐隊が【崩落で分断されたから】…

レスキューチームに出動を要請してほしいの。もちろんデクも連れて。」

 

窓の外を見ながらチトセは自らの要求を述べる。

 

「崩落で分断? どういうことだ?」

 

「どうもこうもないわ。宍戸さんにも伝えてちょうだいね。

私は休むように言われてるから。この部屋で待ってるわ。 」

 

チトセはそう言うと椅子に座り休息へと移った。

 

 

 

 

 

「…討伐隊が分断? どういうこと? 」

 

宍戸 結希は自らの研究室で初音からの報告を受ける。

 

「知らねーよ、アタシも。でもあの新しい生徒会のヤツが言ってたぜ。

崩落で分断されたって。 」

 

「崩落…いえ、そんな情報はどこにも…待って…

…今、エレンから連絡があったわ。洞窟内で大規模な振動。

連絡は取れたけど、虎千代と転校生君が行方不明…

崩落した岩石の向こう側に取り残されている可能性があるわ。 」

 

「エレンって、軍人だろ? なんでいるんだ? 」

 

「国軍の手がいっぱいだから、クエストの進行監視をしているの。

だから彼女からの情報が一番早いはず…でも、朱鷺坂チトセはより早い… 」

 

「そーそー、なんか来るときモヤモヤしてたんだ。」

 

「なんのこと? 」

 

「いや、あの女さぁ、なにか見ながらじゃなかったんだよ。

アンタは今、デバイスで情報を確認してるだろ? それがなくってさ。

生徒会室って通信機器ないし、どこでそんな情報仕入れたんだ? 」

 

「盗聴……? いや、説明がつかない。彼女の方が早かったわ…

いえ、今は置いておきましょう。JGJへのレスキュー要請は? 」

 

チトセのことが気になりはするが今は考えている暇がない。今やるべきは状況への対応だ。

 

「ガセだったらまずいからまだしてねーけど、やるよ。やるやる。」

沙那ーっ! 聞いてたなーっ!? 」

 

初音がそう言うと研究室へと白髪を後ろにまとめた一人の女生徒が入ってくる。彼女は月宮 沙那。初音のメイドであり護衛である。

 

「承知しております。今、初音様の権限で要請を済ませたところでございます。 」

 

「じゃ、アタシたちも行くか! 生徒会として! 」

 

「レスキューチームに任せましょう。タイコンデロガが相手であれば… 」

 

「私も執行部にかけあってくるわ。向こうにも伝わってるでしょうし。

今、武田虎千代を失うのはまずい… 」

 

 

 

 

 

報道部内では夏海と鳴子がクエストの情報を集めていた。

 

「情報はなによりも早い。人類が魔物と戦う上でなによりも発達したのが情報だ。 」

 

「そうなんですか? そう言われてみると、魔物は知能が低いから… 」

 

「そうだね。劣勢の状況であっても、人類に強みはあるわけだ。

だけど、最近はそうとも言い切れない。魔物の行動がどうも怪しい。」

 

「怪しいって…どういうことです? ケータイ使い出したりとか。 」

 

「大規模侵攻が近づくと、学園に1体現れる。タイコンデロガが1体現れる…

この法則、ただの法則じゃなくて【魔物が連携している】とすれば?

もっと言えば、大規模侵攻だって魔物が示し合わせてやってる…

そういう可能性が出てくるわけだ。 」

 

「…それって、魔物が連絡を取り合って、互いに協力してるってことですか? 」

 

情報の共有。それは単純でありながらも強力な武器である。

 

「昔から、魔物を知的生命体として極秘に研究している所はあった。

正直な所、魔物に知能がないというのはある種のプロパガンダみたいなものだ。

人類に勝利の可能性がないと知れば、あとはもう全滅まっしぐらだからね。 」

 

「…えっ!? それってヤバくないですか?魔物、知能があるんですよね? 」

 

「さあ。 」

 

鳴子は首を傾げながらなんでもない風に呟く。

 

「だ、だって今部長が…! 」

 

「全部、とある陰謀論者の書いた本からの引用だよ?」

 

「……え? 」

 

「さあ、夏海。これが情報の力だ。確証がなくてもそれっぽく伝えれば…

人は信じる。僕たちはそれを悪用してはならないのだよ。」

 

「……ぶちょーっ! 」

 

「…この与太話は、あることを示唆してくれてもいる。

魔物が知能をもっていたら、人類が勝利する可能性がなくなる…

そう思う人がいる。夏海、君が【ヤバい】っていったようにね。

それを自分が知った時、僕たちジャーナリストはどうすればいいと思う? 」

 

「……えっと…… 」

 

「人々を絶望に追い込むことになったとしても、真実を報道すべきか?

