TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐   作:神乃東呉

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怪獣娘は裁判中…

 千代田区 丸の内

―東京駅―

 

 公共交通機関の中で最大級の移動範囲を誇る鉄道交通機関…その中でも東京駅は連日利用客の往来が激しい場所であった。

「…ようやく…帰って来れた…」

 そんな中、アキは両手に手提げの持ち手という持ち手を持てるだけ持って東京駅新幹線乗り場出入り口から東京駅の外へと出る。

「とうきょぉお~だぁあ~!!」

 そんなに時間も経っていないにもかかわらずまるで何年も久しく来ていなかったかのような懐かしさにアキは自分が元巣に帰って来たような感覚に喚起していた。

「たかが1日くらいしか経っていないのによくそんな変な声を出せるな」

「だって、普段通りに過ごしてたらなぜか秋田県に飛ばされる怪現象を受けたんだよ!?そこから更に色々あって、色々あって…色々あり過ぎだよ!?」

「色々ってなんだよ…帰り際に馬鹿みたいに土産買いまくったアホの言葉とは思えんぞ」

 色々あり過ぎて語彙力を失ったアキにユウゴは呆れ果てたが…ちゃっかり秋田観光を満喫している事が伺える手提げいっぱいの紙袋にお土産を購入していた。

「だって…ミオさんがお土産いっぱい買ってこないとひどい目に合わせるって昨日旅館で脅されたんだもん」

 実はこれより少し前までアキとユウゴは婆羅慈市から離れ秋田市内の旅館に一泊していた。東京にいるミオにはそれを『ズルいッ!!』と羨ましがられた。結果、そのペナルティとしてのこの大量のお土産であった。しかし…

「あと他にもミクちゃんやウインちゃんやGIRLSみんなへのお土産とか…」

 散々すごい出来事を経て来たわりにお土産選びとそれらを東京まで持ち帰ることが一番の大イベントの用に成り代わっていた。

「とりあえずみんなにお土産を渡しに行きたいから東京支部まで行こう、お兄ちゃん」

 ウキウキにお土産を持ってアキはGIRLS東京支部へと向かうのであった。

 GIRLS東京支部

 

――立ち入り禁止――

 

「…………立ち…入り…禁…止ぃ…?」

 アキを待っていたGIRLS東京支部はエントランス前の自動ドアを塞ぐようにして黄色い立ち入り禁止テープで館内を封鎖されていると言う華やかなGIRLS東京支部は見るも耐え難い姿になっていた。

「何でェッ!?…えっ、GIRLSが…東京支部が…えっ、なんで!?」

 しかもそれだけではなく、立ち入り禁止の出入り口には次々と警察官、スーツ姿の捜査官、いずれも公権力を有する捜査機関の関係者たちが東京支部にダンボールいっぱいに何らかの押収品を抱えて出たり入ったりを繰り返している。

「すいません、これより先の立ち入りはご遠慮願います」

 呆然とするアキは急いで中の様子を確認しに向かおうとすると規制線を張る警察官に引き止められた。

「いや、ボクはここの関係者です!GIRLSの怪獣娘です!!」

「申し訳ございませんが、捜査関係者以外立ち入り禁止となっています」

 どれだけ関係者だと訴えても中には入れてもらえず、追い返されてただただ中からGIRLSの物品を押収されていく様子を遠巻きに見るしかなかった。

「うぅッ…お兄ちゃん…これは一体どういうことなのさぁ!?」

「俺が知るか…一旦、お前の知り合いの誰かに連絡して見ろよ」

「ううっ、そうだね…一先ずピグモンさんに連絡を………って、ソウルライザー木っ端微塵に壊されて無いんだったァアア!?」

 いつもの感覚でソウルライザーを取り出そうとしたアキであったが、肝心のソウルライザーは手元になく、電話番号もソウルライザー内部データに収まっているだけなので個人番号など碌に暗記はしていなかった。

「だっ、誰にどうやって連絡すればいいの!?手紙ッ?伝書バト!?狼煙!!?」

「落ち着け…」

 嘆き慌てふためく中、途方に暮れるアキの前に一人の少女が近づいて来た。

「あっ、アギアギッ!?」

 そのどこか優しくも暖かな声、可愛らしいトーンに聞き馴染むあの声がアキの耳に入って来た。

「…あっ、あっあああっ…ピグモンさぁぁぁぁん!!」

 たまたま通りかかったのか、ピグモンこと岡田トモミが立ち入り捜査中の東京支部の前を横切りアキたちとバッタリ出会えた。

「どこに行かれてたんですかッ!?何度も連絡を入れたのに繋がらないから心配しましたよッ!?」

「ピグモンさん、実はこれには深いワケが…」

 深いワケと言いわける割にアキの足元には大量の秋田土産が目についた。

「……えっと、とりあえずここではなんですので…一旦、場所を変えましょうか」

「…なら、俺の店に一旦寄るなら案内するぞ」

 場所を変えて3人はユウゴの店『BAR1954』へ向かう事にしたが…

「あっ、アギアギのお兄さんのお店ですか!?」

「あぁ、そうだが…」

「えっ、あっ…そっ、そうですね…そこに向かうしかないですよね…」

 何やら煮え切らず冷や汗までかいているトモミにユウゴは嫌な予感がした。

―BAR1954―

 

