私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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ガンプラ作ったりコミケ行ったりメガミデバイス作ってたら更新忘れてました。すみません。


テスタメント・グリモワール

クリスマスのクエストから数日経ち年明けが近づいたことから俺も帰省に向けて準備をしていたが生徒会からの召集がかかり生徒会室へと来ている。

 

生徒会室には見慣れない少女がいる。たぶんまた新しく来た転校生なのだろう。ウェーブがかった紫髪のボブはフードに覆われている。小柄な少女だがなんとなく占い師のような印象を与える。

彼女はグリモア学園の生徒の長たる生徒会長と話しているようだ。

 

「…………この学園の地下、ですか。 」

 

「転校早々、こちらの都合で悪い。だがお前の魔法が必要だ。 」

 

「ゆえ子の魔法は、近い未来を具体的に予知するのには不向きです。

レネイ女史やアンクル・ツォフのような預言者とは違います。

ご期待には添えられないかもしれませんが。 」

 

予知系の魔法の使い手なのか…。

珍しい、というよりはかなり稀少な魔法で世界的に見ても彼女を含めて3人か?

 

「もともとお前は覚醒してそんなに日が経っていない。

承知の上だ。アタシには年内にやっておきたいことがあった。

お前をダシに使ったようなものだ。 」

 

そういえば風の噂で生徒会が闘技場地下の調査を、すると聞いたな。執行部への交渉のカードに彼女を使ったということだろうか?

 

「…むにゃむにゃ…生徒会長さん。あなたの先は辛く険しいです。

ですがその先にある光を見失わないよう。これをどうぞ。 」

 

それにしてもゆえ子という少女はすごく眠そうに見える。予知魔法を使用したようだが相当魔力消費がきついのだろう。

そんな彼女は懐から黄色の石を取り出し会長へと差し出す。

 

「ゴールデンカルサイト…栄光と繁栄の力を持つ石です。 」

 

「ふむ…せっかくだがそれは受け取らないでおこう。

アタシの目標は国造りだ。それを成し遂げるための力をつけねばならん。

自分の限界までやってみて、それでもだめだったら使ってみるとするよ。 」

 

「そうですか。お強いのですね。 」

 

流石会長というべきか。努力の鬼才ともいうべき彼女だが本当に国造りを成し遂げそうだから不思議だ。

 

「さて、地下にいくわけだが、もちろんお前に護衛をつける。 」

 

渡、と呼ばれて出番が来たかと前に出るのだが俺が護衛側っておかしくね?

 

「お前には西原の護衛を頼む。もちろんお前だけではない。

何人か選んで行け。アタシたち生徒会も行く。

見つけるのは【最奥部】だ。この学園の、地下迷宮の一番奥。

そこに何かがあるらしい…詳しいことはわからないが…

第7次侵攻が終わった後に探すよう、代々の会長に受け継がれてきたんだ。

…1つ注意しておく。学園の地下に少なくとも今、魔物は確認されていない。

だが霧はどこにでもある…アタシは地下に閉じ込められて、著しく消耗した。

日をまたいでの探索は厳禁だ。それだけ、守ってくれ。頼むぞ。 」

 

「そういうことなら。了解です。」

 

護衛は他にも寄越してくれるみたいだし安心だな。

まだ左腕も快復していないし落葉も修理中だ。武器は…右腕だけで使えるパイルハンマーで良いとして問題はこの腕だと銃器と併用できないことだな。そんなことを考えつつ準備にへと移行する。

 

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今回の闘技場地下の探索。参加メンバーは多く、把握しているだけでも散歩部(仲月さら+シロー 瑠璃川秋穂 冬樹ノエル)とその保護者メンバー(瑠璃川春乃 朝比奈龍季)に図書館組(霧塚萌木 与那嶺里菜)。そして精鋭部隊の守谷月詠と来栖焔に護衛してもらっている俺とゆえ子のグループだ。各グループは各々探索しながら奥へ奥へと進んでいった。

 

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「…凄い。コロシアムの地下がこんな風になってたなんて。 」

 

確かにすごい、と春乃は感じる。コロシアムの地下、その圧巻の広さに驚いている妹。その顔がマジで天使すぎて鼻血が出そう。

 

「秋穂、危ない。お姉ちゃんに任せて。 」

 

かわいいけどそれは横に置いといてもこの奥から嫌な感じがする。だから秋穂たちを自分より後ろに下げる。

 

「ワンッ! ワンワン! 」

 

さらの飼い犬のシローも野生の勘になにか引っ掛かるのか牽制するように吠えている。

 

「シロー、どうしましたか? こわいですか?