希望を持たねばならないと、それを隠すか?

夏海、これは君がジャーナリストを目指すなら、いずれ必ず直面する問題だ。

そこで、ちょうど今、とんでもない情報が届いている…盗聴だけどね。 」

 

「…………?」

 

この部長は本当に底が知れない。そんな部長が「とんでもない」と言うのは珍しい。

 

「生徒会長がクエスト中に行方不明だ。君はこれを報道するかい? 」

 

 

 

 

クエスト近くでの風紀委員の待機所にて虎千代と明斗が洞窟内に閉じ込められたこと。副会長の水瀬 薫子が洞窟に再突入しようとしていると報告を聞いた風紀委員長 水無月 風子はどうでもいいとばかりに手を振った。

 

「水瀬薫子が洞窟に再突入ですか? 報告するよーなことじゃねーですよ。 」

 

「し、しかしすでにクエスト進行の権限は精鋭部隊に移ったわけで…

緊急時に執行部の裁定を無視するのは校則違反です! 」

 

それに食いつくのは風紀委員の中でも特に厳しいとされる氷川 紗紀。

しかしそれすらもどうでもいいと言うように風子は続ける。

 

「現場指揮のエレンが許可したんですから別にいーでしょ。

エレンの判断も正しいですよ。あんな石頭、受け流すくらいがいーんです。 」

 

「い、石頭? 水瀬薫子がですか? 」

 

「トンカチで殴っても割れませんよ。虎のこととなると頑として聞きませんし。

水瀬薫子にとって虎は神様仏様。いや、唯一神の方がちけーですかね。

とにかく、彼女には虎より優先すべきものなんかねーんですよ。 」

 

「……ええと、それはいったい… 」

 

副会長の水瀬 薫子はカリスマはあってもどこか抜けている生徒会長の武田虎千代を補佐し支えるためかあらゆる事柄を完璧にこなす超人のような印象を持たせるのだ。

 

「虎の命令であれば人も殺す…ま、そんなシチュエーションはねーですけどね。

極端に言えばそんなとこです。法律も校則も、彼女には障害足りえねーです。 」

 

「そ、そんな人が副会長を…? なぜ今まで放置していたのですか…! 」

 

「虎の下にいる限り安全です。虎は極端な理想主義者ですからね。

虎が道を誤らないかぎり、有能な副会長で居続けるでしょー。

さて…ここで問題がありましてね。精鋭部隊に連絡しなきゃいけません。 」

 

「あ、で、ではデバイスを…しかし、なにを…水瀬薫子ですか…? 」

 

「慌てて助けに行くくらいなんで、事態はちょいと深刻です。万が一、虎が…

自分の命よりも大事な相手が死んだら…そのとき、彼女はどうすると思います? 」

 

「……ま、まさか…… 」

 

「そのまさかですよ。自殺しないよう、要監視です。

水瀬薫子は仮にも副会長。会長になにかあったら、仕事はしてもらわねーと。 」

 

 

 

 

轟音と共に岩盤が崩落し先行していた俺と会長を残し分断されてしまった。

 

「…揺れはおさまったようだな。だが…脆い洞窟のようだ。退路がふさがれた。

魔法で掘ることはできるが、どこまで埋まっているかわからん。

他の生徒は心配だが、土砂をどうにかしようとするのはやめた方がいい。

お前の魔力が膨大なのは知っているが、永遠に尽きないわけでもないだろう。」

 

最近ほぼ無限ってことが判明しました。

たぶん会長がどれだけ絞り尽くそうとしても無理だとは思うけど…

 

「ここはおとなしく先に進もう。運が良ければ合流できるだろう。

念のため、現状を確認するぞ。」

 

「お願いします。」

 

