TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐   作:神乃東呉

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青い抑止力

 特定有害生物『シャドウ』、それは怪獣娘の出現と共に突如として現れた人類に害を為す存在、現在これに対抗できるのは怪獣娘だけと世間で認知されているが…

「ゴモラ、気をつけろ、今日に限って数が多いぞ!」

「わーてるでぇレッドちゃん!」

 今日も都内に突如出現したシャドウに対応するため先に現場に到着していたレッドキングとゴモラが様々な形状に変化したシャドウと戦っていた。中にはスライムの様なゼリー状の軟体質な個体も居れば、頭部にクワガタの様な顎にあたる形状を突き出した個体を次々に怪獣娘の力を全力で戦い抜いてもまた新たにシャドウがレッドキングたちの前に現れてくる。

「クソッ…こいつ等、今日に限ってしつこいぞ!?」

「レッドちゃん!アレ、なんかおかしいでぇッ!?」

 シャドウたちの行動は次第にレッドキングたちと相対すると言った敵対行動とは別に1つに纏まり初めて更なる別の形態『ビースト』あるいは『ジェネラル』と言った集合体に変化する前兆が現れた。

「おいおい、これって…」

「ヤッバァ…メチャクチャヤバいやん!?」

 やがて先ほどまで2人の怪獣娘たちと戦い合っていたシャドウは1つの集合体に変化しきったが…その姿はこれまでに相対してきた大型のビーストとは違う、人型のジェネラルとも違う新たな姿に変身を遂げてレッドキングとゴモラの前に姿を現した。

 そして、そのシャドウには口に相当する部分からニヤリッと不敵な笑みを引き攣り上げるように笑っていた。

―数時間前―

 

 GIRLSの怪獣娘に襲い掛かる正体不明の脅威に対して『シャドウ』を始め『怪獣娘たちの前に現れる怪物』に対しても大掛かりな対策会議が開かれていた。

「それでは改めて…最近、GIRLSの怪獣娘さんたちの前に突如現れる『正体不明の怪物』への対策会議を始めさせていただきます」

 トモミの司会進行と共にGIRLS内の集まれる怪獣娘だけが大学講堂並みの広さを誇る大会議室と呼ばれる教室に会議が始まった。

「ではエレエレ、お願いします」

「ええっ、アギラの報告とウインダムの証言、私たちが直接目撃した怪物…呼称はまだ決まっていないけど、この生物たちにはシャドウとは違い『言語』に相当する何らかの意思表示を同族同士で確認しあっている様子が確認できたわ」

 大会議室のホワイトボード型のスクリーンヴィジョンには相沢トオルが参考資料として描いた『怪物』の絵が3個体分を映し出された。

「トカゲみたいなのと…緑色のやつと…鬼か、これ?」

 その見た目を直接的に表現したベニオは絵を見たままの姿を答えるがランは首を横に振って違うと返した。

「これらは所謂順番に言えば『リザードマン』『ゴブリン』『オーガ』と呼称される“空想上”の生物だった存在よ」

「なんか聞いたことあるねぇ…エレちゃんはゲームに出てくるとか言ってたよね」

 ミカヅキが先日のランの発言を思いだして『ゲームに出てくる奴』と言う認識が強かった。

「こういった存在の出自については様々だけど、大元の原典を辿ると伝承や神話などにも描かれていることから多くの作品などにも描かれて形を変えて伝わってきた怪物たち…ソレがどういうワケか私たちの前にソレが出現した」

「GIRLS上層部はまだ回答を控えていますが正体不明の怪物は私たちを狙って襲ってきますが、それと同時に私たちをまるで助けるようにその怪物たちに立ち向かう謎の存在にも調べておきたいところです」

 トモミは怪物の作画資料をドロップして縮小させると開いたスペースに新たな資料画像が添付された。

 それはユウゴが変身した『ゴジラ』を始め、未だ彼女たちは彼らが怪獣の力を宿した男性『怪獣戦士(タイタヌス)』であることを知らないが知らないなりに彼らを知ろうとすることから始まっていた。

「彼らはあの怪物たちと明確に敵対及び対抗し、私たち怪獣娘を助けようとする」

「更にこの怪物たちとは違い明確に私たちも理解できる『日本語』を話せる…つまり怪物とは違って意思疎通ができる存在と見たところ怪獣娘に酷似した点が挙げられます」

「怪獣娘は主にシャドウと相対して戦える力がある…けど怪獣生物はわたしたちが知り得ない正体不明の怪物と秘密裏に敵対して内々で処理する、立場は違えど行動原理は同じとするあたりを見れば彼らもまた世界を救うために現れた新たな怪獣の姿といったところね」

