TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐   作:神乃東呉

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王女の来日

 この日、集まった一同は全員がとある国の政府関係者たちだった。仕立ての良いスーツに身を包み、左腕には最高級の装飾で彩られた腕時計を付けて、本革の革を縫い合わせた一足数十万円はくだらないであろう革靴…そのすべてを合わせても辿り歩く長い通路に彩られた金色の外壁には遠く及ばなかった。

「よろしいですか、ミス・ゼットン…ここでは一切の気の緩みさえも許されない“聖域”です…本来、かの方々は外界との接触すらも拒む厳格な決まりの上で成り立ってきた民族…少しでも不敬と見なされたら“外交”の失敗です」

「わっ、わかりました」

 そんな政府筋の役人たちが重々しい足取りを進める中、一段の中で唯一の女性であり、ゼットン星人の怪獣娘であるGIRLS東京支部の支部長ことミス・ゼットンが不安な面持ちで精一杯役人たちの話に合わせようと努力していた。

 やがて独特な太陽壁画のようなシンボルマークが刻まれた大扉の前に辿り着くと左右から近衛兵と思しき恰好の男性兵士が互いの手に持つ大槍を交差させ大扉を塞いだ。

「これより先は神聖な領域である…今しばらく待たれよ」

 一団の行く手を阻む兵士たちの格好は現代の兵士の装いとは明らかに違う身なりだった。強いて言い表すならどこか原始的であり中世文明を匂わせる文化レベルだが…決してそれだけではない神秘的何らかの力が彼ら兵士だけでなくこの土地、この瞬間、この状況こそにただならぬ雰囲気があった。

「……たった今、陛下より貴公らの入場が許可された…一人ずつ足を踏み入れよ!」

 兵士たちの交差する大槍が開かれたと同時に重たい大扉がゆっくりと開かれて扉の先より黄金の大広間がその姿を現した。

 一団の中で唯一場に慣れていないミス・ゼットンは驚きのあまり部屋中を見渡し眺めてしまうほどに見とれてしまいそうになった。

「平服せよ!インファントの女王、サラナ・メイ・フツア殿下の御前である!!」

 一団に対して薄向こうのカーテンに輪郭だけ見られる謎多き国の国家元首たる女王が居ることを暗示してか傍らの女性宰相が全員に跪けと大手を振ると一団はその声に合わせるかのように全員床に伏せて地に額を付ける独特な挨拶で一礼を尽くした。

「くるしゅうない…表を上げなされ」

 薄カーテンを挟んで輪郭の中の女王陛下と呼ばれるサラナ女王が一団に伏せた頭を上げるよう許可が下りると全員が安堵したように息を整えて表を上げた。

「ほう…見慣れぬ御方がおりますね…その方、娘君殿…なんと申すか?」

 サラナ女王陛下に呼び上げられたミス・ゼットンは自らの素性を明かそうと立ち上がった。

「はっ、はい!手前勝手ながらわたくしはゼットン星人が怪獣の魂を宿し者、名を『ゼットン』、予てより女王陛下へのお目通りを願いまして怪獣の魂を宿し者たちで結成された『GIRLS』の代表として馳せ参じさせていただきました」

 ミス・ゼットンは腰から胴体を倒して90度の角度まで身体を曲げての最敬礼で挨拶を交わした。

「ほう、貴公がくだんの怪獣の魂を宿し娘君たちを束ねる長が一人ですか…話は我が方の大臣を通じて伺っております」

「はっ、はい!女王陛下の御威光の元、お願い申し上げるためこの場に馳せ参じまいった次第であります」

「ほう、それはいかなる用ですか?」

「合衆国より管理される禁忌の録の閲覧、この録を我がGIRLSになにとぞ拝見の許可をいただきたく!」

 ミス・ゼットンはアメリカ合衆国が管理して、サラナ女王陛下がその許可の有無を決定する重大な案件の許可を得ようとした途端に広間を囲む兵士たちが一団に武器を構えてきた。

「貴様!女王陛下に恐れ多きことを!!」

「おやめなさい、レオーナ近衛団長…その剣を客人たちに向けるとあればインファントの恥と知りなさい」

「はっ、申し訳ございません 女王陛下」

 兵士たちの中で最も位の高い女性兵士をサラナ女王が宥めて場を収めた。

「娘君の長の方よ…よいでしょう、禁じ録の書の閲覧を許可いたします…が、それを許す前にこちらとしても条件を開示いたします」

 サラナ女王はミス・ゼットンが求める内容に条件付きで許可を出してきたが…

「それはいかように…」

「我がインファントの王位継承を担う次期女王候補にして我が娘の日出る国への旅路までの案内を貴殿らに頼み致したい…引き受けてはくれぬか?」

 それはサラナ女王が女王として退位した際に次なる女王となる娘、すなわちこの国の王女が日本への来日を確約するという条件であった。

「めっ、滅相もございません!喜んでお引き受けいたします!」

 ミス・ゼットンは深々と女王陛下に頭を下げて条件付きであれど目的は達成されたのであったが…彼女には一抹の不安が腹を直撃してくる多大なストレスが加圧するかの要であった。

 それは…諸外国さえ慎重に扱う外交的事案に対してよりによってGIRLSの中でもとりわけ際立つ支部が鎮座する国への入国であるという事実…GIRLS東京支部の支部長である彼女には重責であった。

 時少し進んだ頃…GIRLS東京支部にてこんな話が広まっていた。

「インファント島?」

 聞き慣れない島の名前を聞かされたアキは首を傾げた。

「そうです、現在…“インファント”の名を関する離島は世界各地に存在します インドネシア領、ロシリカ領、ミクロネシア領、などなど様々な国と地域で管理された島が点在しますが…いずれも島民が住んでいるわけではありません」

 トモミはホワイトボード型のモニターを介して『インファント島』に関する情報をGIRLS東京支部の怪獣娘全員に開示して共有した。

「しかしながら『本来のインファント島』はその所在を始め、外部から一切の存在を秘匿された離島国家“インファント王国”なのです」

「離島なのに王国ってどういうこと?」

 トモミの言っていることに理解が追い付いていないミクが更に首を傾げた。

「インファント王国は合衆国政府を始め、指定保護国家に定められており所在も現状も情報の一切が遮断されている“幻の王国”なのです GIRLSの記録でも極端に少なく、最新の記録は1960年代頃の調査記録しか殆ど無いですが…古代インファント文明において鱗翅目の昆虫を信仰対象とする昆虫信仰が盛んだったようです」

「へぇ~…それがなぜ今わたしたちGIRLS東京支部に?」

 レイカはトモミの口から語られるインファント島に関する情報に関心を寄せながらもなぜ今になってそのような話が出てくるのか更に首が傾げた。

「それは…もう間もなく、そのインファント島の王国より日本への来日される王族の方が東京の各所を視察に来られるからです……つまり、このGIRLS東京支部にもその王族の方々が視察にいらっしゃるので…GIRLS東京支部は――大急ぎで大掃除なのですぅううう!!」

 あと数時間後に迫ったインファント島のインファント王国の王族がGIRLS東京支部を視察に向かいつつある中でGIRLS東京支部の怪獣娘たちは総出で掃除道具などを用いての大掃除に取り掛かっていた。

