TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐   作:神乃東呉

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託された未来

 本来であれば40週目を迎えた妊婦の外出は危険を伴うため現代では8か月(28週から31週)が外出の可能時期にあたる。しかし、ここは明らかにアギラが居た現代とは違い文明が逆行した世界ならば当然医療機関などあるはずもなく調べる術はない。

「……逆子だ…ちょっと取り出しが困難似なりそう」

 アギラはオサタのお腹に触れただけでお腹の中の赤ちゃんが生まれるための向きとは逆向きであることを見抜いた。

「どういうことなん、アギちゃん」

 どうしてアギラがそんなことに気付けるのかミカヅキに似ている者は疑問を抱きつつも彼女に聞いた。

「長距離の移動が原因かも…移動と共にお腹の子が大きくなるにつれて向きが反転していったのか、あるいは生まれつきか…どちらにしてもこのままだと身体から先に出て来ちゃうよ、コレ」

 状況は切迫していた。逆子の場合、緊急手術を有する場合がほとんどで医療の発達した現代では帝王切開による人工分娩が主流となっていたが今いる時代の世界のどこにも順当な病院も無ければ医療技術も発達していない。

(そうか…この時代って病院も無いからこうして手探りでやるしかないんだ……んっ?あれっ?)

 やけに客観的にアギラとその周囲の人々が妊婦のオサタの為、懸命になっている様子を眺めている…ことを今更アキは気が付いた。

(――って、ボクが幽霊みたいになってるじゃん!?)

 つまり、今この場には存在が半透明な宮下アキとやけに助産医療に詳しいアギラが居るおかしな状況が起きていた。

(みっ、みんな誰もボクの事に気づいていないの!?…ボクはここだよ!誰か、気づいて!!…って、うわっ!?触っても透けてるから触れないよ!?)

 必死に存在をアピールしても誰にも自分に気づいてもらえず近くを通る人の手当たり次第に触れ回ろうとしても身体が透けているため触った者の身体を素通りするばかりであった。

「仕方ない…帝王切開による人工分娩で取り出すしかないわ、後は“私”が行うから旦那さん以外みんな一旦外に出てて!」

「わわわっ、ちょ、アギちゃん!どういうこと!?」

 そう言ってアギラはツクヨミ以外を一旦外に追い出して立屋敷内はアギラと妊婦のオサタ、そして夫のツクヨミのみになった。

「さて、旦那さん…応急用の医療器具、持っているわよね」

「えっ?」

 ツクヨミとオサタの格好は村の人たちと同じこの時代に合った服装、すなわち文明レベルは彼らと同じ時代を生きる人間であるにも関わらずアギラはツクヨミに医療器具を所望した。

「“私”は呼ばれてここに飛ばされてきた、この時代の人間じゃないわ…この時代の医療技術では彼女とお腹の中の子も助けられない いい加減“地球人”のフリをせず、“私”に協力して」

 アギラと思しき人物の口調の変化と見抜かれているツクヨミたちの正体、もはや隠し立てる必要は無いと悟ったのかツクヨミは肩をすくめて腰袋に手を回した。

「…どうぞ、カノンの医療器具です 応急処置用ですが…」

「使い方は聞いている…これでも私の時代のよりもはるかに優秀なはず」

 そう言ってアギラと思しき人物は手渡された手帳サイズのデバイスのような機器を使用して宣告通り使い方を知っている手つきで操作パネルに指を走らせた。

 すると、デバイスの中から光線上の一筋の光が現れて扇型に広がると光から形成される粒子状の物質が医療用の手術台、手術器具、無菌室バルーン、そして手術着と緊急用の輸血の入ったバッグ、そのどれもが後の時代に形成される現代医療製品と何ら遜色ない代物ばかりであった。