「うぇええええ~~!!アギちゃぁぁああん!!どこ行ってたんだよぉおお!!」

 店内にはGIRLS東京支部の怪獣娘たちが一同“勝手に”居座っていた。

「みっ、みんな…東京支部に一体何があったの!?」

「ううっ、なんか…捜査のため立ち入りを始めるッとかで…みんな東京支部を追いだされた上にGIRLS東京支部での活動はしばらく停止になっちゃったよぉおお!!」

 事情がまったく見えてこない上にミクは泣き崩れすぎてまったく状況がみえてこなかった。

「――んなことより、誰がお前らを勝手に俺の店に入れやがった…」

「お兄ちゃん、みんな困ってるんだからいいでしょ…」

「よかねぇわ…既に店乗っ取られかけているのに黙っていられるか!」

 ちゃっかり『GIRLS BAR1954支部』とダンボールで書かれたポップ調の看板まで製作されていた。

「こ~んな身寄りのない怪獣の子を見捨てるなんて…そないな薄情なこと言わんといてぇな、ユウちゃん」

 ミカヅキを筆頭にユウゴへ哀れな同情しやすい視線を送る怪獣娘たちだが、ユウゴにはその視線よりも誤魔化してちゃっかりドンドンと裏の厨房へ食材をダンボールで運び入れている怪獣娘たちに目が行ってしまう。

「―…あぁ~、こんな時に言うのもなんですけど…コレ、秋田名物の“きりたんぽ”です」

 アキはみんなに秋田の土産屋や道の駅で購入したお土産を見せるが…怪獣娘たちはそれを覗き込むや、視線は再びユウゴに移った。アキも差し出した土産をクルッと回ってユウゴに突きつけた。

「……俺がやるのかよ」

 呆れ果てたユウゴは仕方なく、土産のきりたんぽを厨房へ持っていった。

 

・数分後・

 

「―…と言うワケで、しばらくGIRLS東京支部は立ち入り捜査が終わるまでの間、東京支部への出入りはできなくなりましたが…アギアギのお兄さんの御厚意でお店を使わせていただくことになりました」

 秋田名物“きりたんぽ鍋”を囲んでGIRLS東京支部の怪獣娘たちは今後の方針を思案することになった。

「はいッ、質問です!!」

「はい、何でしょうか ザンザン」

「立ち入り捜査って…なんですか?」

 中学生のザンドリアスことサチコには何の事だかサッパリわからず直球な質問を投げかけて来た。

「そうですね…まずはそこからですね ではレイ先生、お願いします」

「わっ、わかりました…」

 全員が満場一致でトモミが質問を反らして隣にいたスーツ姿の男性に託したことにより…『誰ッ?』と思った。

「ええっと、皆さんには初めましてですがGIRLSJapanの顧問弁護士をしておりますZAP法律事務所の零門レイです」

 トモミが紹介したのはGIRLS日本エリアの法的手続きや法的事務を担う弁護士事務所から派遣された若手の弁護士の零門であった。

「では…かいつまんでご説明しますと、個人及び団体に罪的容疑が確認されると警察及び検察から捜査の強制執行が発動され、現在GIRLS東京支部のように施設への捜査が行われることを指します」

「…ってことはGIRLSがなんか悪い事したってことですか!?」

「いえ、GIRLSは怪獣娘が引き起こす事件事故に関する記録を管理保管しているため重大な事件で怪獣娘が容疑者として関わっている場合にかぎり警察と検察は裁判に必要な証拠品としてそれらを押収するための今回の立ち入り捜査と言うワケなのです…」

「もうお気づきかと思われますが…近く、私たちGIRLSはとある怪獣娘に対する大きな刑事裁判が開かれるため、裁判所に出廷することになっています」

 トモミが口にした怪獣娘が引き起こした事件に関する裁判が始まることを告げた。

「さっ、裁判って…えらく凄い事が起きたなぁ…」

「怪獣娘が引き起こした事件と言えば…『御徴川決壊事件』とかですか?」

「それは怪獣娘事案第1号ですね…世間的に怪獣娘の事件と言えばその事件が思い浮かぶかと思われますが、今回は別の事件での裁判です」

 怪獣娘が引き起こした事件での裁判と聞いてやはりどの事件が該当するのか…そもそもここ近年で怪獣娘が暴走して暴れたくらいの大きな事件しか耳にしない昨今でそんな裁判と言う大事になっているとは誰しもが思いもよらなかった。

「…その、事件とは……――」

―――待ったァアア!!―――

 ついに事件の名前をいう時が来たと思ったトモミであったが、突如としてそこに待ったをかける声が響き渡った。

「みっ、ミオさん!?」

 待ったをかけたのは…何故かスーツ姿にオーバル型の眼鏡をかけて一同の前に姿を現したベムラーことミオだったが…

「話の腰を折るようなことして申し訳ないけど…こちらも重大な事件が発生したため、裁判が開かれるわ」

「じゅっ、重大な事件…?」

「そう…被告人は……この男よ!!」

 そう言ってビシッとミオが名指したのは…まさかのユウゴであった。

「あぁ?…おれッ?」

 何が何の罪で何の裁判が開かれると言うのか分からないのはGIRLSの怪獣娘たちも、身内のアキも、ユウゴ本人ですら何も知らなかった。

 しかし…―カチャンッ!