「なんでそんな重大なことが今になって伝わって来たんだよ!」

「支部長曰く急遽決まったらしいですが時差のことをすっかり忘れていたらしく、気づいたころには王族視察団が現地の空港に到着した頃だったらしいですぅう!!」

「ピグちゃん、これはどこ!?」

「それは備品管理室ですぅう!ミクミク、それはシミュレーションルームにお願いします!ザンザン、そこが終わったら視聴覚室をお願いしますぅうう!!」

 大慌てでトモミを通して的確な指示の下で全部屋の掃除が進められているが、刻一刻と迫ろうとしていたGIRLS東京支部への王族視察団が近づきつつあった。

「ピグモンさん!視察団の空港到着予定時刻は!?」

「あと3時間後ですぅう!」

 慌てふためく大忙しのGIRLS東京支部に更なる災いがトモミのソウルライザーからピリリリッ!と着信音が鳴り響いた。

「はい、GIRLS東京支部代表代理ピグモンです!…えっ、そんな…本当ですか!?…はい、はい…はい…わかりました…直ちに全員にお伝えします」

 連絡を受けたトモミは恐る恐るソウルライザーの通話を切って青ざめた表情を錆びついたブリキ人形がごとくガクガクと首が全員の方に向いた。

「王族視察団は外交車両で移動中…しかも、本来予定していた視察ルートを変更して真っ直ぐこちらに向かってきています」

「とっ…東京支部に到着するのは…?」

「外交車両での移動ですので…多く見積もっても、後……1時間後…」

 全員が青ざめる中、全員が最速で支部内の清掃を進める事になった。

「急げぇええ!!もう間もなく着ちまうぞ!!」

 慌てるベニオも同様にとにかく、早く、素早く、手早く、支部内の全フロアの清掃が進む中…

 

 

―キキィイイイ…

 外交ナンバーのリムジン車を中心に護送の警邏車両らがGIRLS東京支部の玄関前に到着して中から黒スーツ姿のシークレットサービスのようないで立ちの人種が一人一人違い、目元にサングラス、耳には無線のイヤホンを付けた男たちが中央に停まるリムジン車を囲み、ドアを開けて先に出てきたのは目つきの鋭い同じく黒スーツの男が降り立った。

「姫様、足元に御気を付けください」

 先に降りた黒スーツの男がリムジン車の車体より低く屈んで手を差し伸べると車内の奥に座する豪華な衣装で身を包んで顔を薄金箔生地のベールで隠された少女が黒スーツの男の手に触れてゆっくりとリムジン車から降り立った。

「バトラカ…ここがGIRLSですか?」

「はい、本来の御予定を前倒させていただきましたが…この組織が姫様に御無礼を働くようでしたら即刻国連に追及を表明いたします」

 目つきの悪い男は更に目つきが鋭くなってGIRLSが“姫”と呼ぶ少女にもしもの事態を引き起こさせたら潰すと言わんばかりの決意に満ち溢れた憤怒の感情が烈火の如く煮えたぎっていた。

「バトラカ、その考えこそ御相手に失礼です…フツアの戦士たるあなたこそインファントの名に恥を塗りますよ」

「はっ、申し訳ございません…慎み致します」

 露骨に感情をあらわにする付き添いの男“バトラカ”を言葉で鎮めたインファントからの姫君は可憐な足取りを一歩前進させると全方位からシークレットサービスの屈強な男たちが周囲を警戒しながら彼女に付き添いGIRLS東京支部まで向かって行った。

 

 GIRLS東京支部のエントランスの自動ドアが開かれるとロビー内から既にGIRLS東京支部に所属する怪獣娘を始め、怪獣娘ではない女性職員までも来訪者を総員で出迎えた。

「よっ、ようこそ!国際怪獣救助指導組織、通称GIRLS東京支部にようこそお越しくださいましてありがとうございます!代表代理ピグモンこと岡田トモミと申しますぅ!」

 先陣きってトモミはGIRLSの代表者として誰よりも先に前へ出て来賓の姫君へ挨拶を交わした。

 姫君は無言で頭を下げ、挨拶を返すと自ら手を差し伸べてトモミに握手を交わそうとしてきた。

「あっ、ありがとうございますぅ…痛っ!」

 トモミも握手で返し交わそうとした瞬間、彼女の手は強い衝撃と共に弾かれた。

「下賤な小娘よ、姫様の御手に触れるな!」

 弾いたのは付き添いの目つきの鋭いバトラカだった。バトラカは姫君の目に立ってトモミとの間を遮るとシークレットサービスの屈強な男たちが姫君の全方位を囲み隠した。

「ヒィイイッ!もっ、申し訳ありません!!」

 無礼なことをしたと勘違いしたトモミはいち早く謝罪をしたが…

「バトラカ!無礼はあなたです わたくしから御挨拶を示したのにその方の御手を弾くなど赦されませんよ」

「はっ、申し訳ございません…が、ここはインファントとは違います 気安く他者との接触はなりませぬ故お許しください姫様」

「バトラカ!わたくしの言う事が聞けませんか?…人と触れ合えぬ道理など必要ありません……先ほどはわたくしからお差し伸べたにもかかわらず、御付きの者が失礼いたしました」

 姫君は深々と先ほどの御辞儀よりも深く頭を下げてトモミに謝罪してきた。

「いっ、いえ…こちらこそ御気に触れてしまわれたようですので…それでは早速。当施設をご案内させていただきます」

「いえ、その前に…皆さんへの御挨拶をさせてください」

 そういうと姫君はトモミの後ろで立ち並ぶ怪獣娘たちへ近づいていき、一人一人に挨拶を交わした。

「どっ、どうもっす!レッドキングの歌川ベニオっす!」

「ゴモたんことゴモラの黒田ミカヅキやでぇ~よろしゅう!」

「ミクラスの牛丸ミクっす!よろしくっす!」

「うっ、ウインダムの白銀レイカです…初めまして」

 怪獣娘たち一人一人に挨拶が回っていくと最後にアキへと近づいてきた。

「あっ、アギラの宮下アキです」

「…あなたが…アキさん…」

「ふえっ?」

 ボソッと姫君がアキに向かって何かつぶやいたような小さな声がアキだけに聞こえた。

「すみませんが…御トイレの場所に案内してくださりませんか?」

「えっ、あっ…はい…こちらです」

 姫君にトイレがどこにあるか尋ねられたアキは仕方なく案内しようとすると…付き添いのバトラカとシークレットサービスの屈強な男たちもアキと姫君を囲い込んで一緒に行動を共にしてきた。

