TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐ 作:神乃東呉
突如、山より出現した怪獣に迎え撃つことになったアギラは何者かに肉体を乗っ取られた上にソウルライザーを壊され、中から青い鉱石『アーカライト』を丸のみにして巨大化を遂げた矢先に……空から兄が降って来た。
「んっ?…なんだ探すまでもなかったな、帰るぞアキ」
「おっ、お兄ちゃん…どうやってここまで来たのさ!?」
「走って来た」
「走ってェッ!?」
そんな簡単な手段で時を遡れるなど俄かに信じがたいが…
「それよりもお兄ちゃん…なんか、いつもより大きくない?」
「あぁ?何がだ…」
事実、アギラが見上げるほどにその体躯は巨大化を遂げたアギラが小さく思えるほどに巨体のゴジラ・バーニングの腰半分ほどの大きさがアギラはやっと同列のサイズ比であった。
「あのさぁ…お兄ちゃん…」
「あん?まだなんかあんのか…」
「いや、これで最後に言いたい事なんだけど……ボクを襲おうとしていた怪獣、踏んでる」
「おぉう…あっ、ホントだ」
大質量のゴジラに踏みつぶされて既に虫の息も同然な怪獣は辛うじてピクピクと動きはあった。
「よいしょっと…んで?コイツどうするんだ?」
ゴジラは怪獣の首根っこを掴んで振り回した。
「ちょっ、扱い方!?」
またしても雑な持ち方で雑な扱い方が災いしたのか、怪獣の背中から何か棘のような破片がボロボロと落ちて行った。
「うわっ!?危なっ、危ないって!!」
アキはそれを避け躱す…しかし、その棘から見る見る地中の成分を吸収して新たな怪獣が生まれだした。
「うわぁ~!言わんこっちゃない!!」
大きさもアギラと同等サイズの昆虫型の怪獣や蜥蜴型の怪獣、全身に武器を備えた様な怪獣まで多種多様であった。
『宮下アキ…宮下アキ、聞こえますか?』
「その声…ボクをこの時代に飛ばした…鳥さん?」
『私は惑星カノンの守護を担う“戦神”という巨人の力を宿す王族の末柄でした…しかし、今はあなたをこの時代に送ることが出来たのが精一杯 最後にあなたがこの星の戦士から授かった“センジン”の力にアップグレードを加えます』
声のする右側のフードから出て来たアマテは戦神としての最期の務めを果たそうとアギラの左腕に装着する輪装飾に飛びつくと鳥型の戦神は装飾の一部となってブレスレット型の武器に成り代わった。
「あっ、ありがとうございます…でもこれどうやって使うんだろう」
授かった力に感謝を抱くものの…使い方が一切分からず悩んでいるその時だった。
―グギャァアアアッ!!
「うわっあぶない!!」
全身武器だらけの怪獣に攻撃を受けそうになったアギラは左手でガードをすると衝撃と共にブレスレットが分離してアギラの全身に黄金の鎧が展開された。
「うわっ!?すごいことになったけど……なんか、重いッ!?」
突如全身を硬質な鎧で覆われたアギラであったが身体が思うように動けず重量に翻弄されていた。
「おっ、お兄ちゃん…これもらったはいいけどすごく重いよ」
「んっ?どれどれ…」
ゴジラは動き切れないアギラを鎧の首回りを持って軽々と持ち上げて見せるが…
「意外と重いな…あっ!」
指先きから滑ってゴジラの肩まで上がった地点からアギラは落とされた。
「ふぎゅぁあああッ!?」
落下と同時に下に居た怪獣たち共々、土煙を上げて踏みつぶした。
「……太って…」
「ないよッ!!」
よろめくアギラは辛うじて立ち上がってやけくそにいつも通りのツノで突進するため額に意識を集中すると…
――ビュゥウウウウン!!…チュドォオオン!!