「今後もしまた皆さんの前に正体不明の怪物が現れ、彼らから私たちを守ろうとする謎の怪獣さんたちが現れましたらなるべくコンタクトを取ることにしましょう。もしかしたら私たちと協力し合える存在かもしれません」

 

 怪獣娘たちをどこかへ連れ去ろうとする謎の怪物に対して怪獣型の生物たちがその怪物から怪獣娘たちを守ろうとする行動を取ることからGIRLSの怪獣娘たちの見解は彼らを友好種、怪物を敵対種と認識することが決まりつつあった。

 こうして会議の内容は一纏まりを見えたところで各部所の怪獣娘たちが各自解散してゾロゾロと会議室を後にする中、指導課の代表であるアキの元に1人の怪獣娘が近寄ってきた。

「ア~ギッ、調子はどう?」

「ガッツ…特に問題は無いけど…」

 その怪獣娘は異星人型と言う珍しいタイプのカイジューソウルを宿す『ガッツ星人』の印南ミコだった。

「それでさぁ~…風の噂と言うかぁ~、目映りしちゃたと言うかぁ~…お近くにいらっしゃる清潔イケメン様の事、紹介してッ!」

 ミコが先程から気にしている相手は今だけ大会議室の外の廊下で待機しているダグナの事について尋ねて来た。

「あぁ…ダグナさんのこと…ボクの後見人だよ」

「ねぇねぇッ!聞けば更にアギって俳優顔のお兄さんまで居るんでしょ!?何ッその少女漫画みたいな急展開ッ、コレはもう事件よ、事件!」

「事件って…大げさな」

 ミコのその目は興味津々な輝かしい目つきにアキは戸惑った。

「お願ぁ~い!紹介してよぉ~!」

「紹介も何も、自分から挨拶すればいいでしょ…」

 ここ最近アキを仲介してユウゴやダグナと御近づきに成ろうとアキは連絡窓口扱いされていた。

「だって緊張するもん!アキばっかりズルいよ、あんなイケメン連れてきちゃってぇ~にくいねぇ~コノコノォ!」

「だからそんなんじゃないよぉ…あくまでボクの付き添いみたいな人だよ」

「普通でも付き添いなんてつけないわよ、一体どういう関係なのよ」

「おじいちゃんの部下と言うか仕事仲間と言う事しか聞いていないけど…まだボクもダグナさんの事をよくは知らないよ」

「ふぅ~ん…本当にそれだけなのぉ~?…なんかガッカリと言うか、つまんないというか…でもせめてお兄さんの事だけでも教えてよ!なんでも料理が得意な人なんでしょ、ゴモから聞いてるわよ」

 口の軽いミカヅキづてで聞いたミコはユウゴについても深く聞き出そうとして来た。

「もぉ~ゴモたん口が軽いんだからぁ…」

 肩を落として愕然とするアキだが、今日この場にミカヅキは先に大怪獣ファイトのイベントで出払ったため文句の言いようがなかった。

「ガッツゥ~あんまりアギアギをいじめちゃダメなのですぅよぉ~」

 そこへ背後からミコの静止を促すトモミが会話に割り込んできた。

「ピグっち、違うわよ!アギの側にいる人の事を教えてほしいだけよ!」

 自分に意地悪な印象を抱かれまいとミコは必死になってトモミに弁明をはかった。

「ならいいですけど、アギアギも生活一変して慣れない状況に戸惑っているんですからね」

「心配してくれてありがとうございます。ガッツもただ下心があるだけなんで別に問題ないです」

「ちょ、アギィ!その言い方だとあたしががっついてるみたいじゃん!?」

「ガッツが、がっついてる……ダジャレ?」

「こ~ら!茶化し返さないでよぉ~!」

 祖父が亡くなってから数日の内に変わらないアキの様子にトモミはニコニコと笑顔になった。

 

 

 一方その頃、大会議室の出入り口付近でアキの会議終了を待ち続けるダグナは時間潰しの間にどこかへと電話を掛けていた。

「はい…はい…では、アキさんを襲った連中はCIAと言うわけですね…わかりました。引き続き警備を強化いたします…はい、では…芹沢代表、後の事はお任せください」

 そういってどこかの相手との通話を終了してスマートフォンの画面は通話中から通話終了に切り替わって電源ボタンを押して画面を暗転させスマートフォンをスリープモードに切り替えた。