 やがてエントランス内の女性用トイレに迫ろうとしたが…

「じゃぁ、ボクは外で待っていますので…」

「あっ、あの~…日本の御トイレは難しいと聞いております!恥を忍んで少し御指南をお願いできませんか?」

「えっ?…難しいも何も、うちのトイレは全部洋式…」

「いいえ、わたくしの知るトイレとは違うかもしれませんので御付添い願えますか?」

 アキは姫君にトイレまで同行してほしいと懇願されたが…周囲の屈強な男たちに睨まれている状況下では断り切れなかった。

「姫様の御要望だ!お応えできないと申すか!!」

「ひぃ~!わっ、わかりました…」

 その中でも特にアキを強く睨みつける凶器のような視線を浴びせるバトラカを前にアキは怯んでしまい、思わず承諾してしまった。

「ありがとうございます では参りましょう」

「えっ?わわっ!」

 要望を受けてくれたアキを姫君自ら手を引いて一緒にトイレへと駆け込んで行ったのを見計らった屈強な男たちはバトラカを中心に女子トイレに背を向けて出入り口に巨体の壁が形成された。

「アギアギ、大丈夫でしょうか…」

「何か異様な光景やねぇ~」

 普段女性ばかりのGIRLS東京支部のエントランストイレの前を屈強な男たちが囲み塞ぐ光景に全員が動揺と困惑が広がっていた。

 

 一方、トイレ内では…

「ええっと、とりあえず特に普通の洋式なので…もがっ!?」

 トイレの案内をしようとしたアキに突然姫君は彼女の口元を清楚な白い手袋で覆われた手で塞ぎ、トイレの一番奥の壁まで詰めた。

「バトラカ~覗かないでくださいよ~……よしッ、聞こえていませんね」

 姫君は小声が付き添いのバトラカに聞こえないことを確認するとアキの抑えていた口元を放した。

「一体何を…もごっ!」

 解放された口で喋ろうとしたアキだったが、姫君は指先で再びアキの口を噤ませ、自身も口元に指先を差して“静かに”とジェスチャーをした。

「乱暴な真似をして申し訳ございません…わたくしはインファント島インファント王国第一王女のエリアス・メイ・フツアと申します…あなたにお会いすることを心から待ち遠しく思っておりました」

「えっ?ボクと…?」

 突然インファントの王女ことエリアスが自分に会いに来たと語られたことにどういうことなのか困惑するが…顔を覆い隠す金箔生地のベールが捲られるとエリアスの本来の素顔が露になった。

「おっ…王女様…ええっと…どこかで会いましたっけ?」

 エリアスの顔をハッキリと見たアキは少し見覚えのある顔立ちに見知らぬ感じがしない不思議な気持ちになったが…

「何を申されているんですか…鏡を見てください、ホラッ!」

 アキはエリアスに鏡を見る様に諭され、見てみるとそこに映った髪型は違うが、それ以外の顔立ち、目鼻立ち、輪郭に至るまで殆ど瓜二つと言っていいほどに同じ顔だった。

「ぼっ、ボクと似ている…どういうことですか!?」

「うふふっ、以前から御顔を拝見させていただいていましたが…髪色だけは少し違いますがそれ以外は相違ないと見て間違いありませんわね」

 確かに髪色だけは若干エリアスの方が明るい発色でどちらかと言えばアキがアギラに変身した時の方に似ている印象があったが、顔のパーツや背丈に至るまでが殆ど見分けがつかないほど類似していた。

「折り入ってご相談なのですが…一時だけあなたとわたくしで御姿を入れ替えていただけませんか?」

「えっ?なっ、なんで…ですか!?」

 思わぬ要望に驚愕したアキは更なる動揺が走る…それはつまりGIRLSの怪獣娘宮下アキがインファントの王女エリアスとして振る舞い、エリアスもまた宮下アキとしてGIRLSの怪獣娘宮下アキとして振る舞う、双方が入れ替わると言ったことをエリアスは求めているのであった。

「実は付き添いのバトラカたちには内緒にしていたんですが…わたくしの母君にして現女王陛下であるサラナ女王の命にして予言で『怪獣の魂宿し者たちが集う場にて極秘に交わりをかわせ』と言いつけられておりまして…すなわち私はあなた方の組みする集いに関わるようにとの御命令なのです」

 それはつまりエリアスがアキに扮してGIRLSの怪獣娘として秘密裏に振る舞うというのであった。

「どうしてそんなことを…あなたのお母さんが?」

「母君は女王が代々受け継ぐ予知能力で未来を見通す力があるのです…そして、その力は次の世代である私に継承されるのですが、その力を受け継ぐためには前代より課せられる試練を受けなければなりません…その試練を乗り越えた者が次期女王候補となるのです」

「その試練っていうのが…ボクと王女様が入れ替わるってことですか?」

「はい、それも誰にもバレることなく極秘裏に進めなければなりません! どうか、お力を御貸しください!」

 エリアスは深々と頭を下げてお願いするが…アキは判断に困った。

「でも…入れ替わりを貫き通せるかなぁ…」

「大丈夫です!ここまで殆ど口数を減らしていますし、顔もこの金色の顔隠しさえつけていれば顔を晒すことは殆どありませんよ」

「でっ…でも…」

「んんっ!…ここだけの話、この後で日本政府が催す晩餐会がございますので…そちらでは豪華なお食事が振る舞われますよ」

「うっ…ごっ…豪華な…食事?」

 エリアスの甘い囁きに惹かれたアキは思わず心が揺らいだ。

「あくまで明日までのほぼ丸1日…丸1日だけの御辛抱をお願いします…帰国前に再度こちらに向かうようバトラカに命じればスグにここへ戻って来られます」

「ほっ…本当ですか?丸1日だけ?」

「はい、その間はうちのバトラカをアゴで使っても構いません…適当にコンビニなる店でアイスなる物を買いに行かせても構いませんので…」

 やたら具体的な扱い例だが…聞くだけには魅力的で断る理由がないほどにアキにはメリットしかないようなことばかりであった。

「ううっ…本当に1日だけなら…少しくらい…」

「本当ですか、ありがとうございます! 早速こっちに来てください!」

「わわっ!?」

 アキはエリアスに背中を押し込まれて個室トイレに2人は隠れるとお互いの衣服を交換し合うことになった。

「あら、思ったより少し大きいですわね…うっ!むっ…胸が意外とお持ちでらっしゃるんですね」

「ボクなんかギリギリきついですよ…王女様も華奢なお身体なんですね」

 アキとエリアスは互いに異なる部分を再確認し合いながらも衣服だけを取り換えるとアキに扮するエリアスとエリアスに扮するアキ、一見では見分けがつかないほどお互いが入れ替わっても全く違わない姿になって見せた。

「ほら、どうですか?どこを見てもあなたソックリですよね」

「ううっ…ボクはちょっと自信ないです…バレませんか、コレ?」

「平気ですよ、バトラカって意外と鈍感ですからバレませんって」

 やけに自信満々なエリアスの言葉を渋々信じるしかないアキは乗り切れないままに入れ替わる覚悟を決めるしかなかった。

 