だいじょうぶですよぉ。たつきちゃんもはるのさんも来てくれましたし。 」

 

「ノエルちゃんもいるからね! バッチリサポートするよ! 」

 

「…クソ。来なきゃよかったぜ。瑠璃川とかメンドクセーヤツがいたもんだ…

おいさら! お前、わざわざ参加する必要なかっただろーが。 」

 

よくさらと一緒にいる…名前は覚えていないが黒い長髪のヤンキーのような雰囲気を持つ女がさらに質問を吐いているが知ったことではない。

だから横で漫才やってるのは放っておいて冬樹に質問をする。

 

「…冬樹。コロシアムの地下、なにか情報はある?」

 

「うーん。途中までの地図は渡されたけど、それがない所の探索だから…

あんまり役に立たないかも。でも崩落の心配はないって。 」

 

まずはひとつ不安の要素が消えたと見ていいだろう。しかし、聞きたいことはそこではない

 

「魔物は? 」

 

「魔物? ううん、特に…それに、出てたらとっくに大騒ぎじゃない?

学園の敷地内は魔物は滅多に出ないし… 」

 

「…………魔物が、いない?

なら、こんな嫌な感じはしないわ… 」

 

独りごちる

 

「…お姉ちゃん、どうしたの? 」

 

秋穂に声をかけられ振り向く。心配そうにこちらを上目遣いで覗き見る秋穂はいつもより天使度が高い。

 

「ううん! なんでもないよ秋穂! なにがあってもお姉ちゃんが守ってあげる! 」

 

「ひゃっ! ち、近い、近いよお姉ちゃん!」

 

「出なけりゃそれでいいけどね。なんであろうと、妹には手出しさせないわ。 」

 

そう。出なければ出ないでいい。出たら出たで対処法を考えるだけだ。

 

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さて、今回のクエストを共にするメンバーが顔を合わせた訳だが

 

「…………アンタが予知の魔法使い? 」

 

「西原ゆえ子です…むにゃむにゃ… 」

 

常に眠そうだなこの子

 

「…最近の転校生って…いや、なんでもないわ… 」

 

「なんで俺の顔を見る…」

 

月詠が俺の方を見ていた。解せぬ…

 

「明斗! アンタとツクたち精鋭部隊がこの子の護衛よ!

万が一にも傷つけないよう、ツクが指揮をとるからね! 」

 

「ん。了解…」

 

「うぜー…」

 

来栖の方はやはり集団での行動は嫌いなのか月詠の言葉に辛辣な口調で返す。

 

「うるせぇ。そのキーキーわめくの、やめろ。」

 

「…な、な、なによ! アンタなんかねぇ! 今は偉そうにふんぞり返って…」

 

「黙れ、燃やすぞ。 」

 

言い返そうとする月詠の言葉を遮り奥の方へと炎の魔法を放つ。その先にはボロボロに焼き崩れ、霧へと変化する異形があった。

 

「ぐっ…………?

な、なに、今の? 」

 

「…むにゃむにゃ。この先は安全ではなかったんですか?

黒いもやが見えます。きっと魔物でしょう。 」

 

予知の魔法の効果だろうか?魔物と断言して述べるゆえ子と

 

「…そ、そんな。だって学園の地下なのよ? 魔物がいたら…! 」

 

信じられないとばかりに目を見開く月詠。それもそうだろう学園の地下に魔物がいるという情報はなかった。

 

「んなのわかってたことだろ。アタシたちも生徒会も行くんだ。

なんも出ねぇワケがあるか。

さっさと進むぞ。魔物が出てきたら、全部アタシが燃やしてやるよ。 」

 

それだけ言うと焔は先頭に立ち進んでいく。

 

「さて、奥に進んで出るのは蛇か鬼か。まぁ魔物はいるだろうけど…。」

 

「ちょっとツクが指揮を取るって言ってるでしょー!」

 

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「それにして…な」

 

「そうね…なんというか。」

 

「端的に言って今回の魔物キモすぎる。」

 

触手のような身体に目玉のような頭部を備えた異形。それが今回の魔物だ。

焔が暴れてくれているおかげで楽は出来ているがたまに抜けてくるものは流石に自分達の手で排除しなければならない。

というより焔の魔法は火力、範囲共に優秀だが本人が共闘するような性格ではないので下手すれば魔物共々焼き払われてしまう。仕方ないので近い魔物は自分達で倒すようにしている。

 

 

「…了解…まったくもう、萌木ったら! ただの古い家じゃない!」

 

「どした?」

 

「里菜から連絡よ。ここにある古い家と同じものを調査してて足止めくらってる、って」

 

「ふーん。」

 

目の前のそこそこ状態の良い木製の家…というより見張り台か?住むという用途として使うには風化しているとはいえ内装が簡易すぎる。すぐに外に出られるように窓やドアは大きくしてあり戦闘準備を速やかに行えるようになっている。

柱に向かって蹴りを入れる。傷は…つかないか。

 

「魔法か。家の一つ一つに?いや、違うな。」

 

「あんたものんきに調べてないで魔物倒すの手伝いなさいよっ。」

 

「腕折れてるからパスで」

 

月詠の言葉にそれらしい理由をつけて返す。

 