「…なんだこりゃ?」

 その両手首には手錠をかけられて、アメリカンポリス風のビーコンがガムをくちゃくちゃと噛み、プクゥ~と膨らませてユウゴを見張っていた。

「それでは…アキちゃん裁判長!…検察側、準備は整っております」

「えっ!?なんでボクが裁判長なの?」

 いつの間にか自分を裁判長に仕立て上げられてグラスコースターに工具箱から出して来たトンカチを裁判長の判決の金槌のように見立てたBAR1954内での裁判が開廷された。

「なお、今回はこの裁判に公平性を期するため…GIRLSのみんなには選出した8人の裁判員を…それ以外は傍聴人として裁判の行方を見ていただきます」

 裁判員として選出されたのはアキを裁判長としてミク、レイカ、トモミ、ミカヅキ、ベニオ、サチコ、ミサオ、ルイの9人で構成された裁判員制度形式のバーカウンター側を裁判員席として見立てた。

 一方の被告人ユウゴを中央に置き、左側を検事席としてミオとビーコン、右側を弁護席として零門が配置についていた。

「えっと…なんだかよくはわかりませんが、裁判とならばよろしくお願いします」

「すみません、こんなくだらない茶番に巻き込んでしまって…」

 何故か参加させられた零門と被告人に仕立て上げられたユウゴは顔を合わせあってお互いに申しわけない表情を大人対応の挨拶を交わした。

「――それでは、事件の概要を検察側から…直接脳内に送らせていただきます」

 全員が『えっ!?直接脳内に送るッ!?』と前代未聞の方法で事件概要を述べる形に驚愕させられた。

 すると、ビーコンが立ち上がって…特殊な電波を散布し始めた。

 秋田市内 旅館

 

 婆羅慈遺跡での一件からアキはユウゴと共に秋田市内の温泉旅館に1泊の宿泊で疲労を癒していた。

「ふぅ~…温泉、久しぶりだったなぁ~」

「お前は長く入り過ぎなんだよ…どんだけ待たせんだ」

 浴衣着のアキとユウゴは温泉から出て間もなく、身体からは湯気が出るほど放熱していた。

「だって、滅多に温泉なんて入れないから…つい長風呂に浸っちゃったよ」

 これまでの辛い疲れが一気に抜けてしまってかアキは家の風呂にも長くは浸からない盛大な長風呂をきめていた。

 おかげでアキの身体はポカポカと顔が紅潮するほどに温まっていた。

「…それより、この腕輪…もらったはいいけどすごく目立つんだけど」

「碌に扱えても居なかったからあっても無くても変わらんだろう…飾りと思え、飾りと…」

「えぇ~…折角もらったのに…」

 なんだかありがたみが薄れた様な気がした時…ふと近くを通ったお土産のポスターが目に留まった。

「あっ、せっかくだし秋田のお土産とか買って行ってあげようよ!」

「誰にだ?」

「それはもちろんGIRLSのみんなにとか、身近な人とか…」

「お前の身近ならともかくとしても…俺の知り合いは殆ど会わねぇ奴等が殆どだぞ?…まぁ、せいぜい居るとしたらあのごくつぶしぐらいなもんだ」

 真っ先に思い浮かべる人物たちの中で昼間から酒を飲みぐうたらしているミオだけが思い浮かんだ。

「んもぉ~…ミオさんでもいいからお兄ちゃんも誰かにお土産とか贈り物とか買ったら? ボク、ちょっとミオさんに電話してくる~」

 そう言ってアキは旅館のテレフォンスペースに駆け足で向かって行った。

「んん~、贈り物かぁ…まぁ、それも悪くないな…アイツへたまにはそういうモノを送ってみてもいいか」

 ユウゴはアキの提案に少し納得してお土産のポスターを眺めていた。

「―――うん、うん…ええぇ~…そんなことお兄ちゃんに頼むんですか?…はい、はいッ…わかりました、お兄ちゃんに代わりますから……お兄ちゃんッ!ミオさんがお兄ちゃんに代われって…」

 ミオに電話をしていたアキは電話越しのミオの強い要望でユウゴに受話器を延ばした。

「あぁん?…ったく、もしもし?なんだよ…」

『ズルいズルいズルいズルいズルいぃぃぃいいい!!二人だけ温泉やらを満喫なんかしちゃってさぁ~!!お姉さんは蚊帳の外ですかぁあ!?』

 ユウゴは大分めんどくさい事になっていると苦い顔をした。

「仕方ねぇだろうが…変な昆布のバケモンにアキが何故か秋田に…」

「そんなワケの分かんない言い訳なんか聞きたくない!!お土産を持ってこぉおおい!!いいお土産を持ってこぉおおおい!! それから今、メルとお酒飲みながら思いついたんだけど…合コンしましょ!合コン!!」

