私立グリモワール魔法学園〜狩人は夜明けを求めて〜   作:リューラ

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では第9話です。ももちゃん回ですね。ストーリーどんどん消化していこうと思います。
UAももう少しで1500くらいいきそうなのです。こんな作品ですが見ていただいて光栄です。これ1話の前書きに書くべきですね…


もも、出動します!

「なんか!無性に!パンが!食いたい!!」

 

「はいはい、パンなら購買部に…ってもういないし」

 

ということで朝からなぜか無性にパンが食べたくなった俺は突然カミングアウトされた上に無視られた夏海をあとに購買部に足を運んだ。朝のHR始まる前に戻らないといけないしね。

 

「いらっしゃいませ、先輩!」

 

「朝から働いてるんだなももちゃん。はよ切り上げて学業戻るんだぞい」

 

「そういえば、先輩のお噂、聞いてますよ。転校早々、クエストを3回もこなしたって。

最初はみんな、魔物と戦うのを怖がるんですよね…大けがの危険があるので。

だから先輩、とっても勇気があると思うんです!」

 

「ありがと、というか年は上だけど俺の方が後から入ってるしなんで【先輩】呼びなの?」

 

「あ、【先輩】って、この学園ではよくある呼び方なんですよ。

転校してくる年齢がみんなバラバラなんで、先輩後輩の区別が難しいんです。

だから年上だってわかってる人のことを先輩って呼ぶんですよね。

だから先輩も、先輩なんです…あ、すみません、なにかお探しですか?」

 

せや、パン買わなきゃ

と思ってたらももちゃんのデバイスに着信が入ったようだ。

 

「あ、バイト先からですね。すいません、ちょっと失礼します…

もしもし…えっ?て、店長? 店長!?

…………嘘。…魔物が…また、街に…

せ、先輩、どうしましょう…あ、あたしのバイト先が…すいません! あたし、行かないと!」

 

急いでクエストの受注へ向かおうとしたももちゃんは思い出したように俺の方を向き直る。

 

「…あの…こんなことお願いできる立場ではないんですけど…も、もしよかったら、先輩のお力をお借りしたいんですが…!」

 

「バイト先が心配なんでしょ?なら、早く行こうか」

 

可愛い後輩のお願いを断る先輩なんて居るわけねーよなぁ?

 

 

 

 

 

なんというか酷い状況だな。

今回の魔物はビックマウス。その名の通りネズミの巨大化してキモくしたような魔物だ。

建物の至るところに大きな齧り跡がついている。間違いなく魔物がしたものだろう。

 

「うう…ネズミかぁ。あたし、苦手なんですよね、ネズミ。

あたしがっていうより、飲食で働いてる人はみんな苦手だと思います…」

 

やっぱり大変なんだな飲食業…

 

「でも大きいから、急に死角なら出てくるということはないので…そういう意味での心配はありませんね。そういう意味での心配はありませんね…心臓に悪いんですよ。」

 

「今回の魔物の出現位置はバイト先に近いんだっけ?」

 

「あ、はい。勤務先はファミレスです ちょっと大通りから外れたところの。

チェーン店なので知ってると思いますよ。意外とオイシイあのお店、です。

店長さんたち、どうでしょうか。避難できたでしょうか…

ネズミって動きが速いんで、今回は犠牲者も出てると聞きました。」

 

視界の端で何かが動く。

 

「大丈夫かな…ひゃっ?あ、な、なんでいきなり手を…」

 

「ん、敵」

 

ももちゃんの手を引き大ネズミの攻撃を避け、ノコギリ鉈で斬りつける。しかし浅かったようで相手は今も動き回っている。

 

「ああっ! お、大ネズミですね!すいません、気づきませんでした。 行きます! 」

 

動きが速いな。ももちゃんも魔法を放っているが中々当たる気配はない。

 

「ももちゃん。俺が相手の動き止めるからトドメよろしく」

 

自分で追撃しても良いけどさっきみたいに浅かったりするとまた逃げられるかもしれない。なら確実に倒せるように動く。

 

スローイングナイフは使わない、というか使えない。投げる練習したけど難しかったよあれ。

ということで左手で散弾銃を腰のホルスターから抜き発射。大ネズミの動きを止める。すかさず放たれた魔法をモロに受け大ネズミは消滅した。

 

散弾銃のリロードを終え再度動き出す。さっきのこともあるし慎重に行っていたが

 

「うー…先輩! 歩くの遅いですよぅ!

早く街からモンスターを追い出しましょうよ!

早くしないと、あたしがアルバイトできないんです!

この街には、あたしがバイトしてるコンビニもファミレスもあるんですから!