「それじゃあこれより帝王切開による人工分娩を開始します」

 そして、アギラはツクヨミのデバイスから作り出した手術着と手術用手袋を嵌めて手術台の前に立った。

 手術台の上には手術衣に着替えさせた妊婦のオサタと同じく手術衣に着替えたツクヨミが彼女の傍らで手を握りしめていた。

「御心配には及びません…イザナ様、私が傍についております」

「あなた…今更王族としての私として扱わないでください…いつも通り、『オサタ』と呼んでください」

 『イザナ』…それが妊婦オサタの本来の名前であるようだ。そして、彼ら彼女らと外で待つカイシンはこの“地球上”の住民ではなく地球外から来た者たちだ。

「……いい加減、私のフードの中に隠れてないで出てきたら」

 まるで誰かに話しかけるかのようにアギラと思しき人物の襟巻フードの中からヒョコッと鳥の模型のような金属製の生き物が姿を現した。

(ああっ!…ボクをこの時代に飛ばした鳥!!)

 半透明のアキはその姿を見るなり自分をこんな時代の場所へと強引に連れて来た鳥型の生命体であることに指先が伸びた。

『…その節は申し訳が立ちません…事態は一刻を有するためあなたを無理矢理お連れするほかなかったのです、宮下アキさん』

(ボクの事が…見えるの?)

『はい…今、我が娘を“手術”なる手段で娘とお腹の子を助けて下さっている方のお力が必要でしたので…』

 そう言うと鳥型の金属生命体はアギラと思しき人物の襟巻フードの中から飛び出して手術中のツクヨミとオサタの前にその真の姿で本来の大きさへと戻って見せた。

「あっ、あなた様は…アマテ女王様!?」

「はっ、母上!?…生きていらしたのですか…」

『生きていたとは…とても言い難く、残り僅かの“戦神”の力を使いつくして最後の使命を全うしたまでです』

 鳥型の金属生命体は“戦神”と呼ばれる存在の力を宿すツクヨミとオサタにとって大事な人物の仮の姿でもあった。

「お教えください、アマテ女王…カノンは…惑星カノンはどうなったのですか!?」

「私も知りたいところね…あなた達が何者で、なんでこの星に逃げてくることになったのかを…」

(……えっと、ボクも知りたいです……)

 それぞれが求める真実は複数あれど1つの道筋にある。なればアマテの残留意思たる鳥型の金属生命体はゆっくり頷いた。

『…わかりました、あなた達がカノンを旅立った後に何が起きたのか…そのすべてをお話いたします』

―王立惑星カノン―

 