「うわっ、ツノから何か出た―ってわばばばばばばばばばッグエッ!?」
明かに光線状の技が発動したが…勢いが反作用を起こしてアギラは後ろ回りでゴロゴロと回転していきゴジラの足元に激突した。
「何やってんだオマエ?」
「あらほらへべれけぇええ~◎◎◎」
新たに得た力に振り回され目を回しているアギラに呆れ返ったゴジラは自身の足元を蠢く怪獣たちを前にして腕を組み、深く息を吸った。
先ほどからアギラにしか攻撃をしない怪獣たちはゴジラを前にしてかどうやって攻撃を仕掛けようか迷っている怪獣たちであるが戸惑っているようであった。
「――図が高いぞ、可燃ごみども――」
その一声だった。図が高い…アギラに比べて抜きんでて標高の高い怪獣たち…そんな怪獣たちが突如として発火ッ!!発火!!発火!!発火!!暴発!!暴発!!発火!!暴発!!暴発!!誘爆!!暴発!!誘爆!!…延べ20体以上が焼滅した。
「うっ…ううん?…えっ!?なに、なんで辺り一面が火の海になっているの!?」
アギラが目を開くと…そこは怪獣だったものと言うべきか森と共に火の手が上がっていた。
「さて、どこに逃げるつもりだ…八目野郎」
ゴジラの視線は最初の怪獣が出現した山の方へ向いた。
その山の麓では今にも逃げ出そうとしている怪獣がいた。
「…おまえ、知恵があるのか?それでも自我か?…どちらにしても俺がわざわざ逃がしてやるとでも?」
逃げようとする怪獣に対してゴジラはズンズンと大地を踏みしめて決して逃さない。
「――図に乗るな!ダゴンの僕ごときが、このザイゴーグは地獄そのものだ!!機会を待ってこの世界に地獄を…――」
「知らんッ!消え失せろ――」
ゴジラは背ビレからエネルギーの発光をチャージが完了し、口腔内から赤い発光と共に一気に放射した。
“バーニング熱戦”
それまでの攻撃の中でも特に強い効果力な赤色の光線が発射されて怪獣ザイゴーグ諸共、山1つが欠けるほどに消失した。
「――…やっ、やり過ぎだよ!!環境破壊!!地形崩壊!!どれだけめちゃくちゃな事すれば気が済むの!?」
「これでも手加減してやった」
「どこがぁあああ!!?」
やることなすことめちゃくちゃに破壊しまくった結果、周囲一帯は再生不可能なまでに無法地帯と化していた。
「なっ、なんだ…これは!?」
「おいおい、どうなっている!?」
丘の方では戻って来た戦士たちが村周辺を焼け野原にされている光景に目を丸くして驚愕していた。
「むっ、村が…森が…」
更に遺跡から様子を伺いに戻って来た村の女性たちも火の海と化した光景に口を押さえて言葉を失っていた。
「どーするのさぁ、お兄ちゃん!!ここに住んでいるみんなの居場所をめちゃくちゃにして!!」
散々暴れまわっておいて周辺を地獄絵図の様にしてしまったことをアギラはどう修復すべきかゴジラに問い詰めるも…
「そういった時には便利な行いがある」
「どっ、どんな…?」
「…事後謝罪だ」
方法はただ一つ、謝るであった。
・
・
・
「ごめんなぁあああああいいいいい!!」
「いやまぁ…ウチらはもともと定住地の無い流浪の民だから村がなくなったのは別にええんやけど アギちゃん、デカなったなぁ~」
騨魂の村のみんなが見上げてもまだ大きい40メートル以上の少女の土下座であった。
「…実はその…ボクはみんなが知っているボクじゃなくって…おそらくこっちの世界にもボクに似た子がいるんだろうけど、ボクは…その…未来の怪獣娘なんだ!」
衝撃的なカミングアウトを告げたが…
「へぇ~…そうなんや~」
「えっ!?感想うすい…なんでェッ!?」
「いや…未来とか怪獣…娘?とか言われても…うち等から見たらなんかデカなったアギちゃんぐらいって感じやし…」
理解力が高いのか、単に気にしていないのか…騨魂の村の住民たちは未来について何ら興味を持とうとはしなかった。
