TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐   作:神乃東呉

39 / 48
一筋縄いかぬ交際

 ―…一方、その頃…―

 

―ゴクッゴクッゴクッ…ドンッ!!

「プハァ~~~ッ!!ぬぁ~にが彼女だッ、ぬぁ~にが恋愛だッ、ンなもんにうつつを抜かす前に私を見やがれってんだぁあッ!!」

 お酒を一瓶分飲み切ったミオは完全に酔いが廻って顔を紅潮させた状態で酔っ払う。

「うっわ…すげぇ、大人ってこんなすぐにワインを軽々飲み切っちまうのかよ…」

 ユウゴ達を見失ったミオたちは近場のチェーン店のイタリアンレストランで反省会もといミオの慰め場として設けていたが…

「だいたいどいつもこいつも色気づくのが速すぎなのよ!賭けもお酒も恋愛も二十歳からやりゃいいだろうが!!」

「すっ、すごい暴論を申していますね…お酒だけでここまで人を変えてしまうなんて…」

 まだ酒の味を知れない未成年者である怪獣娘たちにはミオの酒豪たる飲み方と酔い方に気圧され気味な中…

「まぁまぁ、ベムラー姉ちゃんの気持ちはウチもよーわかるわぁ~…狙ってた男の子が別の子に取られるっちゅうのは案外辛いもんやでぇ ほい、白ワイン」

「ほほぅ、ゴモラ屋…ぬしも悪よのう」

「いえいえ、いつもベムラーはんにはGIRLSを御贔屓にしていただいとりやす…ウチらはただのケチな娘っ子でやんす」

「いつからGIRLSは悪代官の渇望担ぎなんか始めたんだ…ゴモラ、あんまり調子づかせるな」

 これ以上ミオに酒を与え続けると自分たちも巻き込まれかねないと判断したベニオはミカヅキが差し出した白ワインを遠ざけた。

「なぁ、ベムラーさんよ…俺はアンタの事はGIRLSの記録でしか見たこと無いけど…正直、アンタから怪獣娘が始まったも同然なんだ いつまでも女々しく手から離れちまった男のことをグチグチ言っても仕方ねぇだろう 同じ怪獣娘ならシャキッとしな、シャキッとよぉ!」

「あぁ?偉そうに言ってるけど~…そういうアンタはじゃあ恋愛経験あるのかぁ~?」

「うぐッ…そっ、そりゃあ~GIRLSなんかやっていると恋の一つや二つくらい…」

「へぇ~そうなんや~…レッドちゃんにも恋する乙女心があるんやなぁ~…是非とも参考までに聞きたいもんやでぇ~♪」

 明かに恋愛下手そうなベニオに悪絡みをするミオとミカヅキは肩を組んでニヤニヤとベニオに秘めたる恋愛模様を引き出そうとしていた。

「そっ、そうだなぁ~…オレなんかは…“互いに手を取り合って深く心から通じ合える気持ちさえあれば十分な気がする”って所かな」

「ほほぉ~、レッドちゃんにしては真面な意見やけど…どう思いやす、姐さん」

「なぁ~んか嘘っぽい上にありきたりな“逃げ”ね…大方、少女漫画の受け売りかなんかでしょ」

 真っ当な意見を言ったつもりがミオに見透かされて図星を突かれたベニオはビクッと身体を震わして額からダラダラと冷や汗が止まらない。

「ちなみに今のセリフ…ハチコイ第25話『美しき挑戦』からの引用ですね」

「ふぇ?そうなの?」

 さらに少女漫画にも精通しているレイカにも受け得ていた漫画内のセリフをミートソースドリア頬張るミクの隣で見透かした。

「ベッ、別に…そんなこと、よくある言葉だろう!(クソォオオ…コイツらの前だとどんな事を言っても馬鹿にしてきやがる…どうしよう、全員ぶん殴りてぇ…)」

 隣で『図星やんッ、図星やったやん!!』と大笑いするミカヅキと酔っぱらうミオ、セリフ当てに満足して眼鏡をクイッと光らせるレイカとその横でミックスバーグを頬張るミク、ここにはベニオの味方は居なかった。

(くっそぉ~…コレもソレも、全部アギラのお兄さんが…延いてはアギラが悪いッ!!)