 街は炎に包まれ、星の中心に聳え立つ“命の木”は大火によって激しく炎上していた。

「アマテ女王、脱出の準備が整いました…船には既にイザナ様がお待ちです」

「……わたくしは…この星に残ります」

 命の木もその下に広がる街も見える城の上から見通す精錬違わぬ眼差しを向けるこの星の女王アマテは星の終焉と国の崩壊と共にしようとしていた。

「なりません!…既にグア軍団がこの惑星カノンに甚大な被害を及しています!」

 惑星カノンはこの時『侵略』を受けていた。遠い宇宙より飛来した数多の怪獣軍団を引き連れて同惑星に侵攻しつつあった。

「だからこそ、戦神としてわたくしが残るのです…貴方がたが逃げる時間を稼ぐために、私はここに残りグアの軍団を迎え撃ちます」

 アマテはツクヨミの手を取って自身の気持ちを彼に託した。

「どうか娘を…夫であるあなたが救ってあげてください、これは義母である私からの最期の命令です」

「アマテ…様……くっ、了解…しました」

 そう言ってツクヨミは彼女の方を振り返ることなく脱出機へと向って行った。

 アマテもそれを見送った後を見計らって、全身が光に包まれると光の矢の如く飛び去って街中へと着地した後に街の中にある建物よりも巨大な“戦神”へと変身を遂げた。

―ズシィイイン…

「見捨てられたな…“香音の女王”アマテよ」

「フフフッ…我々の様に姉弟仲を違わなければ、このような結果にならずに済んだものを」

「スサノ皇は我らグア軍団を再三にわたって手こずらせた強敵であったが…女王たる貴様はどうだ?アマテ女王よ」

 街に現れた3体の巨大な闇の戦士“モルド”“ギナ”“ジュダ”はそれぞれ武器を携えて武力を持って戦神の制圧に躍り出て来た。

「…弟はそういう人です…私とあの子との間はあなた方には理解し得ない繋がりなのです」

 アマテの戦神は金剛杵型の武器を出現させて捻るギミックを展開すると先端部分が突き出て槍状の武器が出現した。

「兄者、ここは私にやらせてもらおう…光栄に思え、私がお前の弟の代わりとなって引導を渡してやろう」

「あなたでは役不足です…が、女王としてあなたの挑戦をお引き受けしましょう」

 ジュダと戦神、互いに武器を持ち構えて睨み合う膠着状態となった。

「挑戦だと…この宇宙の帝王たる私こそが王者であり、貴様こそが挑戦者だ!!」

 均衡を崩したのはジュダであった。ジュダは戦神に向かって剣を振りかざし斬りつける…が、しかし…戦神もその剣戟を槍で受け流すように体勢を乱すことなくジュダとの剣戟を繰り返すのであった。

「フンッ!脆弱な光の力にしては中々だが…所詮は小手先の小技だ!!」

「グっ…がぁあああ!?」

 ジュダは至近距離での剣による近接戦を捨てて魔法染みた黒い雷撃を用いて戦神に叩きつけた。

 戦神はジュダの雷撃の威力をまともに喰らって街一番の大きな時計塔に激突して意識を失った。

「もはや惑星カノンも終わりだ…矮小な下等生物の分際で国域を広げんとする野望なぞ抱いたそなたらの無様な結果だ」

 ジュダは時計塔に項垂れる戦神に向かって剣を高々と掲げトドメを刺そうとする時であった。

「待てぇええ!ジュダァッ!!」

「ぬっ!?…どうしたというのだ、兄者 なぜ止める!?」

 静止を促したのは兄のモルドであった。

「槍は…その者の槍はどこへ消えた!?」

「槍だと?…今更コヤツの武器なぞどうでも…」

「馬鹿者!! 存在せんのだ…惑星カノンの戦神に、携行武器は本来“存在しない”!!」

 兄モルドの言葉に悪寒がジュダの全身を走らせた。嫌な予感がする。兄は常に正しい事しか言わない。周囲を確認しても確かに戦神の槍はどこにもない。

「――ッ!?ジュダ!!後ろだぁあッ!!」

 姉のギナが気づいたころにジュダも“ソイツ”にようやく気が付いた。数多くの光の戦士と相対して死闘を繰り広げて来たグア軍団にして侵略軍の長たるジュダが初めて“恐怖”していた。

 “ソイツ”は自分と背中合わせになるように…いる。

「うわぁああああああああ!!」

「よせぇええ!!ジュダァアッ!!」

 慌て冷静さを欠いたジュダは“ソレ”に愛剣バットキャリバーを振りかざす…―ズバァアアアアンッ!!――

「ガッ…はぁっ!?」

 自身が斬りつけた…にも拘らず、何故か自分自身が斬り傷を受けていた。

「ジュダッ!!貴様ぁああッ!!」

「よせッ、ギナ…ヤツへの攻撃はッ――」

 モルドの静止を聞かず、妹ギナは自慢の鞭攻撃を繰り出すが…―ズバシャアアンッ!!――

「ギャァアアアアアアッ!?」

 ジュダと同じくギナも攻撃が同じように自身に跳ね返って来たかのように同じ鞭での攻撃がギナにぶつかった。

「まっ、まさか…ダゴンかッ!? 戦神、貴様は正気なのか!?文明を…この星間文明すべてを根こそぎ消去するつもりかッ!!?」

 侵略者としてこの星に降り立ったモルドをして狂気の沙汰と言える行為に酷く恐怖した。宇宙広しと言えど宇宙の摂理でありシステムとして存在する“ダゴン”とは世界そのものの消去を意味している。