「はぁ…?合コン?」

 大分酔った勢いで勝手に決めた合コンの誘いにユウゴは困惑した。

「アンタなら男の頭数くらいチャチャッと集められるでしょ~が!お姉さんを蔑ろにした罰だ!!」

「あのなぁ~…俺、彼女いるのになんで合コンをやらなきゃならん」

「良いでしょうが、彼女の一人や二人………えっ?今なんて言った?」

「だから別に………あっ、やっべ」

 ユウゴは即座にガチャンと切ってそれ以上のリアクションが発生することを危惧して通話を強制終了した。

「――?……ねぇ、何話したの?」

「……土産を買え買えと言ってた」

「でしょ~…やっぱ買っておいた方がいいよ」

 アキには特に聞かれておらず、何とか誤魔化しが聞いてその場で交わした電話の内容については特に深く掘り下がらずに宿泊部屋へと戻るのであった。

 脳内に直接送り込まれた映像にその場に居る怪獣娘たちは目を丸くしてユウゴをガン見していた。

「おっ…お兄ちゃん……彼女…居たの?」

「……あぁ…まぁ、な」

 衝撃の事実に全員の言葉が失われた。誰も声が出ない。誰も何も話せない。ただただユウゴに向かって冷たい視線を送ることが精一杯であった。

「裁判員の皆さん!そして、傍聴人の皆さん!…そうです、この男は私たちに自分が彼女持ちであることを隠して皆さんと何事もなく同じ時を過ごしていたのです…よってここに『宮下ユウゴ不純異性交遊隠蔽事件』の裁判の開廷を進言いたします!!」

 開廷された裁判をする必要があるのかどうか俄かに信じがたい内容の事件の裁判が開かれた。

「ちょっ、ちょっと待って下さい!?…えっ、こっ、この方が…彼女さんを作っていた…ことを裁判…するつもりですか?」

 法律の専門家である弁護士の零門は困惑した。この場で裁判を開く理由がユウゴに彼女が居ると言うだけのあまりにも私怨が大きく占めた裁判だからであった。

「無論、私たちを前にして彼女を隠匿し、挙句の果てに交際関係を隠蔽していたことは“重罪”に当たる!!」

 腕を組み、胸を張って、他人の交際を否定するミオの姿を見た零門は弁護士としてまた法律家の一人として言葉を失っていた。まったくの私怨である。

「いかがでしょうか、裁判員の皆さん!この男にあるのは隠しようの無い真っピンクのフェロモン…もはや言い逃れようの無い真実なのです!!」

 ビシッとユウゴに突きつける指先からの糾弾はミオを検事たらしめる自己満足な正義感であった。間違ってもこの裁判は紛れもなく私怨である。

「有罪や!有罪!!そないな大事なことをうち等に隠していたなんて有罪やぁあッ!!」

「そうだそうだぁあッ!あたしたちに美味しいものばかり作っていたのは罪の味だったんっすねッ!!」

 早くも裁判員のミカヅキとミクから有罪の声が上がるさなか、コースターを叩くトンカチの音が響いた。

「静粛に!静粛に!…えっと…とりあえず…裁判って何をすればいいんですか?」

 裁判員のアキは身体を弁護側に傾けて零門に尋ねた。

「基本的には被告人と弁護人から起訴状に対する言い分を聞くのが次の流れですが…ちょっと手順が違いますが、まず被告人の名前と職業を聞いてください」

 弁護士として裁判の流れをしる零門に手を合わせて感謝の意を伝えるとアキは咳払いをする素振りをして再度コースターにトンカチを叩きつけた。

「それでは…被告…人?…名前と職業は」

「言わんでも知ってるだろうが……ったく、宮下ユウゴ、個人事業主」

 呆れ返って仕方なく裁判の様相を呈した茶番劇に太々しい態度で名前と職業を述べた。

「ええっと…何か言いたいこと…とか、ありますか?」

 アキは次にユウゴと零門の2人に対しての意見陳述を尋ねるが…

「ねぇよ、別に彼女が居ること自体これ以上隠す気もねぇし…事実は事実だが、こんな茶番に付き合う気もねぇぞ」

「えっ、ええっと…被告人もこのように申している通り、罪?…の意識は十分にある為、情状酌量を求めます」

 明かにもはや開き直っているとさえ思える態度に罪の意識がどうとかは特にまったく感じ得なかった。

「ええっと…多分違うと思うけど、一旦みんなの意見を聞いてみます みんなどうするのコレ?」

 アキは裁判の手順など知らないがこの場に居る7人の裁判員に尋ねた。

一番左からトモミ…

「ええっと…とても素敵なことだと思います 恋愛は個人の自由ですので、罪に問うとかは多分必要ないんじゃないですか?」

 ベニオ…

「オレもピグモンに賛成だ…人の付き合いにどうこう言えた義理もねぇし、権利も無いだろう…」

 ミカヅキ…

「有罪や、有罪!うち等と言うモンがありながら隠し通すなんて非道中の非道や!!」

 レイカ…

「あっ、あの…詳しく聞きたいのは…交際相手さんは男性か女性かどっちなんでしょうか…そこは気になります」

 ミク…

「まぁ、ユウゴさんの料理は美味しいけど…きっと彼女さんにはもっとおいしいことをしているに決まってるっす!有罪っす!有罪!!」

 サチコ…

「先輩に激しく同意です!あたしん家にも来てくれたのに…こんな裏切り行為、ママが聞いたら絶対がっかりするねッ!」

 ミサオ…

「お前、なんておこがましいこと言ってんだよ…別に先輩のお兄さんが誰と付き合っているなんてアタシらに関係ないだろう」

 ルイ…

「ひぃうぅぅ…でっ、でも…隠すってことは…うっ、後ろめたい気持ちが…ある気がします」

 有罪4、無罪3、不明1、この裁判は若干有罪側に傾いていた。

「ええっと…弁護士さん…このあとは?」

「ここからが審理の開始です…検察側に証拠品の提示や事件の可能性を審理するための証拠調べが検察側から始められます」

 アキは再び弁護士の零門から裁判の手順を聞いて理解したことを左手でOKサインを出して、咳払いをした。

「それでは…検察側から証拠品の提示をお願いします」

「わかりました…それではみなさん、お手元のスマホをご参照ください」

 全員が手持ちのスマートフォンまたはソウルライザーに注視して見ると…いつの間にかトークアプリからベーコンのアイコンのアカウントより画像が添付されていた。

「まず、注目すべきは先ほども一番右側の裁判員の方が申した通り、この男は旅館に設置された公衆電話から通話相手の20代女性と会話の最中に交際相手の事がバレた瞬間…即座に通話を打ち切った!これは紛れもなく隠蔽を図った決定的な証拠です!」

