TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐ 作:神乃東呉
―GIRLS東京支部・会議室―
そこは大会議室とは別の部屋。大会議室ほどの広さはないがトモミとベニオにラン、そしてアキ、レイカ、ミサオとサチコが向かい合って集まっていた。
「では再度確認いたしますけど…アギアギは以前にもこのトカゲの姿をした怪物に襲われたのは確かですか?」
「はい、ボクがおじいちゃんの葬儀後に火葬場から離れた地点にある山中で遭遇しました…あの時はダグナさんとお兄ちゃんが何とか助けてはくれましたが…ボクはその時まで心の内に…なんと言うか『居なくなりたい』と一瞬だけ考えるほどに精神が追い込まれていていたのは確かです」
次にレイカ…
「私もエレキングさんと待ち合わせしていたにも慣れない地域だったため道に迷って少し遅れそうだったので合わせる顔がないって思ってしまった瞬間はあります」
そしてミサオとサチコ…
「あたしとザンドリアスはこの間のライブの事で意見が対立して口論からの喧嘩になって…特にあたしはそこまでムキになった自分には後悔しましたけど消えたいとかは特に…」
「あっ、あたしは…哀しいってのもあるけど消えたいとかよりも『この場から居なくなりたい』ってのは思いましたけど…」
謎の怪物に襲われかけた4人3組の怪獣娘たちの中で3人に特徴が合致するのはその瞬間的とも言える悲観思考による『居なくなりたい』だった。
「やはりアギアギの言う通り…あの怪物たちが皆さんの前に突如として現れる条件は『居なくなりたい』と言う気持ちに呼応するように現れるからなのですね」
「ちょっと待ってください!そんな事を心に思ったザンドリアスならまだしも狙われたのはあたしっすよ!?」
その条件に唯一合わないミサオはなぜ自分が怪物たちの狙いになったのかを説いた。
「まぁザンドリアスじゃ弱っちく見えたんじゃねぇの…目的はただ強い怪獣娘を狙ったのかもしれねぇぜ」
「ふえッ!?ししょ~、あたし狙われたくは無いですけど…なんか酷くないですか!?」
「とはいえ、その瞬間の中でアギアギ達が思った感情が関わっているのは確かです…シャドウミストのように弱った心のスキを突つように、この怪物たちは弱った心を持った状態の怪獣娘さんたちを狙うようですね」
「『居なくなりたい』と言う気持ちかどうかは知らないけどそういった言葉は条件口実なのかもしれないわ…あなた達の弱った心があの怪物にとって何かが好都合であり、あなた達が奴らの目的に一致すればたとえ2人以上居てもその中から条件の見合う者を選出すると言った所でしょう」
ランの見立てでは怪物の中で特定の目的に見合う怪獣娘たちがマイナスな感情に晒される状況下にあることに加え、かつ能力がある者を選出する、そういった一連の構図を電子パッドの中の絵画アプリで図を作成し会議室内のモニターに映し出した。
「エレキングさん、絵うまいっすね」
「この程度、プロの目線からしたらお絵描き程度…アイザワ先生に比べれば陳腐な絵よ」
ミサオの誉め言葉に決して靡かぬランは髪に隠れた耳をたくし上げる仕草をした。
「それと、その怪物たちの目的には“ある言葉”が関わっている気がします」
「言葉?それは一体何ですか、アギアギ?」
アキは怪物たちが一同に違った言葉を口にしても同じ単語だけは共通で喋っているように感じたことを話した。
「それは…『ダゴン』と言う単語です」
「ダゴン…?確かになんかそんなこと言っていたようなぁ…」
「聞いたことあるか?ザンドリアス」
「う~ん…必死だったからどうだろう?」
皆が首を傾げている中でランはすぐさま手元のソウルライザーの検索アプリから『ダゴン』と言う言葉を検索するが…
「いくつか候補が上がったわ…古ルルイエ神話に登場する海の神、メソポタミア文明では海から現れた魚の賢人、ウガリット神話では穀物を意味し神話内の豊穣神の父…『ダゴン』『ダガン』『ダーゴン』『ディーゴン』、類似単語はあるけれど意味合いは同じみたいね」
「よく気づいたな、アギラ」
「ええっと…まぁ、なんだか強調的で特徴的な言葉だったからです…」
本当は謎の怪物たちの言葉が分かるダグナを介して知ったアキは冷や汗をかきながらもなんとか誤魔化した。
「“ダゴン”…ソレが意味を持った言葉であるなら怪物たちにも独自の言語があると見るべきでしょうね…それこそシャドウ以上に社会性を持った生物である所を見ると人間に近しい感じがしますね」