「――…ってことは未来のアギちゃんは、あたし達が知っているアギちゃんの子孫ってこと?」
「う~ん、ボクから見たら君たちが怪獣娘の先祖って感じがするよ…って言うかお兄ちゃんも謝ってよ!」
自分ばかり謝っているにも関わらずゴジラは地面に燃えた木を用いて何か書いていた。
「うるせぇ、コッチは再度計算し直してんだよ!コレ完成しなかったら俺ら未来に帰れないんだぞ!!」
ゴジラは未来の世界で表した途中式に自身の現在の体高とアギラの体高を計算し直していた。
「あっ、あの~!アギアギ…良ければこれを口に含んでみてください」
ピグモンに酷似した怪獣娘は青い石とは真逆の赤い石を腰袋からアギラの指先に置いた。
「なんだろう、これ?…アムッ…」
アキは手渡された赤い石を口に含んでみると40メートル以上あった身長が徐々に縮小していき元の大きさに戻れた。
「うわっ!?戻れた…でもどうして?」
「アギアギ、戦士はこの青い石を口にすると身体が大きくなって赤い石を口にすると元の大きさに戻れるんです」
ピグモンに酷似した怪獣娘が手にする青と赤の石は赤い方は見覚えが無いが、青い石はアギラのソウルライザーに備わっていた『アーカライト』に酷似していた。
「お兄ちゃ~ん!この赤い石を口にすると~、元に戻れるんだってぇ~!!」
「あぁ、男性の戦士さんは青い石の方じゃないと戻れないのです!」
アギラはゴジラに青い石を渡した。ゴジラも同じくアギラと同様に元の大きさに戻った。
「――…ペッ…まっず…」
ゴジラは口に含んだ青い石を吐き出した。
「はい、お預かりします…では、アギアギも」
「えっ、あれ飲むんじゃないの?」
「えっ?…飲まれ…たんですか?」
ただ口に含むだけであったのにまさか飲むとは思わなかったピグモンに酷似した怪獣娘は目を丸くして驚いた。
他の村の人たちもアギラが大きくなったことや、未来から来た者だと聞いても驚かなかったのに赤い石を飲んだと聞いてドン引きした。
「えっ…なんでみんなそんなに驚くのさぁ!?だって飲むものだと思うじゃん!?ちょっとした錠剤じゃん!?」
「アホか、人の話をちゃんと聞け…ほらよ!」
「ヒギャァッ!?」
ゴジラはアギラの尻尾の根本を掴んでアギラを逆さ吊りにすると…一気に上下に振り回した。
「うわぁああああああああッ振らないでぇえええ!!――ブエッ!?」―コロンッ…
アギラは振り回されたことで何とか吐き出して赤い石はお腹から出て来た。
「ぶぅ~…ぎもち悪い…」
「あっ、ありがとうございます…大事無くて良かったですね」
「よぐないよぉ…」
目を回して地面に項垂れるアギラは顔を真っ青にしていた。
「ふははははっ!よもやよもや、まことおもしろき面妖なモノノ怪の子等だ!」
「あっ!テメェッ誰だ、コイツの縄を解いたの!?」
戦士たちは縛っていたはずの朝廷から来たというヤマトのタケルなる男の縄が解かれている事に警戒した。
「待ってください!私が縄を解くように申したのです!」
戦士たちとヤマトのタケルの間に割って入ったのはツクヨミとオサタの従者カイシンであった。
「やはり…アナタはあの時の…」
「その節は驚かせるような真似をして済まぬ…そなたらが野盗の村に捕まったと思い助太刀に入ったつもりであったが…まさか噂に聞くモノノ怪の村とは思わなんだッ、ハハハハハッ!」
高らかに笑うヤマトのタケルだが、戦士たちには話の見えない状況に首が傾く…
「やはり、あなたは“オオウス”様でしたか…」
その中でツクヨミがこの男の正体に気づいていた。
「そなたらは何も気にせず旅を御続けなさい…朝廷は私の死でオサタどのを諦めになるであろう」
「やはりオシロワケ王ですか…」
「…父上も側室はいくらでもいるのにオサタどのにベタ惚れであったからな…ツクヨミどの、もう二度と綺麗な奥方を手放してはなりませんぞ」