「あんたさっきから片腕で戦ってたでしょーが!てゆーかなんで魔物が出るのよ! 学園でしょここ!? 」

 

「…」

 

焔は戦闘しながらも何かに苛立っているのか。考え込んでいる。

 

「…焔、アンタなにか知ってそうね。 」

 

「テメーには関係ねぇよ。 」

 

「あなたねぇ…」

 

「止めていた人がいたんですね。」

 

本日n回目の月詠と焔の口喧嘩が始まろうとしたときにゆえ子が呟く。

 

「会長さんから聞きました。精鋭部隊の一部の優秀者だけがここに入れると。

ゆえはよく知りませんが、たまに魔物退治にきてたのですね、きっと。 」

 

「…そんな、ツク、聞いてないわよ! 」

 

「…クソッ! あのヤローが許可されてアタシはダメだってのかよ…! 」

 

精鋭部隊でも上から数えた方が早いであろう二人も知らないということは来ていたのはエレンさんやメアリーさん辺りか。

 

後ろから足音が聞こえ振り返る。

 

「みなさーん! 」

 

走ってきたのは中等部の制服を着た女の子…の格好をしている、所謂「男の娘」である。

彼女…ではなく彼は我妻 浅梨。第7次進行の前日に転校してきた生徒であり、【始祖十家】である我妻の一員である。

 

「あ、アンタ…! なんでここに! 討伐パーティには入ってなかったでしょ! 」

 

今回のクエストメンバーに彼の名前はなかったはずだ。それともどこからか要請を受けて?

 

「ええと、そうなんですけど…寮に帰ろうとしたらここを通らないと… 」

 

は?

 

「なんでよ! …はっ! アンタ、いつも通る洞窟ってここのことだったの!? 」

 

方向音痴とは訊いていたがここまでとは…

 

「そうですよ? 皆さんも通りますよね? 」

 

「どうやったら通るのよ! いつもは封印されてて入れないじゃない! 」

 

「そうなんですか? 」

 

「警備ガバガバだなおい」

 

大丈夫なのか?

今度風子さんに相談した方がいいかもしれないな。

 

「…………むにゃむにゃ。

魔物は悪魔の使者。扉を抜けて現世に姿を現し、人に害をなす。

魔物の脅威から人々を守るには最終儀式を行わなければならないのです。 」

 

「……ああ? 」

 

「…きゅ、急になにを言いだすのよ、この子… 」

 

ゆえ子が眠気な目を空けながらよくわからないことを言い始めた。来栖や月詠も困惑している。最終儀式とはなんのことだ?

 

「我妻、浅梨さんですね。 」

 

「はい? そうですよ。自己紹介しましたっけ。」

 

浅梨の名はまだ出ていない。ならば予知の魔法で彼が浅梨だと知ったのだろう。ゆえ子は懐から何かを取り出すと浅梨にそれを手渡しする。

 

「こちらを。 」

 

「わぁ、かわいいお人形ですね! 」

 

「身代わり人形と言います。持ち主に降りかかる災厄をかわりに受けてくれます。」

 

「災厄?なんだそれは?」

 

「はい。いつかわかりませんが、最終儀式が行われるとき…

あなたの身に危険が迫るのです。その時のために、持っててください。」

 

俺の質問に曖昧な答えを返すゆえ子。

 

「はぁ…」

 

浅梨は疑問はあるだろうが貰い物を無下には出来ないのだろう。人形を鞄の中へとしまう。

 

「…アンタね、預言者だか知らないけど、あんまり不吉なことばっか言わないの!」

 

「すみません。謝ります。ゆえの予知はあいまいで、ぼやけています。

でも見えたなら、それを止めるのがゆえの義務です。

では次は…こちらの道ですね。 」

 

わからないことをわからないままにしておくのは不味いのだろうが現時点では判断材料が少なすぎる。

考えても仕方ないのならば目の前の問題を片付けるしかないだろう。クエストを進めるためにも俺たちはゆえ子の案内の元、地下を進む。

 

奥へと進む俺たちの前に魔物が立ち塞がる。先ほどまでは数も質も良いとは言えなかったそれらだがここに来て同じものとは思えないほど強くなってきた。それは来栖と月詠にも余裕がなくなってきていることからも確かなことだ。

 

「…クソッ。魔物が強くなってきやがった。霧が集まってんだ…」

 

「この奥から、霧が? どこかに通じてるのかしら…」

 

額の汗を拭いながら思考を巡らせる来栖と月詠。

その横ではゆえ子の様子が先ほどまでとは違っていた。

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

「ん? …あ、アンタ、もうへばったの?」

 

「すいません…ゆえはずっと寝ていたので…体力がないのです…」

 

「寝てた? お寝坊さんなんですね。」

 

「器用にボケるな。そういう意味じゃないから」

 

「ふぅ…あまり自分から言うことではないですが、ご迷惑をかけてますね。

ゆえは生まれつき虚弱だったのです。ニュージーランドに住めるほど。」

 

「…ニュージーランドにいたの?」

 

