私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜 作:リューラ
1話を加筆修正しました。9/3追記
朝、か。ベッドから降り身支度を手早くこなし学園へ向かう準備をする。今日からはノコギリ鉈とアンティーク銃…獣狩りの散弾銃も持っていく。
学園生はクエストがいつでも受注可能なように武器が必要な者は申請することでその武器を携帯出来るようになる。水銀弾を作れるようになったことで使用可能になった散弾銃をホルスターに格納し腰につける。ノコギリ鉈も折り畳んだ状態で刃の部分に覆いをかけ大きめの鞄に入れて持っていく。
ま、一応散弾銃は通常弾薬も使用できるんだけど年代が年代のためグリモアの購買部といえども確保に時間がかかるらしい。しかも確保したところで水銀弾ほどの効果はないらしい。とはいっても製作に自身の血液が必要であり大量生産に向いていない水銀弾の弾薬節約をするためにも通常弾薬の確保は必要だ。
散弾銃だし至近距離からの攻撃ならそれなりに効くだろう。たぶんノコギリ鉈で斬る方が威力高いだろうけど…それ言ったら俺が戦うより同行者に戦ってもらった方が効率的だからな…。
朝ごはんは昨日購買部で買ったパンをバターを塗りトーストしたもので済ませた。料理は簡単なものなら出来るが朝は眠くてやる気もおきない。でも自分で作れば智花のお弁当断る理由になるよな…。いや、自分で作るの大変だろう系ムーブがある以上下手なことはしない方がいい。いまだにこの間食べたお弁当はトラウマだ。しかし明確な回避手段がないため神頼みするほかないのも事実だ。
はぁ、また神凪のとこの神社にお邪魔しようかな。
そんなこと考えながら登校してたら智花と会ったので一緒に登校する。ついでにこの間の街でのクエストについて聞いておくのも良いかもしれない。
「…街であんなに魔物が暴れまわるなんて、ほとんどないことなんです。魔物は発生直後はとても弱く、街には人の目がたくさんあります。なので魔物は街など人がいるところでは成長しにくいんですね。歴史上では何度かあったことなので、運が悪かったんですね…」
「なるほど」
智花と話していたらデバイスに着信が来た。智花も同様のようだ。つまりはクエスト、か。
「あ、クエストが発生しましたね…魔物が発生すること自体は珍しくないんです。たいていは山や森の中、洞窟や…特級危険区域と呼ばれる場所なんですが」
「なんだその聞くからにやばそうなの…って神凪」
「あ、怜ちゃん、こんにち…」
「二人とも、すまない。急いでいるんだ。」
神凪はそう言うと俺たちをあとにした。
「…?怜ちゃんがあんなに慌てるなんて…!く、クエストの現場、神凪神社です。怜ちゃんの実家なんですよ!ま、待って、怜ちゃん!わたしも…」
「智花…神凪もう行ったから…。追いかけるぞ」
…
…
「神凪はクエストですか。まぁ、家が襲撃されているなら仕方ありませんねぇ。」
「委員長、なぜ隠せていたのですか?」
風紀委員としての活動をしていた氷川は一人の少女…水無月 風子へと質問を投げかける。
「神凪に会っちゃったら、風紀委員のよしみでついていかなきゃいけねーでしょ。」
「……?」
理解が及ばないのだろう。氷川は首を傾げる。
「いや、ウチとしても手伝ってやりたいのはやまやまですがね…これから調べなきゃなんねーことがあるんで。」
「調べる、とは?」
「街から離れてるとはいえ神凪神社は人が大勢訪れます。通常ありえない場所でクエストが発生しました。2連続ですよ。その原因が【わかっているかどうか】を、とりあえず宍戸 結希に尋ねます。」
「はぁ、しかしクエストは風紀委員の管轄ではないのでは…」
「いーですか。ウチは【ありえない場所で魔物が発生した】と言いました。学園内で魔物が発生した場合、まず対処するのはウチらなんです」
「……あ……」
「今までなら【そんなのありえない】ですがね。備えましょーよ。」
…
…
クエストの準備を終えて神凪神社のある森へと入る。今回は神凪はもちろん、智花や俺の他にも学園生が参加し総勢6人となっている。
討ち漏らしを出さないために3つの班に分かれて行動している。この中で一番強いのは神凪のため俺は神凪と組んで行動にあたっている。それにしてもすごい。さっきから一人で木の幹にムンクの「叫び」のような顔を持つ魔物を一刀で斬り伏せている。魔法だけではない本人の剣の腕も相当なものだろう。
「…随分倒したが、魔力は大丈夫か?」
「特に問題はないぞ」
今回の相手は人面樹という魔物らしい。神凪曰く他の木に力を与えて分身し、人を襲うそうだ。
さて、そろそろ魔力タンクだけでなく自分でも動こうか。ノコギリ鉈と獣狩りの散弾銃を構え人面樹に挑む。ノコギリ鉈の変形機構を発動させ長柄の鉈にし遠心力をかけた一撃を見舞う。神凪のようにはいかないか…。しかし一応怯みはしたようだ。ならば、と左手に持つ散弾銃を口のような場所に突っ込み引き金を引く。重々しい発砲音を轟かせ散弾銃から水銀弾が発射される。
さすがの魔物もこれには耐えきれず文字通り木っ端微塵となり体を霧に変え消滅する。
「至近距離なら威力は上々、だな。」
近くにいる小型の個体に向かって散弾銃を放つがそこまで離れてもいないのに目に見えて威力が下がっているのがわかる。それでも一応衝撃は大したもので相手の動きを拘束出来ている。すかさず距離を詰め鉈で叩き斬る。
「射程はな…アンティーク物だし仕方ないと割り切るしかないかな。一応衝撃で相手止めれるし…」
ダメージ自体はほぼなさそうだったがな!