「今回の討伐対象は不明。洞窟の奥にいるなにものかだ。

霧から生まれたには違いないが…どれほどの強さかもわからん。

ゆえに最少の人数で最大の力を発揮できるメンバーが選抜された。

だが、おそらくその魔物の影響だが…地震が起き、洞窟が崩れ…

少なくともアタシたちと他のメンバーが離れ離れになった。

最悪なのは今の崩落で死傷者が出ていることだが…今は確認できん。

みんなを信じるしかない。行くぞ。 」

 

そう言うと会長は前へと歩を進める。

 

洞窟内は広く大小様々な岩がありその中より魔物が現れる。タイコンデロガはまだ現れないが代わりに現れた取り巻きの魔物は今までのものとは雰囲気が違う。明らかに今までのものより強力なことが窺える。

だがやるしかない。

会長も歩を緩めることなく進む。

そこに魔物が襲いかかるが会長はそれに対し柔道を応用したであろう業で難なく撃退する。

身体強化魔法により身体能力を底上げして拳に自然魔法によるエンチャントを施してるのか。あれだけの魔物を一撃で屠るとは…

こちらも負けていられない。漏れた敵くらいは自分で処理しないとな。

鱗を持つ大型のトカゲのような魔物に対してノコギリ鉈を振るうが鱗に弾かれてまともに通らなかった。

何度か試してみるが残念ながら全く、という訳ではないだろうがほとんど効いていないように思える。

仕方ない。敢えて近づき噛みつきを誘発させる。口の中には鱗はない、つまりは攻撃が通りやすいということだ。開かれた口へと連装銃を向け発砲する。流石に魔物もこれには耐えきれなかったようで霧散する。

 

敢えて一匹だけこちらに残したのだろう。残りの魔物を倒し終えた会長はこちらに振り向く。

 

「ザコ相手なら心配するな。だてに生徒会長はやっていない。

問題は討伐対象だが…まあ、相手が魔物である限りどうにかなる。」

 

流石は生徒会長ということか。戦闘での疲れが見えない。最小限の攻防で魔物を仕留めたということか。学園で最強というなら武田虎千代…この人をおいて他に居ないだろう。確かにアイラとチトセは魔法のセンスにおいては生徒会長をも上回っている。しかしあの二人が異常なだけで生徒会長の魔法のセンスはトップレベルだ。その上で近接戦闘適性も高い。状況対応力が桁外れだな。

 

「どれほど強くとも、全ての魔物には対処法がある。

魔法が効かない魔物はいないからな。今のところ、という条件付きだが。

ヤツらは霧でできているが、形を伴ったものの特性を得る。

目があるのならば潰せば見えなくなり、耳を潰せば音が聞こえなくなるんだ。

どうだ? 【魔物】であること以外が不明でも、恐ろしくなくなるだろう。

全ては敵を知ることからだ。アタシは今までずっとそうしてきたよ。

生徒会長選挙のときも…そして、これからもだ。

気を抜くなっ! 戦闘準備だ! 」

 

それだけ言うと新たに来た魔物の群れに突っ込み次々と消滅させていく。

会長からのありがたい助言だ。利用させてもらうとしよう。

 

一体の魔物が俺に対して爪による引っ掻き攻撃をしてくるがそれは後ろに跳ぶことで避ける。

まずは相手の視界を潰す。

マントの裏に仕込んだナイフを手に攻撃を外した魔物の内側に一気に駆け寄り眼に突き刺す。

痛みと視界がなくなったことによる混乱からか左右の爪や尻尾を乱雑に振り回していたのを攻撃の範囲外へ退避しながら見つめる。次は攻撃手段を潰しすか。

大きな身体の下に入り込み鱗が比較的薄い間接部を攻撃していく。今度は鱗に少し阻まれて手応えは硬かったが完全に効かないほどでもなくノコギリ状の刃は魔物の肉へと食い込む。ノコギリ状の武器の利点は刃の返しにより肉を抉ることにより出血を強いる…ことは霧の魔物なのでできないが魔物自体の再生を阻害する効果は高い。