 トイレを出ると本来のエリアスの付き添いのバトラカがエリアスに扮するアキの前に立ちはだかった。

「姫様、用は御済みましたか?」

「ひゃっ!…はっ、はい…」

「…どうかされましたか?」

「いっ…いえ…」

 入れ替わって早々にバレてはいないがアキ自身がボロを出しそうになるもバトラカが見ているエリアスがエリアスでないことに一切気づかれていなかった。

「んんっ、バトラカさん この後のご予定は大丈夫ですか?」

「むっ、ここの組の者にしては話が分かるようだな…姫様、このあとは永田町で首相官邸にて総理との面会ですのでお急ぎください」

「えっ!?総理!?えっ、ちょ…まっ!」

 一切何も聞かされていないことに困惑するアキだが屈強な男たちに囲まれてバトラカに背を押されながらGIRLS東京支部を強制的に退場するされていった。

「えっ…ええっと、GIRLS東京支部にお越しいただきありがとうございます!」

 嵐のように過ぎ去っていった王女一行を見送ったトモミは深々と頭を下げると集められていたGIRLS東京支部の面々も頭を下げた。当然、その中にはアキに扮してGIRLSの制服を着るエリアスも手を振って微笑むように見送った。

(フフフッ…宮下アキ、あなたには申し訳ありませんが御姿を少しの間だけ拝借させていただきますね…母君の本当の命は“彼”に接触する事なのですよ)

 エリアスはアキに伝えた内容とは別に本来の真意を心に秘めたままアキとして振る舞うのであった。

「いや~すごい人たちだったね…」

「本当ですね…なんだか仰々しい感じがいかにもVIPって感じでしたし、ああいうのが国賓っていう方なんでしょうね…アギさんは一緒に居て見てどんな感じでした?」

「ええ、とても素敵な方々でしたわよ」

「でしたわよ?…なにそれ、あの王女様の真似?」

「ウフフッ…かもしれませんわね」

 言葉遣いは怪しまれても姿がアキそのものであるためエリアスであることに一切気づかれていないままGIRLS東京支部の面々はいつもと変わらぬ日常に戻っていった。

 ただ一人、アキに扮するエリアスを除いては…

―永田町・首相官邸―

 

「はわわわっ…」

 一方のエリアスに扮するアキは大変なことになっていた。良い様に言いくるめられてエリアスとして振る舞う事になったが…想像を超えて恐るべき状況になっていた。

「初めましてエリアス王女殿下…遠路はるばるようこそ日本国へ  改めまして内閣総理大臣の長谷川です」

 アキの目の前に握手を求めてきたスーツの襟元には菊花の金細工を赤紫色のモールに取り付けた衆議院議員記章が目立つ若干40代前後の男だった。

 その男が自らを『内閣総理大臣』と名乗るのは実際にその役職に務め、その役職に見合う表舞台で活躍し、その役職に求められるあらゆる政治的活動の数々をこなす“現職の総理大臣”であるこの事実が揺るぎようのないことだからである。

 そんな相手がインファントの王女でも何でもない自分が握手をするなど緊張感と罪悪感に押しつぶされそうになりながらも手を握らざるを得なかった。

(ううっ、ごめんなさい…本当はエリアス王女じゃないんですぅ…ただのしがない怪獣娘なんですぅ…)

 アキはベールに隠れた顔に涙目を浮かばせながらも王女としての振る舞いを身振り手振りでこなすしかなかった。

 

 

 場所が変わってアキが次に席に座された場は官邸内に設置された関係閣僚の議員たちが会議をする長机の場に総理大臣の長谷川を始め、テレビのニュースなどで見たことのある多くの議員たちが向かい合って座り、対面でアキとその周囲をバトラカを始めとした例の屈強な黒スーツ姿の男たちまでもが並んでいた。

「――それでは、日本政府はサラジアの復興支援に日本の建設企業の復興派遣と復興支援金の追加支援を表明するものとして…――」

 先ほどから続く会議の議題の中でもニュース内でしか聞いた事のない内容やGIRLS内でも滅多に聞いた事のないような目が飛び出るような金額の動きにアキは最早目が回りそうであった。

「以上ですべてとなりますが…王女殿下、何かご質問は?」

(質問!?何を聞けばいいの!?さっきから何か何までわからないし、何をどう言えば良いのかわかんないよぉ!!)

 突然、意見を求められたアキはあたふたとする中で真横のバトラカに目が移った。

「姫様、どうかなさいましたか?」

「あっ…いや…その…ばっ、バトラカ…さん?…何と言えばよろしいんですか?」

「…なるほど、わかりました。日本政府にはそのようにお伝えいたします」

 何かを理解したのかバトラカは代表して立ち上がり、手を後ろに回しながら胸を張って語った。

「日本政府側の御意思、しかと私どもの心に刺さり感銘を受けました…と姫様は申しておられます」

 さすがにそこまで伝えたつもりはないアキだったが、バトラカの深読みより良い感じにまとめられてアキもといエリアス王女の代弁者として事なきを得た。

(ふぅ~…何とか誤魔化せた…けど、コレがお姫様の仕事なのかぁ…知らない土地どころか知らない国でこんなことをするはずだったなんて王女様も大変だなぁ…)

 改めてエリアス王女の凄さが身に染みて感服させたれたアキだったが…

 一方のエリアス本人は…

「よっし!今後GIRLSも更に良さを見せられるように特訓だ!!」

 ベニオの指導の下、インファントからの使者が去った後になって更なる組織としての磨きをかけるために集められた所属の怪獣娘たち全員参加のトレーニングに回された。

「うぅ~つらい~!」

「ミクさんが音を上げるレベルなら私なんて死んじゃいますよぉ~!」

 新設された怪獣娘たちでも自由にかつ鍛錬にも励める運動能力向上を目的に改築したトレーニングルームには様々なアスレチック型のトレーニングポイントで怪獣娘たちの強化が施されつつあった。

「とおぅ!…はっ!…いよっと!」

 そんな中、エリアスはアキのトレーニングウェアに着替えてGIRLS東京支部が誇る怪獣娘強化アスレチックを難なくこなしていた。

「すご~い!アギちゃん…どうしちゃったの!?」

「なんだか普段のアギさんとは一線を画して軽い身のこなしですね」

 ミクたち大怪獣ファイトを主戦場とする怪獣娘を始め、運動の得意な怪獣娘も、そうでない怪獣娘も驚愕するほどに施設内に設置されたアスレチック型のトレーニングは並みの怪獣娘でも音を上げるほどにハードな設定で作られている。飛んだり跳ねたりの運動を想定したこともさることながら、指先の力も必要とするボルダリング用のセメント場に体力スポーツ番組のようなマニアックなアスレチックさえも軽々と乗り越えていた。