 それすなわち、元からあった土地も、築き上げた文明も、そこに住まう人々諸共カノンを始め、周辺惑星に散らばるカノンより旅立ったカノン人諸共消し去る所業であった。

「私が…守るのは……カノンの未来です…その先の未来にあなた方のような侵略者の魔の手を断じて許しません」

 戦神は最後の力を振り絞って両手で印を結び形状を変化させ金属質な鳥型の姿に変化した。その瞬間、翼を大きく羽ばたかせ惑星カノンから亜高速で離脱して行った。

 そして…槍から出現したダゴンは光槍を持ち構えて跳び上がった。

――……ノヴァ……――

 次の瞬間、光槍は空中で振りかぶるようにして投げつけ槍はそのままカノンの大地へと突き刺さるとそこから一気にドーム状の光と共に膨張し続け街も木々も跡形もなく光の中に消えていった。

「ジュダァッ!ギナァッ!脱出するぞ!!」

 膨張し続ける光に恐怖したモルドは2人のポイントマーカーを起動させ、別銀河に待機させていた宇宙船へとワープして逃げ去った。

 光と共に更なる膨張を続け、王立惑星カノンを始め周辺惑星諸共消失して行った。

 すべて故郷の星『カノン』の末路を知る事となったツクヨミは言葉を失って床に腰を抜かして着いた。

「…カノンが…消え…たッ」

『あなた達に私の罪を背負わせるワケにはいきません…どうかこのまま地球人として未来に進んでください』

 生き残ったカノン人のツクヨミとオサタことイザナも外で待つカイシンも村に住む人々と何ら遜色のない生物学的ヒト同士であった。

「へたってる場合じゃない、出るよ!!」

(わわわッ!?どっ、どうしよう、どうしよう!?ボクなにすればいいの!?…って言うかボクの身体ぁああ!!)

 半透明なアキは今にも切開したお腹から胎児を取り出そうとするアギラにポカポカと拳を振り回すも透明が故にすべて空振る。

「んんンンッ~~~~ッ!!」

 布を口にしがませて麻酔が出来ないため痛みはオサタ自身で耐えるしかなかった。

(うぎゃぁああああッ!!ひぃいいいい!?)

 初めて見るガチの帝王切開という手術による人工分娩に恐怖したアキは視界を覆い隠すが手も、瞼も、半透明なほぼ残留思念態のような状態であるため目を背けきれなかった。

「――…よしッ!出たよッ!!」

 取り出しきった胎児を清潔な布で包んだ。しかし、これで終わりではなくここからが重要である。

 通常、母親の胎内にいる内に胎児は常に羊水と呼ばれる液体は形成したばかりの胎児の肺から口腔内に至るまで満ちている。これを吸いだして胎児は初めて呼吸を行う、すなわち“産声”を上げなければならなかった。

(ううっ…ええっと…がっ、がんばれ~ッ!がっ、がんばれ~ええ!!)

 今の今まで何もできないアキはせめて精一杯応援するしかなかった。

――…ケホッ…ァッ―アアアッ!!アアアッ!!――

「出たッ!おめでとう、元気な男の子だよ…」

「はぁああッ…よかった、ありがとうございます」

 アギラの身体を借りる者は産声を上げ続ける赤ちゃんを母親になったオサタの傍に近づけた。

「あとは縫合して、経過と共に4週間で子宮の収縮は収まるからね」

 そして、アギラの身体を借りる者は赤ちゃんをキャリーベッドに優しく置いて厚手のタオル生地で身包んだ。

「それじゃあ、縫合を…んっ?」

 アギラの身体を借りる者は消毒したお湯に浸かる医療器具を取ろうとした時…微振動で湯の中が波紋を描いていた。その振動は地震などで揺れるような震動ではない。

「……何かが…起きている…」

 一方、その頃…

「みんなぁああッ!声が聞こえた!産声を上げたよ!!」

 外から聞いていたミクに似た者たちは村の仲間たちに朗報を知らせた。

「ははァ~ッ!まったくめでたい事か…新たなる赤子の産まれに立ち会えるとは、よもやよもや!!……こう言っては何だが、下してはもらえぬか?」

 朝廷からやって来たというヤマトのタケルという男も新たな命に祝福を送るも…縄で簀巻きにされた上で物見やぐらの上で逆さ吊りにされていた。

「ダメッ!戦士のみんなが下すなって言ってたもん!!」

 村のみんなで簀巻き逆さ吊り状態の男を監視していた。

「しかし、すぐ近くに何やら禍々しい気配を感じる…これは私の正義が必要な時とは思わぬかッ?」

「別に…戦士のみんなの方が強いもん、寧ろ気の毒なのはこの森に立ち入ってくる外敵の方だよ」

 やけに戦士に対して強い信頼と見えている結末に覚えがあるようであった。

―騨魂の村近辺・森―

 