どうやら朝廷というクニにツクヨミたちが滞在していた時期にそのクニの王に見初められてしまったオサタを逃がす為に芝居を打ったのがオオウスだったようだ。
「しかし、私たちなんかのためにオオウス殿は腕を…」
未だ傷口の新しい失った左腕は包帯を巻かれていた。
「少し聞き分けの無い弟と兄弟喧嘩をしたに過ぎぬ…そなたらが気にすることではござらん…ハハハハハッ!」
「ええぇぇ…」
その傷が弟との意見の対立で負った傷だと言うオオウスだったが時代の違えば喧嘩で殺し合いになってしまう時代間のギャップにアギラの青ざめた顔が更に青くなった。
「よしッ!計算出来た…おいアキ、ちょっと来い!」
「なに?お兄ちゃん…」
地面に再度計算し直した数式をアギラは目にしたが…まったく分からない。
「これが…帰れる方法なの?」
「そういう事だ…そんでもってお前は…」
ゴジラが導き出した公式通りの手段で未来に帰還するための手段は手順自体行きの際と同じであるが、今回の帰りはアギラが居るため…
「……あのさぁ、これ本当にボクはここでいいの?」
アギラはゴジラの背びれと背びれの間に挟む状態でいることが条件であった。
「仕方ねぇだろ…こうでもしなきゃ次元の狭間でお前はミンチよりひでぇことに為るぞ」
「ミンチより酷いのはイヤだけど、木に引っかかった変死体みたいな今の状態もイヤだよ!!タイムマシーンとかないの!?」
「そんなもんねぇーよ」
浪漫に違わぬタイムスリップとは明らかにかけ離れた強引な手段であった。
「えっと、未来のアギちゃん…道中に気をつけて帰ってね☆」
「どこをどう気を付ければいいのさぁッ!!」
「もう行くぞ…落ちるなよ」
「待って、まだ心の準備…――がぁああああああああああッ!?」
有無を言わさずゴジラはミレニアムに変化して体表にプラズマ状の高密度のエネルギーが放出し始め…一気に加速してアギラの断末魔の音だけが道沿いに落ちていくばかりであった。
時を同じくして草むらの奥から人を抱えた男が皆の前に現れた。
「おい、今何かすごい音で何かが通らなかったか?」
「あっ、村長さん!」
男は騨魂の村の村長であったがその容姿はどこかユウゴに似ていた。
「おう、さっきそこで岩場に嵌ってたコイツ拾ってきた」
「うぅ~…みんな~…酷い目にあったよぉ~」
肩に抱えていたのは騨魂の村のアギであった。
「あっ、こっちは本物のアギちゃんだ」
「本物って何ぃ~? ボクが居ない間に何があったの?」
「――と言うか、村がねぇ」
遠くの村から戻って来た村長とアギの村は跡形もなく森の一帯まで燃えカスのみしか残っていなかった。
「それよりも村長…村が消し炭になる前に客人として招いていた連中だ」
村を仕切る村長に戦士たちはツクヨミたちを会わせた。
「初めまして、お噂はかねがね伺っております“ダゴン族”の長どの」
「あんたか、書状の内容は把握している…が、本当にいいのか?自分たちの子を置いて、未来などと言う不透明な世界に運命を委ねるなど」
ツクヨミは予てより村長にして怪獣に姿を変える事の出来る一族に書状の内容に自身の計画を示してやり取りを行っていた。
「アマテ女王から託された命令はただ一つ…『スサノ皇を未来から探し出す』 朝廷は既にスサノ皇の傀儡政権下、今後100年200年…あるいはそれ以上にこの国の中枢に根を張るおつもりでしょう あの方はそれだけ危険なのです」
並々ならぬ決意は揺らがない焔のような目に長は首を縦に頷いた。
「それと…朝廷側から得た協力者も紹介させてください」
ツクヨミは長にオオウスと言うヤマトのタケルが1人を紹介した。
「我が名はヤマトのタケルの1人…オオウスと申します、そしてコレが“大戦神”に関する書簡です」