「ふむ、まぁまぁですね…少し物足りないかと…」

「ほっ…本当にアギちゃんなの!?…今日は本当にどうしちゃったのさぁ!?そんな強者オーラが滲んでたっけ!?」

 明らかにいつものアキでは無いような気配に驚きを隠せないミクたちは目を丸くしていた。

「うひゃぁ~アギちゃんすごいや~ん!ウチが見込んだとおりやでぇ!アギちゃんはやればできる子や~ん、ウリウリ~!」

「あら?」

 アキだと思い込んでいるミカヅキはアキに扮するエリアスに抱き着いて体をいつものようにまさぐるかのような手つきでまじまじと触れ回ったが…

「ウリウリ~……あれ?…なんかいつもと触り心地が違うようなぁ…なんかいつものムニムニ感がないというか、硬いというか…あるはずのもんがない感じがするぅ~?」

 普段から触り慣れているアキのフォルムをしっかりと脳内に焼き付けているミカヅキには違和感が過っていた。

 それに恐れていた事態に直面したエリアスはドキッ!と心臓が大きく鼓動すると同時に身体がビクッと反応を示す通り、もうすでにバレそうになっていることに驚いた。

「なっ、なんのことでしょうか?…うふふッ、そんなところを触られても擽ったいだけですよ…ほら、こしょこしょこしょ~」

「ファアッ!?なっ…なんやこの感じ…こんな…アギちゃんに…アギちゃんにぃ…こんなえげつない手練手管なテクがあったなんてぇ~ええ…ゴロロロロッ~」

 エリアスはミカヅキを猫でもあやすかのように顎下を撫でて無力化させて見せた。

「ゴモたんさんが落ちましたよ!?」

「今日のアギちゃんは無敵だぁ!?」

 普段から一緒に居る事の多いミクとレイカでもわかる明らかな異変、アキが普段のアキとは一味違う感じに度肝を抜かされていた。

「アギアギ~どこですか~?」

 そんな中、アキを探しにトレーニングルームへ入ってきたトモミがヒョコッと顔を見せた。

「………」

「アギちゃん、ピグモンさんが呼んでるけど…」

「えっ?…ああ、わたくしですわね…はいはい」

「??…本当にアギちゃんなのかなぁ?」

 呼ばれても反応もなく、一人称も『わたくし』になっているアキ…さすがのミクでも親指と人差し指の間に顎を乗せて首が傾いた。

「どうされました、赤き御方」

「赤き御方?…いえ、アギアギに御迎えの方が参られましたのでお伝えしに…うぶっ!?」

「それはつまり“お兄様”ですか!?」

 アキに扮するエリアスは突然トモミの両頬を手で押さえつけると顔面を固定すると同時に彼女とは鼻と鼻がつきそうな至近距離まで詰め寄られた。

「ええっほ…おひいさまといえばおひいさまですけろ…あひあひ、かおがいひゃいれすぅ~」

 頬を掴み抑えられたトモミは呂律が回らないほど強い力で押さえつけられた口で精いっぱい喋るが…

 そんなトモミを解放するや一目散でトモミを始めトレーニングルーム内に居るすべての怪獣娘たちの前から刹那の移動がその場より瞬間移動でもしたかのように残像さえ残さず走り去っていった。

「うぅ~…ほっぺた痛いですぅ~」

「今日のアギラ…なんかいつもと変だったなぁ?」

 頬を真っ赤に腫れあがらせるトモミの頭を撫でながらも普段のアキを知るベニオも顎に手を充てながら首を傾けた。

 

 

 そんな疑惑の渦中のアキに扮するエリアスは超特急でGIRLS内の職員や怪獣娘たちを疾風の如き速さで避けながらエントランスまで向かっていた。

「兄さま~!兄さま兄さま兄さま兄さま兄さ~ま!!」

 エリアスが興奮しながら期待する自分を迎えに来た相手が誰なのか彼女には見当が付いていた。

「兄さ~ま!御迎えいただきありがとうございま~すぅ!」

 エリアスが満面の笑みでエントランスに合流する人物は…

「…いえ、礼には及びませんよ…アキさん」

 ダグナだった。

「チィッ!」

「ちぃっ?」

「いっ、いえ…なんでもありませんわ(そうでしたわ…今のアキさんにはコイツが後見人として付き添われていると密偵から報告を受けていましたわね…)」

 期待に外れた人物が自分を迎えに来たことについ舌打ちをしてしまったエリアスは態勢を立て直して顔を作り直していつもの王女の外交的スマイルを見せて誤魔化した。

「わっ、わたくしの御迎えに上がられたのでしょう…さぁ、エスコートなさいませ ダグナ」

「おや、今日は随分と………なるほど、そういう日なのですね」

「どういう日なのか存じませんが…レディにいつまでお手を煩わせるのですか?」

「これは失礼しました、お嬢様…では、お手を失礼いたします」

 エリアスは精いっぱいのアキのフリをしているが…明らかにアキではない仕草と挙動に言動、しかしダグナはそれでも彼女に話を合わせるかのように彼女の手を引いて宛ら令嬢と執事のような立ち振る舞いで車へと向かった。

―セーフティーハウス『アキの部屋』―

 

 アキの部屋へと帰宅するなりエリアスに更なる先例が待ち構えていた。

「うっ…えっ?えっ?えっ!?」

【ウェルカム バック】

 玄関内で赤い大きな目が2つに黄色い発光器官を顔に持つビーコンがおかえりプラカードを所持して持ち構えていた。

「なっ、なんですの!?この生き物は!?」

「どうされましたか、アキさん…その方はあなたが飼っているペットではありませんか」

「ペット!?これが!?……はっ!」

 思わず驚いてアキとしてのフリなどすっかり忘れてツッコんでしまった。

「いっ…いけない、いけない、そうでしたわね…うん、ペット…ペットですわね」

 何とか誤魔化しているつもりだが…先ほどからアキに扮するエリアスの顔をジーッとビーコンの赤い大きな目が彼女の顔を覗き込んで来ていた。

「おけえり~、アキちゃん!」

「帰ったら手を洗え~」

 リビングの奥からミオの独特なおかえりコールと共にユウゴの声が響いた。

「今の声!兄さ~まァッ!!」

【ブエッ!?】

 エリアスは立ちふさがるビーコンの腹を弾いて押しのけ、通路を駆け足で飛びついた先にはユウゴの身体が待っていた。

「あっぶね!いきなり何してんだオマエッ!?」

「あっづぅ!?カレーがちょっとかかったけど!?」

 鍋に入ったカレーを天高く避けたユウゴとその反動で少し零れ落ちたカレーの飛沫を頭から被ったミオがソファーで悶える中、突然のアキに扮するエリアスの行動に驚かされた。

「兄さま……ユウゴ兄さま…ずっと会いとうございました」

「はぁ?何言ってんだオマエ…しょっちゅう会ってるだろうが…」

 アキが普段言わないような言動と普段取らないような行動に困惑するユウゴだが…

「あらら、どうしちゃったのアキちゃん…今日はやけにお兄ちゃんラブじゃない?ブラコンに目覚めちゃった?」

「むっ!(この害獣女…密偵からの報告ではつい最近兄さまたちの家に住み着いたダニと聞きますね、手っ取り早く追い出しておかねば…)…あらあら、どうされましたこと?家に見知らぬ泥棒ネコがいらっしゃるみたいですわよ、兄さま」

「えっ?本当にどうしちゃったのアキちゃん?」

「泥棒であることは間違いねぇが…それがなんだ?」

「ユウゴ君までどうしちゃったの!?二人とも今日はお姉さんに冷たくない!?」

「毎回飯時に上がり込んでくるヤツは泥棒以外の何者でもねぇよ」

「ヒドイッ!?」

 思わぬ誤爆を受けたミオはシクシクと涙を浮かべてソファーに突っ伏した。

「えへへっ、初めて兄さまと意見が合いましたわね…兄さま!」

「マジでなんだ、この状況?お前は頭でも打ったのか?」

 ひとまずテーブルにカレーを置いて一人掛け用のソファーに座っても胴体にしがみついてユウゴの胸に顔を左右に擦り付けるエリアスはアキの姿のままにめちゃくちゃな好意を寄せるがユウゴからしてみればアキが奇行に走り出したとしか思えていなかった。