ニュージーランドか…確か…

 

「魔物が現れてから300年、何故か一度も魔物が出現したことのない国、だったか?」

 

勉強で詰めた知識から思い出す。魔物が現れた記録がないという特異性からすぐに思い出せた。

 

「はい、ゆえが生まれてすぐ、家族のニュージーランド居住許可がでました。

ゆえは…日本では生きられないと判断されたのです。」

 

「…で、でも魔法使いに覚醒したんなら、普通の人よりは体力が…」

 

「だからニュージーランドを退去したんだろうが。言わせんな。」

 

「あ…そ、そうよね。ごめんなさい。」

 

「ご迷惑をおかけします。まだゆえは長時間の運動に慣れていません。」

 

しかし、ゆえ子の状態はそれだけではなさそうだが…

 

「渡。魔力だ。西原が満タンになるまで入れろ。」

 

来栖からの指示を受け即座に魔力譲渡を開始する。

 

「…………?」

 

ゆえ子は俺を不思議そうに眺めている。

 

「西原。テメー、魔力がどんどん漏れてるぞ。予知の魔法垂れ流しだ。

体力がねぇのもそうなんだろうが、魔力もほとんど残ってねぇだろうが。」

 

「魔力がどんどん入るな。枯渇寸前、ってところかな」

 

魔力譲渡にかかっている時間から指摘してみる。

 

「そのようですね。ゆえの予知は…自分で制御できないので…」

 

「魔力が充実してりゃ、疲れが取れるのも早い。

アタシはさっさと進みてぇんだ。動けねぇんなら渡が背負いな。

クソったれが。テメーがいねぇとこの迷路は抜けられねぇ。

なにをしてでも連れてくからな。 」

 

「ちなみに今、片腕折れてるからお米様抱っこしか出来ないぞ」

 

「遠慮しておきます」

 

背負えないので代案を出したがやんわり断られた。

 

「ん、そうだ。浅梨はクエストメンバーじゃないしさっさと帰れよ」

 

「あっはい」

 

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「…ったく、よくこんな穴が開いててどうもねぇもんだぜ。」

 

散歩部と共に地下を探索していた朝比奈 龍季は魔物を倒しながらも地下の頑丈さに首を傾げていた。

 

「すごいですねぇ。おちちゃったりしないんですねぇ。」

 

横では仲月 サラが大きな穴を飼い犬のシローと共に覗き込んでいる。

 

「落ちたらたまったもんじゃねぇよ。あんまり大規模な魔法使えねぇな…」

 

生徒会長が行ったクエストでも岩盤が崩れ閉じ込められたと聞いた。二の舞は勘弁だ…

 

「うおっ!?」

 

そんなことを考えていると大きな爆発音が聞こえる。やった犯人はわかっている。

 

「ふぅ…怪我はない? 秋穂。」

 

「お、おねえちゃん…そんなに全力でしなくても…」

 

「オラッ! 瑠璃川! テメー、どこもかしこも爆破してんじゃねぇぞ!」

 

「は?」

 

「ここが崩れたらどーすんだよ! この前の討伐でもあったんだろが!」

 

先ほどから魔物を爆破しまくっている瑠璃川 春乃に向かって怒りの声を上げる。しかし、当の本人といえば…

 

「…………秋穂、行くよ。」

 

本当に妹にしか興味がないのかこちらの声を無視して先に進もうとしている。

 

「っ! こ、このヤロウ…!」

 

「いい? アタシとアンタは馴れ合うような仲じゃない。命令するな。

でもうるさいから1つだけ言っておくわ。

この村は人類の最前線だった。規模から見るに、常時100人…

緊急時には300人くらいが住めるようになってる。

その魔法使いたちが魔物と戦うときに、アタシより威力を抑えてたと思う?」

 

「…ああ? つまりなにが言いてえんだよ。」

 

「頑丈なのよ、ここは。全体が魔力でコーティングされてるんでしょうね。」

 

なるほど。ここ全体が戦場として耐えうるよう魔力により耐久力を上げているのならば超高威力の魔法でもなければ崩落の危険はないだろう。

 

「…マジか。テメー、どこで知った。」

 

「カンよ。」

 

「はぁ!? 舐めてんじゃねぇぞオラ!」

 

納得出来る理由を出したかと思えばそのソースはカンだという。怒りでもう一度突っ掛かろうとするが後ろからノエルに止められる。

 

「あ、朝比奈さん、どうどう…お姉さんのカン、すごく当たるから。

それに、さっきの爆発でもビクともしてない…多分、本当だと思う。」

 

「…チッ。自然じゃありえねぇってか。なにかあったら遅いんだぞ。」

 

「なにかあったら、そのときはお互い、やることをやればいいわ。

それだけのことでしょ。」

 

「…あ、あの、ごめんなさい。お姉ちゃんが…」

 

見ていられなくなったのか妹である秋穂が頭を下げてくる。それを見て頭に血が上がりすぎていたことを自覚し落ち着く。

 