オオウスは朝廷から離反して命を懸けて一族の長に手向ける重要な書簡を彼に手渡した。
「あと、族長…コイツを…」
一族の戦士の一人が長に斧と鞭を見せた。
「なんだコレは?」
「おそらくは闇の神の先兵だ…実力は人間を相手にしているのと変わらなかったが、1人だけ逃げ足の速い野郎がコレの持ち主どもを連れて逃げていきやがった」
「そいつらの行方は…」
「そこまでは追えなかった…まぁ、最も何か目的があって送り込まれたんだろうがそう長くはねぇよ あんな傲慢な神に従っちまった以上は…」
逃げられた異星人たちの後をこれ以上追うことは無く、想像つく結末に彼らはそれ以上の事を気にも留めなかった。
・
・
・
そこは騨魂の村から数キロ地点に位置する場所だった。
「はぁ…はぁ…兄者…もはやこんな場所に長居は無用だ!二度と関わりたくない!!」
かろうじて動けるジュダは兄モルドと姉ギナを引きずりながらも怪獣に姿を変える一族の戦士達から逃げていた。
「ひっ、引き返せ…ジュダ…このままオメオメと逃げればガタノソアが…」
「ガタノソアがなんだ!…闇の神か何か知らぬが…この宇宙には私たちが知らない恐怖があまりにも多すぎる!」
「そうだ、命あっての物種だ!…惨めだが機会はある、だから機を待とうではないか」
闇の神への忠誠を破棄して生き延びることを選択した3人の兄弟は元の宇宙へ帰る事さえ諦めこの星に潜伏することを誓う…が…
「どこへ逃げると言うのだ…グアの三兄弟」
悍ましい声が三人の耳に入って来た。あの姿なき主の背筋を凍り付かせる声だった。
「そっ、その声は…ガタノソア…様…」
声は確かに姿なき主ガタノソアであるがいつものような耳を塞いでも聞こえてくる頭に直接伝えるような声ではなく今回はハッキリと聴覚を通じて聞こえていた。
「どこを見ている…愚か者め!」
「ガッ…ガタノソア…様ッ!?」
振り返るとソコにはアギラとゴジラが対峙した怪獣がジュダたちと同等の10メートルほどのサイズで姿を現したものの身体にヒビの走った状態で今にも崩壊しそうな体表がボロボロと零れ落ちつつあった。
――…ソヤツの名はザイゴーグ、余が作りし転生体にして分身だ――
「ガッ、ガタノソア様!」
今度の声はハッキリと頭に響くような声でジュダたちを震え上がらせる恐怖の声だった。
――ソヤツを生み出したと言う事は余の考える事はただ一つ…ダゴンの一族にオメオメと逃げ帰るような役立たず共を粛清するために存在する――
ガタノソアが生み出したと言う怪獣ザイゴーグの胸部は開かれて内部から伸びる触手がモルドとギナの首に巻き付いた。
「グオッ!?」「グワァッ!?」
「兄者!!姉者!!」
――ザイゴーグの糧に為れ――
その瞬間、ザイゴーグは触手を通じてモルドとギナのエネルギーを始め、力、実体、果ては存在すらも吸収して自分自身の実体維持を回復させた。
「フハハハハッ、おかげで実体が回復しただけでなく力も十分に補強させてもらった…感謝するぞ、生贄ども」
――ジュダ…すべては貴様の判断ミスが招いた結果だ 余を欺こうなどとする浅はかな考えがお前の兄と姉は自ら首を絞めたに過ぎん そう、気を落とすな…クククッ、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!――
実体のある声ではなく、頭に直接捻じ込んでくるような不快感と絶望感を振りまく…ジュダにはソレが今まで自分たちが下等と見下し続けた生命を冒涜するかのような高笑い…そういった自分と同じ行いが今まさに自分に返ってきている屈辱的な状況にジュダは地面に伏して触れる土を握りしめさせた。
「…あっ…あぁっ…あっ、兄者と……姉者を……返してくれ」
――ほぉう?…それは…さらなる“試練”の要求か?――
「そうだ!!兄者と姉者をぉおお!!」