右の腕と足の間接をノコギリ鉈で斬り立てなくなった魔物に対し更に左側も間接部を斬って動けなくする。

こいつにはいろいろと試させてもらおう。

まずは鉈モードに切り替えたノコギリ鉈を思い切り振りかぶり鱗の厚いところに叩きつけてみる。しかしその刃は鱗に阻まれて必殺となることはなかった。至近距離からの散弾銃や連装銃は鱗を破壊しながらも一撃で内部まで破壊できるほどではなかったが何発か撃てば鱗側からでも撃破出来そうだ。

と言っても水銀弾は俺自身の血を使う製作法故に生産性は劣悪だ、無難に近接武器で鱗の薄い場所を狙うしかないな。

 

よし、こいつも用済みだな。

今回の魔物については大体分かった。弱りきった魔物にトドメを刺すべく一番鱗の薄い腹に鉈モードで刃を刺し、腹から胸にかけて斬り上げて消滅させる。

殺し方は覚えた。囲まれれば対処しきれないけど少数相手なら問題ない。

 

 

 

 

 

「入るわ。」

 

「あら…いらっしゃい。私しかいないけど、いいかしら?」

 

生徒会室に残っていたチトセの前に宍戸結希が現れた。

 

「【あなたしかいない】から来たの。聞きたいことがあって。 」

 

「答えられることならいいけれど… 」

 

「…あなた、崩落の発生前にそれを神宮寺さんに伝えたそうね。 」

 

「…それに答えればいいのかしら。 」

 

「いいえ。神宮寺さんから聞いた後に連絡を受けたから、それは間違いない。

聞きたいのは、あなたがどうしてそれを知っていたのか。

【崩落が起こる前に、なぜそれを知っていたのか】。 」

 

「女のカンよ。 」

 

はぐらかすようにチトセは言う。もちろん嘘だ。

 

「予知の魔法が使えるのなら、すぐに教えて。でないと… 」

 

「科研の怖い人たちに攫われちゃう?」

 

「…そうよ。科研の科学者は、あなたの引き渡しを要求してくる。 」

 

「私が予知を使って…危険も顧みずに会長の身に起こる崩落を伝えて…

すばらいしい自己犠牲ね。 」

 

「はぐらかすのはやめてほしい。世界に3人しかいない【予知】の魔法使い…

あなたも使えるとすると、4人になるわ。人類にとって重要なこと。 」

 

「仮に予知を使えたとして、私なら大丈夫よ。科研の人たち、追い返すから。

あなたには私の心配より、もっと大事なことがあるでしょう? 」

 

事実としてこの少女は科研が本気で襲ってきたとしてもそれを追い返すだけの実力がある。

ならば今心配すべきはチトセ自身の身の安全ではない。

 

「…………」

 

「転校生君と一緒だから、会長が死ぬことはないわ。

そう…転校生君がいるからね。 」

 

 

 

「あれはドラゴンだ。長いこと空想の生き物だったが、もはや違う。

ドラゴン種の魔物はかなりの数が確認されている。多くは討伐されたがな。

不思議だとは思わないか。実在しない想像の幻獣を魔物はどうやって知った?」

 

魔物は人間の空想上の生き物の形を取ることがあるがなぜ魔物はそれになることが出来るのか、そのプロセスは今をもって判明していない。可能性としては霧が取り込んだ人間の頭の中を覗いた、か?

 

「実態化するまでは意思すら持たない、知能においては獣以下の怪物がだぞ。

わからないんだ。意味不明な相手はみんな怖い。」

 

だか、と会長は続ける

 

「アタシは対処法を知っている。ならば戦うのに恐れはないだろう。

他の誰が怖がっても、アタシは最後まで勇敢であり続けたいと願う。

アタシは生徒会長だからな。それにふさわしくあろう。」

 

「野薔薇と似てるな」

 

「…なるほど、野薔薇に似ているという印象をもたれるのも不思議ではない。

だがヤツとアタシには決定的に違うところがある。わかるか?