 そんな自宅で起きていることなど露知らずのアキに背筋からひた走る悪寒に身震いした。

「うっ…なに、今の感じ?」

「どうされましたか?姫様」

 さんざん日本政府内の有名議員らと面会をして既にぐったりとしていたアキの身体がビシッと伸びてしまうほどの気配に背もたれから背中が離れた。

「あっ…あの~…次はどこに向かっているんですか?」

「お次は園崎防衛大臣と面会の後に霞ヶ関より自衛隊の最新シャドウ対策装備説明会でございます」

 エリアスに扮するアキが乗るリムジン車は次なる目的地へと彼女たちを移送していた。

「えっ!?そのあとは!?」

「警視庁特異生物対策本部より警備部特殊機甲部隊『アヴァロン・ユニット』の視察です」

「まっ、待ってください!?晩餐会は!?晩餐会は何時からなんですか!?」

 何よりもアキがここまでエリアスとして振る舞っている最大の理由で承諾したはずの『晩餐会』を尋ねると…

「政府高官たちとの晩餐会は午後9時頃です」

 アキには絶望が降りかかった。エリアスに騙された事と本来現時刻の7時頃で夕食とする彼女のおなかは急激なストレスにより完全なる飢餓状態で限界を迎えていた。

 それだけに留まらず…

「あの、せめてお腹がすいたので…コンビニで何か買ってきてもらえませんか?」

「姫様、この国のコンビニエンスストアなる低俗な店舗のお食事などあなたの御口にはふさわしくありません…晩餐会は日本の最高級の食材を使用した日本料理が振る舞われますのでそちらをお召し上がりください」

 先ほどからバトラカを顎で使いコンビニへ行かせることはおろか、まともな軽食すらも与えないことに更なるフラストレーションがアキの中で溜まりつつあった。

「あの…止めてください…お腹が…」

「どうされました、姫様!?運転手、車を停めろ!!」

 突然、お腹を押さえながら悶絶するような仕草をするアキにバトラカたちは急いで車を道路沿いの脇に停車させると…

「姫様、お見せください!どこか御身体に異変が…」

「ふんッ!!」

「ぐはぁっ!?」

 アキはバトラカに頭突きをかますと同時にリムジン車のドアを取り破って破壊し脱した。

「ひっ、姫様!!」

 ドアを無理矢理破壊し開けるとアキは車内を飛び出し、歩道も超えて、停車していた場所は川の上の橋であり柵から身を乗り上げた。

「姫様、何をされているんですか!?おやめください!!」

 バトラカは打たれた顔を抑えながらアキに近づくが…アキに迷いはなく柵から身を投げて川へと落ちた。

「ソウルライド!アギラ!!」

 川へと落ちていきながら非常用に所持していたソウルライザーでアギラに変身を遂げて川の中へとドボンッ!と水柱と水飛沫を上げた後が川の中に残るのであった。

「探せ!探すんだ!!姫様が川に落ちたぞ!!早く探さねば!!」

 バトラカも川へ落ちたアキの後を追うようにして彼も体を変化させながら川の中へと飛び込んだ。

 一方のアギラは先に川岸の柵に手を掴んで先に陸へと上がっていた。

「ボクには最高級料理なんかより…家でお兄ちゃんが作ってくれる料理の方が大事だ!」

 アギラは一目散でその場を後にして走り去っていったが…川の中からアギラの後に続いて凶悪な指先が鉄柵をバキバキッ!と音を立て握りつぶした。

―キボォオオン…―

 その奇怪な鳴き声と共に川の中から赤く鋭い眼光が走り去っていくアギラを捉えていた。

 さらにそんな事態も知らぬエリアスは…

「えへへっ、兄さ~ま…」

「お前、マジで離れろや…さっきから全然飯が喰えん」

 食事中ずっとユウゴの左腕にしがみついて放そうとも離れようともする気配はなくユウゴとアキに扮するエリアスだけが食事の遅延が起きていた。

「あらあら~…すっかり仲良しさんじゃないの~、よかったわね ユウゴ君」

 そんな二人の姿を傍らでモグモグとカレーを頬張るミオは面白がっていた。

「この立場になって見ろ…鬱陶しい上にシンプルに気持ち悪い、妹のガチ奇行ほど見るに堪えれんわ」

 ユウゴは額に血管を浮かばせてミオを睨むがミオはそっけなく『はいはい』と言いながら空いた皿を台所で洗い物をするダグナの所まで持って向かった。

「ふんっ…さて、一体どういう風の吹き回しだ エリアス」

「まぁッ、やっとわたくしの名前を呼んでくださいましたわね!……あっ!?」

 思わず自身の名前を呼ばれたことについ喜んだエリアスはボロを出してしまった彼女の顔はダラダラと冷や汗が滝のように流れていた。

「なっ、なんのことでしょうか…私はあなたの知る清廉潔白にして眉目秀麗なエリアス王女なわけないじゃないですかぁ~冗談はよしてくださいませ 兄さ~ま♡  私はあなたの大事な大事な、実の妹君のアキさんですよ~♡」

 精いっぱい可愛い子ぶって見せるエリアスにもはやアキを演じる気はなく、ダラダラと顔に汗が流れ落ちていくばかりであった。

「あくまでも認めないのならこちらにも考えがある…おい、ごくつぶし!アキがお前と風呂に入りたいだとよ!」

「えっ!?なになに、ホントー!?とうとうお姉さんにもシスターラブに目覚めてくれたぁ!?ええ、ええ、入りましょう入りましょう!今すぐ入りましょう!!」

「わわわっ!?兄さま、助けてください!!いやだ、やです、やです!どうせなら兄さまと入りたいです!!この人となんていやですぅ~!!」

 必死に風呂場まで連行されかけているエリアスは必死になってユウゴの服の袖にしがみつくが…ユウゴは無情にもその手を払いのけて彼女をミオに明け渡すとミオはエリアスを抱えて風呂場に直行して扉の前をビーコンが【キープ アウト】のプラカードを持ったまま立ち塞いだ。

 

―数分後―

 

「ユウゴ君!ユウゴ君!ユウ~ゴく~ん!!誰なのこの子!?アキちゃんじゃないわよ!?」

 タオル一枚だけ胴体に巻いて風呂場から飛び出して着たミオは小動物でも抱えているかのようにエリアスの両脇を抱えてユウゴに突きつけるが…ビーコンが間に入ってエリアスの身体を【ドゥ ノット ルック!!】とプラカードで隠した。

「せめて服を着てからにしろや」

「んんんっ~説明してよ!誰よ!誰なのよ、この子!!なんかアキちゃんと比べて顔は同じなのに触れ合ってみて初めて違うって実感したけど誰なの!?飼ってた猫が見た目同じ猫に変わってたぐらい衝撃なんだけど!?」