「あっ、兄者!!なんなんだこの森は…」

「こんな危険な原住民がいるなど…やはり情報不足過ぎる!!」

 森は10mなど軽く超える大きさの木々が生い茂っているせいでモルドたちを翻弄していた。

「うっ、狼狽えるな…一度集まって体制を立て直…セッ!?」

 すると、最初の犠牲者はモルドであった。どこかへと消えたモルドの声は気配も分からぬ森の陰に消えてしまった。

「あっ、兄者!!どこだぁああ!!どこへ…」

「うわぁああああああああッ!!」

「姉者ッ!?」

 次にギナ、そして残されたジュダはそれまで3人と行動してきたが…ここぞとばかりに頼れる2人の兄と姉のいないこの状況に弱体化させられ無力と蔑んできた自分よりも能力の弱い者と同じ“恐怖”を味わっていた。

「はぁっはぁっはぁっ…クソッ、なぜこの私がこんな事に…」

――ガサガサッ…

「ヒィッ!?」

 風に揺れる草にすら恐怖を覚える始末、恐怖心は極限に達していた。

――ドンッ…グルルルッ…

「うわぁああああああああッ!!」

 後ずさりした背後に現れた恐怖の対象にジュダは果敢にも立ち向かうが…こぶし大の何かに強い衝撃を乗せて顔面に直撃し吹っ飛んだ。

「ぐわぁあああああッ!がはっ!?どわっ!?ぐぶっ!?」

 更にそれだけで終わるわけもなく、赤い翼を広げる怪鳥に捕まって振り回し落とされ、そのまま地面から飛び出して来た大砲級の衝撃を受け、再び吹っ飛ばされて落ちて来た場所から待ち伏せていた何者かに地面に着く暇も与えずに打撃のラッシュを受け、殴り飛ばされた先で大木のような何かで首を直撃し一回転した上でようやく地面へ文字通り“落ち”着いた。

「ぐっふぅ…きっ、貴様ら…何者…だ」

「…俺たちは…お前の悪夢だよ」

「あっ…悪夢…だと……うぐっ」

 気を失ったジュダは悪い悪夢に醒める事を願って気を失った。

 ジュダたちと同じ大きさの怪物たちは口から青い石を吐き出した。

「フンッ、久しぶりのデカい獲物だと思ったが…存外大したことは無かったな」

「デカいだけで人間と変わらんな」

 倒れるジュダの頭の上で捕らえた獲物に対する評価を考えるアンギラスたちに酷似した怪獣戦士(タイタヌス)はそれぞれ怪物が吐き出した青い石を所持していた。

「みなさぁ~ん!青石、回収しますのでこっちに回して下さぁ~い!」

 ピグモンに酷似した怪獣娘は戦士たちに駆け寄って腰袋を広げて戦士たちが所持する青い石の回収に回る。

「しっかし…相変わらずえげつない捕らえ方ね…これなら殺されていた方がマシだったんじゃないの?」

 ベムラーに酷似した怪獣娘は地面に倒れ伏すジュダを始め大きな木々に逆さ吊りにされて気絶するモルドとギナに同情の念が過っていた

 

――なんと、またしても失敗しおったな…おのれ、ダゴンの戦士と使徒どもめ こうなれば余自らが手を下さなければならん…神である余が生物なんぞに“転生”せざるを得んとは…――

 

 思惑通りな結果に至らなかった姿なき神ガタノソアは地球の地熱と土石で構成された新たな怪獣を生み出し始めた。

 図らずもそれは自然界に突如現れた災厄として“怪獣”が生み出された瞬間であった。

――ドゴォオオオオンッ!!