「シャドウに警察が対応し始めたからって気の休まらねぇことが立て続けに起き始めたなぁ…ピグモン、このことは警察には?」
「もちろんお伝えするつもりですが…対応には遅れが生じるでしょう、GIRLSの怪獣娘さんたちには各自警戒を広めましょう」
現時点での結論は要警戒態勢を発令することを東京支部として決定するが、GIRLSの怪獣娘にはそれぞれ独自の仕事や対応に追われる日々があるためになるべく単独で行動することを控える程度にしか対策のしようがなかった。
「う~ん、しばらくは気を付けることが増えますね…何より未だシャドウに対しても私たちは分かっていないことが多いのに今度はそれ以上に分からない敵が増えてくるのは困りましたねぇ…ですが、警察が提示してくれた『特異生体不明怪獣』さんと言う方々ならもしかしたら言葉が通じ合うのかもしれません」
トモミは警察が符号分類する正体不明の怪獣を第1号から第4号まで記載された怪獣たちを頼る案が浮上した。
「確かに…この怪獣たちは明確に“日本語”を喋っている節があった…つまりはその正体も人間と言う可能性が高いわ GIRLSとして調査をする必要がありそうね」
ランも調査部の怪獣娘として気に為り、調べる意欲が湧くようだ。
「エレエレは先日発生した『秩父鉱山凍結事件』の現場周辺を含めて埼玉県内へ向かってください…あの事件には少なくとも怪獣娘と関わる何かがあるかもしれません」
「了解したわ」
「『特異生体不明怪獣』…通称:特生怪獣…もしかしたら相当能力の高い“怪獣娘”さんたちなのかも知れません」
ピグモンは自信満々にゴジラ達を分類する『特異生体不明怪獣』を“怪獣娘”と見ている様子にアキは少しこけそうになった。
「どうされました?アギアギ」
「いっ、いえ…なんでも…」
無理もない、彼女たちにはまだ怪獣の力を宿した男性たち『怪獣戦士(タイタヌス)』たちについて話していない上に知りもしていない。常識的には女性にしか怪獣に変身できないことが固定概念化されていることに唯一事情を知っているアキとの弊害が現れていた。
「それとアギアギには第1号さんから第3号さんに関する調査をお願いします」
「へっ?ボク…」
本来GIRLS未所属の怪獣娘などの調査はエレキングたち調査部が担当のはずが何故か自分に振り分けられた事に驚愕した。
「申し訳ありません、調査部は第4号関連で埼玉県警からの要請で専門家としてガッツとエレエレの派遣が決まっていますのでアギアギには残りの調査に協力をお願いしたいんですが…」
本来、調査部から怪獣娘の情報などを事前に調べてから指導部が動く手はずだがゴジラやガメラならまだしも分類第3号に該当する類人猿の様な怪獣戦士(タイタヌス)についてまだ何も知れていないのが現状であった。たとえこの3人を事前情報なしで調べろと言われても無理と言っていたが…
「もちろん、御一人で調べてくださいとは言いません…流石に人探しとなれば専門的な技術が必要になりますので、ここに向かっていただきます」
そういうとトモミはソウルライザーのトーク機能から画像を送信してアキのソウルライザーはソレを受信されてきた内容を確認すると…
「新宿の…『ブルーコメット』?」
「はいッ、GIRLS所属の怪獣娘ではありませんが、こちらに人探しが御専門の怪獣娘さんがいらっしゃるので是非お逢いして見て下さい」
それはGIRLS部外の怪獣娘が経営するとある探偵事務所の案内地図だった。
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新宿区内 都庁前
新宿区を象徴する二対一棟の東京都庁を前にアキはそびえる天辺まで見上げていた。
「ほへぇ~…都庁って大きいなぁ…」
新宿の中心である都庁からスタートしてビル群立ち並ぶエリアに目的の『ブルーコメット』なる場所がある…と言うのがアキのソウルライザー内の画像には簡易的な地図が記載されているが…アキが初めてGIRLS東京支部への案内と同クオリティであるため非常に見にくい。特に新宿は東京都の中でも一番ビルしかない街であるため高低差の無い平坦な地図は逆にどのビルを指しているのか分からなくなるほどだった。
「こっち……いや、こっち…」
何度ソウルライザーをグルグル回して自分の現在位置と目線に合せた地図の見方を変えて見るもどのビルのどういう建物を指しているのかも一切分からない。
「なにをスマホなんぞグルグル回してんだよ」
その横でアキの下手な地図操作に見かねたユウゴが声を掛けた。
