私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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お待たせしました。UA5000件超えてたので嬉しさが隠せない筆者です。


愚者の檻

「お、お前ホントに行くのか? …転校してすぐだぞ…」

 

兎ノ助がそう声をかけるのはボサボサした赤毛と科学者のように…実際科学者なのだが…制服の上に白衣をまとった少女である。

 

彼女は如月 天(きさらぎ そら)。魔導科学研究所…通称科研からグリモア学園へと転校してきたのは最近の話である。

 

「アンタが言いたいのは【魔法使いじゃないから】でしょ?

旧科研の話は知ってるわ。【部外者】に荒らされないよう、私が来たんだから。 」

 

そう。彼女は【魔法使い】ではない。しかし【魔法を扱う】ことはできる。

 

「ああ、科研の隠ぺい体質はそのままか…自分たちで始末できねぇくせに。 」

 

兎ノ助が怒りを顕にするのは科研の隠ぺいによる苦い体験をしてきたからか

 

「かつて旧科研では魔物を洗脳し、人類側の兵器として運用する計画があった。

けれどもちろん失敗…魔物は暴走し、施設を放棄せざるを得なくなった。

残されたのは【人類の兵器を装備させられた魔物だけ】…哀れね。 」

 

「ああ、魔物とはいえ、なんか可哀想… 」

 

「違うわよ。理解できないまま危険なものを運用しようとした哀れな科学者よ。

こんな話が外に全然漏れてないなんてありえないわ。

きっと第7次侵攻が無ければ、爆発するまで放置されてたでしょうね。 」

 

霧の特性を理解できないままにおもいつき思いつきで魔物を利用しようとし、失敗した。自分達の尻を拭うこともせず隠し通す。どの世界の科学者も根本は同じなのだろう。

 

「研究所が密閉されていたおかげで、年数の割に強さは控えめだそうだ。

とはいえ、タイコンデロガに育ってるやつがいないとも限らない。

特にお前は慎重に行けよ。 」

 

「余計なお世話よ。科学者の始末は科学者の私がつける。

愚かな先人の廃棄物は、このデウス・エクスで焼却処分してやるわ。 」

 

兎ノ助の忠告を聞く気もないのだろう。天は自らの背部に着けた機械を撫でながらそういい放つのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今日もいつものことながらクエストに赴いている。メンバーは宍戸さんと新しい転校生。料理部のメンバーの一部とに新聞部、あと後ろで縮こまっている双美 心か。

 

そして俺の目の前では新しい転校生と宍戸さんが話している。どう見ても立ち入れられる空気じゃない。蚊帳の外だ。辛い。

 

「久しぶりね。最後に会ったのは半年前…かしら…? 」

 

先に切り出したのは宍戸さんだ。どうやら知り合いらしい。

 

「ちょうど200日よ。アンタが科研を出て行ってからね。

再開してすぐに旧科研だなんて皮肉なものね。」

 

「…あなたは出向扱いになってると聞いたわ。正確には学園生ではない…

クエストを請ける義務はないのだけど。 」

 

なんというか因縁深そうだな。宍戸さんは宍戸さんで赤毛の人をクエストに連れていきたくなさそうだし。

 

「アンタね、そんなに私に戦闘させたくないのね。」

 

「あなたの才能は素晴らしいわ。覚醒してない状態で魔法を使えるようにする…

でもその代償は大きい。あなたはまだ戦うべきではないわ。 」

 

世の中には覚醒してるのに魔法使えないやつもいるしな。俺のことだよ言ってて悲しくなるわ。

しかし、非覚醒状態での魔法の使用か。身体への負担は大きいだろうな。

 

「余計なお世話よ。自分の面倒くらい見られるわ。

人工の魔力腺を用い、魔力を魔法に変換。やってみたら大したことなかったわ。 」

 

後ろになんか着けてるな、とは思ったけどあの背部ユニットが人工の魔力腺兼変換器ってところだろうか。

 

「誰もそれを【実現しようとしなかった】理由はわかってるでしょう? 」

 

「人の心配する前に、自分のやるべきことをやりなさい。

科研の汚点ともいえるこの施設。もし一般市民に被害が出たら…

魔法使いの評判は底抜けだものね。 」

 

「しかたないわね。できるだけ私たちが戦うわ。

あなたはまだ魔法学園に来て間もない。先に私たちのやり方を見て。 」

 

貰った魔力で常に全力ぶっぱに慣れるのはどうなの?将来的にやばくない?