「お待たせしました…今、会議終わりました」

「ご苦労様です、もうすぐお昼ですが…お食事はGIRLSの食堂で御済まされるのですか?」

「う~ん…今日はちょっと外食してもいいですか?」

「ええ、構いませんが…」

 アキ自らの提案で近場のレストランで食事をすることを決めて一旦GIRLSの支部外へと出た。

 

 

 場所はいつものファミリーレストランではなく、顔見知りが入らないような格式が少しだけ高い喫茶店にダグナと向かい合った席で早速アキはテーブルに額を打ち臥せた。

「ヴゥウウウウウウッ――…」

「どうされました、何かお悩みの御様子ですが」

「ありもありますよッ…お兄ちゃんのことやお兄ちゃん以外の怪獣さんたちの事とか…秘密にしていることが辛いです…会議に出席する時にボクだけ知っていることを隠し通しているのがみんなに嘘ついているようで辛いのに来るたび来るたびみんなからお兄ちゃんの事やダグナさんの事を半ば尋問されているように聞かれ続けるから誤魔化すのも辛いです」

 今日まで変わりすぎた常識の中にいるアキだが、ユウゴが怪獣の力を宿していることをGIRLSの怪獣娘たちに隠し続けていることに悩み切っていた。

「なにより、ダグナさんがちょくちょくこうしてGIRLSに顔を出すおかげでボク専属の執事説が浮上してボクがお金持ちの子って事にもなっているんですけど…」

「御辛い中、彼らの事を内密にしていただきありがとうございます」

 アキの辛い気持ちを汲み取ってかダグナは丁寧に頭を下げてアキに礼を伝えた。

「むぅ~っ…ダグナさん、なんでお兄ちゃんの秘密を言っちゃダメなんでしたっけ?」

 アキは段々と自分が兄の事をひた隠す理由さえも見失いかけている中でユウゴが怪獣であり、男性の中でも怪獣の能力を有する存在の事を秘匿するワケをダグナに再度尋ねた。

「ユウゴくん以外…例えばガメラの相沢トオルくんなどは世間一般で既に認知された著名な方です。早い話、彼らにも隠し続けた中で得た“生活”があるからですよ…今は日本国内にいらっしゃるMONARCHが認知する怪獣戦士(タイタヌス)自体は全体の僅かですが、彼らにもやはり変え難い生活があるが故に事を荒立てたくないという理由があるのです」

「はぁ~…まぁ、確かにお兄ちゃんだってまさかボクの為に用意された家の下にお店を持っていたりするから…変わらない生活をしながら怪獣であることを隠すかぁ…ボクら怪獣娘たちとは違う生き方をしてますよね」

 怪獣娘は自身の能力が発覚した時にいくつかの条件によって引き起こされる“本能的現象”に振り回されることが多い。例えば『突然叫びたくなる』『軽い外傷ならすぐに治る』『力が増し、加減できずに物を壊してしまう』など異変と言って差し支えのない怪獣の本能が年頃の少女たちに分けても思春期の少女たち故にその力が時に暴走して事例も報告に上がってきた結果GIRLSと言う組織が発足するキッカケとなった。

 しかし、ユウゴを始め他にもユウゴと同様に怪獣の能力を宿した男性たちが未だに世間から取りざたされていない所を考えれば相当な自制心が働いていると考えればユウゴの事を少し違う視点で尊敬できる点だった。

「男性の怪獣能力者…怪獣戦士(タイタヌス)……彼らはボクたちと同じく怪獣の魂を宿して生まれて来たんでしょうか?」

「う~ん…正解なのかもしれないですし、不正解かもしれませんね、国際的に怪獣娘は『怪獣の魂を宿した少女』と定義されていますが日本国の見解で魂と言う定義はあくまで無知覚概念とされているためこの国での怪獣娘の扱いは『怪獣の“能力”を宿した少女』とする…同じなようで全く違う意味合い、怪獣戦士(タイタヌス)は特に後者の面が強いのかもしれません…私自身、ユウゴ君からそういった魂の様な概念を感じたという御話はあまり聞きませんね」

「捉え方次第って感じですね…確かに突然、『あなたには怪獣の“魂”が宿っている』って言われてもボクも最初は戸惑いましたし…」

「何より怪獣娘が世間に最も速く受け入れられたのにはあなた方がまだ『人間』としての部分が他者の目線からすれば極端に見れば『擬人化』された容姿に親近感が湧くことも一種の要因でしょう…しかし、残念ながら怪獣戦士(タイタヌス)にはあなた達のように人間の部分は極端に少ない 世間が彼らを目撃すれば敵対か共存かの二極でしょう」