 発端が誰なのか、何がどこでこのような状況にさせたのか…ベニオの脳内で巡らせる思考の末にユウゴに回ってアキへの逆恨み的な感情が芽生えつつあった。

「プッフッ…クスクスッ…」

 そんな騒がしいミオたちの席に向かって誰かの笑い声が聞こえた。

「あぁん?誰よ…さっきから姑息に笑いつけるのは…」

「へっ?ウチらじゃないで…」

 ミオは自分が笑われていると思い込んで怪獣娘たちに強い眼光を向ける中で…

「アッハハハハハッ…もう無理、聞いてたら我慢できないわ」

「どうしたんですか…大丈夫ですか、サラさん?」

「…ゴモッ?」

 その声の主はミオたちの隣の席でミオたちの話を盗み聞きしていた家族連れの女性の方であった。

「おいコラッ、そこのリア充一家!何が可笑しいんだゴラッ!」

「ちょっ、ベムラーさん…一般の人にチンピラみたいな絡み方しないでくれよ!恥ずかしいからッ!」

「落ち着いてぇな、ベムラー姉ちゃん!」

 ムカついたミオが立ち上がって睨み切る所にミオの腕を引いて止めに入るミカヅキとベニオに静止されるが…

「いやはや、滑稽だね…アンタ、ウチんトコの上司にソックリだわ どう考えても男がアンタを見棄てて他の女に行かれてしまう、典型的な掻っ攫われ女だわぁ~」

「ちょっ、サラさん!失礼ですよ、お酒飲み過ぎですって…」

「ゴモ…サラ、酔ッ払イ」

 相手側の家族連れの男性側も酔い笑う女性の間に入って静止させる中、子供はドリンクバーの飲み物をストローで飲み続ける。

「上等だ、表出ろゴラッ!この酔っ払い!!」

「それはアンタやッ!落ち着きいなッ!」

 酔っぱらった末に今にも飛び掛からんとするミオをミカヅキは押さえつけるが…

「んだと、ゴラッ!こっちこそクソみたいな官僚共へのストレスで鬱憤溜まってんだよ、科学者舐めんなボケがッ!」

「サラさん、ダメですって!湯原先生に周囲の迷惑になるようなことはしない約束を交わしたじゃないですか!!」

 相手方の女性も同席する長身の付き添い男性に両肩を押さえられていても制御が聞かない…

 双方バチバチと火花を散らせる中、ベニオは思った。

(やっぱどれもこれも“あの兄妹”のせいだ!!)

 総じて悪いのはアキとユウゴだとベニオの中で整理するも半ば強引に心からの八つ当たりであった。

 そして、その頃…

「お待たせ…筆記は終わったよ」

「おう、手応えはどうだった?」

「バッチリよ! 良い先生がいろいろ教えてくれたおかげだったからね…ありがとう、ユウくん」

 かなりの高感触であったのか筆記に自信に満ちた様子のビオランテだが…

「―…―…―…ッ」

「えっ?…妹さん…どうしちゃったの?」

 明かに様子のおかしいアギラの手元には分厚い筆記問題集を見開きながら目の焦点が合わずに上の空を向いていた。

「なんかお前に触発されたのか自分も過去の筆記問題だけでも挑戦すると言ったきりコレだ」

「えーっと…アキさん、大丈夫?」

「アイ、ボクハダイジョブレス…」

 目の焦点が合わないアキは言葉すらも片言にして言動が合っていない思考放棄を起こしていた。

「おい、戻ってこい馬鹿」―バチンッ!

「アブッ!?…いっつぅう~!!」

 背後からゴジラに後頭部を指先で弾き飛ばされて痛覚によって正気を戻された。

「ううっ…あれ?ボクは一体なにを…」

「2,3ページ開いただけで魂抜けていたぞ、お前」

 我に返って手元の見開いたままの問題集には想像しがたい魔力を秘めていた。

「この呪文の本みたいな問題集をお兄ちゃんたち全員解けるの?」

「解けるも何もこの世のすべての問題形式の集合体だぞ…問題自体を生み出したのは人間だ、解けない問題を筆記試験に出すかよ」

 恐るべき人間の英知である。そんな問題の集合体を大学入試の試験時間程度の時間で終わらせたビオランテやゴジラにも延いては怪獣戦士(タイタヌス)たち全員に脱帽させられる。

「こんな問題が解けるならどこに行ったって通用するよ!なんでここまでする必要があるの?」

 しかしながらアギラはGIRLSの怪獣娘としてGIRLSで受けた生易しい試験とは明らかにかけ離れた試験の力の入れ具合には疑問が生じさせられる。

「その問題集はなぁ、俺たち怪獣能力者の正気度を試す為のもんだ…それを解けたからと言って怪獣能力者が怪獣戦士(タイタヌス)になるワケじゃねぇーよ」

「えっ、そうなの?…じゃあ、ビオランテさんが本当の怪獣戦士(タイタヌス)さんになるには…次に一体なにするの?」

 アギラにとって試験とはGIRLSの様に筆記試験後には行われた面接や実技のスパーリングが記憶にあるのだが…―ガラガラッ…

「はい、ビオランテさん筆記試験は合格とします…次の試験は校庭にて行いますのでご移動をお願いします」

 あっさりとビオランテの筆記の合格をバラゴンが伝えに来たことにビオランテは胸に手を当てて合格にホッとした様子を見せた。

「よかった~…でも、まだまだこれからよね」

「なんだかボクまで緊張してきました…頑張ってください、ビオランテさん」

「ありがとう、アキさん…なんたって次はいよいよ実技ですもの」

 怪獣の実技となるとアギラの頭の中で連想したのはGIRLSでのスパーリングが思い浮かぶが、怪獣戦士(タイタヌス)の実技、果たしてそれはスパーリング程度の事なのか…

 

 

 

 試験会場の女子高の校庭は陸上競技場のトラックが描かれている合成ゴム素材の地面で縦幅だけでも校舎以上の広さを有する場所にパンッ、パンッ、パンッとナイター照明が校庭内を明るく照らす。

「うわぁ~…GIRLSの運動場並だよ」

 アギラは改めて照明に照らされる実技会場が以前GIRLSスポーツ課の御手伝いに訪れた陸上練習場と同等の広さが怪獣戦士(タイタヌス)への実技試験会場であると実感させられた。

「そっ、それで…ビオランテさんの実技を担当する人は誰なの」

「んなもん、既にここへ来ている…」

 そう言ってアギラたちの元から離れてゴジラがトラックの中心に向かって歩いて行くと中心地に辿り着いたゴジラがクルッとアギラたちの方を向くと腕を組んでいた手を解いて脱力したままに強い視線を向けた。