――ギャァアアアアアォオオオオンッ!!

 

 

 その衝撃波は森を伝って山が突如噴火を始めた様な出現であった。

「なんだアレは…魔獣か!?」

「マズいぞ!アイツの向かう方向は…村の方だ!!」

 溶岩を吹き出しながら山の麓より出現した怪獣は重い足取りを着実に1歩ずつ村の方へと向かい降りて来ていた。

―騨魂の村―

 

 その事態は村にも確認ができた。戦士たちがいる位置よりも出現した怪獣にかなり近い距離に位置するため早急な避難が急がれた。

「みんな早く来いッ!石立屋に逃げるんだ!!」

 村に残っていた女性たちが後の婆羅慈遺跡と呼ばれる事になる遺跡群内部へと逃げ込んでいる中…遅れて術後のオサタと生まれたばかりの赤ちゃんを抱えて走り抜けるアギラとツクヨミが見えた。

「急げぇええ!!せっかく救った命をこんなことで落とさせるもんか!!」

(ふえぇぇぇッ!!なんでボクまでこんな目にィイイ!!)

「ハァッハァッハァッ…イザナ様……いえ、オサタ…ずっと夫婦でいることに私は戸惑いがありました…父親になるという気持ちにも迷っていました  しかしッ、今はもう迷いません!一緒に生きましょう!無きカノンの民たちの分まで…どれだけ長い旅になることになっても…」

「……はいッ…」

 術後の低下した体力の残りを振り絞ってツクヨミへの返事を帰したオサタの口はどこかにこやかに微笑むようであった。

「お前ら!!飛び込めェエエ!!」

 ベニオに酷似した村娘が叫ぶ。アギラたちは彼女の言う通り急いで遺跡の入口に振り絞れる全速力で向かう中、上空から降ってくる落石群がアギラたちに迫っていた。

――ズドォオオオオンッ!!…パラパラッ…

「かっ…間一髪ぅう~~!!」

 アギラたちは辛うじて滑り込みながらも難を逃れていた。身体は五体満足、怪我一つもなく…

―あぁ~ぶぅううッ…

「赤ちゃんも無事だよ…」

 抱えていた赤ん坊もオサタに優しく繊細な手つきで彼女へと託した。

「あぁ…ありがとうございます…一度ならず、二度までも私たちを救っていただいて…」

「うんうん…頑張ったのは、私じゃなくてあなたの方よ」

 決して自分の力ではなく母親であるオサタの頑張りであると諭したアギラはオサタの頭を撫でまわすように彼女の頑張りを称えた。

「さぁ~て…私はもうひと頑張りするとしますか」

「待たれよ、面妖な術を使うモノノ怪の子よ」

 せっかく逃げ込めた避難場所の遺跡から外に出ようとしたアギラをヤマトのタケルなる男は引き止めた。

「なに?」

「…そなたの行った術…面妖ながらも実に奇跡に満ちた尊い行いであった 私からコレを託したい」

 そう言ってヤマトのタケルは左手に装着していた篭手を外すと縮小してリング状の装飾品に変わった。

「アンタそれ…義手だったの?」

 ヤマトのタケルという男は左腕の無い隻腕であった。

「…昔の私は自堕落なモノでな…血を分けた弟にすら存在を否定されてこの様だ これは私なりの戒めだ」

「腕が無い…この時代で…ヤマト…のタケル?…もしかしてアンタ…」

 アギラはこの男の素性について何かに気づいたが…男はアギラの顔の前で手を翳した。

「それ以上の詮索は結構…自分の“正義”を履き違えていた男の罪をいちいち気になさるな、それよりもそなたに出来る事があるならそれをやって見せてほしい」

 そう言ってヤマトのタケルはアギラに輪装飾を差し出した。

「…わかった、ありがたく使わせてもらうわ」

 そして、装飾品を左手に装着したアギラは未だ火山岩降りしきる外へと飛び出して行った。

 遺跡から少し離れて村の様子が見える峠の場所まで登って来たアギラだったが…騨魂の村は出現した怪獣によって足踏みするだけで簡単に壊されていった。

「……それで、こんな光景を一体誰が望んでいるのかしら…ねぇ、アキ」

(…やっぱり、ボクの事が見えているんだね)