 ダグナの言う通り、怪獣娘にはまだ人間としての姿形に面影はあれど、怪獣戦士(タイタヌス)にはそういった部分があまりない。そんな事実が知れ渡れば世論が傾くのも想像がつく…もっと言えば特番のオカルト番組の特集で『歩くトカゲ』としてならイメージが湧けた。

「アキさん…いま、ユウゴ君に対して変なイメージが浮かびましたね」

「ギョッ!…べっ、別に…」

 図星を付かれたアキは慌てて乱れた表情を整えようと頬を捏ね回して表情筋を引き延ばした。

「お待たせしました、アイスコーヒーとオレンジジュースです」

 そうこうしていると店員が注文していた飲み物を席に届けに来た。

「う~んッ…今後一層に気が落ち着かない日々が続きそうですね…」

「アキさんにはご無理をお掛けします…私も精一杯の協力は惜しみませんので何なりと御申しつけください」

 そういって運ばれてきた飲み物を口にしながら2人は一時の会話の休憩に入った。

「………んっ!?」

 そんな時、アキの背筋から悪寒が走る妙な感覚が本能的に察知した。

「どうかされました?」

「いえ…何か嫌な気配が……これってまさか…近くにシャドウが!」

 怪獣娘のアキだから感じ取れる強い気配が僅かながらも皮膚の上の産毛が逆立つ所謂『鳥肌』が立ち上がるほどの強い気配をアキの中のカイジューソウル『アギラ』が感じ取った。

「私に構わず、お先に向かってください」

「ごめんなさいダグナさん…御言葉に甘えてッ!」

 アキは急いで店を後にすると外で強い光と共に怪獣娘アギラへと変身を遂げて駆け足でシャドウを感じ取った場所へと向かっていった。

―スゥゥッ…ゴクッ…

 一方のダグナは見送ったアキの後に一早くコーヒーを飲み切った。

「…御馳走様です」

「ありがとうございました」

 店員に支払いを済ませたダグナはジャケットを羽織り直して目の色を変えた。

「さて私も、私自身の使命を全うしましょうか…」

 そういってダグナはアキとは違う方向に足を運んだ。

 GIRLS屈指の人気コンテンツ『大怪獣ファイト』に出場する大怪獣ファイターの怪獣娘たちとの交流イベントが行われていたが…会場には黒煙が立ち込めるほどに設営などが見るも無残に破壊されていた。

「おらぁあああ!!」

「メガトンテェェェル!!」

 その原因はレッドキングとゴモラが戦う“存在”にあった。

「ゴモたぁぁん!レッドキングさぁぁん!!」

 一早く駆けつけて来たのは偶然にも先ほどまで居た場所からほど近い場所だったアギラが誰よりも先に到着していたが…レッドキングとゴモラが戦う相手にアギラは目を疑った。

―ガァギャァオオオオオオオオオンッ!!

「しゃっ、シャドウ?…なんかいつもと違うッ!?」

 アギラが目視したその姿は身の丈はあのシャドウジェネラルほどの大きさだが最大の特徴は見た瞬間に『怪獣』を連想させる異様なフォルムだった。

 見た目こそレッドキング並みの剛腕、ゴモラの角と同系統の頭部器官、そして不敵にも相手じゃないと見下すような目つきと引き攣ったような笑い口、その姿こそ…シャドウが宛ら怪獣娘を模倣したかのような姿だった。

「このパクリヤロウ!ゴモラみたいな角を生やしやがって」

「ウチのチャームポイントを真似しとなるんはわからんこともないけど…シャドウに真似されるんはゴメンやでぇえ!!」

 自らの姿を模倣されている事に不快感を示したゴモラは再び激しい攻撃を銜えるも決定打には至らなかった。

 次から次へと怪獣娘屈指の戦闘力を有するゴモラの攻撃も合わせてレッドキングの攻撃すらも、2人の怪獣娘による息の合ったコンビネーション攻撃もまともに喰らいながらも猛々しい咆哮と共にレッドキングとゴモラを弾き退かせた。