「実技試験官の怪獣戦士(タイタヌス) ゴジラだ」

「えっ、ええええええッ!?おっ、お兄ちゃんが…ビオランテさんの試験官ッ!?」

 次なる実技の試験官がまさかのユウゴことゴジラが先達の怪獣戦士(タイタヌス)として試験者のビオランテの相手に名乗り出たのであった。

「…そう、やっぱりあなただったのね……わかった、アキさん少し離れていて…」

 ビオランテはアギラを試験場となる校庭の外に出るよう手でジェスチャーして促した。

「でっ、でもビオランテさん…ビオランテさんはお兄ちゃんにとって大切な彼女さんなんですよね!?大丈夫なんですか!?戦ったりなんかして…」

「……アキさん…私たち怪獣能力者は例え大切な人同士であってもどちらかに怪獣能力者として不利益が生じる事態に備えて今日までに対策しているの…これはその一環の実技だから愛している大切にしているは関係ないの」

 ビオランテはアギラの肩に触れて立場の違いを理解させた。冷徹にも思えるが、GIRLSにも暴走した怪獣娘の保護の為にトレーニングは欠かせないし、実技にもそういった意味合いを含め見定める重要なポイントがあると以前ミカヅキに教えてもらったことがあったのをアギラは思い出した。

 ミカヅキこと怪獣娘ゴモラ曰く、『シャドウと怪獣娘は勝手が違うからね 暴走していても相手を気遣いつつ、それでいて全力で戦わないとひどい目に遭うから――だから、シャドウ相手は合格点でも、怪獣娘との戦い方もちゃんと試験するべきじゃないかな?』と彼女は語っていた。

「いいわよ、ユウくん…私はもう準備は出来ているわ」

 しかし、これは怪獣娘同士のスパーリングなんて生易しい物ではない。怪獣戦士(タイタヌス)と怪獣戦士(タイタヌス)候補者の実技試験、当然ながらスパーリングのようなスポーツファイトではない。

「それでは、これより実技試験の戦闘を行います…ルールは生殺を無しとして試験官に攻撃の命中のみとします」

 バラゴンからの説明通りなら怪獣娘同士の実技試験同様に自身の攻撃が試験官の怪獣娘にヒットさせれたら合格と内容は同じであるが、途中の『生殺』と言う聞き慣れない言葉にアギラはここが怪獣娘との違いを認識させた。

「……ビオランテさん……」

 校庭外から見守るアギラはバラゴンと共にビオランテとゴジラの実技試験を見守るが…

「…始める前に少しまて…」

 この実技試験に待ったを申し出たのは意外にも試験官のゴジラであった。

「…始めるに当たってお前に聞いておきたいことがある」

「……なに?」

「…昨日エリカさんが言ってた『勝負下着』ってのはなんだ?」

「―――ッ!?」

 突然、ゴジラの口から尋ねられる思いもよらぬ質疑にビオランテは目を大きく開いて驚愕し、アギラも口を大きく開けて同じく驚愕した。

「前々から思っていたんだが、俺が見もしないお前の見せない部分にまで気を回されても俺にはどう受け答えしていいのやら分からん…と言うか、お前のお母さんから言われているんだがお前にはなるべくスタミナの付く料理を与えてほしいと言われているがお前オーガニックしか受け付けないよなぁ…」

 ゴジラもといユウゴの口からポンポンと出てくるビオランテとの交際時のプライベートトークに二人の間柄をそこまで知らないアギラでも『今それ言う?』と疑問視するが…当のビオランテは…

「…フッ…ウフフッ……そういうデリカシーの無いことを今いうなぁあああああああッ!!」

 額に脈打つ血管を浮かべるビオランテは激情を誘い出されて早速試験が始まった。

 ビオランテの手首に隠し潜む蔦状の身体武器をゴジラめがけて飛び掛かっていく…―――

―ーゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……ドンッ!!

「「プハァ~ッ!!生き返るぅう!!」」

 また一方のその頃、ミオたちの居るイタリアンレストランでは隣の席の女性と一触即発へと発展するかと思われていたが先ほどとは打って変わって2人仲良く大きなワイングラスのワインを飲み干して息ピッタリ同時にレストランおすすめの黒ワインを飲み切って見せた。