「渡、念のため確認するが、魔力は枯渇していないな?」
「え?あ、すまん。戦闘に集中してて減ってることにも気づかなかった…」
「なるほど。頼もしさの理由がわかる。私ももう気にしないことにしよう危なくなったら言ってくれ。」
そういいながら神凪も俺も周囲の警戒を怠らない。
神凪がまた大きい個体を見つけたようだ。
「…ふむ。二体目だな。少し奇妙だ。」
「なにがだ?」
「いや、この間隔で配置されているなら、本体はすぐ近くのはずだが…神社まではまだ距離がある。離れたところに分身を作るには力が必要だ。人面樹が誕生したと推測されるのが二日前。そこまでの力はまだないはずだ。…とにかく斬ろう。時間を無駄には出来ない。」
大きな個体へと飛び出した神凪に続くように取り巻きへと攻撃を仕掛ける。今回はやってみたいこともある。折り畳んだ状態でノコギリ状の刃による連撃を叩き込み1体を撃破。さらに近くにいたもう1体に対して変形機構を作動させながら思い切り振り抜く。振り抜き自体の遠心力に変形時の遠心力も加わることで威力を増したことで人面樹は半ばから断たれ消滅した。最後の1体は枝で攻撃してきたところを鉈の攻撃で反らし近づいたところで散弾銃を至近距離で発射し仕留めた。
こっちが小型を撃破している間に神凪も2体目の大型個体を撃破したようだ。どこか被弾した様子もない。散弾銃に弾を込めながら先に進む。戦闘中にもスムーズに装填でるように練習だな、これも。
ようやく境内へとたどり着いた。本体も近いだろう。
「…ふうっ。」
「神凪?疲れてるなら少し休むか?」
「大丈夫だ。休憩が必要なほど疲れてはいない。どちらかというと恐れているんだ。家族の避難は万全だという連絡だが…それが間違いで、もしかしたら命を落としている者がいるかもしれない、と。人面樹がすでに太刀打ちできないほど成長しているのではないかとな。クエストの時はいつもこんな心境だ。まだまだ精進が足りない証拠だよ。」
弱音を吐露するとは、いや、神凪も人間だ。家族のいるところが襲われて心配にならないようなやつなんていないだろう。
「…とはいえ、私は襲われているかもしれない家族を助けに来たんだ。ここまで来て立ち止まっている理屈はないな。すまないがあと一息だ。サポートを頼む。終わったら茶でも飲むか。今回の礼にねぎらってやろう。お前には随分と助けられたからな。当然のことだ。」
「俺たちの勝ちは揺るぎないけど、一応まだ終わってないからな。」
「…ふふ。そうだな。まだ早いか。おかげで落ち着けた。ありがとう。では行こうか。すぐそこだ。」
「りょーかい。」
最後の人面樹は他のよりさらに大きいな。ただ、取り巻きも居ないみたいだ。
神凪と俺は二人同時に飛び出し人面樹の攻撃を左右に分かれて回避する。神凪は枝の攻撃を刀で斬り落として相手の攻撃手段を削っていく。俺はそんな器用なことができないので大振りな攻撃を誘いそれを避けてから腕のような枝にへと散弾銃を押し当て発砲し砕き割る。これで大きな枝からの攻撃は来ないな。一旦距離を取りながら散弾銃の空薬莢をリリースし新たな弾を装填しておく。
少し手間取ったか。神凪に攻撃が集中してきてるな。
しかし、相手の裏を取ることができたのでそのままノコギリによる連撃を繰り出す。袈裟斬りからの変形機構を使った振り払い。さすがにこちらを向いてきたので散弾銃を構えながら
「神凪!動きを止める。決めろ!」
神凪にそう言いながら散弾銃を放つ。空中で無数に別れた弾丸は人面樹の幹にへと殺到し高い衝撃をもって動きを阻害する。
その間に近づいた神凪は天の構えからの切り落としが人面樹に決まり消滅した。
そのあと境内などを見回り分身がいないかを確認していく。