「ちぃっ!なんて固さだ…」

「全然ウチらの攻撃が効いてへん!?強さならシャドウビースト以上やでェッ!?」

「うぉおおおおおおおおおお!!」

 今度はアギラが猪突猛進な速足での突進攻撃を加えて突っ込むも怪獣娘型シャドウはアギラの角を掴み取って投げ回し、手を放してあらぬ方向へと投げ飛ばした。

「うわぁあああああああ!!」

 強い衝撃と共に未だ地面にもつかぬままどこかの方向へとドンドンと怪獣娘型シャドウと距離が離れて行った。

 しかし、そこに…

「ぐえっ!?」

「おいおい、自分から向かって行っておいて投げられてどうする?」

「ふえっ…おっ、お兄ちゃん!?」

 そこにアギラたちの窮地に変身を済ませたゴジラが駆けつけてくれた。

「お~い!アギラ、大丈夫かぁ!?…って、ウワッまた新手のシャドウか!?」

 レッドキングとゴモラがアギラを心配して駆けつけてきたがゴジラの黒い体表を見るなり新たなシャドウと勘違いしてファイティングポーズを取った。

「だっ、大丈夫ですレッドキングさん…それよりあっちのシャドウがこっちに来ますよ!」

 アギラが指を差した方向から重い足取りをズンズンッと迫ってきた怪獣娘型のシャドウがレッドキングたちに向かってきたが…突然、何かに困惑して足が引き下がった。

「おっ、おいどうしたんだアイツ?」

「なんか急に怯えたように見えたけど…」

 怪獣娘型シャドウが見つめる視線の先には飛んできたアギラを脇抱えるゴジラと目線が合っている。

 体格は御互い同じくらいにも関わらず恐れ引いた怪獣娘型シャドウの方がまるで小動物が大型肉食動物を前にして無意味な威嚇をかましている様だったが…一方のゴジラは何ら動じることも無い、寧ろ強い目線だけで怪獣娘型シャドウに退かせる驚異的な覇気が近くにいた怪獣娘たちにもジワジワと首筋が熱くなるような感覚さえも抱かせた。

「なっ、なんなんだこいつら…仲間割れ?」

「でも、どう見ても仲間言う感じには見えへんけど…」

 困惑するレッドキングとゴモラが見守る中で怪獣娘型シャドウが動けないことに痺れを切らして先に動き出した。

 しかし…

「下がれ」

 たったその一言を発したゴジラの声に従ったかのように突如怪獣娘型シャドウが地面を逆方向に蹴り上げて地面は下がった拍子に抉れた跡のみが残った。

 それまで猛々しくも狂暴な破壊力で会場を蹂躙していた大型のシャドウは大きさが見える形もなく丸くなって縮こまり怯えた。

「何がどうなってんだ?」

「一体、どういうこと?」

(お兄ちゃん…)

 たった一声発しただけでシャドウを退かせる得体の知れないその怪獣の驚異的な威圧感を表すなら野生の縄張りに無作為にも侵入しようとしたシャドウが自分より更に凶悪にして強大な力の前に逃げ出したとしか表現が難しかった。

「せんぱぁ~い!ゴモたぁ~ん!避難完了しましたっす…ってウワッなんすかソイツ!?」

 避難誘導に回って遅れてやってきたミクラスも駆けつけてきたが…怯えるシャドウに頭の高さが誰よりも一番高いゴジラの前に驚愕した。

「んっ?…ってぇアギちゃんが捕まってるぅう!?」

 脇に抱えられたアギラを見るなりミクラスは取り乱すがどうしていいか分からず慌てた。

「おっ、おい!誰だか知んねぇがアギラを助けてくれたのは礼を言うが…あんた一体何者だ?この間の連中の仲間か何かなのか?……ウッ!?」

 率先して怪獣娘の代表としてレッドキングはゴジラに声を掛けるが見下ろされたその目はどんな怪獣娘よりも鋭く険しい目つきにレッドキングの背筋も一瞬で固まる様な強い強張りが起きていた。

 見下ろされたその目に映るレッドキング…獲物を見る目ではない、だがその目にレッドキングの記憶の中で見たことがあった。それは嘗て子供の頃に何度も見て来たフィクションの中の大迫力な“恐竜”、博物館の中で骨格から肉付けされた肉食恐竜の全身像、まさに“ティラノサウルス”そのものだった。それが目の前に凝縮して1つの個体となってレッドキングの目の前にいるかのようであった。それと同時にあの怪獣娘型のシャドウが怯える理由も身をもって知った。レッドキングの額にはゼットンにさえ恐れてこなかった感覚と共にビッショリと汗が湧き出ていた。