 それは単にめんどくさい相手(ミオ)に自分の交際がバレたのを察しただけな気がしたが…ミオは続けざまにこう証言した。

「さらにッ!…その後に10代の妹に向かって虚偽の報告をして先ほどの通話のやり取りを隠匿した…ここまでが事件の証拠であるため、被告人の有罪は紛れもなく逃れる事の出来ない事実なのです!!」

 すべての証拠を提示し終えたミオはユウゴへの有罪を強く訴え、裁判員たちにも証拠に対する理由も深く納得して頷くのであった。

「そうなったら…次は弁護側の方だよね」

「そっ…そうですね、弁護側は異議があります」

 零門は右手を挙げて検察側への異議を申し立てた。

「先ほど、検察側が提示した証拠は被告人が自供したと言う証拠であるのは確かに明白です…しかし、この裁判で争点とするのは被告人が交際を隠していたと言う事が罪とするなら、被告人は自供内容を認めた上で起訴内容も認めています、先ほども申しましたが情状酌量の余地があると思われますが…――」

 零門も前代未聞の裁判に現役の弁護士ながらしっかりとした意見を述べてユウゴを弁護した。

「おい、俺からも1つ異議を申し立てしてもいいか?」

 今度は被告人であるユウゴが意義の申し立てに手錠を掛けられた手を挙手した。

「ええっと…お兄ちゃん被告人、何でしょうか?」

「こんだけくだらん茶番をしている手前で言うのもなんだが…お前ら人の交際にとやかく言っているけど、異性と交際もしたこと無いのか?」

 怪獣娘たち全員の頭上に落雷が落ちて来た。

「弁護士さんは?」

「ええっと…私にも今、お付き合いしている方が居ますので交際経験は現在進行形と言いますか…」

 驚くことに弁護士の零門にも交際相手がある以上、被告人のユウゴと弁護士の零門の男性2人にすら交際の経験があった。しかし、当の怪獣娘たちは…全員、撃沈して頭を項垂れていた。

「ぐっ、くぅッ…なんという非道な意見を……裁判長ッ!!被告人の犯した罪は明白です、検察側は被告人に『ミオお姉さんと一日デートの刑』を求刑いたします!!」

 検察側が提示した判決は有罪での私的量刑であった。

 しかし…

「ミオミオ、自分のことばっかりですか…申し訳ありませんが、ピグモンはアギアギのお兄さんを無罪とします」

「オレも同じだ…こんなくだらないことで人を罰するとかありえないぜ、無罪だ、無罪ッ!」

「ううっ…ユウちゃんが思った以上に大人やった…ウチはそんな子に育てた覚えはないけど、無罪!」

「うぐっ…そうですよね、所詮BL漫画ばかりを漁るような私なんかに恋愛なんて……ユウゴさんは無罪です!」

「まぁ~ぶっちゃけ、なんか裁判とか初めてだったからテンション上がってけど…よくよく考えたら彼女いる事が罪とか意味わかんないよねぇ~、無罪っすよ」

「うぐぅ~…アギラさんのお兄さん、後でどうやって彼女さんをゲットしたのか教えてください!あと無罪です!」

「んん~まぁ、最初っから罪はないと思ってたし…変わらず無罪っす」

「あっ、アギラさんのお兄さんは…もう少しアギラさんや皆さんに伝えることをがんばりましょう…私も無罪です」

 8人がユウゴの罪を無罪で一致した。これによりミオの主張は通ることは無くなってしまった。

「えっ、ええっと…それじゃあ、お兄ちゃんの『不純異性交遊隠蔽事件』の判決を言い渡します…」

 検察側は落胆して腰を抜かしたミオをビーコンが背中を摩りながらも起立をさせ、弁護士の零門も無罪で終わったことにホッと胸をなでおろして起立した。

「――…主文、宮下ユウゴを…有罪とする」

(そうそう…お兄ちゃんが誰かと付き合っていようがそんなことで有罪なんかに……エッ?エエエエエエエッ!?)

 突如として無罪一致で決まる直前にアキはユウゴに対して有罪を言い渡した。

 それに対して弁護士の零門も、傍聴人の怪獣娘たちも、裁判員の8人も一斉にアキの方を見て驚愕した。

「ちょっ…えっ!?アギちゃん!?どうしたの急に…」

 突然のアキの判決転換に驚いた近くのミクはアワアワと困惑していた。

「判決理由として、“私”に直接相談もなく勝手に赤の他人と交際していたのは家族間と言えど報告の義務がある…それを怠って長期的に交際を隠匿していたのは事実であるためユウゴには『今年いっぱいまで外出禁止』を言い渡す!」

(ちょっ、なんでボクじゃないのにそんな勝手なことが決まっているの!?)