――お前は物を頼むときに…要求を訴えるつもりか?――
「うぐっ……兄者……と……姉者…を……返して……くだ…さ…い…ッ」
それまで決して物を頼み、地に額を付けた事の無いジュダは自らのプライドを捨てて姿なき主への要求を通した。
――ふむッ…いいだろう、さらなる試練を求めると言うのであれば…お前に闇の力を返還してやろう ただし…――
今まで受けた試練の上にさらなる試練を求めたジュダの身体はより縮小していき、地球上に住まう“人間”のような身体に変化した。
――その姿でこれよりそちらの世界時間から未来に飛ばす…貴様の目的はただ一つ、ダゴンの使徒どもを消せ そのためにその姿になったことを忘れるな――
ジュダの足元に溜まる水たまりで今の姿を確かめると柔い肌、頭部から生える髪、必要としてこなかった呼吸、そのどれもが人間、脆弱な人間であり…
「うっ、ううっ、うわぁああああああああああああッ!!」
ジュダはそれまで感じ続けて来た恐怖の中で最も悍ましい恐怖がジュダを絶望に引きずり落とすのであった。
――それとこれはダゴンの使徒が手放した装置だ…コレを使用する時のみ闇の力の使用権を与えてやる…それが今の貴様の“縛り”だ せいぜいもがけ、水面の羽虫の如く――
姿なき主ガタノソアはジュダにアギラのソウルライザーだった破片を再構成して黒いソウルライザーを生成すると禍々しい魔法陣のような紋章を通してアギラのいる未来へと送り込むのであった。
「我が主…我にも試練をお与えください」
ジュダに備わった試練を通してザイゴーグも試練を受ける事を強く望んだ。
――ほう、なれば貴様は何を望む――
「無論、この世の地獄!我こそを地獄とする世界を――」
――…よかろう、ただしくれぐれも貴様と対峙したダゴンの使徒と遭遇してはならん 他者の試練は他者の試練、お前の試練では無いことを踏まえて余の試練を受けると言うか?――
「ハッ、必ずやご期待に添えます!」
ジュダと同じくザイゴーグにも身体を小さくさせ、能力の収縮と言う対価を払って試練を得た。
――フンッ…まぁ、もっとも生み出したばかりの“廃棄場”風情に期待なぞせんがな――
「はっ?…いまなんと……ぐぶっ!?」
収縮したばかりのザイゴーグを待ち受けていたのは実態の無い強力な斥力であった。
「やはりこの世界にもあなたが居ましたか…闇の神ガタノソア」
ザイゴーグを実態のつかめない斥力で押さえつけているのはダグナであった。
――ほう、ダゴンの分身か?…また神々の決め事に意見するか――
「決め事?…アナタがいつ決めた試しがあると? いたずらに試練を振りまく厄災そのものであるアナタが…」
――余は何も不可能を与えたりはしない、いつだって平等にして公平だ…――
さながら悪質な言い分であった。しかし嘘と間違いは言っていないことはダグナも分かりきっていた。
「ならばこの者の処遇は私が決めさせてもらう…アナタがコレに期待しないのであれば今ここでアキさんの障害となる物はこの世界から居なくなってもらう!」
――構わん…が、貴様にその権限がないのも事実…そんなモノをどうするかなど余が知るところに無い――
「私が決めるのではない…これより先に現れる“アザトースの器”に決めてもらいます」
斥力で引き止めていたザイゴーグの首を引き寄せ掴み、ダグナは地面へと叩きつけ、地面を舗装していた遺跡の石材が暴落して最下層へと落下した。
「ぐがぁあああッ!?きっ、貴様…何を…我をどうするつもりだ!!」
「しばらく生命活動を休止してもらいます 生み出された以上、あなたは立派な生命…消すのは困難でも封じることくらい私にも出来るのですよ」
ダグナの斥力はザイゴーグを遺跡内の壁に叩きつけると壁はザイゴーグ自体を飲み込むようにして構成する肉体を石材と共に同化していく。