「あの…とりあえず下してもらえますか?」

 取り乱すミオは我に返ってひとまずエリアスを下すとビーコンからバスタオルを手渡され、それを胸元まで巻き付けた。

「騙すような真似をして申し訳ございませんでした。わたくしはインファント領インファント王国第一王女のエリアス・メイ・フツアと申します…宮下アキさんは現在わたくしの代わりに王女代理として我が側近のバトラカと行動を共にしておりますのでご安心ください」

 エリアスはミオとユウゴ達に深々と頭を下げて自分とアキが入れ替わっていることについて深く詫びた。

「ウッソォ…外国の王女様だったの!?どおりでなんかいい匂いもするし、肉付きもアキちゃんよりたくましいし、抱き心地が違うから気づけたけど…でもこれはこれで良かったわ!」

「お前の判断基準どうなってんだよ」

 明らかに他国の王女に対して不敬な認識でアキでないと見抜いたミオだが決してぶれていなかった。

 そんな時だった…―ガチャッ―…

「はぁっ…はぁっ…たっ、ただいま」

 息を切らしてアギラがユウゴ達の元へと自力で帰ってきた。

「アキちゃん!?どうしたの、変身までして…」

「ちょっと…いろいろあって」

 走り回って疲れたのか、アギラは倒れそうになったところをミオに支えられた…が…

「んっ!…おい、何か来るぞ」

 ユウゴは何かがこちらに向かっている気配に気づいてミオたちに警戒を促すが…―バキィン!!―

「ひゃっ!?」

 ミオの目の前でステンレス製の玄関ドアに大きな穴を開けて鋭利な氷柱状の針が彼女の顔に紙一重でユウゴがゴジラの腕へと変化させその針を止めた。

「ぬぅん!」

 ユウゴはそのまま足もゴジラに変化させステンレス製のドアを蹴り破って扉1枚挟んで向こう側に居る相手をドアごと吹き飛ばしたが…シャキンッ!と切れ味抜群の切断にてステンレス製のドアが真っ二つになるとドアの裏側から凶悪な顔つきに額に伸びる黄色く発光した身の丈出入り口以上に巨体の怪物がアギラたちの前に現れた。

―キボォオオン!キュキョォオオン!!―

「ギャァアアアアアア!!誰ッ!?誰なのッ!?」

「下がってろ!!」

 ユウゴは手と足以外の胴体や頭、臀部にかけてゴジラとして変貌を遂げて正体不明の怪物に突進して玄関前のコンクリート柵ごと破壊してマンションから落ちていった。

「おっ…お兄ちゃん…」

「アキちゃん、しっかりして!怪我はない!?」

 疲労のせいか意識を失いかけているアギラにミオは揺さぶるが…そこへエリアスが近寄る。

「失礼します…宮下アキ、騙すような真似をして申し訳ありません…これはささやかな礼です」

 エリアスはアギラに触れると金色に輝く粉のようなものがアギラの身体へ付いていた。

「うっ…ううん?…あれ?疲れが…」

 アギラの身体の内側から失っていた気力がじわじわと蘇ってくるようだった。

「立てますか?」

「うん…ここまで全速力で走ってきたのがウソみたいに身体軽くなっているよ」

「それは良かったです…うちの“バトラ”が失礼いたしました」

「バトラ?」

「はい、さっきの怪獣は私の付き人のバトラカが変身した姿です…名をバトラと申します」

 エリアスが新たな怪獣戦士(タイタヌス)としてバトラを紹介するが…ゴジラと共に落ちていった下ではマンションの駐輪場に置かれた自電車などが宙に舞い上がるほどの激闘がしたで起きていた。

「そして私も…あなた方が“怪獣娘”と呼ばれる、自ら怪獣に身を宿す力を有する『モスラ』の継承者なのです」

 自らもアギラと同じ怪獣娘であることを打ち明けるとアギラが変身しても衣服は消えるのに首にかけた赤い鉱石が中央に埋め込まれている太陽のような紋章が描かれたペンダントをアギラの首から外させると手に取り…上に向けて掲げた。

「ドゥンガン カサクヤン インドゥムゥ…モスラ!!」

 エリアスは独特な呪文のような言葉を発するとソウルライザーで変身する怪獣娘たちと同様に眩い発光と共に金色の羽、昆虫のような複眼の付いたフード状の獣殻、全身をモコモコとした線毛で覆われた身体、見た目こそユウゴのゴジラとは違うどちらかと言えばアギラと同じ怪獣娘のような半獣型の怪獣娘に変身を遂げた。

「王女さまも…怪獣娘だったの?」

「はい、名を『モスラ』と申します…それよりも兄さまたちをお止めしに参りましょう」

「うっ、うん…行こう!…って、わっわっわぁぁああ!!」

 エリアスはモスラと言う怪獣娘に変身を遂げるなりすぐにアギラの手を引いてゴジラたちが破壊して開けたコンクリート柵の跡から飛び降りていった。

 

 

 一方、マンション内の駐車場で睨み合う2m越えの怪物たちが互いに出方を伺うように構えあっていた。

「ゴジラ…貴様どういうつもりだ!我ら、インファントとの盟をたがえるか!!姫様をどこにやった!!」

「知るか!こっちは自分の妹がお前の所のお転婆姫と入れ替わっていたことに迷惑してるんだよ!!」

「貴様ぁああ!!姫を誑かすに飽き足らず、シラを切るか!!」

 バトラは近場にあった大型バイクを片手で掴み、ゴジラに向けて投げたが…ゴジラはそれをまともに受け止め、反動のままに回転しながらバトラへ返すかのようにバイクを叩きつけた。

 しかし、そのバイクなど額から伸びた金色の角を発光させるとバイクに頭突きする拍子にバイクは真っ二つに裂けた…が、切れ目の間からゴジラの太い尻尾が現れてバトラの顔面に直撃すると駐車する軽乗用車のフロントガラスから突っ込んでいった。

 だが、バトラも今度は車内よりボンネットを突き破って飛び出すと月夜の光と共に姿が変化して角は縮み、体格もマッシブな印象からスマートな細身に変わって背中から羽が生えた。