 アギラの身体の本来の持ち主であり、その意思として今も彼女の肉体に傍で対峙する思念態のアキだったが…

「そうよ…仮にもこれはアンタの身体だもん、私のじゃない」

(誰なの!?…ボクの身体で好き勝手しているけど…でも、そのどれもが何故か悪い気がしない)

 お腹を大きくした妊婦を助けたり、全力で救った命を救おうとする強い意思…何より揺らめくように輝く赤い瞳の色がアキとは異なる別の魂がその身体には宿っているようでもあった。

「アキ…私は、あなたが本来目指そうとする先に居るの…私はあなたが為りたい自分になせる為にここにいる…いいや、残っているって言った方が正しいかしら」

(為りたい…自分?)

 アギラに言われたこと『為りたい自分』について深く考えさせられた。

「思い出して…アナタはどうして怪獣の力を宿せたの?」

(ボクが…怪獣の力を求めた…理由…)

 告げられた言葉の意味の通りアキは原点に立ち返って自分が本当の心から怪獣の力を求めた時のことを思い返し続けた。すると…そこには『他の誰かでなく、自分がやらなきゃ』という気持ちがあった。

(あなたが誰なのか分かんない…けど、ボクは他の誰かが出来ない時、傍で支えてあげる事しかできなくてもボクがやらなきゃって思ったからアギラに為れた…ボクはボクだ!あなたみたいにお医者さんみたいなことなんてできないけど、ボクはボクなりに頑張る!応援する時は応援する!励ます時は励ます!それが…ボクの使命なんだ!!)

 思いのたけをぶつけたアギラのGIRLSの怪獣娘としての記憶のさらに奥底に蘇る…忘れていたもう一つの記憶があった。

【おおきくなったら…おかあさんみたいな、おいしゃさんになりたいなぁ~】

 幼いアキが子供ながら誰かに向かってにこやかな笑顔で自身の夢を伝えていた。

(これって…)

「思い出したのね…忘れないで、アキ その思いはあなたの大切な力の根源よ  だからこんなもの、今のあなたには必要ないわ」

 そう言ってアギラが取り出したのはソウルライザー…をグシャリッと木っ端微塵に握りつぶした。

(ギャァアアアアアアッボクのソウルライザーァアアアアッ!?)

「…いいアキ…薬ってのは飲めば飲むほどよくなるものじゃないの、用法用量を正しく理解して服用しなさい それと、これは1回1錠よ」

 アギラが握りつぶしたソウルライザーの残骸から1粒の青い石が出て来た。

(それって…アーカライト!?)

 それはソウルライザーの部品の中で最も高価な代物である『アーカライト』と呼ばれる青い鉱石であった。

「それを…こう!」

(うわぁああああッ飲んじゃった!?)

 その一粒だけをアギラは口に放り込んで見せると胸の奥から強い鼓動が繰り返され始めた。

(うぐっ!?何コレ…胸が…苦しい)

 飲んだのはアギラの肉体側であるにも関わらずアキの思念態にまで痛覚が通じていた。

――それは副作用よ、ちょっと動悸が激しくなるけど動悸は一時的なものよ――

(えっ?…何ッ、ブウッ!?)

 声のする方を振り返ると後ろから誰かに押されるようにしてアキの思念はアギラへと帰還して行った。

「ぐえぇえええッ!?めっちゃくちゃくるじい!?何ッ、何なの!?すごく苦しいんだけど!!」

 元に戻った矢先に待ち受けていたのは激しく高鳴る心臓の鼓動がドンドンと早くなっていく…到底人間が出せる速さを超えようとしていた。

「うっ、ううっ、うわぁあああああああああッ!!?」

 やがて身体のウチから広がる強い鼓動は膨大なエネルギーの放出によって一気に解放されるようにアギラの身体をエネルギーが形成し始めて1つの巨大な物質へと変換された。

――ズゥドォオオオンッドォオォオォオォ…

―グルルルッ…

 村を破壊し回っている怪獣の前に現れたのは大きな角に頭の周囲を覆う襟巻…そして、40メートルを超える山に等しい体躯がそこに現れた。

「うわぁああああッ…ボッ、ボク…本当に怪獣になっちゃった!?」

 その姿、その体躯、まさしく怪獣そのもの…アキは怪獣娘アギラではあるものの肝心のその大きさは40メートル以上に変貌を遂げてい。

―ギャァオオオオオオオンッ!!