 

「ま、いいわ。私もようやく魔法使いと接触できる。

データはどんどん取らせてもらうわよ。 」

 

「好きにしなさい。隠すことは何もない。 」

 

そんな会話を終え探索に戻る二人。そして俺の後ろでは料理部の部員たちが探索しながら色々と話している。

 

「うーっ。花梨もレナも来ないとは誤ったネ… 」

 

そう言うのは中国からの留学生である李 小蓮である。黒髪を後ろでお団子にしてまとめている小柄なな少女は食の探究家でもあり手の込んだ料理を振る舞っている。

 

「まぁまぁ、誤ったら謝りませんとね。」

 

身の毛もよだつギャグをかましてくるのは雪白 ましろ。背中まで伸ばした水色の長髪の美人であるがそれは黙っていたらの話である。常に親父ギャグをかましてくるのは勘弁していただきたい。

 

「うぅっ。とっても寒いのだ…冬眠しそうアル… 」

 

小蓮と同じく中国からの留学生である雀 明鈴だ。ショートの赤髪だが一房だけ編み込んで後ろに垂らし同じく赤が基調のチャイナ服のような戦闘服を身にまとっている少女はましろのギャグに対してそう返す。

 

「冬眠…大ウスリー島の島民でも冬眠されるのですね。 」

 

……

 

「やっ、やめるネ、マシロ! 気が抜けるヨ! 探索中ダヨ! 」

 

ほんとにね

 

「どんどんお腹減ってくるのだ…花梨にもらったお弁当、まだアルか? 」

 

「まだ2時間も経ってないネ! いま食べたら後がもたないヨ! 」

 

がんばれツッコミ役(小蓮)。俺は首突っ込まないから

 

「うわーん、ここ狭いしお腹減るし嫌いなのだー!」

 

「大きな声出さない! 」

 

「…しかしレナさん、とても嫌がっていましたね。

木にかじりついて動きませんでした。いつもは積極的ですのに… 」

 

レナというのは料理部とよく行動を共にしている少女のことで最近まで「狼に育てられていた」過去を持つ。そのためかまだ言葉使いがたどたどしく目下料理部の部長である花梨さんのところで勉強中である。

 

「花梨が言ってたネ。レナは学園に来る前、科研にいたのヨ。 」

 

「…まぁ。狼に育てられたから、ですか? 」

 

魔法使いに覚醒したから保護という名目で科研の連中に引き取られていたんだったか?詳細は知らんが…

 

「そう。ナニがあったか知らないけれどあの嫌がりよう、ロクなことじゃないネ。

聞いただけであんなに怯えるなんてタダゴトじゃないヨ。 」

 

他人事ではない。俺も学園長や生徒会長が手を回さねばどうなっていたかわからない身だ

 

「なるほど。花梨さんが残ったのはそういうわけだったのですか。 」

 

「レナ、たまに昼寝しながらうなされてるヨ。

きっと科研の時のことネ。だからワタシ、科研嫌いネ。 」

 

小蓮が吐き捨てるようにそう言うとキョトンとした顔で明鈴が口を開く。

 

「よくわかんないけど、花梨がいないのは科研が悪いアルか? 」

 

「まあ、そうですね。 」

 

「じゃあボクも科研嫌いなのだ! 」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

探索中に発見した研究所内を徘徊していた魔物。その一体の足を砕き腕を落とす。動けなくなった魔物の顔に左手の散弾銃を押しつけ発砲する。重々しい音と共に魔物も霧へと戻り辺りは静寂に戻る。

 

ため息を吐きながら独り愚痴るのは如月 天だ。

 

「ああ、ポチね。ポチだわ…資料では見たことあったけど、おぞましい。

Prototype Of Treasonable Impelement.