「幸いここがバラージ族の残した遺跡群ですので多元世界線で構成されるあなたの身体なぞ簡単に吸収します」
「やめぇろぉおおおおおお!!ワレはッ、我は試練を乗り越えるんだぁああああああああ!!」
ザイゴーグを構成する体組織のすべては壁面に描かれるような壁画の様に封じ込まれるのであった。
――クククッ…さすがの余もお前たちダゴンの化身の修正力には及ぶ気がしれぬ 余の試練よりも一段と容赦がないではないか――
「…………………」
ザイゴーグを封じた遺跡は時間の逆行を始めるかのように崩落した石材が元に戻り始め、壁面に封じたザイゴーグを更に遺跡そのものに封じる様に石材の最期の1つが埋まる頃、そこはこれより先まで誰も立ち入る事はないのであった。
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―現代・婆羅慈遺跡―
「それでは…新区画での発掘作業を祈願して…参ります!――はぁ~ッ!」―ピッ…
婆羅慈遺跡の新たな発掘現場に立ち入るためミズノエノリュウは現場保全及び安全祈願の願いを込めた渾身の起動ボタンを押した。
『大地主大神 秋田之県之婆羅慈之――』
地鎮のための祝詞を読み上げるのはミズノエノリュウ所有のロボットに録音された音声で取り行われていた。
しかし、そんな地鎮供養の場とは裏腹に次元を超えて…この場に現れた。
――ズゥオォンドラガッシャァアアアアン!!
「ギャァアアアアッ――地鎮くん一号ぅううううッ!?」
地鎮のための祭壇も、録音再生中のロボットもまとめて帰って来たユウゴとアキに盛大なまでに衝突して破壊された。
「……今度は計算通りだ、何とか帰れたな」
「どこがッ!?」
現代に帰っては来られた、が…地鎮の祭壇の残骸に埋もれるユウゴとアキは2000年前の婆羅慈遺跡周辺から元の現代の発掘現場へと帰還を果たしたのであった。
「お帰りなさい お二人とも…」
現代へ戻って来たアキたちをダグナが出迎えた。
「だっ…ダグナさん……」
「フンッ、まったく散々な目にあった…
「それはこっちのセリフだよ!!」
「いや、私のセリフだ!!どうしてくれるんだ、地鎮くん一号が木っ端微塵だぁああ!!」
『大地…主…大神…だい…ダイ…DAY…BY…BAY~BAY~ッ…』―ボンッ!!
木っ端微塵に粉砕され、頭部のみとなった地鎮くんロボットは煙を噴き上げて修復不可能なレベルで完全に大破した。
「お兄ちゃん…ボクもう東京に帰りたい……今日はなんだか疲れた」
「んっ?…そうか、ならまたミレニアムでひとっ走りするぞ…今度は亜高速加速をしなくて済むから楽だ」
その瞬間、脳裏に過ったミレニアムの背ビレに挟まれながらの道中に見た歪む時空、怪獣墓場のような空間、溶けた時計のような亜高速領域の世界がアギラにトラウマを再起させた。
「ヤダッ!!普通に新幹線で帰りたい!!公共交通機関!!船でも飛行機でもいいからお兄ちゃんの背ビレの間だけはヤダ!!」
アキは子供染みた駄々をこねてユウゴもといゴジラ。ミレニアムでの弾丸帰宅だけは全力で拒否するのであった。
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―秋田県内・私立病院―
県内随一の広さを誇る病院に高級なスーツと高級な革靴に身を包んだ男が来院した。
「…失礼、本日婆羅慈市内から搬送された方はどちらにいらっしゃいますか?」
「婆羅慈市内ですね…少々お待ちください」
受付の看護婦が院内のデータベースにアクセスして今日に搬送されてきた患者の中で該当する人物の特定を始めた。
「…5階ですが、申し訳ございませんがこちらはGIRLS病棟なるのですが…ご関係者様ですか?」
「…内閣からの派遣です」