「オメーが謝ることじゃねぇよ…あいつが謝ることでもねぇ。

さあ、行くぜ。しゃらくせぇけどな、この中で1番強いのはアイツだ。 」

 

それだけ伝えると春乃の後を追うように洞窟の奥へと進むのだった。

 

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「ぜーっ、ぜーっ…つ、疲れた…どんだけ広いの、この地下…」

 

「…もうどれだけ下ったんだ? さすがにこんな広さ…

ここまで施設があるなんて異常だ。深すぎるぞ。」

 

月詠と来栖もそろそろ体力切れだろうか。調査開始からずいぶん時間が経ったしかなりの距離下っている。それにも関わらず未だ奥は見えない。

 

「…むにゃむにゃ…ですが、そんなに遠くではないです…

変な景色が見えるのです。きっとそれが1番奥なのです…」

 

「でもちょっと休みましょう。」

 

「そうだな。みんなの魔力も回復させた方がいい頃合いだしな。」

 

魔力譲渡を開始する。戦闘担当の来栖と月詠を優先する。

 

「変な景色って、なに?」

 

全員への魔力譲渡が終わった頃合いで月詠がゆえ子に質問をする。

 

「…空です。」

 

それに対しゆえ子は端的に答える。

 

「空?」

 

「はい…空が見えます。それに…削り取られた山、地平線…」

 

「どういうこと? 地下に降りて行ってるのに、なんで空なのよ。」

 

ここは地下だ。斜面は下へ下へと続いていた。つまりこの洞窟が地表の別の場所に繋がっていることはあり得ない。ならばゆえ子の言う「空」とは何を指すものだ?

 

「むにゃむにゃ…すいません、これ以上は…ぼやけていてはっきりしません。」

 

「チッ…今はそんなのはいい。それよりなにもなかったらただの無駄足だ。」

 

「なにかはあります。それが目的のものかはわかりませんが…」

 

「アタシはアンタを信じてねぇ。ついてからだ。今は余計なことは言うな。

ただ分かれ道さえ指してればいい。 」

 

「だな。判断材料がないならここで時間を無駄にするわけにもいかないし。そろそろ行くか。」

 

少し休憩したおかげかゆえ子も再び自分で歩けるようだ。

ゆえ子が指し示す方向へと俺たちは進んでいった。

 

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「…おい、行き止まりだ。」

 

「も、もーだめ…はぁ、はぁ…歩けない…え? い、行き止まり?」

 

休憩後さらに奥へと進んでいった俺たちだがどうやら最奥部に到達したらしい。

それにしても行き止まり、か。ならば、魔物はどこから現れた?霧が停滞しているわけでもないし。

 

「なにかあるぞ。」

 

来栖が見る方向には確かに何かがある。

 

「あっ! ふ、ふしんなもの…近づいちゃ…らめ…」

 

息も絶え絶えで月詠が注意を促すが興味の方が勝っている。俺たちはそれに近づく。

 

「…行き止まり…変ですね…」

 

「変って、な…なによ…はぁ…最奥部、よかったじゃない…」

 

「ですが…この先には空が…空が、見えるのです…」

 

ゆえ子は休憩の時から言っている空が未だ見えるという。しかし、ここは地下だ。また、壁を探ってみたが何処かに抜けるようでもないみたいだ。

 

「…適当言ってるわけじゃないみたいだけど…なさそうよ、空なんて。」

 

「はい…ゆえも行ってみるのです。なにかわかるかも。」

 

「…うーん…動けない…」

 

月詠は体力が完全に切れたか。周囲には魔物も居ないし放っておいても大丈夫だろう。最奥部にある何かに俺たちは近づく。

 

「これは…本…魔導書か?なんでこんな深い所に…んっ。

……ぐっ! ぐぐぐ…! なんだこりゃ、開かねぇ…!」

 

「貸して。んッ!

ん?なんだこれ?」

 

「別に糊付けされてるとかじゃねぇな…」

 

来栖と二人で推定…魔導書と思われるものを開こうと試みるがまったく開かない。物理的な理由で開かない。訳ではなさそうだ。ならば、考えられることは…

「魔法がかかっているようです。変な色になっています。」

 

「魔法? 本が開かなくなる魔法なんてどこのアホが作ったんだってんだ。」

 

そう。魔法だ。魔導書には危険なものも多いが魔導書な残す時点で中身を見られることは承知の上で見られた時の対策をするものが大半だ。作った魔法が危険だと分かっていても顕示欲には敵わないのだろう。

仕方ないクエストメンバーの中には萌木もいたはずだ。場所情報と魔導書がある旨を載せデバイスに送りつける。

 

「理由はなんとも。魔導書には危険な魔法がかけられているものもあるのです。」

 

「読むだけでどーにかなっちまうってのかよ。」

 

「あるいは開いただけで。許可された人以外が読まないようにしたり…

単純に、読んだ人を害するための悪意であったり。」

 

