TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐ 作:神乃東呉
―秋田県内・秋田自動車道―
岩手県から秋田県にかけて東北地方の高速自動車国道線。冬にかけて道路が一面雪化粧で真っ白になることで有名な高速道路であるが、今の季節に雪は無い…尚、車通りも無かった。
「…北上と小坂までの道のりを国交省を通じて一部封鎖していただいたかいがありましたね」
本来、日本の血管網たる高速道路を封鎖してまで“道”が必要であるためダグナを通じてMONARCHから国連、果ては合衆国より日本国へ伝達され、高速道路を封鎖するに有する時間は小1時間もかからなかった。
「この国の役人官僚方にしては手際が良いですね…ユウゴくん」
「うるせぇえっ!!いま、計算してっから待ってろ!!」
殺風景な高速道路の彼方まで眺めるダグナの隣でユウゴは複雑な数式を道路に書き出していた。
「とりあえずアインシュタイン図式を元にして特殊相対性理論を特異相対性理論に置き換えて1.21ギガワットを俺の周囲で発生させる」
「なるほど、わかりやすく例えるなら…亜高速を可能とする“ミレニアム”で140キロ間を走行し、次元間に崩壊を発生させるおつもりですね」
「やけにわかりやすく掻い摘んだが…問題は座標地点を“バーニング”の荷重質量で急ブレーキを掛けなきゃならん」
秋田県婆羅慈市より連絡を受けたユウゴ達は消えたアキの行方を追うために用意した舞台は整った。あとは書き出した理論通りにユウゴが自身の能力をフル活用して次元空間に穴を空けるという前代未聞の手段を行おうとしていた。
「んっ、んっ、んっ……よし、いくぞ」
ユウゴは軽く準備運動の関節曲げを各所の脚肘を延ばしてから軽く小ジャンプを2,3回行うと身体を硬質な体表で覆われたゴジラの力を具現化させた。
「よし、まずはミレニアム」
そこから更に肉体が軽量なフォルムに変化して背ビレの形は鋭利な紫色の背ビレへと変化した。
「ではユウゴくん…いってらっしゃい」
「やかましい…さっさとあの拉致されやすいバカを連れ戻してくる」
そう言ってユウゴから変身を遂げたゴジラの周囲にプラズマ状の電離線が発生して舗装されたコンクリートを陥没するほどに強く踏みしめると…一気に加速した。
―ドォオオオオンッ!!
遅れて発生したソニックブームが発生した亜高速の超加速を物語っていた。
「ほほぅ…マックス時速140キロと言った所か」
「まんま、某タイムスリップ映画だニャァ~」
「……なんでこちらにいらっしゃっているのですか、お二方」
ダグナの横で手持ち双眼鏡を目に相当する箇所に当て眺める自称:神ナイアルラトホテップがお供のバーストと呼ぶ猫と共に超加速で走り去っていったゴジラを見届けていた。
「これでも物理法則を司る者として審査しているのさ…厳重な税関職員みたいに」
すると今度は空港の税関職員のようないで立ちに変わって古いタイプライター式の入力機器を起用に打ち込みだした。
「ええ~行き先は2000年前の婆羅慈遺跡近辺、次元転移における亜高速間での1.21ギガワット放出で時速140キロ、ウルトラゾーンを超えてアンバランスゾーンに突入…うんっ、生身の人間だったら爆発四散してたね」
軽いノリでとんでもない事を言うナイアルラトホテップは1枚の紙にハンコを押し込むと『亜高速による多次元突破許可書』が完成した。
―ズギュゥウウウウウン!!