「…うむ。どうやら分身はこれ以上いないようだ。分身と本体の距離が離れていたのが気になったが…杞憂だったようだな。いちおう報告はしておこう。もしかしたら見落としなどがあるかもしれん。よし。ではこのクエストは終了だ。学園に戻るぞ。」
「つっかれたー。」
雑談などを交えつつ神凪と学園に戻る。もちろんまだ報告などやることは残っている。
…
…
…
生徒会室で今回のクエストの報告を終えると神凪はクエスト後であるにも関わらず授業へ戻ってしまった。
俺はというと夏海のときも一応は戦ったとはいえ、武器や銃器を本格的に運用したのは今回が初めてだったため身体に疲れが溜まっている。素直に部屋に戻って休息を取らせてもらおう。
…
シャワーなどを済ませてから部屋に戻り、着替えるのもだるかったのでそのままベッドに入り目を瞑る。意識が薄れて行き…
次に目を覚ませた時俺は地面に寝ていた。ベッドに落ちたというわけでなくまずここは学園ではないだろう。俺の格好もいつの間に変化したのか制服から狩装束になっている。
回りを確認する。庭、なのだろう。俺が倒れていたところを含めかなりの場所に同じ花が咲いている。所々に墓のような物があるのが気になる。今いる場所は少し坂になっていてその先には一軒家がある。
確かに寝たとは思うが体感的に1時間かそこらのはずだ。昼前には帰っているからまだ昼間のはずだ。それにも関わらず上空には綺麗な満月が浮かんでおり灯りもないのにこの場所全体を明るく照らしてくれている。
警戒しながら家の扉の前に立つ。すでに扉は開いていたので中を覗き見る。一人の背の高い女性が立っていた。彼女はこちらに気づいたのだろう。近づいてくる。
「はじめまして狩人様。私は人形。ここ、狩人の夢にて貴方に仕えるためにいます。」
「は、はぁ?」
話を聞くに彼女は狩人となった俺に仕える存在らしい。詳しい話は「わからない」の一点張りで結局薄気味悪さが募っただけだ。しかし、実家の荷物に混じっていたノコギリ鉈や散弾銃、魔導書はどうやらここから送られてきたということがわかった。
狩人の夢の使者と呼ばれるどう見ても魔物っぽかったので攻撃しかけたがノコギリ鉈を振り上げた直後に水盆の中に隠れてしまった。直後に人形にそれは魔物でないと諭された。
使者たちは俺に一冊の本と2つの木箱を渡してくる。それを受け取り中を確認する。
まず本の方にはヤスリというエンチャントアイテムの作り方が書いてあった。また、ノコギリ鉈や散弾銃の整備方法も事細かに書いてある。大部分が空白のページなのが気になるが…
そして木箱だが開けると西洋の装飾を施された剣が一本あった。なんというのだろう両刃剣と言うべきか?鞘に入っている方とは逆側にも小太刀ほどの長さの刃がついている。柄を回すことで分離も出来るようだ。鞘から刀身を抜くとその装飾とは裏腹に先ほども見た片刃の…刀となっていた。どちらの刀身にも魔方陣のようなものが彫ってあるのが見てとれる。
もう片方の木箱も開けてみる。中には二連装になった銃身の機械的なデザインが見てとれる銃があった。2つの武器を見ていると先ほどの魔導書が仄かに光る。何事かと本を捲ってみると空白だったページに新たに「落葉」と「教会の連装銃」の整備方法などが記載されていた。どうやら武器が増える度にここのページが埋まっていくようだ。
…なんだ?急に眠気が。
急速に意識が落ちる。次に目を覚ますとベッドの上にいた。ベッドの足元には狩人の夢でもらった魔導書と落葉と連装銃が置いてあった。
「夢じゃない…か。俺は一体?」
ということで最後で狩人の夢を出しつつ、落葉及び連装銃が新たに主人公の、武器に加わりました。落葉は当面出番なしです。落葉と連装銃にした理由ですが落葉は主人公の狩装束をマリア様と同じようなものにしたため、連装銃は作者の趣味です。他の武器も登場の余地はあるので要望来たら検討するかもしれないです。
感想、アドバイス等お待ちしています。