「…っ。どっちにしろ開かねーんだ…だけど、これしかねぇってことは…

これが生徒会の探していたものなのか確認しねぇと終わらねーぞ。

…クソッ。この表題…なんだ? テスタ…」

 

「TESTAMENTです。ええと…日本語ではなんていうんでしたか…」

 

「テスタメント…聖書、もしくは遺書という意味です。」

 

「ああ? なんだ追いついてきたのか。」

 

「餅は餅屋だ。さっき萌木のデバイスに位置情報と魔導書があることを載せて送ったんだよ。」

 

「萌木、急に走り出すから困ったさー」

 

これで与那嶺と萌木は合流か。散歩部にも情報流しとくか。

 

「…聖書って宗教かよ。」

 

「いえ、この表題…やっぱり、表紙をナイフで彫ったものですね。

これが聖書なら、旧約や新約を示す単語が無ければ不自然です。

どちらかと言えば、遺書と訳すのが正しいかと…」

 

「…誰が書いたのかわかるか?」

 

「貸してください…いえ、そもそもこの本自体が無銘ですね…

TESTAMENTの傷をつけた人も、名前は残していません。」

 

「…魔法の力で開けねぇなら…結局、意味わかんねぇんじゃねぇか。」

 

来栖と萌木がテスタメントについて話しているが結局は開かないため難航中、といったところだろう。

 

「あ、守谷さん。」

 

「秋穂…アンタたちもついたのね…ふぅ…やっと体力が回復してきたかも…」

 

「ここが1番奥ですか?」

 

「まだあるでしょ。この先に。そんな気がする。」

 

どうやら散歩部+αも合流のようだ。

春乃さんもゆえ子と同じく奥に何かあるように感じるようだ。

しかし、それは本当にこの洞窟の奥か?ならば魔物もこの奥から?いや、それより怪しいのは…

 

「アンタまで変なこという…そんなわけないでしょ。

この先の土壁が見えない? ここで行き止まりよ。」

 

「…………」

 

月詠の指摘を受け春乃は奥を見たまま止まっている。

 

「お姉さんのカンが外れたのって珍しいね~。あ、まだ外れてないか。

もしかしたら壁の向こうになにかあるかも知れないもんね。」

 

「うん…でも変な感じ。お姉ちゃん、いつもはカンが外れても…

どうでもいいって風なのに。こんなに気にするなんて初めて。」

 

ノエルや秋穂ちゃんが春乃さんの方を見ながら色々言っている。確かに妹である秋穂ちゃんに依存しそれ以外だと興味をあまり持たない春乃さんだが洞窟の奥が気になっているようだ。

 

「あ、壁叩いてる。確かに、いつもは確かめたりしないのにね。

蹴りだしたよ…それでもビクともしないから…魔法…」

 

ノエルが春乃さんの実況をしていたが魔法使いだしたところで顔が青ざめていた。

 

「きゃーっ! お姉ちゃん、やめて!」

 

「春乃さんストップ。ストップ!」

 

秋穂ちゃんや俺が止めに入りなんとか魔法は止めれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい会長さんよ! この本が目的のものかわからねぇってどういう意味だ!

ああ? 持ち出せねぇんだよ! 本だけ通さねぇ見えない壁があんだ!

自分で見にこい! いいな!

クソッ! ワケわかんねぇ、なんだこの本!」

 

あのあと色々試してみたようだが一向に開かないうえに本を通さない見えない壁まであったため、一度会長に連絡した来栖。

 

「…魔物の数が少なくなりましたね。」

 

ゆえ子はここに来てから魔物がいなくなったことに気づく。

 

「…ああ、ここに来るまでは出まくってたのにな。それがどうした。」

 

「いえ…不思議に思っただけです。

学園の地下に魔法使いの村。その奥に魔導書。魔物の数…

全てを1繋ぎに説明できる理由がありそうなのです…」

 

「んなのが簡単にわかれば苦労はねぇよ…クソ、なんだってんだ。 」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

虎千代に呼ばれたと思えば闘技場の地下でのことを話され派遣される流れになったアイラ。

飛行の魔法で一気に下り、ついでに打ち漏らしの魔物を仕留めて奥へとたどり着いた。

報告の通り、魔導書と思われるものがあり。色々と試してみた。

 

「ふぅむ…お、少年か。お主も気になっとるのか?」

 

明斗はといえば魔導書になにか秘密があると思っているのだろう。こちらの作業を逐一観察していた。

 

「アイラさん、そろそろ戻らないと…お姉ちゃんが…」

 

「わかっとるよ。しかし虎千代のヤツめ、どっから情報を仕入れてきた。」

 

グリモア学園の理事長である犬川のじじいとは付き合いの長いアイラであるが地下にこのような魔導書があるとは聞いたことがない。ならばあの生徒会長はどこから情報を手にいれたのだろう。アイラは考えを巡らせる。

 