ダグナが居た地点から加速した高速道路内の光景は瞬く間にゴジラが光と同等の速度に変化したことにより周囲の光から得られる情報が停止した状態に陥った。
そこにさらなる加速が加わると停止した光景が一気に逆転現象が発生する、光から見える“色”としての情報は光の速さを超えた事により遅れが生じて遅延の差が徐々にかけ離れていくことで起きるこれこそが所謂『時間の逆行』すなわちタイムスリップであった。
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―2000年前・婆羅慈遺跡周辺―
(拝啓、お母さん…お兄ちゃんが帰って来た事によりボクの日常は大きく変わってしまいました……なぜなら)
アギラの手足は1本の長い棒で括り付けられて捕らえられた獲物のごとく吊るされた状態でミク…に似た者、レイカ…に似た者によって前後から肩に棒を担いで運搬されていた。
「(変な場所に飛ばされて知り合いに似た原住民がボクをどこかへ運んでいます)ねぇッ!下してよぉおッ!!」
「ダメですよ、アギさん!アギさんは“戦士”になっちゃったんですから…」
「まさかうち等の代で最初の“戦士”がアギちゃんになっちゃうとはねぇ~」
「さっきから何なの二人とも!?“戦士”って、戦う人のことだよね!?っていうか、こんな状態のどこが戦士なの!?戦士と言うか、獲物みたいじゃん!!」
つい普段通りのミクとレイカに対する時の会話同様に話しかけるアギラであるが、2人に酷似している上にお互いに呼び合う愛称も同じ故に会話の通じなさに困惑させられた。
「戦士が何って…戦士は戦士だもん 一旦、みんなに話を通さなきゃ…」
「ワケがわかんないよ!それとこれと今の状況が全然わかんない!!」
ますます困惑させる、明らかに現代文明とは隔絶された装いの顔見知り2人のはずが声と顔を同じにした別人のようにも思えて来た。
「あっ、見えてきました…村です!」
「えっ…ここって」
連れて来られたのは、あの婆羅慈遺跡であった。
しかも発掘現場とは違って明らかに居住的環境が整っていた。
「みんなぁ~!!アギちゃんが見つかったけどぉお~、“戦士”になっちゃったぁああ~!!」
遺跡周辺に点在する竪穴住居の入り口から続々と居住者が顔見せに現れ始めるも…
「何々、どういうこと!?アギが戦士になったって」
「うわっ、本当に戦士になっちまったのかよ!?」
「うわぁ~アギちゃん、まんま戦士やん」
顔を見せに来た一人一人がいずれもGIRLSで顔見知った怪獣娘たち同様に同じ顔をして衣服だけが古風な民族衣装で着飾っている。
「「よっこらせっ!」」
「ぐえっ!?」
おもむろに下されたことで背中ら地面に落ちた。
「今、縄切るから待ってて…」
そう言ってミクと思われる者が取り出したのは黒い石のナイフでアギラの手足を縛る縄を解いた。
しかし、着目するのは石材製のナイフである。現代では包丁ですら鉄かステンレスが主流であるにも関わらず彼女が扱う道具はそれよりも遥か以前の時代錯誤な“石器”を用いている。
「あっ、ありがとう…えっ、ええっと…みんな…なに?何なの?」
状況に理解しがたいアギラは環境もさることながらジロジロと自分を見つめられているこの状況に困惑していた。
「すっげぇ~…戦士連中みたいだな」
「一体何があったのよ、アギ」
「ボクが知りたいところだよ…さっきから戦士って何?」
「いや戦士が何って言われても…おおッ、丁度みんな帰ってきたでぇ!」
「えッ?」
ミカヅキ…に似た者が指差す先をアギラは振り返るも柵で囲われた村の出入り口から続々とガメラ、コング、アンギラス、ラドン、バラゴンなど顔見知った怪獣戦士(タイタヌス)たちが怪獣としての本来の姿を隠さずに突然現れた。
「わぁあああああッ!ちょっ、みなさん…姿隠さなくて大丈夫なんですか!?」
普段から人目に付かない様に姿を隠しながら密かに怪獣として活動している怪獣戦士(タイタヌス)たちをGIRLSの怪獣娘と同じ顔をした者たちに見られてはマズいと思い慌てた。