「ギャァアアアアアアアアッ!!」

 アギラは恐怖した。本当に怪獣になってしまった自分自身にもそうであるが…最も相手となる怪獣は今まで図鑑で見て来たどの怪獣よりも凶悪な顔つきをした獰猛なモンスターそのものであった。

 しかも、こちらを視認するなりこちらに向かって突進してくる気である。

「うわぁああああ!!こっち来ないで、来ないでよぉおお!!」

――アキ、聞いて…アキッ!――

 頭に直接入って来る誰か声にアキは意識を集中さえた。

――どうしてもアナタでは手に負えないって時はあのバカを呼びなさい…そういう時の為にアイツが居るんだからね――

「あっ、アイツって…もしかしてお兄ちゃん?…こんな状況にどうやってお兄ちゃんが来れるって言うのさぁ!?」

――私が言うのもなんだけどアイツだけは規格外の大怪獣だし、まぁ…何とかなるわ、きっと!――

「ええっ~…」

 謎の声にしては曖昧なアドバイスにアキは言葉を失った。だが、怪獣になったばかりのアギラに凶悪な怪獣への対処法など無かった。更に…

―グパァアアッ…ピィシュンッ!!

「グエッ!?なにコレ……ぎゃああああああッ!?」

 アギラの首に巻き付いて来たのは怪獣の胸より開かれた体内より触手のような器官がアギラを捕らえていた。

「うっ、うわぁああああもうこうなったらお兄ちゃんでもいいから誰か助けてぇええええ!!」

 切なる願いを天に向かって叫ぶ様に危機的状況を打開してほしいと願った。

――ヒュゥゥゥゥウウウッ…

「フェッ?」

 不思議な光景がアギラの目に入った。遥か上空より黒々とした体表に覆われて赤い背ビレを背中に生やした大質量が怪獣めがけて真っ逆さまに落ちて行き…そして…

――…ズゥドォオオオンッ!!

―グギャァアアアッ!?

 怪獣を下敷きにして衝突した。

「あぁ?…計算式あっているはずだろう…なんで空から落ちることになったんだ?」

 その姿、この無茶苦茶な登場の仕方、そして人の頑張りを悉く無に還す超インパクトの権化のような存在が呼んだら本当に現れたことにアギラは声を失った。

「えっ、おっ…お兄ちゃん!?」

――えっ、何アレ…怖ッ…――

 アキが元居た時代よりユウゴことゴジラが次元を超えて助けに来た……100メートルの大怪獣となって…




アンバランス小話
『古代人アギの災難』

 これは森の中の村に住むごく普通の少女の話。
(ボクはアギ…この森の中で仲間とキノコを採りにやって来た…が………みんなとはぐれた)
 仲間たちとはぐれて途方に暮れていた。
(正直、暗くなってからの夜の森は危険だけど…みんなの元へ帰らないと今頃はお腹を空かせている頃だろう)
 そう言いつつもお腹を空かせているのは自分だったりする。しかし、アギが拾ってきたキノコも重要な食糧である。
(さっきから山の方で大きな音もしたし、森の奥から戦士たちが狩りをしているのだろうか…日が沈みかけているし…)
 アギは夜が近づきつつある空を見上げたら…空から怪獣が降って来ていた。
「空からなんか振って来てるゥッ!?」
 落ちて来た怪獣の衝撃波は想像絶する威力であり突風吹き荒れる森の草々を木が傾くほどに吹き荒れた。
「うわぁああああああああッ!!?」
 当然、アギも巻き込んで森のさらに奥へと吹き飛ばされていくのであった。
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