反攻兵器試作型…無理に英字当てて意味わかんなくなってるわ。馬鹿みたい。

どこのバカが兵器だけつけたのよ? 洗脳はどこに行ったの? 」

 

絶句もんだよ。誰だよつけたのセンス無さすぎだろ。

 

「魔物の【意思】がなにかわかっていないまま強行したのね。

おそらく、この制服と同じもののはず。【理屈は分からないけど使う】。

その失敗した例がこの場所というわけね… 」

 

「当然よ。 」

 

成功例が制服の素材である【ミストファイバー】であり失敗例が先ほど霧へと戻って失せた【POTI】というわけである。そういったものは大抵失敗する場合が多い。【ミストファイバー】は奇跡といっても過言ではないだろう。

 

「…あなたのデウス・エクスもまだ成功とはいえない。

未来の希望になるのだから、命を無駄遣いしないで。 」

 

【デウス・エクス】…ね。それがあの背部ユニットの名称であることは想像に難くない。宍戸さんの言い方だとやはり何らかの欠陥があるようだな。

 

「誰かがやらなくちゃいけないじゃない。なら私がやるわ。 」

 

「魔力が活性化していないあなたには、魔法発動の反動が重い負担になる。

安全装置が完成するまでは、あなたに無理はさせないわ。私の権限で。 」

 

そう言う宍戸に対して如月は見向きもせず言葉を返す。

 

「…さっきも言ったけど、私より先に自分の心配をしたらどうなの。

科研じゃアンタの評判は最悪よ。言うことを聞かないってね。

アンタ、科研も執行部も的に回して何をやるつもりなの?

ただ【人間を作る】だけなら、他の生徒の世話なんて必要ないじゃない。 」

 

「私の目的はあなたと同じよ。魔物を殲滅し、世界に平和を取り戻す。

それでこそ、これまでの研究が報われるもの。 」

 

「フン、なんでもわかった顔していけ好かないところも変わってないわね。

ただし私はデウス・エクスの危険性もわかってるわ。

だからこそ、私がやるのよ。そこには口を挟まないで。 」

 

互いに譲歩する気はないし必要もないのだろう。話を切り上げるように宍戸は如月に助言のみを残す。

 

「なにを言っても無駄ね。椎名ゆかりを紹介するわ。

せめて、治療は万全なものを受けなさい。魔法も使う治療をね。 」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

新聞部の様子を見るためにそちらに近づくと

それにしても、と遊佐さんが微笑を含ませた顔で言う。

 

「ああ、まさか旧科研に入れるとは思わなかった。ワクワクするね。 」

 

「楽しそうでなによりですよ」

 

「ここ、電気生きてるんですか? まさか今回のために復活させた…? 」

 

夏海の疑問に対して同じようにおかしさを感じる。わざわざこのクエストのためだけに執行部や軍の人間が入って電源をつけた?そんなことするくらいなら最初から自分達の手でカタをつけるだろう。ここは放置され封印された施設だと聞いた。普通そうする場合中の電源は切るだろう。そうすれば魔物は強くなることもなくなり外にでる危険もなくなる。だというのにここの電源は生きている。

 

「いいや、ずっと生きていたはずだ。それどころか…これは一大事かもね。 」

 

「…………?」

 

ずっと生きていたとしたら何者かが定期的にここを使っていたということになる。

 

「注意して観察した方がいい。僕の予感が確かなら、すぐ宍戸君も気づく。 渡くんは…フフ、君は賢いね」

 

「なによ明斗なんか分かったんなら言いなさいよ。」

 

「おっと渡くん。僕は夏海に成長してもらいたいんだ。だから言ってはダメだよ。夏海。僕と同じ答えにたどり着けるか…

頑張ってくれ。

…しかし、魔法使いじゃなくても魔法を使えるようにする機械、か。 」

 

「新しい転校生の使ってるやつですか? アレ、ホントなんです? 」

 