「貴様とは心底こうなってしまう事を残念に思う…だが、我らも所詮は怪獣、戦うのであれば戦うのみぞ!!」

 バトラは蜂のように高音の羽音を鳴らしながら超高速でゴジラと激突するかに思われたが…

「そこまで!二人とも、戦いをおやめなさい!!」

「ひっ、姫様!?」

 二人の怪獣の戦いを割って入り止めたのはエリアスが変身するモスラであった。

「バトラカ、ここは日本ですよ…その姿は御慎みなさい」

「しかし姫様!一体今までどちらに…!?」

「ずっとこちらの宮下アキと入れ替わり。この方とわたくしの立場を入れ替わっていました」

 モスラは側近のバトラに彼女が浮遊しながら右手で掴み支えるアギラと入れ替わっていたことを打ち明けた。

「なぜ、そのような事を!悪戯に混乱を招くようなことを…」

「母上からの命による“ユウゴ兄さまと接触せよ”等と言う話をあなたが信じますか?録にわたくしの意見に耳を貸そうとしない頭の固いあなたに…」

「言ってくださらなければ分かりかねます!」

「では兄さまと話をさせますか?」

「死んでも阻止いたします!」

「そういうトコロです!!」

 バトラとモスラは互いに意見交わしても平行線で続くことにモスラは呆れかえった。

「はぁ…申し訳ありません、兄さま…あなたにこうしなければ直接お会いできないと踏んでの決意であることをご理解してください」

「ボクからもお願いするよ…エリアスも目的があってボクと入れ替わってほしいって提案したんだ」

 モスラとアギラの言葉にゴジラは深いため息を吐き出して腰に手を当てながらモスラに近づいた。

「んで、俺に用ってなんだ?」

「はい!母様の伝言は『悪しき災い迫り時、今一度インファントへ訪れ願いたい』とのことです」

 それはインファントのサラナ女王がゴジラことユウゴに彼女が収める国への入国を願うものだった。

「姫様!いくらそれが女王陛下のお言葉であっても…この者をインファントの地に招くなど…」

「バトラカ!女王たる母様の命を軽んじますか!!…兄さま、母様は予言にてフツアの神からの神託に見た未来をあなたと一緒に考えてほしいと以前申しましたよね」

「それがなんだ…」

「人はいずれ怪獣の力を宿す者たちを囲う……今後より私たちの立場を危うくする出来事があなた方の身に降り掛ります…怪獣の力を宿す人たちをインファントへ…と、今回この国で大々的に組する者たちを見てきました。かの組ではまだ力不足です!どうかインファントへの足入りを願いたいのです、兄さま!」

「待ってお姫様!それってGIRLSのこと?」

「はい…宮下アキ、あなたの手前で大変申し上げにくいのですが…母様はあなた方GIRLSと呼ばれる組に懸念感を抱いております。今回わたくしが派遣されたのにはGIRLSと言う存在そのものを見定めるために遣わした次第だったのです」

 モスラことエリアスが打ち明けた今回の視察の経緯はユウゴことゴジラをインファントへ誘い、今まであり続けたGIRLSと言う組織の解体と共に怪獣の力を宿す者たちをインファントへ集めることが目的だった。

「そうだな…インファントは島であり、国であり、組織、性質は違えどアキたちのGIRLSって所と役割を同じとする目的を持つ連中だったな」

「ボクたちと、同じ?」

「ああ、インファントって国は世界そのものの調和維持を目的とする国だ…国連に加盟するどの国よりも重宝され、大国の陰に隠れる存在……だが、何度も言うが断らせてもらう」

「なぜですか!インファントの何が御気に召さないのですか兄さま!“前”もそう言ってインファントを拒むのはなぜですか!?」

 モスラは浮遊をやめてゴジラに詰め寄るが…

「なんども言うがエリアス…俺の縄張りはここなんだよ、ここに俺の守るべき場所があるんだ」

「兄さま…」

「王女様…確かに今のボクたちでは力不足かもしれません…それは誰よりもボクが実感しています。あなた達から見れば拙い組織かもしれないけど、それでもボクたちにはここに生活があるんです。 ボクも今日一日だけあなたの役割を受けて見て初めて実感した大変さ…住む世界が違うんだなぁって実感しました…あなた達にどのような考えがあるのか分からないけど、GIRLSはこれから生まれてくる新たな怪獣娘さんたちのための居場所づくりの為に奔走しています…だからどうかGIRLS全体を信じてとは言わないけど、せめてボクだけでも信じてほしい」

 そう言ってアギラはモスラに手を差し伸べるとモスラはため息交じりながらも心のどこかで結果をわかっていたと微笑む表情と共にアギラの手を握り返した。

「わかりました、このままではわたくしの我がままになりますね…母君にはあなた方のご意見も尊重してお伝えしに帰路につかせていただきます…お騒がせして申し訳ございませんでした」

 モスラはアギラたちに今回の騒動の釈明をして深々と頭を下げて謝罪した。

「本当は兄さまがそうお答えになることなど見えていました…なによりわたくしは日本を通し見て、GIRLSに少しの間だけ関わるうちにわたくしも考えが変わりました。母様にはその旨をお伝えいたしましょう…ではカサクヤーム!」

 モスラは諦めて変身を解く呪文を発して本来のエリアスに戻るが…

「おっ、王女様…そういえばバスタオル1枚でしたよね」

「あらぁ?」

 しかも、変身が解けたことでバスタオルの締めが緩んでいたのか結び目が解けて彼女の足元に落ちた。

「うわぁああああ!!お兄ちゃんは見ちゃダメぇえ!!」

「貴様らぁああ!!姫様になんたる不敬をぉおお!!」

 アギラはゴジラの目を隠そうとピョンピョン跳ねるが届かず、自身の国の姫の身体を晒す羽目になったことに憤慨したバトラは更にゴジラたちへの敵意を募らせる事となった。




アンバランス小話
『謝罪』

「もぉ~しわけございませんでしたぁああ!!」
 トモミは深々と頭を下げるとGIRLS所属の怪獣娘たちが総員でエリアスに謝罪した。
「いえ、こちらこそ騙すような真似をして申し訳ありませんでした」
「めっ、滅相もございません…王女様とは知らずGIRLSの過度なトレーニングを課したり、過度なスキンシップをして困惑させるようなことをした当組織側の責任ですぅ!!」
 トモミの謝る内容にベニオとミカヅキは『ウッ!』と自分たちに責め苦の矢印が刺さるようであった。
「いえ、改めて皆さんと関わりあえてGIRLSの皆さんの日常を追体験する貴重なご機会をありがとうございました」
 エリアスは起こるどころか寧ろ感謝までしてGIRLSの怪獣娘に神々しい笑顔を向けた。
「しっかし、まさかアギちゃんが王女様と入れ替わっていたとはねぇ~」
「驚きました…アギさんと顔立ちが似ていらっしゃるから並べて見ても区別がつきませんね」
 ミクとレイカはアキとエリアスの顔の同一性に驚いて何度見返しても首が傾くようであった。
「あんまり比べないでよ…ボクなんかと王女様じゃ雲泥の差だよ」
「いえ、そんなことございませんわ…わたくしの衣装と入れ替えてもウチのバトラカが全然気付かないほどですよ」
「いいなぁ~アギちゃんの御姫様姿、見たかったなぁ~!」
 ミカヅキはアキの王女姿が見れないことに残念がっている中で…
「あら、一応お互いの御衣裳の交換もしているのでいつでも見れますよ」
 入れ替わり解消後、お互いの来ていた衣裳を交換していると教えたエリアスの言葉を聞いて全員がグルンッと顔をアキの方に向けるとアキの背中からまたも悪寒が走る。
「アギちゃん、アギちゃん!もう一回だけでいいからその服着て見てよ!!」
「お願いです!もう一度、王女様の御姿になって見てもらえませんか!」
「絶対写真撮ろうとしてるじゃん!!」
 全員がソウルライザー片手にアキへ懇願してきた。

 その後、エリアスの帰島後にGIRLS宛てに目が飛び出るほどの多額の支援があったのはまた別の話である。
「なにこの金額ゥッ!?」
 その額を見たGIRLS支部長のゼットン(姉)が驚愕するほどであることなど東京支部の面々は知る由もなかった。

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