…では、答えはドラゴン退治の後だ。」

 

そう言うと大型のドラゴンの魔物へと向き小型のドラゴンを蹴散らしながらそちらへ向かう。

俺も引き続き小型のドラゴンを倒していく。

1体目のドラゴンの噛みつきをその牙が俺の身に食らいつくより先に連装銃で撃ち抜く。続けて迫る小型ドラゴンの左右の爪を使った連撃を身を屈めることで避け逆にノコギリ鉈で連撃を入れる。消滅はしなかったがそのまま胴の下をくぐり抜けてからその背中へと蹴りを入れ、俺の後ろから尻尾で叩きつけようとしていた小型ドラゴンの攻撃の盾代わりにする。スローイングナイフを構え、首だけでこちらを見ていたドラゴンの眼にナイフを投げ刺す。着地したところで先ほど盾代わりにしたドラゴンがこちらに噛みつこうとしていた。銃は取り出すのが間に合わないので顎を蹴り上げてから散弾銃を取り出す。喉元に散弾銃を押し付け発砲しその身体を霧散させる。最後の1体もすでに眼を潰していたため抵抗させるまでもなく、ほどなくして霧になって消えた。

 

「野薔薇は野薔薇の家に生まれた。だが私は違う。

それだけだ。ヤツは強くなることを運命づけられていたが、私は自分で選んだ。

ただ一人、武田虎千代として強くなるのだ。

この学園の生徒たちを守るためにな。

…だが、協力してくれるものは多い。それは喜ばしいことだ。

お前は転校してきたばかりだが…

もし学園をさらによくしたいと思うのなら、手を貸してくれ。」

 

会長の…武田虎千代の強さは血に依るものではない。野薔薇のように血より来る責任から強くなったわけではない。自ら強くなろうと決心した…意思による強さであり力だ。

武田虎千代という光は人を寄せる。まるで太陽のような人だ…

 

そんなことを考えていた俺の前に1体の大型のドラゴンが現れる。さきほどのものより大きい個体。これがタイコンデロガ級か…

 

「さあ、あと少しだ。運よくアタシたちの前に魔物が現れた。

他のものと合流する必要もあるまい。このままカタをつけよう。

あそこだ。援護を頼む。 」

 

会長に魔力を渡し俺もタイコンデロガ級ドラゴンと会長の戦いを見守る。もちろん何もしないわけではない小型のドラゴンが俺の方に向かって来るのでそれを撃退していく。

 

会長といえばタイコンデロガの腕による叩きつけを避けたから即座に反撃し俺なら当たれば即死は確実であろう爪を身体強化と雷の自然魔法により強化した攻撃でへし折っていき、噛みつきか、それとも火炎でも吐くためか開いた口をアッパーで即座に打ち上げ鼻っ柱に拳で作ったハンマーを打ち付ける。

まだ止まらないとばかりにタイコンデロガの顔面はと拳による連撃浴びせ、自然魔法でさらに怯ませていく。トドメとばかりに両手を開くと暗いはずの洞窟で眩しくなるほどの光を放った。それはタイコンデロガの身体を貫き確かにその身体を消滅させるに至った。

 

「…うむ。やはり魔物だ。あのような巨体が霧散するなど、他では考えられん。

よし、と言いたいところだが、アタシたちにはまだ仕事が残っている。

クエストは原則、受けた全員で報告せねばならんからな。

他の生徒を探し、無事を確認。その後脱出路を探すぞ。

…おい、転校生。

一度組んだだけだが、確かにお前の魔力は心強い。

後ろからの注意掛けも危なげない。助かったぞ。

興味が出たらで構わん。この虎千代とともに学園の守護者となりたいのなら…

その時は、いつでも声をかけろ。アタシはそれに応えるぞ。 」

 

「考えときます」

 

あとはどうやってここ出るか、だよな…

 

 

 

洞窟を出たのは次の日だった。俺たちが洞窟の出口を探している間に魔物が大量発生し学園に残っていたアイラとチトセ、そしてどこからともなく現れた生天目先輩が対応に向かった。

国軍も動いた。魔法学園の生徒にも臨戦態勢が敷かれた。

精鋭部隊が、風紀委員が、会長の戻った生徒会も即座に対応に当たり始める。もちろん俺もだ。

 

そしてここに第7次侵攻が始まるのだった。

 

 

 




ということで次話は第7次侵攻です。個人的にこの辺まではチュートリアルだと思っています。今話の冒頭でも書いてますが10月終わり頃なので本編でいうとあと半年くらいはチュートリアルですかね。なっが…
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