 アキの身体を使って何者かがユウゴにトンカチを突きつけて“外出禁止”を言い渡した。

「えっ!?いやいやアキちゃん…そんな今年いっぱい外出禁止になったら、お姉さんとのデートの刑はッ!?」

 自分が思い描いていた求刑とはかけ離れていることに納得が行かないミオは再度アキではない誰かに向かって刑の変更を求めた。

「…じゃあ、明日から外出禁止でいいから…今日限りでこのバカを煮るなり焼くなり好きにしてもかまわないからさっさと行ってきなさい、ミオちゃん」

「みっ、ミオ…“ちゃん”?」

 アキではない何者かは呆れ返った表情で頬杖を突きながらミオに『さっさと行け』のジェスチャーを送った。

「なんだかアキちゃんの口調が代わったような気がするけど…きゃっほ~い!ミオさん大勝利ぃ~!!」

 ミオは自らの勝利に沸き立ってハイテンションとなりミオの身体は光り輝いてベムラーへと変身を遂げた。

「いやっほぉ~い!!ユウゴ君、借りてくよぉ~みんなぁ~!!」

 そう言ってベムラーの力をフル活用してユウゴの両肩を捕まえ店を飛び出してユウゴを外へと連れ出していった。

「えっ…エッ!?アギちゃん、どうしちゃったのさぁ!?みんなで無罪って言い切ったのになんでアギちゃんが変えちゃうの!?」

 ミクは慌ててアキに詰めよってその真意を聞き出すが…

「よくないよぉおおお!!――ボクだって無罪を言い渡すはずだったのに…なんか、こう、変にボクであってボクじゃない誰かがボクの口を使って…んん~ッ、とにかくミオさんとお兄ちゃんを追おうよ!あの勢いでミオさんが変なことしないとは限らないし、何なら行っちゃいけない変なホテルに連れ込んで一線とか超えちゃうよッ!!」

「やけに具体的ですね…」

「とっ、とにかくミオミオが暴走してアギアギのお兄さんに変なことをしない為にもGIRLSの皆さん!ミオミオを追いかけましょう!!」

 GIRLSの怪獣娘たちは一斉にBAR1954から飛び出して行き、ベムラーたちの後を追うのであった。

「……私は、どうしたらいいんですか?……」

 唯一、取り残された零門は途方に暮れていた。

 一方、その頃…裁判での逆転勝利に浮かれ切ったベムラーはユウゴを上空まで連れ出して有頂天に飛び続けていた。

「やっほ~い!!とりあえず、どこにいく ユウゴくん」

「…何処にも行かん…お前が向かうべき場所は、地面だ」

 手元に捕まえていたはずのユウゴはゴジラへと変貌を遂げ、更に赤い背ビレと溶岩の様に真っ赤な模様が浮かぶバーニングへと形態を変化させていた。

「うぎゃぁッ!?フングググッ…おっ、おもぉおおおい!!?」

 突如、体積質量が代わったゴジラのバーニングはミオを重量過多にさせて飛行を維持できなくさせて、そのまま垂直に降下していった。

「いやぁあああああああッ!?」

「形態変化 “ミレニアム”」

 真っ逆さまに落ちていく先には河川敷の水面が見えてきたところで…ゴジラは形態を最軽量のミレニアムに変化させて水面に超高速の振動を与えると水とゴジラの足は反発するように宛らトランポリンの上を跳ぶ勢いで高く飛び上がった。

「ひゃぁああッ~~――うッ!?」

 ベムラーは掴み抱えていたはずのユウゴからゴジラに横抱きで抱きかかえられている事に気が付いた。

「ユウゴ君……えへへッ、やっぱユウゴ君には私が居ないとダメみたいねぇ~」

 抱きかかえられているベムラーはゴジラの首に手を回して抱き着いていたが…

「ほらよッ!」

「グエッ!?」

 ゴジラは抱きかかえるベムラーをそのまま地面に落とした。

「ちょっ、何するのよ!こんなこと女の子に平然とするような男が誰かと交際なんて無理に決まってるわ!」

「人の交際付き合いを裁判とか言って文句を言う女よりかはマシだ」

 ゴジラは腕を組んで呆れ果てた。ベムラーは手元にある河川岸の小石を握りしめて悔し涙を浮かべた。

「ううっ、なんでみんな揃いも揃って大人になっていくの!?私を置いて先に大人になりやがって…私だって…私だって…誰かとチューもしたこと無いのにィイイ!!」

「アホか…」

 ミオは泣き崩れて小石に八つ当たりとして地面に叩きつけを繰り返した。それを見かねたゴジラは呆れ返って深いため息を吐いた。

「しめたッ!喰らえええッ!!」

 すると突然、ベムラーはゴジラの首に手を回して口元に唇を押し付けてキスを喰らわした。

「ふはははははッ!どうだ、お姉さんの大人のキスはッ!!君の初めてのキスの相手は…このミオお姉さんよッ!!」

「……いや、キスくらい2年も前からしているわ」

「ハァアアッ!?」

「――んでもって、その相手が今の付き合ってるヤツだよ」

「ハァアアアアアアッ!!?」

 驚愕の事実にベムラーの変身が維持できなくなって意気消沈となったベムラーはミオへと戻って地面に両手を付いて俯くのであった。ちなみにコレがミオのファーストキスでもあった。