「…………

私立グリモワール魔法学園…グリモワール…」

 

「フフフ…お主、ホンキで全部カンかそれ? その通りじゃ。

この魔導書があるからこそ、ここは【グリモワール】魔法学園なんじゃろ。」

 

春乃の呟きを聞き笑いが込み上げる。本当かどうかは分からないがカンのみで自分と同じ考えにたどり着いたか。

 

「え? え? どういうことですか?」

 

「中を見んと断定はできんがな。コイツは多分、魔導書に間違いない。

なぜならコイツにかかっとるのは時間停止…妾にかかっとるのと同じ魔法じゃ。」

 

端的に魔導書の開かないため理由を教えてやる。

 

「時間停止? そんな魔法、聞いたことない。」

 

「そりゃそうじゃ。妾とアイザックが一緒に作った魔法じゃもの。」

 

「…アイザック? 魔法使いのアイザック…ニュートン?」

 

有名人であるが歴史の教科書でしか見ないはずの人物を当ててのける春乃に本当にカンなのかと問い詰めたいがそれに意味がないと分かっているので我慢する。

 

「お主、ちょっと気味悪いくらい鋭い…ま、今のところはそれはよいでな。

おそらくグリモアは、この魔導書を守るか…あるいは封印するか…

そのために作られたんじゃろ。」

 

「なんでわかるんですか? 偶然かも知れないですし…」

 

いや、それはない。なぜなら…

 

「時間停止はともかく、持ちだせないようにする魔法は時代が浅い。

学園ができてからも、定期的に魔法をかけとったんじゃろな。

やっとったのは精鋭部隊の一部…フフフ、つまりこれは執行部管轄か。

新参のエレンたちも多分知らんな。しかし妾からも隠すとは…犬川のジジイめ。」

 

「…東雲。時間停止の魔法、今も使える?」

 

「ん? …ククク、妾の話を本気にするとは珍しいヤツ。

どうした? 誰かかけたい相手でもおるんか?」

 

「…秋穂を…

秋穂を天使のまま保存したい…!」

 

先ほどまでの様子と一転しある意味、通常運転と化した春乃。

 

「…お姉ちゃん…」

 

よだれを垂らしながら妄想に浸っている様は妹すらをもドン引きさせていた。

 

「…ふーん? ま、残念じゃと言っておこう。

あれはアイザックの魔法じゃ。妾には使えん。つまり…」

 

この魔導書にもヤツがかけたということになる。

妾に隠しごととは、さすがアイザックじゃ。一筋縄ではいかんのう。

 

「それにしても、に、にしはら?」

 

予知魔法の使い手。名前は見たけど読み方あってたっけ?

 

「さいばらです。」

 

ちがった。

 

「そうじゃ。お主が言うとったことも気になるでな。

この先に空が見える…地平線も見える…とゆーとったそうじゃないか。

春乃よ。お主もここが最奥だと信じとらんじゃろ?」

 

「帰る。」

 

アイラからの質問に対しそれん無視しての帰還にアイラは固まった。

 

「えっ?」

 

「魔物が出たら危ないから、帰るわ。どうせクエストは終わりなんでしょう。」

 

「あ、お姉ちゃん…東雲さん、すいませんすいません!」

 

踵を返した姉にこちらにすばやく謝りながら姉の後を追う秋穂。

 

「なんとドライなヤツめ…本気で妹以外に興味ないのか…

ま、よいわ。今はこの【遺書】の存在意義じゃわ。」

 

「ど、どういうことよ! 意味わかんないわよ!」

 

ヒステリック一歩手前の月詠に疑問点の説明をしてやる

 

「中が読めん遺書とはこれいかに。この傷をつけた輩は…

妾たちに謎かけをしとるようじゃの。中身が気になるではないか。

時間停止の魔法を使ってまで見られたくない遺書とはなんぞや?」

 

「…アンタ、知ってるんでしょ。アンタの知り合いの魔法なんでしょ、これ?」

 

「そうじゃとも。ヤツは優秀な科学者じゃったが、晩年に魔物が出現してからは…

魔導科学を専門にした。妾もいっしょに魔法の研究をしたものじゃ。

…じゃが、ヤツの魔法をここで見るとは思わなかった。」

 

そもそも時間停止の魔法は莫大な魔力を必要とする…

妾に匹敵する魔力を持つ輩がホイホイ見つかるわけがないんじゃが…

この時間停止、アイザックは【誰と】やった?