男はスーツの襟元に着いたバッジを見せた。
「あっ!…大変申し訳ございませんでした 5階、503号室です」
受付看護婦は男に首から下げる入館許可証を手渡した。
受け取った入館許可証を手に持って5階まで向かうためのエレベーターに乗ると行き先階のボタンを押して扉が閉まるとエレベーターは押された階に向かって動き出し、5階に到着すると再びエレベーターは開かれた。
503号室にはGIRLS秋田支部から婆羅慈遺跡調査に派遣されていた怪獣娘スフィンクスとドドンゴ、そして現場責任者の智田とアンドロイド提供先社長のジャックがいた。
「お待ちしておりました…城南大学考古学研究室の智田です」
「どうも…それで、“彼女”が?」
「ええっ、今はまだ意識を戻していませんが…」
「確かあの子…自分の事を『ジュダ』とか『グア』がどうとか行ったんですよねぇ、GIRLSのデータベースにはそんな怪獣の記録ありませんけど?」
スフィンクスの手に持つソウルライザーにはジュダと検索してもそれに該当する怪獣が検索に引っかからなかった。
「無理もありません…あれは…この星の生命体ではありませんので」
「――ってことは、宇宙人!?」
ジュダの正体を知ったドドンゴは同じ怪獣娘の様にしか見えないジュダがとてもイメージしやすいような地球外生命体とはかけ離れているように思えた。
「いえ、今はこの地救上の生物遺伝情報を取り入れられたれっきとした人間ですよ…送られたカルテを見る限り、地球上の成人女性と変わりありません 何かわかりましたら、こちらに…」
そう言って男は連絡先を記載した名刺をスフィンクスに手渡した。
「…わかりました…」
名刺には『衆議院議員 山陀ツクヨミ』と記載されていた。
「あとは私が引き継ぎます…」
「わかりました…では我々は先に現場の方に戻りますので…」
その場に1人の衆院議員を残して智田たちは病院を後に去って行った。
「……コレが傲慢な侵略者の末路ですか…ジュダ、あなたからしたら何とも惨めなものですね」
病院内に設置されたGIRLS秋田支部と連携した怪獣娘専用の隔離施設がジュダを逃がすことはない。
議院のツクヨミがジュダの存在を確認し終えると…隔離する施設の前から去っていくのであった。
「…………――――ッ!」
誰も居なくなった病室でジュダは目を覚ました。
アンバランス小話
『壁画』
それはアギラたちが元の時代へと去った後、元騨魂の村周辺にある洞窟内で…
「絵師さま~、何を書かれているんですか?」
レイカとランに酷似した村娘たちは洞窟の壁面に絵を描くガメラに酷似した戦士の一人が動物の毛を使った筆を用いて繊細な色使いで壁画制作に取り掛かっていた。
「うん、ここを出ていく前にここで起きたことを描いておきたくてね…いつかここを訪れた人たちにも伝わればいいなぁ~」
「さすがです、絵師様」
ガメラに酷似した戦士の一人は背中のバーニアを噴射してホバリングしながら手の届かないところにまで細かくハッキリと伝わりやすい壁画を完成に近づけるのであった。
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そして現代…
「う~んッ…なんだろう、この絵…」
後に新たな発掘調査の立ち入りで入ったスフィンクスは洞窟の壁画に困惑した。
「怪獣が…怪獣を…踏み潰してる…絵?」
発見された絵には驚くような描写で描かれているツノの生えた怪獣娘の横で八目の怪獣を下敷きに天から降って来た怪獣によって踏みつぶされている壁画であった。
「とりあえずその上に新しい絵を上重ねしちゃおっかぁ~♪」
「アンタはいい加減に反省しなさい!!」
「ぐえぇえええ!?」
壁画の復元に乗じて自分感性で絵を描こうとしたドドンゴをミズノエノリュウはヘッドロックをキメて引き止めた。