「――…あっ、ユウゴさんッ!みんなぁ~!!いたよぉおお!!」

 河川敷沿いの歩道からミクがユウゴ達を見つけてGIRLSのみんなを呼んだ。

 ユウゴはミクの気配を察知してか、彼女に自身の姿を見られる前にゴジラから元の人間の姿へ戻っていた。

「ミオミオッ!いい加減にしてください…アギアギのお兄さんが誰と付き合おうと私たちには関係が無いんですからッ!」

「ううっ、みんな…コイツは穢れてる、穢れているわぁあッ!!…お姉さんの初めてのキスをあげてやったのに…その前からキスをしていやがったぁああッ!!」

 ミオはやけくそになってユウゴに自分のキスを与えてやったことを訴えたが、それ以前からキスをしていたことも知ってか、さらに悔しさが込み上がって泣き崩れた。

「まっ、マジかよ…アギラのお兄さん、見た目以上に大人じゃねぇかッ!?」

「あっ、あのッ!初めてのキスってどんな感じなんっすか!?」

 引くどころか寧ろ興味津々になって怪獣娘たちはユウゴに顔を赤くしながらユウゴの恋愛事情を尋ねた。

「――…別に大したことでもねぇよ、口付けて舌を入れりゃキスは出来る」

 全員が『舌をッ!?』と驚愕するほどに初心な怪獣娘たちには刺激が強かった。

 だが、そんな中で決して良く思わない者がいた…

「――こんのッ、バカ長男ッ!!」

「あぁ?――のわっ!?」

 突如、頭上から大きなハイキックが落ちて来てユウゴはそれを避けきった。

「あっ、アギアギッ!?」

 蹴りを落として来たのはアギラであった。

(ええええッ何しているの、ボクゥウウッ!?)

 そこに居るのはアギラであってアギラでは無い者を隣で見ていた半透明なアキは驚愕した。

「おい、バカ長男…ミオちゃんを泣かせるとは良い度胸だなぁ…死ぬ覚悟はできてるか」

「あぁッ!?何言ってんだ…」

「問答無用、くたばれ!!」

 アギラではない何者かはユウゴに向かって攻撃を仕掛けようとしたその時であった。

「まっ、待って…アキちゃん!!」

 アギラの腰にしがみつくように彼女を引き止めたミオによってそれは防がれた。

「えっ、どうしたの ミオちゃん…」

「ううっ、もういいの…いいのよ…正直、わかってた…ユウゴ君だっていつかは大人になるんだって…私の後に大人になるもんだと思ってたらいつの間にかユウゴ君にすら先を抜かされて…このままじゃ情けないのはお姉さんの方よ」

 涙を浮かべて自分のみっともなさを恥じたミオであったが…ポンッとその肩にアギラの手が乗った。

「…ミオちゃん、何も急ぐ必要なんて無いんだから…ミオちゃんの人生、まだまだ先の長い所にいつか素敵な出会いだってあるわ  みんなもこんなのを参考にしちゃダメよ、それぞれのペースでしっかりとした恋愛をして、交際して、いつかは結婚したり、子供も生まれたりするんだから…そうやってみんなこの世界の歴史を過ごしていくのよ」

 ミオの頭を撫でまわし励ますアギラはユウゴなんかを参考に恋愛観を歪めない様に怪獣娘たちへ注意を促した。

「アキちゃん……その感じ……どこかで…」

 励まされたミオはアギラを見詰める視界の中でとある記憶とアギラが合致する。それは幼い頃にあった事のあるミオが最も憧れていた素敵な女性の記憶であった。

「…おい、バカ長男!」

「誰に向かって行ってんだ…」

「アンタしかいないでしょうが…もう外出禁止とかどうでもいいから、その人と付き合い始めたらんなら絶対に幸せにしなさい! 遊びでしたじゃすまされないし、“私”が許さないわよッ!」

 ビシッと指を差してユウゴに交際するにあたっての苦言の釘を刺した。

「――ったく…なんで急におふくろみたいなこと言い出し…んっ?…アンタまさかッ」

 アギラの突然の豹変に彼女の目に宿る赤い光が何なのか…ユウゴには気づかせた。

(――…すごくいいこと言っているみたいだけど…いい加減にボクの身体返してぇええ!!)

 半透明のアキはアギラの身体に宿る何者かに触れてアギラの身体を左右に揺らす。

「あぁあ~ハイハイ、わかったから…ほら、入った入った」

(ふえっ?わぶぅっ!?)