「論文を盗み見たけど、とても理解できなかったよ。だけど理屈としては…

魔力腺の代替物、のようだ。 」

 

「魔力腺? あー、なんか聞いたことあるかも… 」

 

「夏海。お前はもう少し勉強しろ。人間には総量の差異はあれど誰だって魔力を持っている。」

 

「それくらい知ってるわよ。覚醒するとその魔力が活性化するんでしょ。」

 

「ちょっと違う。厳密には【魔力腺】が活性化するんだ。魔力腺は魔力を外へと放出するための管みたいなものだ。魔法使いは【魔力腺】を通して外に出る魔力に魔法式を植え込んで魔法という事象を起こす。」

 

「ええと、じゃああの機械は体に穴をあける…?」

 

そういう夏海に遊佐さんは答える。

 

「魔力腺は物理的なものじゃないけど、おおむねそれであってる。

そして魔法は、発動する際に大きな反動がある。

魔力で肉体が強化されるのは、それに耐えるためだ。 」

 

「メモメモ…それじゃ、あの機械はその役目もあるんですね。 」

 

「さあ…僕にはそうは見えなかったな。 そういえば渡くんの持つ武器も似たようなものなのかい?」

 

「似たようなものですね。俺の場合は魔力譲渡の要領で魔力を武器に流して武器に植え付けた魔法式を発動してる感じです。」

 

「あの銃は?」

 

「銃自体はただの古式銃だな。特殊なのは弾の方だ。俺の水銀と俺の血を媒体にして造ってる特殊な魔法弾だし。媒体に血が必要だから生産性はあれだけど。」

 

「結構エグいわね。」

 

「それにしても魔物の数少ないな。」

 

「きゃあっ!? 」

 

如月の悲鳴が聞こえそちらの方を向くと天井からぶら下がった服部 梓がいた。

 

「うっす、宍戸先輩、先の方は片付けたッスよ。 」

 

「うわ!? あ、あんた誰よ!? 」

 

見慣れていないからだろう。クエストメンバー内で梓に驚いているのは如月だけだ。

 

「おおっ。あなたが噂の魔法使いじゃない転校生さんッスね。

忍者の服部梓ッス。以後お見知りおきを。ご用向きの際は天文部までッス! 」

 

こいつも大概マイペースだよな。

 

「にに、忍者!? 馬鹿言ってんじゃないわよ! この時代にいるわけないわ! 」

 

「…忍術、見せてあげたら? 」

 

梓に食ってかかる如月に対して宍戸さんは忍術の実演を提案する。

 

「いやー、ウチの特許なんでマネしないでくださいね? 」

 

「結希! あ、あんた科学者のくせにこんな怪しいヤツと…! 」

 

今度は宍戸さんに食ってかかろうとした如月だがどこからともなく現れた魔物が突如爆発し霧へと戻る。

 

「やだなー。忍者は元祖科学者みたいなもんッスよ?

例えば薬の調合って、もともと忍者の薬草から来てるんですから。

昔は【術】だった火遁なんかも、解明してみれば化学変化の応用だったり。

ちなみに今の爆発も火遁です。本来逃げるための術なんですが…

魔法で弱った魔物を倒すくらいならじゅーぶん使えます。 」

 

相変わらず凄いなー。

 

「…な…なんてこと…! 」

 

「忍者は今も実在するわ。術に科学的な説明ができる分…

魔法使いよりも現実的ね。 」

 

「まー、魔物には魔法が一番ってことで、忍術は補助ッスけどね。

御用の際は服部梓をヨロシク! では、物見に行ってくるッス。 」

 

そう言い偵察に戻る梓

 

「っとその前に。先輩一応魔力の補充お願いするッス。」

 

「はいよー」

 

魔力譲渡開始…完了

 

「では、改めて行ってくるッス。」

 

そんなことはやってる俺たちの横では宍戸さんと如月が話している。

 

「……あなたは純粋な科学者。科研で生まれて科研で育った。

これからも信じがたいことが起こると思うわ。けれど、あなたはあなた。

全部噛み砕いて吸収しなさい。デウス・エクスの完成はその先。」

 

「…わ、わかってるわよ! 科学の発展のためならなんだってするわ!