「なんだ~アンタもいける口ィ~?…いいねぇ、ジャンジャン飲もう!!」

「アハハハハハッ、ジャンジャン持ってこ~イ!今日は私の奢りよッ!!」

 顔を真っ赤にして2人の酔っ払いが肩を組みながら悪酔いをしている。あまり良い酔い方とは言えない。

「すみません、ウチのサラさんが御迷惑をおかけして…」

「いえ、こちらもベムラーさん…じゃなかった、ミオさんが御家族でお食事中の所に申し訳ありません」

 付き添いの男とレイカは互いに深く謝罪し合っている中…

「ジィー――――…」

「んっ?なんや?なんやねん?」

 隣の席の家族連れの少女がミカヅキを凝視して来た。

「オ前、古代怪獣ゴモラゴモか?」

「なっ、なんやッなんやッもしかしてウチのファンかいな? まッ、ウチも結構有名やからなぁ~」

「よッ、さすが大怪獣ファイトのホープ!」

「なんだなんだ、ゴモラもすっかり有名になったな」

「こんなファンに目を輝かせながら見られる日が来るなんて…ウチもお天道様に顔向けできんほどに有名になってしもうたかぁ~」

 自分と背丈とそこまで変わらない子に認知されていると思い込むミカヅキであるが…

「古代怪獣ゴモラ…解析中…解析中…」

 その目は本当にミカヅキに向けて目を光らせ彼女の何かを分析と解析をしていた。

「いや本当に目が輝いていませんか、その人ッ!?」

 レイカから見てもミカヅキに向けられているのは羨望の眼差しでなく光線状の眼差しでミカヅキを照らしているようにも見えた。

「ア~~~アッ、すみません…この子、目が悪いもので近くまで人の顔を見ないとわからないんですよ!」

 家族連れの男が少女の目を覆い隠して慌ててミカヅキたちから距離を取った。

「いや、明らかになんか目が光っていませんでした?」

「いや~ッ、皆さんのような珍しい方を前にしてウチのメイカがちょっと興奮気味だっただけです…目を輝かせていただけです」

 やたらと慌ただしい口調で少女の目を隠し誤魔化す男に対して…

「何言うとんねん、ダム子!これやからダム子は…ウチを前にしたファンが目を輝かせて見てくるなんて当たり前の事やがな!」

「そうだよ、ウインちゃん!ゴモたんは大怪獣ファイトのスーパースターだよ!目の一つや二つを輝かせて見るなんてアギちゃんもゼットンさんにいつも目を輝かせているじゃん」

 ミカヅキたちは何も怪しまず、寧ろ自分の認知度の上り様に有頂天になっているミカヅキは特に気にしていなかった。

「なんで私が間違っているみたいになっているんですか」

 なんか納得の行かないレイカであるが心内ではみんなの言う通り気のせい程度に思い直した。

「それよりもウチのサラさんが皆さんの御迷惑をおかけして申し訳ありません…サラさんの気分が落ち着いたら僕たちは引き揚げますので…」

「あぁ~、いいですいいです…奥さんがミオさんと飲み明かしているならあたしらも一緒に楽しみましょう!すみませ~ん、マルゲリータ追加でッ!」

 ミクは隣の席の者たちと共に食事を楽しむことにはやぶさかではなく、寧ろ今テーブルに並ぶ料理よりもさらに追加で注文する勢いであった。

「アハハッ…御気持ちはうれしい所を申し訳ないんですが、サラさんは僕の奥さんじゃないんです」

「えっ?ご結婚されているんじゃないのか?」

 驚くベニオしかり皆もこの家族連れの男女が夫婦の様に思っていたが本人曰くまったく違うと否定した。

「サラさんは…僕の命の恩人的な人と言うか…まぁ、サラさんの助手みたいなものです…あっ、名前がまだでしたね 僕は桐生シュンイチと言います こっちは五目メイカ」

「ゴモッ!」

 不思議な間柄の男女と少女、その男の方はシュンイチと言い、少女の方はメイカであると互いに自己紹介をしてきた。

「…キリュウ…さん?…なんかどこかで聞いたような…」

「なんでもエエやん、レッドちゃん!ウチはウチを応援してくれるファンなら誰でも大歓迎やで ホレッ、好きな所にサインしたるでぇ~」

「いらないゴモッ!」

 自身のファンには多大なまでのファンサービスをしてあげようとするミカヅキだが、メイカはそれを全力で拒否した。

「おっしゃ~!このまま次の店で二次会をするぞぉ~!!」

「イエ~イ、朝まで飲み明かすわよぉおお!!」

 こちらもこちらで飲み仲間と化したサラと二件目の飲食店へと向かおうとするミオが酔っ払い同士方を汲み合って店の外へと向かって行った。

「ちょっと待ってください、ミオさんッ!ご自宅へは御帰りになられないんですか!?」

「あぁんッ!?どうせ家に帰ったってあ~んのハクジョウモンは今頃彼女とイチャイチャチョメチョメの真っ最中に決まっとろ~がッ!!あんな男なんて知った事かぁあッ!!今日は朝までトコとのトンと飲み明かすわよぉおッ!!」

 ミオはレイカの静止も聞かずにサラと肩を組みながら酒瓶片手にさらなる夜の街へと繰り出していった。

「お客様、こちらお会計になります」

「「「「「へぇ?」」」」」「ゴモッ?」

 会計を担うサラが消えたことでこの場の飲食会計がすべて残されたシュンイチたちに回って来た。

 しかし、ミオの予想とは裏腹にその頃…

――バチュイィインッ!!

 蔦の先端から走る音速の炸裂音は宛ら鞭のしなやかな動きの様に完全なる武器と化していた。

「てぃえぇーーーヤァッ!!」

「フンッ!」

 迫りくる蔦による鞭打ち攻撃を高火力のバーニングから熱せられる灼熱で蔦の鞭は使えば使うほどに逆に蔦の鞭の方がダメになっていく。

「すっ、すごい…コレが本来の怪獣さん同士の戦い何ですか?」

「いいや、アレは“本来の怪獣が持つ能力”ではないよ…僕たち怪獣能力者には元となる怪獣の相互質量分のエネルギーを攻撃や技術、あるいは“本来持ち合わせていない能力”を独自に編み出せるからこそ為せる事なんだ」