「だって、こんな大雑把な地図じゃわからないんだもん」
「ダグナに連絡を受けて来てみれば…あの赤いのに俺らを探してほしいって……言われなくても俺が居るわ」
トモミからの指示で『特生怪獣』の第1号から第3号までの捜索に回されたアキだが、実際は呼べば来るレベルの距離感にいるのであった。
「そんなこと言ってもピグモンさんからの指示なんだから…お兄ちゃんたちのことを隠している以上、辻褄合わせに付き合ってよ」
アキは律儀にトモミからの指示とユウゴたちの事を隠すための辻褄を合わせるためにわざわざブルーコメット探しに探すべき本来の相手のユウゴと共に探させていた。
「あほらしい…だいたいまさかよりによって“あそこ”に行くことになるとはなぁ…」
「ふえっ?お兄ちゃん知ってるの?」
「…知ってるも何も……あぁ~…世話になったのは確かだが…」
「…?…どういうこと…」
アキはユウゴの何やらワケありな表情に首を傾げつつもブルーコメットを求めて新宿のさらに奥へと進んだ。
「どこかで聞いてみるしかないかなぁ…あっ」
アキたちは丁度目に入った配達前のピザ屋の女性店員が目に入り彼女に『ブルーコメット』についてきいてみることにした。
「すみません、ここらへんに『ブルーコメット』って言う私立探偵事務所がある筈なんですけど…知りませんか?」
「ブルーコメット…あぁ知ってるよ、あそこの雑居ビルの中にあるよ」
『BEAST THE PIZZA』と書かれた帽子を目深に被った女性店員は丁寧にアキに『ブルーコメット』の場所を教えてくれた。
(んっ?…この人どっかで…)
「どうもありがとうございます…それじゃ」
アキもまた丁寧に女性店員に御辞儀の礼を尽くして感謝を表すとピザ屋の店員から教えてもらった雑居ビルに向かった。しかし、ユウゴだけは最後まで女性店員を見ながらどこかであったような気がするままアキに付いて行った。
逆に一方の女性店員は軽くスキップしながらウィンと開く自動ドアのピザ店舗へと戻って行った。
「あらっお帰り、ミオちゃん!どうしたの、スキップしながら…イイ事でもあった?」
女性店員は店内の女性店長にルンルン気分のワケを尋ねられた。
「いや~今さっき本業にお客さんが入ったんです!」
「本業って…あの探偵の?」
「はいぃ…じゃぁ私これで上がりま~す…あっピザもらいますね♡」
配達用のコートを脱いだ制服には『天城』と苗字の入った名札がついていた。
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アキたちはピザ屋の女性店員から聞いた場所に着くと…確かに扉には私立探偵事務『ブルーコメット』とまるで喫茶店のような名前の字体が掲げられた事務所があった。
「ここ…だよねぇ?」
「どう考えてもここだなぁ…」
アキが何度見直しても確かに画像のブルーコメットと看板のブルーコメットは表記字体もロゴも同じであった。
「うっ、うん…よ~し、お邪魔しま~す」
アキは勇気を振り絞ってドアノブ引いて開けた先には誰も居ない探偵事務がシーンッと静まり返っていた。
「“御用の方はお席に座ってお待ちください…ただいま外出中です”?…留守なのかぁ」
アキは玄関口横の靴棚に置かれている立て札を見て“天城ミオ”なる人物が留守であることを理解した。
「出直すのもアレだし…言う通り、待っておこう」
「いや…おそらくあと数分で来るぞ…何となくわかったがここに“アイツ”がピザ抱えて帰って来るわ」
「へぇ?どういうこと…」
「なんでもいいからお前、ソファーに座ってろ…勝手に茶でも作っておく」
そういうとユウゴは玄関でブーツを脱いで客間のソファーには座らずに台所へ回った。
「ちょっとお兄ちゃん、勝手に入って大丈夫なの?」
「別に構う必要ねぇよ…コレ、俺のコップ…まだあったのかよ」
ユウゴは食器棚の位置から台所の隅々まで慣れた手つきで物色して茶葉まで簡単に見つけてヤカンにお水を注いだ後にコンロに火をつけるも…火が出ない。
「お兄ちゃん、来たことあるの?」
「あるどころか住んでいたレベル…場所も正直知ってた」
火が付かないため、ユウゴは手だけゴジラのバーニングに変化させて水を急速に湯へと変えた。
「なんでそれ先に言ってくれなかったのさぁ!」
「聞かれなかったから」
アキの怒りはヤカンの沸騰口から出る水蒸気の如く不貞腐れて頬を膨らませながらも客間のソファーに座った。
すると―ドタドタドタドタッ…