もう魔法も科学の一分野だってことを教えてあげる! 」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

研究所の奥へと進んでいた俺たちの前に討伐対象級の魔物が現れる。

しかも武器を扱える程度の知性があるらしく手に持った火器をこちらに向け掃射を始める。

 

「みんな!隠れるッス!!」

 

梓がそう叫び全員壁の方へと隠れる。

 

壁はかなり頑丈な造りであり弾が貫通することはなさそうだ。重苦しい掃射音が止むと共に宍戸さんが魔導兵器である有線式のピットで攻撃を仕掛ける。それに合わせ各々遠距離から魔法を放ち執拗に魔物の持つ武器を破壊しにかかる。

武器が鈍器にしか使えないくらいまで壊れると明鈴がツッコミ魔物に近距離での魔法を体術も合わせ放つ。俺も右手のパイルハンマーを射出形態にし明鈴に合わせるが流石に復帰が早い。

速度重視の射出では決定打にはならないか。完全に復帰し再度攻撃してこようする魔物だが突如飛んできた閃光が魔物を掻き消し霧散させる。

魔法が飛んできた方向を見ると白いコートのような戦闘服を身にまとった風紀委員長…水無月 風子がそこにいた。

 

「あなた、来てたのね。 」

 

先に口を開いたのは宍戸さんだ。

 

「ええ。科研の依頼のくせに、生徒会も精鋭部隊も動かねーのは不自然でしょ。

気になって参加させてもらいました。いやー、キツいですね。

入学後にすぐ風紀委員長になって、クエスト免除されてましたから。

6年ぶりのクエストはろーたいには堪えましたよ。」

 

いやいや、十分高威力だったよ。生徒会長やチトセ、アイラには及ばないがそれでも高水準で魔法の威力と精度がまとまっていた。流石は風紀委員長というところだろう。

 

「なによ、なんなのよ! 」

 

如月は如月でパニくっている。実にメダパニである。

 

「科研の科学者たちには、現場が見えていない。

彼らが思っているより、人間は賢いということよ。

目的を話した方がいいわ。 」

 

科研がなにを目的にしているかはなんとなく察しはついているがどちらにせよ風紀委員長が来た時点で隠し通せるものではない。さっさとゲロって欲しいものだ。

 

「ウチには学園の風紀を守るとゆー目的があります。

風紀は安全がほしょーされて初めて守られる。

ウチの縄張りで内緒ごとができるとは思わねーことです。 」

 

「……クッ……わかったわ。どうせいつか事件になる。

いい? 口外無用よ。年内は動かないはず。だけど…

【霧の護り手】が近いうちになにかするわ。 」

 

「…霧の護り手? 意外な名前が出てきましたね。

霧の護り手が科研と何の関係が…

…まさか、ここの電気が生きているのは… 」

 

よりにもよってテロリストに使われていたとは…。いや、でも…

 

「そうよ。科研はこの施設を封印したまま放置していた。

自分たちの愚かな所業から目を背けるようにね!

だからこの旧科研を【霧の護り手】が利用していたことも気づかなかった! 」

 

「待ってくだせー。話がおかしーですよ。

魔法使いでもない霧の護り手が、こんな魔物だらけの場所でどーやって? 」

 

そうだ。【霧の護り手】は魔法使いではない。もちろん軍隊でもない。つまり基本的には魔物に対して無力だ。こんなところにいて生きていられるはずがない。

 

「かつて科学者はポチから身を守る手段としてレジストフィールドを作った。

素材はミストファイバーよ。私たちの制服と同じ。

幼い魔物なら、これで攻撃をシャットアウトできる。 」

 

「まさか…あれは希少性が高く加工のむつかしー素材でしょう。

テロリストが手に入れられるわけがねーじゃねーですか。 」

 

風子の意見は最もだ。ならば話は単純。可能性として高いのは…

 

「裏切り者がいるってことか。学園内か軍か、科研か、あとは軍需産業のJGJあたりか」

 

俺がそう言うと如月はそれに同意したように頷く。

 

「そうよ。裏切り者がいる。私の役目はここでその痕跡を見つけることよ。 」

 

そう返した如月に対して風子は怒りをあらわにする。

 

「…確かに、使用された形跡はありましたが…まさか霧の護り手とは…

そんなもんを黙ってたってゆーんですか。ブチキレますよ。

霧の護り手がここで【何を】してたか知りませんがね!