 初めて目の当たりにする怪獣の力を有する者同士の戦いを前にしたアギラは自分ではわからないことはバラゴンが解説してくれていた。

「そういえばお兄ちゃんが時折怪獣の力を使う時になる“ミレニアム”や“バーニング”って言うのは元となる『怪獣ゴジラ』には持ち合わせていない姿なんですか?」

「いいや、本人から聞いた事があるんだけど…ロ・サの戦線で能力を行使していくにつれて徐々に姿を獲得し始めた頃にパッと頭の中で浮かび上がってくる名称から取っているらしいよ 僕もそこまで彼の『ゴジラ』について深く知っているワケでは無いけど…それこそ本人にしかわからないことだね」

 バラゴンを通じて様々なユウゴの怪獣能力『ゴジラ』の力の実情を知る事となったアギラであるが…

(バラゴンさんの説明…わかりやすくてためになるんだけど……)

 バラゴンの解説に関心するアギラであったが…

「前々からあなたのそう言う太々しいのか、感情剥離で欠落しているのか分からない言い回しが小馬鹿にされているって周りの人に勘違いされるからやめなさいって言ってるでしょうがぁああッ!!」

「仕方ねぇだろうが!能力の影響で人間的感覚が薄い俺に治せ治せ言われても治らんものは治らんッ!!」

「開き直るなぁッ!努力しなさいよッ!!一緒に出掛ける時、こっちが迷惑被るんだからッ!!」

「知るか、このチューリップモンスターがッ!!」

 激しい戦いを繰り広げる最中に酷い言い争いを交えながら戦うゴジラとビオランテに対してアギラは額に手を当てて困り果てた。

(これじゃあ、模擬戦闘なんかじゃなくて単なる夫婦喧嘩みたいなんだけど…)

「はははッ…なんだか夫婦喧嘩みたいだね、いや夫婦じゃないから交際喧嘩か」

 冷静に二人の闘いもとい喧嘩合戦を見つめるバラゴンの目は何処か慣れているような印象であった。

「あっ…あの~…ボクはまだ異性とかの付き合いは無いんですけど 怪獣同士の男女って、いつもあんな口喧嘩交じりの殺し合いじみた闘いをするものなんですか…」

「う~ん…アレはユウゴ君なりの様子見だと思うよ 怪獣の力を宿す者は時として人間的な冷静な視点と判断力、それらを兼ね備えた状態で常時人間態を維持しなければならない 僕たち怪獣能力者は人間である以上に怪獣を己の内に抑え込む必要があるからね 冷静さを欠いても臨機応変に対応できるかのテストでもあるんだよ、ホラッ」

 そう言ってバラゴンが指さした先でビオランテ側に動きの変化が現れた。

「今日と言う今日は今まで貯めに貯めた不平不満の出血大サービスをしちゃうんだからッ!!」

 ビオランテは自身の腰回りに生え下がる果実のような実を手に掴み取ると無造作に地面へ向けて投げ始めた。

「さぁ、成長しなさい…花の実は種を宿して新たな生命を生むッ!!」

 巻かれた地面に落ち潰れる果実の身と液は地面より種を核とした根を生やし始め、獣脚の植物獣を地面より出現させた。

「ほう、操演獣…しかも、自立稼働型とは」

「そうよ、あなたが与えてくれた力…私なりに試行錯誤した作った操演獣たち さぁッ行って、“デューテリオス”!!」

 ビオランテの果実より生成された植物獣“デューテリオス”は無数の群れと化してゴジラに向かって集団で襲い掛かる…が、ゴジラの今の姿は通常からミレニアムへと変化を遂げるなり迫りくるデューテリオスたちを超高速の打撃軸で1対1対を相手にする。宛らゴジラ・ミレニアムと言う射程半径2メートル間の超高速迎撃ドームと言う弧を描いていた。

(そうしてくると思ったわ!…アナタがそうやって“みんな”の相手をすると言う事はデューテリオスたちを相手にする…でも、それだけの超高速の中にあっても私からは意識を放さない なんだかんだ言って、私の事…愛してくれているじゃない でもッ…)―パチンッ…

 ビオランテの指先で何らかの合図の指先より発せられたスナップには意図した目的があった。

―ビカァッ…ドンッドドドンッドドドドドンッ!!

 ゴジラ・ミレニアムが相手をするデューテリオスたちは次々と体内の核となる種子を起爆させ、宛ら操演獣そのものを1体1体の爆弾へと変貌を遂げる頃には爆発は閃光と共にゴジラ・ミレニアムを爆炎閃光の中へと隠す。

「うわぁあああッ!!」

 アギラも光の眩しさに目を腕で隠し防御するほどに強い閃光と衝撃に目が当てられなかった。

「ウッ、ううん…アッ!?」

 爆発は僅か数秒で収まるも目を開いた頃にはアギラの目の前で違う光景が広がっていた。

「……そう、ここまでやってもやっぱ対応されちゃうわよね」

「……………」

 ビオランテが次に取った行動は自身の手元の蔦を末端まで硬化させたフェンシングの剣の様にしなやかで且つ俊敏に相手へ刺突させる…デューテリオスたちの爆発閃光は目暗らましであり真の目的はこの蔦の剣をゴジラに当てる、コレこそビオランテが模擬戦闘で合格するための道筋と考えていたにも関わらず…一方のゴジラはバーニングへと更に形態を変化させて全身を赤く輝かせなが器用に指先で蔦の剣の刺突先を指だけで捉え掴んでいる。