「れっ…レッドキングさん、落ち着いてください…本当にボクも大丈夫ですから」

「おっ、おう…アレどうするかぁ」

 ゴジラの覇気にもはや戦意喪失したシャドウをどう処理するべきなのか頭を抱えたが、そんな時、シャドウ出現の一報に警察車両のサイレンが辺り一帯に鳴り響き始めた。

「ありゃりゃ?こんな早く警察が来ちゃったでぇレッドちゃん!?」

 サイレンと共に遠くから見える警察車両が会場外を取り囲むようにして赤橙ランプの光がチラつく包囲網が出来上がっていた。しかも、そこには見慣れない警察車両にゴジラの目の色が変わった。

(輸送用の装甲車両だと?なんで警察がそんな大層な装備を出してきた…何かがおかしい)

 自衛隊など軍用にしか普及されていない装甲車両の後部よりハッチが開かれて中から重々しい重金属が足音を為して歩いてきた。

「なんだありゃぁ!?」

 レッドキングたちは目にした存在にまたしても驚かされた。警察車両と思しき14tトラックほどの装甲車両より重々しい青い装甲を着込んだ誰かが重武装を携えて現れた。

「アルトリウスX1からユニットへ、シャドウ生物と思われる脅威を確認 ATR-X03『セクエンス』のAとBの使用許可を願います」

『アルトリウスX1、『セクエンス』の使用を許可します』

 青い装甲服の何者かはどこかより受信された通信に武器使用の許可を得るとズンズンとシャドウに向かって歩いて行った。

 新たに現れた別の驚異の前に一度は大人しくなったシャドウが再び興奮し始め威嚇し始めるも…威嚇で止まる様な存在でないとすぐに察知したシャドウは装甲服の何者かに向かって襲い掛かったが、装甲服の何者かの腰に装備された拳銃2丁をホルスターのロックを外して躊躇なくシャドウに向けて発砲連射した。

―ガァギャァアアアアアアアアアアアアッ!!

 撃たれ続けるシャドウは姿形が怪獣娘に酷似しているせいか…アギラたちにもその姿がまるで自分たちにまで向けられているような気分の良いものではなかった。

 2丁の拳銃を打ち尽くした青い装甲服の何者かの攻撃が終わると…ハチの巣になったシャドウは沈黙して膝をついた途端に地面にうつ伏せになって倒れた。

 そして、シャドウを形成する肉体がドンドンと溶け出して消滅しかけていたが…即座に装甲服の何者かは何らかのカプセルを取り出して何かサンプルの様な回収していた。

「なんだありゃぁ…」

 呆気に取られていたレッドキングたちだったが…装甲服の何者かが振り返ってゴジラたちを目にした瞬間だった。

 背中に装備した大型の銃口火器をパージして右手にトリガーグリップを握り込んでその銃口はゴジラ達の方に向いた。

「ッ!?」

 ゴジラはすぐに脇に抱えたアギラをミクラスの方に投げつけた。

「うわぁっ!?」「ふぎゃっ!?」

 そして、太い棍棒の様な尻尾でレッドキングとゴモラにぶつけてその場から弾いた。

「ぐわっ!?」「ぐえっ!?」

 強い衝撃と共に2人は転がり倒れて意識を失った。

 そして、4人の怪獣娘を咄嗟の機転で弾き飛ばしたゴジラだけがその場に残った。

 すると物騒な銃火器は銃口部分から回転音を発して銃口から弾丸が連続で射出してゴジラに牙をむいた。

―ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルッ―

 毎秒何発もの弾丸が跳んできてゴジラの体表に当たるも硬質な体表に穴を開けることはできなかった。

 

 一方、警察車両として出動した装甲車両内では混乱が起きていた。

「アルトリウスX1!ATR-X02の使用は許可してません!直ちに攻撃をやめてください!!」

「ATR-X02の緊急ロック作動しません!」

 装甲服のオペレーションを遂行するための用意された車内専用のキーボードで何度もコンピューターに対して武器の制限を試みようとするオペレーターの男女が必死に対応するが…