この街が機能しないのは、あたしにとって死活問題なんです!」

 

「す、すまん。ちょっと慎重過ぎたかも…」

 

「…って、なんか今の自己中みたいな言い方になっちゃったっ!?

あうあう! ごめんなさい違うんです! イライラいてただけなんですーっ!」

 

「気にしてないから…そういえば、ファミレスにコンビニってももちゃんいくつバイト掛け持ちしてるの?」

 

「へ? あたしがしてるバイトの数ですか?

どしたんですか急に? んーと、そですねー。

今はコンビニとファミレス、新聞配達にあとゲームショップですね。

それらを適当にローテーションしてます。

1箇所だけだと飽きてしまうのでー。いろんな経験できて面白いですよ?」

 

「それプラス購買部もでしょ。よくやるよ」

 

「あはは! 心配してくれるんですか? でも大丈夫です!

身体には気をつけてますし、アルバイト、楽しいですしね♪ 」

 

「…なんでバイトをしようと思ったの?お金に困ってるわけじゃないよな。それならクエストを多く受注する方が効率がいいし」

 

「…確かに、学園に通っている限り、お金には困りません。

授業料も寮費も免除。クエストをこなせば報酬も出ますからね。

バイトが禁止されているわけではないんですけど、する人は少ないです。

あたしがアルバイトをするのはお金のためじゃないんです。

理解できないって、よく言われますけどね。

でも誰にだって、他人にはわからない好みやこだわりってあるじゃないですか。

あたしの場合はそれがバイトってだけだと思ってるんです。

言いかたは変ですけど、あたしの欲を満たすためにバイトをしてるんですよね。

お金ではなく、いろんな人と接して笑顔が見たいっていう理由は変でしょうか?」

 

優しい娘っていうのもあるんだろうけど…魔法使いは人の役に立たねば、か…魔法使い自体がある種の洗脳、というより刷り込みをされている感は否めないな。特別な力に目覚めた人間というのは見方を変えれば化物だ。ならば俺たちは対外イメージを良くするべきだし仕方ないと言えばないんだろうけど…

 

 

「もう、バイト先のすぐ近くです。ここの角を曲がったら見えます。

大ネズミも確認されているのはあと二匹。今までと同じ強さなら…

大丈夫です。みんなちゃんと避難できているみたいだし。

ちょっと建物に被害は出ちゃってますけど、ものは直せますからね。

あたしはこの街の人たちが好きです。

だから、あたしの力が役に立つなら惜しまないです。

みんなの笑顔が見れれば、それで幸せですから。」

 

無駄なことを考えるのはやめよう。彼女は自分の意志で他人のためにがんばろうとしている。ならば応援こそすれ、俺の勝手な考えを押しつけるのは彼女に失礼だろう。

 

ももちゃんに魔力を送りながら残りの大ネズミをどう狩るかを考える。

 

「魔力をいただいてすいません。 でも、ありがとうございます。

絶対に…大ネズミを倒して見せます!

見えました! うちのお店のすぐ近く。まだなにも壊れていない…!

今のうちに倒しちゃいましょう!

よろしくお願いします! 行きます! 」

 

相手にも気づかれたか。二匹の大ネズミはももちゃんを確認すると同時に左右から襲いかかってくる。

俺は一匹に向け散弾銃を放ち動きを止め、ノコギリ鉈で足を斬り落とす。これで機敏な動きの抑制ができる。その間にももちゃんは炎系統の魔法でもう片方を撃ち抜き消滅させる。俺は後ろに下がり、ももちゃんは俺と魔物の間に入る。こうすることで男としては完全に落ち度しかないが目の前のものを襲いかかる魔物はももちゃんの方に向かうので俺は安全ということだ。

 

しかし、魔物はももちゃんに襲いかかろうとせず切り落とされた足をものともせず機敏に踏み込むと俺の方に向かってくる。

迎撃…間に合うか?ももちゃんも魔法を放っているが間に合うかどうかは賭けだ。

 

間に…合え!

 

パァン!

 

危なかった。魔物に噛みつかれるギリギリのところで懐から取り出した連装銃でなんとか消滅させることができた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。かなりギリギリだったけど」

 

「ああ、よかった。途中で大ネズミが先輩に向かったから…

とどめが間に合ったみたいでよかったです。

でも少しでも傷ついてたら、椎名さんに見てもらった方がいいですよ。

まだ魔物の生態は完全に明かされていません。もしかしたら毒があるかも。

…おかしいですね。魔物が目の前の敵より遠くを狙うなんてなかったのに…

知能があるのはわかってたんですが、そこまで賢くはなかったんです。

まさか、学習してるなんてことはいえ、そんな。

と、とにかく報告しましょう! 幸い、バイト先には傷一つついてませんし!