「はぁ?何言って…って、オマエまさかアギか!?」
「えっ?…見られても…大丈夫…なんですか?」
怪獣戦士(タイタヌス)たちは姿を変化させて元の人間としての姿に戻って見せたが…彼らも顔が酷似しているだけで衣裳装飾は現代とかけ離れた様式形状の民族衣装であった。
「みっ、みなさん…一体どうされ…って、アギアギ!?」
「ぴっ、ピグモンさん!?」
男たちの隙間から姿を見せたのは同じく怪獣娘ピグモンに酷似した怪獣娘で自分のことも愛称までも同じ呼び方で呼ばれた。
「そんな…アギアギも戦士になられたんですか!?…ええっと、アギアギの年齢ではまだ発現するには早すぎると思われるのですが…」
ピグモンに酷似した者はアギラの全身を汲まなく眺めまわし、ツノ、腕、足元、尻尾に至るまでの細部まで確認してきた。
「あっ、あの!…先ほどから戦士って何なんですか?」
「どうやらなったばかりで動揺しているようだね…仕方ないから僕が教えるとだね」
そう言ってトオルと思しき人物がアギラの前に屈んで落ちていた木の棒を使って地面に絵を描きだして解説してくれた。
「僕らの一族は皆が成人を迎える頃に戦士と呼ばれる違う生き物に変わるんだ…みんな千差万別だけど普通の人よりも強い力を宿すから戦いに特化した姿として敵からの防衛や狩猟にも出なければならないんだ」
描きだした絵は分かりやすいまでに人から怪獣としての姿分けを説明が無くても理解できた。そして、説明終わった絵をここぞとばかりにレイカやランに似た者が何やら煮えたぎった金属液をトオルが書いた絵に流し込んで保存していた。
「私は皆さんのように強い力はありませんので戦士団の管理記録を任されています」
例外にもピグモンに酷似した怪獣娘には彼らのように能力的には有利性が無い者は記録係として役割を全うしていた。
「ピグモンさんが居るって事は…あなた以外にも戦士という女性は居るんですか?」
「居るには居るんですが…」
なにやら渋めな表情を浮かべるピグモンに酷似した怪獣娘だったが…
「あ~~ぎ~~ちゃ~~んんんッ!!」
「――こひゅんっ!?」
何者かがアギラに飛びつくように抱き着いてきたが…衝撃波もろの軽自動車にでもぶつかったかのようであった。
「おおお~よしよしよしよし、ついにお姉さんの愛が成熟してアギちゃんを立派な戦士へと成長したんだねぇえ~…これからは一緒に狩りに行きましょう!鳥でも、鹿でも、熊でも狩って狩って狩りまくろう!!」
「みっ、ミオさん!?」
その姿にもやはり見覚えがあり、このウザ絡み具合も身に覚えがある。ベムラーと酷似した怪獣娘であった。
「アギ……戦士に…なったのね」
「ふえっ?…ふぁぁあああああッ!!ゼッ…ゼゼゼッゼットンさん!?」
また更に姿を見せた怪獣娘に驚愕させられたのは元の時代でも独特な雰囲気にアギラ自身憧れの的にしている理想の怪獣娘にして最強の怪獣娘ゼットンに酷似した怪獣娘であった。
「ゼットン?…何ソレ、変な名前ねぇ」
「変な名前じゃないよ!ゼットンさんはかっこいいんだから、というかいつまでも抱き着かないでく・だ・さ・い!!」
ゼットンを変な名前扱いされたアギラはムキになってミオに酷似した者の手から離れようと突き放した。
「おおっ、そうだアギちゃんが戦士になった事も重要だけど…今はお客さんを連れてきた所だったわ」
「えっ、お客さん?」
抱き着いていたミオに酷似した者は思い出すように戦士団の方へと駆け寄っていきある者の手を優しく引いた。
「さぁ、ほらほらみんな道を開けて…妊婦さんが通るわよ」
「あっ、ありがとうございます…」
現れたのはどこか妖艶な雰囲気を醸し出す色白美人な女性が大きくしたお腹を抱えながらゆっくりと歩いてきた。
「にっ、妊婦さん…?」
アギラ自身も普段滅多に見ることのない妊婦の姿に驚くが…問題はその大きさであった。
「よん…じゅう週…目……(あれ?なんでボク分かるんだろう?)」