「惜しかったな…戦い方は悪くないが、俺には届かん」

「……ええ、そうね…けどここまで近づけたなら私的には目的達成よ!」

 そう言ってビオランテが隠し持っていた腰元の果実の1つがその手に隠れていた。

 ビオランテがゴジラ・バーニングの顔の前まで投げ放ると空中で静止するビオランテの果実は内部で光り輝き始めるとゴジラ・バーニングの瞳の中にまでその光を捉えさせた。しかし相手は反射神経の強化した怪獣能力者でもあるゴジラ、質量は通常時やミレニアムよりもあれど手早く対策するなど造作もない…がそうはさせないのはビオランテの最期の抵抗、花びら型のフードを脱ぎ出して素顔を晒したビオランテはゴジラ・バーニングの太い首回りに手を回して抱き着いてくると脱いだ花びら型のフードは光る果実の器用な収穫袋の様に収まりゴジラ・バーニング諸共自分自身を巻き込んだ自爆攻撃であった。

―チュドォオオオオオオンッ!!

 爆炎はビオランテとゴジラ・バーニングを巻き込んで二人共に爆炎閃光の中へと隠れてしまった。

「…おっ…お兄ちゃんッ!!ビオランテさんッ!?」

 爆炎の中へと消えたビオランテとゴジラ・バーニングの様子がどうなったのかアギラは不安気な気持ちが込み上がる中、燃え盛る炎の中から影が見え始めた。

「自分を犠牲にしてまで一矢報いるなんて発想、どこから得たんだ…ったく、俺じゃ無かったらお前諸共火だるまだったぞ」

 燃え盛る爆炎の鎮火と共にゴジラからユウゴへと戻ってビオランテと双方の位置を逆転させてユウゴと言う全身の盾でビオランテを爆発閃光からビオランテを守っていた。とはいえユウゴの背中は防御力だけを残す為に背筋にあたる部位に少し背びれが小さく残して背面全体をゴジラの体表が一部変身と言う高度な爆発対策を昂じていた。

 一方のビオランテはゴジラの腕力で引きちぎられたであろう花びら型のフードが切れた根元を残してビオランテの後ろ髪より束ねるアップヘアーであった髪型が爆発の凄まじさ故か押さえていた髪留めが外れて垂れ下がってしまい周囲の髪もキッチリ押さえていた束より外れて髪を乱していた。

「フフッ…やっぱり、アナタならそうしてくれるって信じていたから出来た事よ 毎回毎回あんな闘い方なんてしないわよ、アナタだけに特別、よッ♡」

 そう言ってビオランテの指先はユウゴの鼻を触れて最短にして最少の少ない手数のたった1突きがユウゴを捉えた。

「…うん、それまでッ!」

 バラゴンの号令と共に模擬戦闘はビオランテのユウゴに向けた鼻先の1突きが決め手となって終了と判断された。

「びっ…ビオランテさん、大丈夫…ですか?」

「ええっ、あなたのお兄ちゃんが私を庇ってくれるって信じていた…でも、ちょっと気がかりなのは…アキさんから大切なお兄ちゃんを取っちゃう真似を見せてしまったわね、本当に申し訳ありません」

 ビオランテは深々とアギラに一礼を尽くして腰の低い謝罪を向けられたが…

「いっ、いえいえ、こちらこそ…こんな兄にご好意を寄せていただいている方になんとお礼を申したらよいのか…」

 アギラも負けじと腰低く互いにそこは譲れぬと腰を落としに落として礼を尽くし合う。

「「……プッ…アハハハハハッ!!」」

 あまりにも互いに腰の低し合いに馬鹿馬鹿しくなってしまいビオランテとアギラは大いに笑い合った。

「ウフフッ、久しぶりにすごく笑っちゃった…改めて、怪獣能力者のビオランテこと木城アイカです」

「えへへッ、そうですね…国際怪獣救助指導組織、通称GIRLSの指導課怪獣娘アギラこと宮下アキです」

 ビオランテとアギラは互いに知らないことの手始めに名前を教え合うほどに打ち解け合った。

「へぇ~あのGIRLSの怪獣娘さんだったのね、アキさん」

「えへへッ、実を言うとそうなんですけど…もちろんGIRLSにはお兄ちゃんたち怪獣戦士(タイタヌス)さんやアイカさんの事は内緒にしておきます」

 アギラはここだけの秘密とばかりに人差し指で秘密は守るとジェスチャーを見せた。

「ありがとう、アキさん…なんだかまた新しい妹が出来たみたいね」

「ンッ?…また?」

「うんッ、兄の仕事の都合で一時的にウチにも怪獣娘の子を預かっているの…なんでも身寄りのない子らしいから私にとっては妹も同然の子なの、もちろんアキさんもユウ君の大切な妹さんなら私にとっても大切な妹さんって考えてもいいかしら?」

「――ッ…ぜっ、是非ともお願いしますッ!!」

 アギラはうれしさのあまりに臀部より生える獣殻の尻尾をブンブン振り回しながら喜んでいた。

「ありがとう、アキさん…じゃあ、早速お姉さんのお願い聞いてほしいんだけど……アキさんにとって大切なお兄さんでもあるユウ君と末永いお付き合いをしますのでどうか彼との交際を改めてお願いします」