そんなもん、学園をどーにかすることに決まってるじゃありませんか! 」

 

霧の護り手の目的は魔法使いの排除だ。ならば手段はわからずとも目的は絞られる。この施設の近くにはグリモア学園があるのだから。

 

「第7次侵攻で、魔物はこの封印を破った。進撃を止めてでもね。

それが無かったら、最悪の時まで気づかなかったでしょうね。 」

 

しかし、幸か不幸か先の大規模侵攻でここの封印は解かれ最悪だけは回避された。ならばこれ以上悪化しないように対応するしかない。

 

「とにかく、痕跡を探す。それに異論はないと思うわ。

まだ魔物も残っている。殲滅しましょう。 」

 

宍戸さんがそうまとめ俺たちは再び探索と魔物の排除を行うのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

施設の最奥へと到着したが記録媒体は破壊し尽くされている。

 

「HDDが物理的に破壊されてたら、データの回収は無理ね。 」

 

如月がそう言うと宍戸さんは壊れた媒体に近づきながらとある生徒の名を呼ぶ。

 

「双美心。 」

 

「ひ、ひぃっ! ななな、なんでしょう…! 」

 

泣きそうになりながら返事をする心ちゃんだが

 

「任せたわ。サルベージをお願い。 」

 

「わ、わかりましたぁ! す、すいませんが少々お待ちください!

………… 」

 

作業を始めた途端に人が変わったように集中し始める。

 

「な、なによ。サルベージをお願いってどういうこと!?

破壊されてんのよ! 魔法で精密機械を直すって言うの!? 」

 

「…双美心は…遊佐鳴子の天敵。 」

 

え!?

心から驚愕だよ。声には出さないけど…

 

「はぁ!? 」

 

如月さん声に出るほど驚いているようだ。

 

「ケーブルを繋げばあらゆる物理的、セキュリティ制約を無視することができる。

…はず。今はまだ成長途中。

それが彼女の得意とする魔法よ。破壊されてようが関係ないわ。

ただ一つ、立華卯衣の内部情報だけは見られないけれど。理由は不明。 」

 

チートかよ…

 

「な、なに言ってんのよ! そんなの論理的じゃないわ! 」

 

「違うわ。魔導科学がその論理にたどり着いていないだけ。

【魔法は科学】なんでしょ? 」

 

勝ち誇ったように宍戸さんが如月にそう告げた。

 

「…お、終わりました…あの、こ、これ多分外に出るとまずいものでは…

魔物の洗脳方法、更新されて新しい理論が付け加えられてます。 」

 

その頃には心ちゃんも作業を終えたらしく如月にデータを渡している。

 

「私が預かるわ…まさか、そんな理論がうまくいくはずがないと思うけど… 」

 

「天。わかってると思うけれど。 」

 

「わかってるわよ! 【破壊されてたから復旧はムリでした】で通すわ!

あんな愚か者たちにこれ以上間違わせたら、人類は滅びるもの…!

さあ! 魔物も殲滅したしやることはやった! 帰るわよ! 」

 

帰ったらまた忙しくなりそうだな。裏切り者の件にしても【霧の護り手】の件にしても、な。

 

 

 

 

 

 




ビルドダイバーズで小説書こうかと思ったけど案がまとまりきらないし他にやることおおいやること多いしそれやるとこっちの更新あれになりそうだからやめときます。
次回、テスタメント・グリモワール

11/25加筆
時系列確認してたらテスタメント・グリモワールの前にもうひとつあったので先にそっち書きます
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