なぜかアギラは村にやって来た女性のお腹を見るなりその女性が妊娠40週目を迎えた妊婦であると見抜けた。
「お招きいただきありがとうございます 我々は“香音の国”から参った者たちです…私はツクヨミと申します」
妊婦の女性に付き添う1人の男性が皆の前へ出て来て丁寧な挨拶をした。
「これはご丁寧にどうも…ようこそ、“騨魂の村”へ」
「だ…ごん?」
またも聞き覚えのある言葉が耳に止まったが今は特に気にすべきことでないと思い聞き流した。
「こっちは従者のカイシン、こちらは私の妻のオサタです」
「遠路はるばるの長旅でしょう…客間に御通しいたしますのでこちらに…」
そう言ってアンギラスこと庵堂アラシに似た男性が3人の男女を大きな立屋敷へと案内した。
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―騨魂の村・客間用立屋敷―
村にやって来た2人の男性ツクヨミとカイシン、そして楽な姿勢が取りやすい様に藁を多めに敷き詰めたクッション性の高い場所で村にいるGIRLSの怪獣娘たちにそっくりな女性たちに介抱されながら座する妊婦のオサタを迎え招いた。
「申し訳ない、村長はただいま遠方の村に出向いておりますので…」
「いえ、お構いなく…我々もここよりの先の北の島に向かう道中でしたので…」
3人の男女の中心的人物であるツクヨミはどこか異国の堀深い顔立ちの男性ながら丁寧な大人という印象が強かった。
「…アギちゃん、変身解かないの?」
「うっ、う~ん…解きたくても解けない」
村の人たちと一緒に妊婦のオサタを介抱の手伝いに回されていたアギラは元の人間の姿に何度か戻ろうとソウルライザーを使用して見ていたが肝心のソウルライザーは故障しているのか電源が付かない事態に陥っていた。
「まぁ、最初の変身ってそんな感じよ…お姉さんもそういう時期あったからさぁ~」
何とも軽いアドバイスを受けるアギラであったが段々と彼ら彼女らがアギラの知る人たちでもなければアギラが生きる時代ではない。推定ながらも文明レベルが古代的であり、使う道具の数々も機能面で見れば複雑性のない物ばかり、そこから推察できるアギラが今いる場所の時代は推定2000年前の日本で後に婆羅慈遺跡群として発見される地域だった。
(たっ、タイムスリップしちゃったんだよね、コレッ!?…どうしよう流れに任せてみんなの話に合わせているけど…どうやって元の時代に帰るの!?)
平然を装ってはいるものの内心は動揺が勝っていた。こんな時に寝ぼけ眼と揶揄される無表情に近い顔が役に立っている事にいささか納得は行かないが…
(隙を見てボクをこんな場所に連れて来たなんか地面から出て来たよくわからない鳥…の模型?みたいなのを探さないと…)
事の発端となったアギラをこの時代に半ば強引に連れて来た鳥型の飛翔物体が唯一の手掛かりだが…
「とりあえずみんな、藁を丸めて何か大きめの布か何か被せて、オサタさんはそこに四つん這いになるように座ってください…あっ、ミクちゃんは蓬の綿を集めて来て――」
「えっ!うっ、うん…わかった…」
なぜか行動が無意識に妊婦オサタへの適切な介抱の仕方がアギラには分かっていた。
「どっ、どうしたのですかアギアギ…」
「わかんないけど……あの、オサタさん」
「はっ、はい?」
「…最近、なんだかお腹の動きが減ったりしていません?」
「えっ!…たっ、確かに…やけにここ最近は静かですけど…そのおかげでこうして動けるうち旅に出たのですが」
「痛みも少ない?」
「あっ、はい…」
「前躯陣痛の低下、体動の減少…もしかしたら…」
特に医療に関する知識のないアギラがなぜか頭の中で次々と知識が湯水のごとく溢れてくるように導き出される結論が過った。
「みんな聞いて…もしかしたら今日が出産かもしれないからなるべく多めのお湯を沸かしておいて、沸かしきったら沸騰消毒水としても使えるからお湯のまま温度を維持しておいて!」
アギラの中で今日から夜にかけて山場になること確信が持てた。