 

自分の魔力総量に匹敵するものは【師祖十家】にもそういない。魔法使い最強と名高い【ゴズミック・シューター】あたりなら可能だろうが。

そしてそれを超える魔力量といえば【渡 明斗】。この少年になるだろう。しかし、彼等がこれに関与する確率は0に等しい。確実に彼等が生まれるよりも前にはこの魔導書は存在している。それに【時間停止】の魔法を唯一扱えるアイザックが生きていたのは魔物が出てきて間もない頃だ。

 

「のう西原。まだ空や大地は見えるか…」

 

「むにゃ…はい、見えるのです。ぼんやりと霧に包まれたようですけど。」

 

「じゃがこの先はない。レーダーや魔法で探索してみたが、ずっと地中じゃ。

お主が嘘を言ってるのではなく、ポンコツでもないのなら理由はなんじゃ?」

 

西原に謎かけをしてやる。ほとんど答えのようなものだが…

 

「…ここに、まったく違う場所への入り口があるのです。」

 

「そう。物理学的にどうだろうが説明がつくのはそれじゃ。

空間同士をつなぐ魔法はもう少しで実用化できるし、不思議でもなんでもない。」

 

「…アンタ、が言いたいのって…まさか、魔物が…」

 

「じゃよ? 風景が見える【予知の魔法使い】、アイザックが封じた魔導書…

ちなみに妾もそうなんじゃが…時間停止の魔法は1年に1度、効力が弱まる。

この本にかけられた魔法が弱まる時期…それが今として…

時間停止で抑えられていたこの本が【開いて】霧と魔物が現れた。」

 

「…テメェ、マジで言ってやがんのか!」

 

来栖 焔が突っ掛かってくるが涼しい顔で返してやる。

 

「モチ、大マジじゃ。これらの要素を繋ぐものは1つ。

この【テスタメント】は、どっか知らんが地球でない場所と繋がっておる。

というか開いたら繋がる。いわゆる【魔物の故郷】への入り口…

そういう話はどうじゃ?」

 

「だ、誰が信じるのよ! ただの侵略説じゃない!」

 

「しかし政府上層部でもまことしやかに【ゲート】とゆー単語が飛び交う。

上はすでに知っとるかもしれんのう。」

 

【ゲート】が何かは実際のところアイラは分からない。しかし、そこから魔物が現れているらしい。という情報は掴んでいる。

ならばこの魔導書が開かないのはその【ゲート】を封印するためではないか。

 

「…クソッ! 聞いたアタシがバカだったぜ! 帰る!」

 

「…状況証拠ばっかりじゃない。」

 

「霧に関しての研究はいつもそうじゃ。今の説以外にも可能性はあろう。

…次にこれが弱まった時、もし道が開くのなら…飛び込んでみてもいいのう。

そう思わんか、少年。もしかしたら魔物を一網打尽にできるやもしれんぞ。 」

そう少年に話しかけるが少年は【ゲート】や【空間を繋ぐ魔法】、【魔導書】などと呟いている。彼にもなにか秘密があるのだろう。

しかし、アイラはそれを無理に暴こうとはしない。必要ならば向こうから接触してくるだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

クエストが終わり寮の自室に戻るなり【狩人の魔導書】を取り出し、目を瞑りながら頭に逆さに吊るされた男のマークを浮かべる。

次に目を開けた先は【狩人の夢】であった。

工房へと足を運ぶと運が良かったのか、それとも狙ってだろうか狩人がいた。

 

「貴方に話があって来た。」

 

「ふっ。良いだろう。ただ、少し待ちたまえ。落ち着いて話そうじゃないか。人形、お茶を」

 

そういうと狩人は俺を椅子へ座るように促し、人形にお茶を淹れさせた。

お茶が自分と俺の手に行き渡ったのを確認すると

 

「さて、話とはなにかな?」

 

そう話をするように促した。

 

俺は今回のクエストの経緯を話した。すべてを話した上で告げる

 

「ここはどこだ?【空間を繋ぐ魔法】で転移した地球にある場所なのか?」

 

「【夢】だよ。紛れもなくここは【狩人の夢】さ。君の夢を苗床に私が創った。狩人に必須の【夢】。それがここだ。そう、ここは…ね。

と言ってもここは確かに存在はしているんだ。私も人形もね。夢でもなく、現でもない。それがここだ。」

 

「分かりにくいな」

 

「君という狩人の夢を媒介に私という神格が造り出した小さな箱庭。それがここさ。」

 

「つまり俺が住んでいる地球とは時間的な繋がりも空間的な繋がりもない、と?」

 

「強いていうなら君が繋がりだよ。」

 

「なるほど。なら貴方はゆえ子が言っていた洞窟の奥の【空】については知っているのか?」

 

俺の質問に対し狩人は

 

「知っているよ。」

 

「ッ! なら…」

 

「しかし、君に教えてやる義理もない。それは君が自分の目で確かめることだ。

なに、嫌でもそのうち知れるさ。」

 

「話してはくれないのですね。分かりました。そろそろ向こうに戻ります。」

 

手元にある紅茶を飲み干し椅子から立ち上がる。

 

「そうだ。狩り道具の整備はすべて終わっているよ。」

 

思い出したかのように狩人がそう告げる。

 

「わざわざ直してくれたのか。ありがとう。では、これで」

 

狩人に礼を告げ再び目を瞑りながら頭に逆さに吊られた男のマークを思い浮かべ【夢】から覚めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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