 突如、アキの身体からアキと同じく半透明の手が伸びてアキの思念態を捉えて彼女の元のアギラの身体へと戻って行った。

「――…アレッ?ボク…元に戻った?」

 またしても誰かに身体を乗っ取られていたアギラは我に返って元のアキへと変身を解いた。

「アギアギィィイッ!!一体全体どうしちゃったんですか!?」

「わわわっピグモンさん!?落ち着いて!!」

 突然のアキの変貌ぶりに仰天したトモミはアキを前後に振りまわした。

「それよりもアギラ、今のハイキックすごかったなぁ!?どこで覚えたんだよ!?」

「すごいよ、アギちゃん!大怪獣ファイターのアタシたちですらビックリだよ!?」

「ふぇぇええ~…助けてぇえ、お兄ちゃん!!」

 GIRLSのみんなに問い詰められたアキはユウゴに助けを求めるが…

「フンッ、くだらん…俺は帰る」

「そんなっ!?」

 ユウゴは振り返ることもなくその場を去るのであった。




アンバランス小話
『合コン』

 後日、ミオの提案で開かれた合コンは男女共に3名で都内の大座敷料亭で行われることに為ったが…
「………………ッ」
 合コン提案者にして探偵事務所『ブルーコメット』を構える天城ミオ。
「………………ッ」
 国際怪獣救助指導組織『GIRLS東京支部』の支部長を務めるゼットン(姉)。
「………………ッ」
 同じく同職場の常駐カウンセラーにして医師免許を有する百地メル。
 彼女たちが沈黙をする先にいる男性陣たちには…
「…………………」
 『人に集めさせておいてなんだその態度は?』と腕を組んで威圧する宮下ユウゴ。
「О, я скоро вернусь…Нет, сейчас я на групповом свидании…Нет, я ужинаю со знакомым…А, подожди минутку, Арни!( ああ、すぐに帰るから…いや、今その合コン…じゃなかった、知り合いに会食をだなぁ…あっ、ちょッ、待ってくれアーニ!)」
 ロシア人の妻がいるスポーツ庁参事官、庵堂アラシ。
―きゃはははははッ!!―きゃははははッ!!―きゃははははッ!!―
「コ~ラッ、いい子にしてなきゃメニューのプリンは無しにするよ」
「…義兄さん…今、それどころじゃない気がするんだけど」
 4児の娘と1人の女子高生がいる学校教師、土田コウタ…他、元気な娘たちと空気が気まずい女子高生であった。
「えっ、ええっと…では、ごっ、ご職業は?」
 もはや何を言っていいのか合コンの様相を呈していないこの場でゼットン(姉)は庵堂に話を振るが…
「すみませんッ!妻がちょっとキレ散らかしているので…私はこの辺でッ!」
「えっ!?もうッ!?」
「帰らないと妻が私にカラシニコフを喰らわせるとか脅されましたので…すみません、失礼します!!」
 慌ててアラシは合コンから離脱して去って行った。ちなみに『カラシニコフ』とは妻アナスタシアがブチギレた時に粉末和からしを大量に入れたボルシチの総称である。後にコレが一週間も続くこととなるのはまた別の話であった。
「……ええっと、何か飲まれます?」
 次にシフトチェンジしたのは土田であったが…
「パパに近づくなぁあ!!」「気安くパパに話しかけるな!!」「べぇーだッ!!」
 元気いっぱいな3人の子供たちが土田をガードした。
「ホント、なにその重力を無視した乳袋ぉ~!そんな凶器でみんなのパパを奪う気だよぉ~、ひゃぁ~やらしぃい~!!」
「なにちゃっかり子供たちの中に紛れ込んでいるんだ、自称探偵業!」
 子供たちの輪の中にちゃっかりゼットン(姉)をディスるミオは子供たちを扇動してゼットン(姉)を目の敵にしていた。
「コラコラッ…失礼なこと言わないの」
「…ねぇ、義兄さん…やっぱ私たち外で待っていた方がいい気がする」
 小さな3歳児を抱える女子高生は見かねて外で待つことを提案するが…
「いいや、ここに居てくれて助かっている…ありがとう」
 ユウゴが女子高生の頭を撫でて彼女をその場に留めた。
「うっ…ゆっ、ユウゴさん…」
 女子高生は顔を赤らめてどこか嬉しそうな表情を向けるとゼットン(姉)は諸悪の根源がユウゴ(コイツ)にあると理解した。
「それいけぇええ~!!怪人ぜっぱい獣からパパさんを守れぇええ!!」
「くたばれぇええ!!」「女の敵ィイイ!!」「パパを取るなぁあ!!」
「うわぁあああ、よすんだ子供たち!!イタタッ、いたい、痛いッ!!ちょっ、胸を殴らないでくれッ!!」
 土田の3人娘たちはミオに扇動されてゼットン(姉)を強襲した。
「コラァアア!お姉さんになんてひどい事を…」
「まぁ、まぁ、お父さん…ここは私に任せてください…――みんなぁ~集合ぅう~!」
 メルの一声で土田3姉妹たちはメルの方へ集まった。
「あのね…――ごにょごにょ…」
 メルの話を聞いた3姉妹たちは顔をグルンとミオの方に向けると凶悪な顔つきでミオを睨んだ。
「えっ、ちょっ…メル、あんたこの子たちに何を吹き込んだの!?」
「お前こそくたばれぇえ!!」「家族の敵ィイイ!!」「パパから離れろォオオ!!」
「ぎぃやぁああああああ!?」
 ゼットン(姉)から標的を変えて今度はミオへと集中攻撃が向かって行った。



 BAR1954

「…それで…どうでした?」
 夜の酒場にてダグナがマスターを務める時間帯にカウンターからダンッダンッとグラスがコースターに叩きつく。
「「問題外ッ!!」」
 結局、その日の合コンはゼットン(姉)とミオには着飾ったドレスが無残に崩れるほどに酷いものであった。
「でも、私は連絡先交換したけどねぇ~」
「「はぁ~ッ!?なにソレ、ズルい!!」」
 メルのソウルライザーにはちゃっかり漁夫の利を得て庵堂と土田の連絡先が入っていた。
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