「ほっ、本当ですか!?」
「マジかよ…今日にも産まれるってのか!?」
「いくら何でもそんなすぐには…」
にわかに信じがたいアギラの言葉に半信半疑な気持ちが皆の首を傾けさせるが…
「グゥッウウウッづぅうううウッ!?」
突如、お腹を抱えてオサタが痛み出し始めた。
「どっ、どうされましたオサタさん!?」
「そっ、その方の言う通りな気がします…今まで一番強い痛みが…」
「やっぱりそうだ…とにかくオサタさんは敷き詰めた藁の上で楽な姿勢になってください」
アギラの言う通りにオサタはクッションのように丸めた藁の上に胴体を置き、足を開いてお腹を浮かせた姿勢を取らせた。
「あっ、あぁあ…少し…楽になりました」
「お産の兆候も順調なら今日にも産まれますからね…」
そう言ってアギラは優しくオサタの背中を摩って気持ちを落ちつかせた。
「……彼女は一体…」
「ウチの村のアギと言うのですが…今日はいつものあの子と様子が違うような気もしますが…」
やけに出産に詳しくなったアギラに首を傾げるアラシだったが、ツクヨミの視点は違った。
「彼女の申している事ならば…皆さん、どうか妻をお願いします!…そして、村の皆さん 私たちがどうしてここまでやって来たのか、そのワケをお伝えいたします」
ツクヨミは腹を括って真実を告げようと決意したその時だった。
――たのもぉおおお!!――
住居の外からハッキリと大きな声で村に立ち入る声が聞こえて来た。
「んっ?誰だ…アイツは」
「なっ、馬鹿な…ここは北の果てだぞ…なんでここまで」
外を覗き込んだヒエンに似た者はカイシンというツクヨミたちの従者は村に近づく何者かを知っている様子であった。
「どうした、カイシン!」
「…ヤマトのタケルだ!…奴め、こんな北の果ての地にまで我々を追って来たぞ!」
「なんだと!?」
慌ててツクヨミもその姿を簾の隙間から覗いて確認すると…
「くっ、確かに…あの男だ」
「…ツクヨミどの…なにやらワケがあるご様子で」
事情は知り得ないも男の姿を見て動揺するツクヨミたちの様子に察しがついたアラシに似た者たちだったが…
「ここは我々が相手をしますのでこの家の中に隠れていてくだされ」
そう言って住居内にいるすべての戦士団の男たちが外へと出ていき村にやって来た『ヤマトのタケル』なる人物の相手をしに向かった。
・
「むっ、この村の方々か?」
「…そうだが、あんたは?」
村の戦士団たちはツクヨミたちの動揺さから常に顔面の筋肉が笑顔で固定されたような左腕に金属製の篭手を嵌めた男性を警戒する眼差しを向けていた。
「これは失敬した!私は朝廷より参った『ヤマトのタケル』と申す…」
「ヤマトのタケル……聞かない名だ 無論、朝廷とやらも知らん」
アラシに似た者はこの男が朝廷と呼ばれる所からやって来た者である事は理解できるが…仮にツクヨミたちと同じく遠方から来たのであるなら馬も使わずに歩きで来た様であった。
「この村に立ち寄る際に旅馬が繋がられているのを見た故にこちらの村に私が探す者たちが居ないか問いたい」
「それはウチの馬だ…見当違いだったな」
「嘘を申されるな、この地に馬は必要なかろう ここまで我が朝廷のように舗装された道など見当たらない…到底馬が必要とする様子もない」
見抜かれた。事実、“騨魂の村”近辺は山岳地域である。遠出に馬はむしろ邪魔になるため村での馬の使用自体ない。
「だとしても、アンタをもてなす余裕はない…今、ウチの村の者が出産を控えてるんだ 取り込み中で立て込んでいる」
「なんと!それは大事な時に邪魔をした なれば私はこのまま去ろう…しかし!」
男は突如腰に携えた剣を抜いて逆手持ちにして勢いよく投げつけた。
―ドスッ!…パタンッ―
剣は簾を貫いて1枚隔てて隠れていたツクヨミとカイシンの姿を露にさせた。
「そこに居る朝敵を差し出してもらおう!」
既に2人に気づいていた男は自分に村へとやって来た者たちを引き渡せと要求をした。しかし…
―メキョッ…ボカァアアン!!