「ふえッ!?…そっ、そんなこと、言われずともこちらからこそこんな兄で良ければ煮るなり焼くなり好きにしてください」

「なんで付き合って煮たり焼かれたりせなならんのじゃい」

 アギラはビオランテからの改まった礼儀正しい正式な交際認知を求められ快く承諾した。

「えへへッ…なんだか照れくさいけどボクからもお願い事していいですか?」

「―?…ええっ、なんですか」

「…あっ、あの~…お姉ちゃんを全身で感じさせてください!アイカ…お姉ちゃんッ」

「はうッ!?…もっ、もちろん喜んで、よッ!!」

 ビオランテの胸の中に『お姉ちゃん』と言うとてつもなく強い光線を受けて内なる理性のスイッチは破壊された。

 アギラも母親以来の甘えられる母性的存在に対して彼女の腰に手を回してみると驚くことに身の丈はアギラ以上にあるにも関わらず腰は驚くほどに細かった。

「えへへッ…アイカお姉ちゃん、なんだか甘い匂いがするね」

「あははッ、そういうアキさんは…とても温かいですね」

 アギラはいつの間にか変身が解かれて元のアキへと姿が戻るとビオランテの手に優しく頭を撫でられながらいっぱい兄の彼女に甘えると言う志向の行為に甘んじられた。

「……ンンッ…スキンシップ中に申し訳ないんだけど…ビオランテくん…君、今も試験中だよ」

「へっ?…はっ、そうでした!」

 バラゴンに言われて我に返ったビオランテはアキとの包容に胸いっぱいな気持ちですっかり自分が怪獣戦士(タイタヌス)への受験者であることを思い出した。

「…とりあえず、一次の筆記、二次の実技、共に合格とします 最終試験は追ってご連絡をしますのでしばらくお待ちください」

 バラゴンからの丁寧な説明を聞いたビオランテであったが…

「えっ!?今の実技で怪獣戦士(タイタヌス)さんとして合格とかじゃないんですか!?」

 まだビオランテが怪獣戦士(タイタヌス)として合格じゃないことに驚愕したアキは目を丸くなった。

「いいや、筆記も実技も序の口だ…本質的な面を問われる最終試験は別にあるんだよ」

「なんでそんなに難しいのさぁ!?GIRLSならここまで出来たら合格なんだよ!?」

「テメェらの原付免許試験レベルの試験と一緒にするな、こっちは怪獣能力者の全てが掛かっているんだ 生半可な試験なワケないだろうがッ!」

 GIRLSの試験をなんだか侮辱された気もするがアレだけレベルの高い実技試験を見せられたアキにはぐうの音も出なかった。

「さてと、怪獣能力者同士の闘いの後だ…そりゃ、ウチの学校の校庭もめちゃくちゃになるよね」

 バラゴンは腰に手を当ててめちゃくちゃに破壊された校庭を前にして深い息を吐いた。

「ごっ、ごめんなさいッ!ちょっと張り切ってしまって申し訳ないですッ!」

 思わず謝りたくなったビオランテはバラゴンに対して何度も何度も頭を下げ続けた。

「いやなに…別にこれくらい僕の“能力”ならどうってことないさ」

 そう言うとバラゴンは地面に手を触れる…どころかまるで地面が液体の様にバラゴンの手を飲み込むと破壊されていた地面が液状化し始めて徐々に元の形状へと形成され始めた。

「すっ、すごい!?これもバラゴンさんの能力なんですか!?」

 バラゴンの知られざる能力を前にしてアキは怪獣の能力の自在さを改めて痛感した。

「まぁね…僕の『バラゴン』は大地の性質を変化させることが出来る 地面由来の能力だけど、これも“本来のバラゴンが持ち合わせていない能力”の一つさ」

 やがて完全に元の状態へと戻った校庭はここで模擬戦闘が行われていたとさえ思えないほどに精巧にして元通りを文字通り絵に描いたような整地となった。

「こうやって僕たち怪獣戦士(タイタヌス)たちはここにそれぞれが能力を応用できるんだよ…例えばこの模擬戦で起きた音を消すために智田先生ことチタノさんは半径数キロ圏内に防音周波数を発して音を掻き消したり、君には会ったことはないだろうけどガバラと言う怪獣戦士(タイタヌス)は模擬戦で発せられる閃光や光の屈折を電磁波で湾曲させて周囲からは何も起きていない様にしたりとこの試験の為に様々な怪獣戦士(タイタヌス)たちが密かに活躍しているんだよ」

 言われて見れば周囲を囲むようにアキには何らかの強い気配を感じていた。それは図らずも夢で見た過去の世界のような場所で母ユウナがアギラとして変身し蛇の怪獣能力者との闘いと同じ構図であった。

「まぁ、それ以外にも徹底した人払いを経てこの模擬戦闘が行える理由もあるんだが…」

 バラゴンは他にも試験の為に動いてくれている者がいると言った傍から学校の正門から続々と入って来る縦に長いリムジンが学校外の道路を埋め尽くした。

「なっ、何ッ?」

 リムジンの中から続々と屈強な黒服のセキュリティたちが1台のリムジンの前に整列すると黒服たちが形成する学校内へ向いた学校内までの道であった。

 そして、ガチャンと中から1人の見覚えのある黒服セキュリティの手に掴まり支えられながら出て来た煌びやかな格好に豪華な装飾を着こなす人物がアキの中でよくも悪くもあの怪獣娘を呼び覚ました。