「いえ、これでいいです…そのまま任務を続行させてあげて下さい」

 オペレーターたちの後ろには緒碓が腕を組んで装甲服の者の行動を咎めようとしなかった。

「しかし命令違反ですよ!装備既定の使用許可も経ずに…」

「彼の視界に映ったこの生物…コレは先日国道を時速500キロで移動していた生物ですよ、防犯カメラの解析で特徴は一致しています」

 緒碓がキーボードに打ち込んだモニターに映像を画像解析したクリアな画像が出た。

「背ビレの色が違いますが…特徴は酷似していますね」

「しかし、『ロンランス』の使用規定では周囲確認を経ての使用が必要では?」

「緊急使用です…想定外脅威に対しての使用であれば緊急規定外条項に適応されます」

 2人のオペレーターは緒碓の言う通りに従うしかなかった。

 

 そして、すべての残弾を撃ち尽くした装甲服の者は撃てない銃火器と化した武器を捨て近接武器の剣型の切断兵器を金属製の鞘から取り出してキュィインッと言う高周波の音が響いてジワジワとゴジラに近づいた。

「…………」

 しかし、ゴジラは逃げることもせずに真っ向から受けて立とうという意思を露わにするかのように装甲服の者を鋭い目で睨みつけていた。

「うっ…う~んッ…はっ、ミクちゃん?ゴモたん!?レッドキングさん!!」

 目を覚ましたアギラが先に他の怪獣娘たちを揺さぶって起こそうとするも強い衝撃で意識を失っていて簡単には起き上がれなかった。

「あっ、お兄ちゃん…お兄ちゃんはッ!?」

 咄嗟に自分たちを庇ったゴジラの方を見るとゴジラと青い装甲服を着た何者かが激しい死闘を繰り広げていた。

 鋭利な高周波のブレードを振り回して襲い掛かる青い装甲服の何者に対してそれを見事なまでに紙一重で躱すゴジラ、宛ら人々の脅威となる怪物に相対するヒーローが悪い怪物を倒そうとしている。

 青い装甲服の何者かは近接武器で次々とゴジラに迫ってきて徐々に攻撃は激しさを増してきた。

 近くの木々は綺麗な切断面と共に2つに分かれるほどの鋭利さを誇る武器で何度も攻撃してくるが一向にゴジラには当たらなかった。それ以外は近接格闘で応戦するという徹底ぶりだったが…それでもゴジラ相手には決定打にはなっていなかった。

 戦闘技術では互角、武装面では得体の知れない装甲服の者の方に分があるにも関わらず戦力差に段々と開きが現れ始めた。

 ゴジラの肉体に紫のプラズマ状のエネルギーが放出し始めドンドンと装甲服の何者かを追いつめるようになってきた。

 “加速”だった、加速する驚異の攻撃速度がゴジラを目にも視認できないほどの速さで打撃の応酬が硬質な装甲に次々とヒビ剥がれ始めて来た。

「!?」

 だが、ゴジラはそんな生物的に出せるはずのない速度で攻撃をしても逆に装甲服の何者かも段々とその速さに合せて来た。とても人間の動き…否、脊椎生物が反応できる速度ではなかった。

(コイツ、ミレニアムについてきやがっただとッ!?)

 その速さに加え、常人ならざる攻撃力、さらにはゴジラが目にした瞬間に感じた喉の奥からザワつく異様な気配も感じ取っていた。

 『傷のウルトラマン』と同様の気配だった。今、戦っているこの装甲の奥にはあの顔に傷のあるウルトラマンと思しき存在を感じていた。

 ゴジラは即座に装甲部の腹に蹴りを入れて相手との距離を離した。吹っ飛んだ装甲服の何者かは転がりながらも衝撃の勢いと共に態勢を立て直す原理は受け身と同じ手法でダメージを分散させた瞬間にすぐさま立て直して剣を構え直した。

「お兄ちゃんッ!」

「来るなッ!こいつは普通じゃない!!」

 ゴジラに加勢しようとアギラが近寄ってきたが…装甲服の何者かは一瞬アギラに目線を反らすとすぐに近くにあった弾倉が空になった先ほど使用していたバルカン砲の様な大口径火器を手に取って武器の組み換えを始めた。

 その先端には槍状の射出徹甲弾が装填されてゴジラにその武器を向ける…かに思われたが狙いは変えてアギラにその武器を向けて来た。

 そして、トリガーを押し込まれると即座に徹甲弾が射出された。

「あぶねぇえッ!!」

 ゴジラは紫色の閃光を描いてアギラを抱え離れた。

 徹甲弾の狙いは反れて怪獣娘たち用に設営された特設ステージに着弾するとステージに大規模な爆炎を巻き起こしてステージから数メートルは粉々になり爆炎であたりが燃え盛る火の海と化していた。