アラシに似た者は咄嗟に男の顔面に強く握りしめた拳を叩きつけて男を出入り口の物見櫓まで吹っ飛ばした。
「バレてんなら仕方ねぇ…朝敵?…その前にテメェが俺らの敵じゃ、ボケが!!」
アラシに似た者は即座にアンギラスに酷似した怪獣戦士(タイタヌス)に変身を遂げて、他の者たちも怪獣へと変化を遂げた。
「…ケホッ!なんと、モノノ怪の村であったか!なれば退治いたす!!」
「はっ、化け物はおめーの方やろがい…顔面凹むほどの力でぶっ飛ばしたんになんで生きとんねん」
確かに強力な威力を乗せて打ち出した拳から顔面にモロに喰らったはずの攻撃が“ヤマトのタケル”なるこの男には一切通じていなかった。
「朝廷に仇なす敵はすべて朝敵!クニの正義の元にそなたらすべて征伐いたす!!」
すると左腕に嵌めていた篭手を突き出して何かを念じると篭手は男の身体を侵食していき液体状に独り手に蠢く生物のような篭手だった物は男を全身鎧武者へと変えた。
「我が名は『ヤマトのタケル』!しかし、ひと度に朝廷を乱さんとする朝敵はすべて“センジン”の名の下に根絶やしいたす!!」
男の身体は全身を流体性の金属で覆われ、宛ら金属生命体となった。その姿は怪獣戦士(タイタヌス)たちと同質の存在であった。
互いに敵対する事となった怪獣戦士(タイタヌス)と金属生命体の一触即発状態の場は確実な戦闘に移行することは避けられない不気味な静寂に包まれていた。
そして…葉より水滴が落ちるその瞬間に…
「うるさぁあああああいいいいいッ!!」
今にも激突しそうな双方の間に割って入ったアギラは大声量でその場を一時停止させるほどの困惑を生んだ。
「騒ぐ暇があったら手伝ってよ!君は水を汲んできて!!」
「あっ…はい…」
アギラは敵対する事となった謎の金属生命体に対して臆することなく何故か竹製の水筒を渡した。
「みんなは蓬の綿と藁をもっと集めて来てよ!まだまだ足りないよ!!」
「「「「「あっ…はい…」」」」」
更に戦士団にも出産に必要な綿や藁を集めさせた。
「ええっと…とりあえず言う通り集めに行くか…」
「ああっ…んっ、どうしたコウ?」
アギラの言う通りに綿と藁を集めに向かおうとした戦士団の内の1人、バラゴンに酷似した怪獣戦士(タイタヌス)は地面に耳を当てて何かを聞いていた。
「何かが…落ちた音……山の方だ!何かが降って来た!」
バラゴンに酷似した怪獣戦士(タイタヌス)は麓の方角を指差して何かが空より振って来た事に気が付いた。
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―騨魂の村近辺・山中―
村の中でひと騒動が起きている頃、数々の山に囲まれる山岳地域に空より降り注ぐ3つの火球状の落下物が山に落ちて来た。
―ズゥドォオオオンドォオ…パラパラバラッ…
「フハハハハッ…ここが古の地球か、兄者」
「慢心をするなジュダよ…我らの目的を忘れるでない」
「しかし、ここの文明レベルはまだ低いのは事実ですモルド兄さま」
落下時に発生した土煙から3人の異星人たちが地球の降り立った大地を踏みしめて現れた。
――グアの三兄弟よ――
「うぐっ!?…そっ、その声は…我が主、ガタノソア様」
三人の異星人は頭の中へ送られてくる不愉快な思念に頭を抱えながら意識を声に向けた。
――…先の惑星カノンでの失態、余は貴様らに酷く失望したぞ――
「もっ、申し訳ありません…まさかセンジンの力が惑星カノンの軍事力に発展していたとは思わず手間がかかってしまい…」
――誰が言い訳を申せと言った!――
「「「ぐわぁあああああああああ!!」」」
頭の中に激しい激痛と共に生物としての自覚たる末端神経に至る強い衝撃が宛ら自分たちを鎖で縛りつけるような強い圧迫感が現れた。
――もはや貴様らには好機は与えん…が、試練は与える。 その試練に乗り越える事が出来るならば、望み通りの願望を叶えてやろう――
「ぐっ…わっ、我が一族の再興…グア軍団の復活を…」
――よかろう…だが、貴様らにはそれ相応の“縛り”を設ける――
すると、異星人たちの体躯は元の山に等しい巨体から徐々に縮められて地球上に自生する木々と同等の10メートルほどのサイズへと縮小した。
「なっ、なんだこの力は…我が闇の力が弱まってしまった」
「私もだ…これではまるで、下等な生物と等しいではないか!」