よかったです! ありがとうございました!」

 

学習してる、か。だとしたらかなり面倒なことになるな。

 

 

 

 

後日俺は街にいた。実はクエスト中にももちゃんにバイト先に遊びに来てくれ、と誘われてしまったしなによりこんな状態だ。単純に心配だったのもある。

バイト先はこの近くの…と噂をすればなんとやら、だな。

 

「ふぅ…バイトしゅーりょー! 今日は人もあんまり来なくて寂しかったなぁ。

やっぱり大ネズミの件、あとを引きそう…あれ、先輩?

奇遇ですね! こんなところでどうしたんですか?

もしかしてあたしのバイト先でご飯なんか…」

 

「あんなことの後だし、心配でね。ちょっと見に来た。」

 

「あ、心配で。そうですか…

い、いえ、心配していただいてありがとうございます! でも…その…

ほら、ご馳走するってお約束したじゃないですか! だから来たのかなって!

あたし、ファミレスで働いてる時…ずぅっと待ってたんですよ!?

あ…でもごめんなさい。今日はおもてなし、できないんですよ…

単純に、あたしのシフトがついさっき終わっちゃったんです。

なんかバイト先に先輩と一緒で入るのもお恥ずかしいというか…えへへ…

あと勤務時間以外だと、店員割引が効かないんですよ!

ですから、また今度、あたしが働いている時間にお越しください!」

 

「ほいほい、気が向いたらな」

 

「さて…なので今日は帰るつもりですが…先輩も寮ですよね?

ではご一緒しましょう! あ、そだ…ちょっとブティックを覗いていいですか?

帰り道の、あそこにあるお店です! 」

 

知ってるこれ。断れないやつな…

 

 

 

「はふぅ~…いやいやぁー堪能しましたよー。

ウィンドウショッピングなんて、すっごい久しぶりですもん!

お付き合いいただいてありがとうございます! えへへ…

先輩って頼りがいがありますよね! すごく頼もしいです!」

 

「どーいたしまして。」

 

女の子すごい。体力無限かな?楽しそうだし別にいいんだけど。

 

「…それにしても、この街の復興、早いですね。

つい先日まで、モンスターだらけだったなんて想像できないですもん。

まあ、それだけ人がモンスターに耐性がついたってことでしょうけど。

人って、嫌な状況におちいっても、案外すぐに慣れるものなんですよ。

それでも大ネズミが不潔っていうのはファミレスの評判に響いたんですけど…」

 

自分から地雷を踏むのか…

 

「…あー! あたしからしておいて申し訳ないですが、やめましょうこの話!

もっともっと楽しい話をしましょうよ! …そですね、例えば…

先輩って、彼女とか、気になる女の子とか、いるんですかぁ…? 」

 

また答えにくい質問を…

 

「彼女はいないぞ、というかいたことがないぞ。気になる女の子…夏海とかいつどんな写真撮ってるかわかったもんじゃないから常に気にしてるぞ。」

 

「先輩、そうじゃなくてですね」

 

 

 

買い物も終わり女子寮の前に着いた。いや、はぐらかせるのめっちゃ大変だった。

 

 

「ふぅ…今日はありがとうございました。楽しかったです♪

結局、あたしは先輩をおもてなしできていないのが心残りですが…

まぁ、また機会はありますよね♪

好きな人の質問、うまい具合にはぐらかされちゃったし…

次の機会に根掘り葉掘り聞いちゃいますからね~!

だから先輩! 絶対に、またバイト先来てくださいね!

しっかし、あれですねー。今日みたいに先輩とデートできるのなら…」

 

「なん…だと」

 

「で、デートです!これはデートなんです! それ以外に何が…」

 

「それ以上はやめるんだ。風紀委員にしょっぴかれるぞ」

 

「わぁっ! じょ、冗談ですよ冗談! デートじゃなくていいですってばぁ! 」

 

あ、今日のやつ風紀委員に見られてるんだよな。いや、大丈夫なはず、そこまで判定クソじゃないと信じて…

 

 

 

夜、もあっとに風紀委員長である水無月 風子から連絡が来た。

 

どーもどーも。清く正しく生きてます?

 

アンタさんの噂が少し広がっていたんで連絡したんですが。

 

ええ、氷川も神凪も現場を目撃しているようで

 

女生徒との密会やデートの常習。

 

まあ行為まで及ばなければいいんですが、氷川と神凪がうるせーんですよ。

 

要するにですね。誤解されるような行動は慎めっつーことです。

 

自覚がなかろうが、周りは気にしてるんですから。

 

ウチにしてみれば見つからなきゃだいじょーぶですよ。がんばってステルスしてくだせー。

 

 

 

 

 

 

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