 そんな過剰な武器がアギラに牙を向こうとしていた事実にアギラ自身も絶句した。いくら再生力に優れた怪獣娘であってもあの様な武器を1度でも喰らえば怪我だけでは済まなかっただろうことに背筋が凍りつくようだった。

 それでも戦う事をやめない装甲服の何者かはまたズンズンと重たい足を歩み出してきたが…突然、静止した。

『もう結構です…その場から離脱してください』

 通信を介して穏やかな声が装甲服の者の耳に静止を促され持っていた銃火器の銃口を上に向けて構え直し…ゴジラ達に強い視線を向けつつもクルッと方向を変えて警察の装甲車両に向かって戻っていった。

 戻った装甲服の何者かを収容した装甲車両は急発進にて後方にバックした後に転身して現場を離脱していった。

 激しい戦闘後を見据えたように周囲を取り囲んでいた警察官たちが次々と駆け付けて来てアギラたちが闘っている時から散々遠目から離れていた警察官を始めスーツ姿の捜査官も駆けつけて現場保存と言う名目で手際よく集まり始めていた。

「救急を呼んで応援を要請しろ!」「はい!」

 更に待機していた警察車両の中から救急車両も到着して救急隊員がアギラを始めレッドキングたちに救急の処置が施された…だが、そこにゴジラは既にいなかった。

―???―

 

 そこは警視庁の管轄する特殊な施設に例の装甲車両が収容されていた。

「……おや、君ですか…例の物は?」

「ここだ」

 一切の照明が殆ど無い暗がりの部屋の中で男が緒碓にあるカプセルを渡した。

 それはあの怪獣娘型のシャドウから採取したシャドウのサンプルだった。しかもカプセル内で今も蠢いていた。

「…確かに……それで、これをどうすると?」

「人工細胞で培養して肉体を形成する…そこにこの“カラータイマー”を取り付けて私のための“猟犬”となってもらう」

 男の手にはかつてウルトラマンの胸部に装着されていた代物“カラータイマー”と呼ばれるウルトラマン特有の発光器官だった。

「光の巨人の危険信号…そんなものを取り付けてどうするおつもりで?」

「こいつは新しく“怪獣娘”とやらに変異させ…使命を終えれば殺処分する…私の使命、この星に巣食う害獣どもを駆除すること…いや、駆逐することだ」

 その顔は復讐に燃える鬼の様な形相だった。

「そのためなら怪獣の力を使うと?…だいぶ矛盾されていますね」

「かつての宇宙警備隊にも緊急時に怪獣を使役する規定があった…扱いの訓練は受けている」

「そうではありません……あなたにも同胞の形見を怪獣の為に使うとは思いもよらないと申しているのですよ」

「言っただろう…害獣たる怪獣をこの世から消し去るならなんだってすると…もうこの世にM78星雲光の国は…どこにも存在しない……まずは故郷を私から奪った奴を消す、そのあとに同胞の無念を晴らすために怪獣娘とやらも例外なく対象だ」

 男は緒碓に嘗てウルトラマンだった誰かのカラータイマーを託して身体を反転させて後を去ろうとした。

「…ソレなら構いませんが、最後にもう1つお聞きしますが……このカラータイマー…一体誰のですか?」

 男は立ち止まって振り返り緒碓に問いに答えた。

「…ベリアルだ…」




アンバランス小話
『劣等感』

 救急隊に応急処置されている中で怪獣娘の中では未だ起きない者が居た。
「ゴモたん!しっかりして!ゴモたん!!」
「うっ…うっ、う~ん」
 酷く魘されているが命に別状はなかった…が…
「ゴモたん!どうしたの!?どこか痛いの!?」
 しかし、酷い魘され方に変わりなくどこか酷い怪我をしているのではないのかとアギラは困惑した。
「うっうう…おっ、おっぱいがぁ…」
「はぁッ!?」
「ウチにそっくりなシャドウのクセにぃ…おっぱいがぁぁッ…」
 彼女の頭の中で繰り広げられていた壮絶な葛藤…ソレは怪獣娘型のシャドウはゴモラと酷似する点が多い…が、唯一違う点として彼女以上にスタイルの良さが浮き彫りとなって激しい悪夢と共に彼女の中の劣等感が押し寄せていた。
「あっ、大丈夫みたい…いつも通りの正常運転見たいです」
 ゴモラが無事だと分かった瞬間にアギラは動揺する救急隊に心配する事がないことを伝え、レッドキングたちは呆れ返っていた。
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