――自惚れるな、余からすれば貴様らも人間も等しく“生き物”にすぎん…お前たちは力に慢心したが故に失態を繰り返したことを忘れるな これ以上、余を失望させることあれば更なる“恐怖”が貴様らを蝕むことになるぞ――
「はっ、御望み通りの結果をお示しいたします!」
3人の異星人のリーダー的存在『モルド』は地面に拳をつけて腰を低く屈み伏した。その後ろの弟と妹も兄の後に慌てて姿なき主に絶対の忠誠を誓う構えを示した。
やがて姿なき主の不快な思念は途絶えて緊迫な空気から解放された。
「あっ、兄者!いつまで我らはこのような仕打ちを受けなければならんのだ…そもそも惑星カノンの軍事力向上の情報も無しに送り出したのは奴の失態なのに…」
「よせ、ジュダよ!…常に我らの言葉が彼の御方に筒抜けだ」
「構うものか…兄者、私もいい加減うんざりだ グアの三大軍団長として名を銀河に轟かせた我らの栄光を汚しているのは奴の方だ」
モルドの妹ギナと弟ジュダは自分たちをこき使い回す姿なき主ガタノソアに対する不平不満が爆発寸前であった。
「しかもこの星での今回の“縛り”…ふんぬッ!」
ジュダは自慢の長剣を振りかぶって斬りつけようとした木は斬れぬどころか刺さった木に引っかかった。
「我がバットキャリバーが闇の力を失ったことで切れ味が落ちてしまった…これでは唯の棒きれと何ら変わらん」
「武器があるだけマシだ…それに縛りは強ければ強いほどに我らの願望は良い形で叶う そう信じるしかあるまい」
強引に自分たちの都合に良い解釈をして目的へと行動に移す為、3人の異星人モルド、ギナ、ジュダは“騨魂の村”へと向かいつつあった。
アンバランス小話
『身から出た錆』
その日はいつも通りGIRLSの活動を終えたアキが帰って来た時だった。
「ただいま~」
「んんっ~、おけぇ~りぃ~アギちゃん」
出迎えたのは昼間から働きもせずに家でぐうたらしているだけのミオだったが…そこまではいつも通りであるはずが、ある異変に気が付いた。
「んんっ~なんか気だるいぃ~…酸っぱいものほしいわぁ~」
今日に限ってやけにミオの気分がすぐれない様子、季節の変わり目にしては時期早々すぎる。
「ミオさん…大丈…ブゥッ!?」
ミオの様子が気になって彼女の様子を伺おうと見て早々にアキはとんでもない物を目にしてしまった。
「みっ、ミオさん…そのお腹…」
気分の低下、酸味を求める、そして…不自然に膨らんだ腹部にアキは動転した。
「んっ…あぁコレ?…ウフフッ、ユウゴ君から…もらっちゃった♡」
アキの頭上に衝撃の落雷が落ちて来た。
「あぁ?…俺から何をもらったって?」
台所から顔出して来た諸悪の根源にアキはユウゴの胴体に跳びついて胸倉を掴んだ。
「おっ、おおおっお兄ちゃん!!あっ、アレはどういう事!?どういうつもり!?どう責任取るのさぁ!?」
「はぁ?…」
アキが震える指先を身体傾けて見たユウゴは…
「おまえ、なんで貰いもんのバスタオルを腹に詰めてんだ?」
「バ・ス…タ・オ・ルゥ~?」
「えっへへ~、だってこれ超高級なヤツじゃん!触り心地いいんだも~ん♡」
ミオの腹が膨らんでいたのは単に服の中にもらったばかりの新品のタオルを入れていただけであった。
本来ならば自分の勘違いだったと気持ちは落ち着くはずが…今回ばかりはアキの中で何かがプツンと切れた。
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翌日・GIRLS東京支部
―トレーニングルーム―
「ひぃっ、ひぃっ…えっ、なんで!?なんでお姉さんが走らされてんの!?」
本来であれば怪獣娘の身体強化を目的とした当施設にはピグモン直伝のハードコースプログラムがあった。
ミオが走らされているのは背後から棘が迫りくるロードマシーンに手足への風船(重し)付きランニングであった。
「ねぇ、今日のアギちゃんなんであんなに怒ってはるん?」
「さっ、さぁ…」
普段は悪ふざけでアキをいじり倒すゴモラやスパルタトレーニングはピグモンにも負けないレッドキングをもいささか困惑させるアキの豹変ぶりに戸惑っていた。
「ゴメンって!何をそんなに怒らせたのか分かんないけど、ゴメンねって!!」
必死に謝るミオだが…
「ビーコン、速度アップ」
【イエス、マム!】
片手に竹刀を持つアキの指示でビーコンはマシーンの速度レバーが最大値に達して更なる追い込みが掛った。
「ひぃぎゃぁあああッ!!死ぬっ!!死んじゃうぅうう!!」