「また、お会いしましたわね…宮下アキ」

「エッ、エリアス王女さまッ!?」

 リムジンから出て来て学校内へと入って来たのはこれまたお騒がせ王女のエリアスであった。

「あらあら、そう畏まらずともわたくしとあなたの仲ですわ 気兼ねなくエリアスで構いませんことよ」

 エリアス自身はアキに名前で呼んで欲しいと言うが…実際にアキたちの周囲を囲む黒服のセキュリティとエリアスの隣を陣取るバトラカがそれを許さぬと強い圧があった。

「えっ…ええっと…エリアス…王女…さま…一体なんでまだ日本に…」

「あら、わたくしとしても日本と言う島国は意外にもお気に入りなのですことよ…この国には宮下アキも愛しの兄さまもいらっしゃるのですから母上に申したって正式なインファントの外交官として任官しましてよ」

「がっ、外交官ッ!?」

 驚くことにエリアスはアキと見た目を類似する者にしてアキの遥か上を行く高度な政治的立場にある他国の重鎮と化していた。

「今宵、新たに怪獣の戦士たる者が二次の試練を経たと言う情報を聞きつけて駆けつけてきた次第なのですが…」

 誰しもが気づくのだが、このインファントの王女エリアスはユウゴに多大なる好意を抱いている節などアキでさえ目に見えている。そんな彼女がビオランテを見過ごす筈もなく…

「おやおや、誰かと思われましたら“生け花風情”が兄さまの正妻面など100年はお早いのではございませんこと――」

「あらあら、どこの“毒蛾虫”かと思ったら我がまま王女様ではございませんか?とっととお国に帰られたと聞いたんですが…――」

 ビオランテも負けぬと毒を吐く花と化してエリアスと社交的に睨み合う。

 蝶と花、互いにユウゴの為に火花を散らし合う様はアキをアワアワと恐れさせた。

「どっ、どうするのさぁお兄ちゃん!ややこしい状況にしてさぁッ!?」

「俺のせいかよ…」

 火中はユウゴが発端である以上、この男が何とかするべきとアキは考えるが…

「フンッ、ゴジラ…正直、貴様とは相容れぬものと思っていたが、ようやく腰を据える年貢の納め時だ コレに貴様の想い人と貴様の名前を書いてさっさとこの国の役所に提出して来い…それとこっちはインファントからの御祝儀だ」

 エリアスの付き人バトラカはユウゴに日本国発行の婚姻届を無理矢理書かせようと画策していた。

「バトラカッ!兄さまを困らせるのではありません それにインファントは一夫多妻制!たとえ正妻が決まっても側室でもわたくしは構いませんわッ!!」

「エリアスッ!?考え方が極端すぎるよッ!!」

「イイからサッサと役所に行け!戦の女神ミアナの名の下、愛の女神マイナの駕籠を無駄にするなッ!!」

「まだそこまで考えてねぇし、この時間に役所はやってねぇよ!」

 無理にでもこの国の法的な手順でユウゴとビオランテことアイカを婚姻に結び付けようとするバトラカに対して意地でもどんな形でもなりふり構わないエリアスにも、ユウゴとアキ、アイカも巻き込んでひと悶着起き始めていた。




アンバランス小話
『新婚生活・その2』

※都合によりロシア語を日本語に変換しております。
「ジュビア、ジュビア!見てください、おばさまから贈り物が届いていますよ!」
「エッ!?あのおばさんからッ!?」
 結婚後、ロシアより日本へと移住した庵堂アラシと妻アナスタシアの夫婦には婚姻後に遠路はるばるのロシアの端の地域に住まうアナスタシアの親戚のおばさんが度々贈り物をくれるようになった。
 多くは向こうの地域の特産品や日用品であるが、この贈り物にはアラシが困惑する物品が混じっていた。
「まぁ~見てください!おばさまの作ってくれたヴィイもありますよ!」
(ゲッ!?あの人形かよッ!?)
 アナスタシアが手に取る贈り物のヴィイ人形とはアナスタシアの親戚の地域で伝わる精霊を模した金髪顔なし人形である。
 アナスタシア曰くロマノフ王朝から続く伝統的な守護精霊で、かの有名なロシアの文豪の小説のモデルにもなったとか…ちなみにその小説では妖怪の類として扱われている。
 アラシも迷信にはある程度は寛容的に捉えるもこのヴィイ人形だけは捉えきれない部分がある。

 それは…
――ヴィィィイイイイイイイッ!!――
「うるせぇええええッ!!」
 午前2時ごろになると決まってこの人形が奇声を上げ始めるのである。
 一方のアナスタシアは…
「ZZZ~~スパシーバァァ~…ZZZ~」
 慣れているのか、聞こえていないのか、ウソみたいにぐっすりと寝ている。

 そんな厄介な贈り物を受け取って不眠の続くアラシは参事官の出張を機にある手段に打って出た。
「アーニ…お土産だ、ホラッ!」
「まぁ~、ウチのヴィイにお友達を連れて来てくれたのね」
 赤い全身に、服状の布生地、飛騨地方の守護神『さるぼぼ』の参戦である。主に良縁・子宝・夫婦円満・無病息災などを祈った同サイズの人形で対抗するのであった。

――ヴィイィイィ~~ッ――
 効果は覿面、呪われしヴィイ人形に対してさるぼぼの守護性能は互いに拮抗しあっていた。
(あのおばさんからの贈り物、受け取り拒否にするか)
 アラシの新婚の受難は続く…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。