アキたちが先ほどまで居た玄関外からやけに慌ただしい足音が聞えて…ガチャンッ!と勢いよく玄関ドアが開いた。
「いらっしゃい、ようこそブルーコメットへ!ご要望は何ですか、人探し、浮気調査、なんでも御座れ、ブルーコメット所長の天城ミオでーす!!」
上機嫌なまでの笑みを浮かべて勢いよく入って来たのは…先ほどのピザ屋の女性店員だった。
「えっ…ピザ屋の…店員さん!?」
「あれっもしかして気付かれていたの、私の変装!?」
しかし、ドアを勢いよく開けたのは束の間…玄関に山ほど乗った書類と本の棚から紙媒体の雪崩が降って来た。
「へっ?…ふぎゃぁああああああああああ!!」
「だっ大丈夫ですか!?」
山ほどの紙媒体に埋もれた女性は体が見えなくなるほどの紙に隠された。
「だっ…大丈夫…ピザは無事よ」
女性が自らを代えても守り抜いたのは箱詰めされたピザだった。
「何やってんだよ…あんた」
「いや~申し訳ない…御見苦しい所を…あれ?この匂い、コーヒー?…ウチ、ガス止まってるはずなのに…」
女性が紙の山から立ち上がると可愛らしいクジラかカエルか分からないギョロ目のキャラクターの書かれたマグカップに注がれたコーヒーを飲むユウゴが目に飛び込んだ。
「ちょっと、それウチを出て行ったかわいい弟分のマグカップ!何勝手に使ってるの!?」
「誰がかわいい弟分だよ…テメェの弟になった覚えはねぇよ」
「へっ?……もっ…もももっ、もしかして…ユウゴ君ッ!?」
女性は指先を震わせながらユウゴを指差して声が震えていた。
「へっ…はっ…やっ…やだぁ~!!超久しぶりに来たと思ったら何ッあなたお父さんにソックリになっちゃってぇ~、顔もまぁ俳優さんみたいに凛々しくなってぇ~」
それまで少し抜けているが容姿端麗な美人の女性が打って変わってユウゴの変わり果てた姿を目の当たりにしてか突如としておばさん口調になってユウゴの身体にベタベタと触れ始めた。
「あっ、あの~…お兄ちゃんとどのような御関係で…」
「んっ?お兄ちゃん……もしかして、妹のアキちゃんッ!?」
「あっ…はい、初めまして…宮下アキと言います、GIRLSで怪獣娘アギラとして指導課…に…」
ユウゴの隣でアキが女性へ丁寧な挨拶をするが…突如として女性の目の色が変わってジワジワと計り知れない何らかの感情が女性の中で込み上がってアキに抱き着いてきた。
「ひゃぁ~!あなたが噂に聞いてたユウゴ君の妹ちゃんねッ!おぉ~かあいいよぉ~!あなたも今日から私の妹分よ!」
抱き着くなり女性はアキの身体を強く抱きしめた後に顔を餅が如く頬をこねくり回してきた。
「ふへぇ~らめぇてくらはぁいぃ~!」
「んんっも~かぁいいなぁ~!昔のユウゴ君みたいにかわいいよぉ~!」
今度はさらに強く抱きしめて頬と頬を擦り合わせて来たが…呆れたユウゴはソファーに座ってコーヒーをテーブルに置いた。
「おい、それよりも…あんた探偵まだ続けてたのかよ 存続はしているけど風前の灯火って気配がするぞ」
「ふふふっ~よくぞ気づいてくれた、流石私の弟分よ…」
ユウゴに聞かれてアキから手を放した途端に女性は笑顔のまま客間より奥にあるアンティーク調の机に重なる椅子を引いて腰かけた。
「ようこそ、怪獣探偵事務所『ブルーコメット』へ!所長の天城ミオこと怪獣娘のベムラーです!」
そして女性ミオは大手を広げて私立探偵でありながらも自身が怪獣娘であることを明かした。
「ベムラー…?…あっ、もしかして『御徴川決壊事件』の始まりの怪獣娘さんッ!?」
アキは以前、大阪に遠征でゴモラの手伝いに来た時にウインダムが言っていた怪獣娘が発見された事件の名前を思い浮かべた。大阪遠征終了後に個人的に調べた時の怪獣娘ベムラーの写真とその記録を見たのを思い出した。
スレンダーな体系に肌は少し焦がしたように褐色で髪の色は鮮やかなブルーの怪獣娘ベムラーとミオを記憶頼りに見比べると確かに面影はある。
普段着もカイジューソウルの影響か好みの色か、ベムラーの黒い獣殻と同系色の衣服を着用していた。
「さすがGIRLSの怪獣娘ね…私を御存じとは有望な助手に為れるわ」
「はぁ、それはどうも…えっ?助手?」
何か喜ばれながら不穏な事を口にしたミオにアキは足が一歩下がった。
「アキ、あきらめろ…ここはガス代も払えないような貧乏探偵事務所だぞ」
「ビンボー言うな!ただ最近仕事があんまり無いだけだもん!」
見た目とは裏腹に事務所経営が破綻しかけている探偵だった。
「故郷の福島から上京して早3年…地元じゃ商売あがったりだからって新宿に事務所構えたのに、東京時価が高いよぉ!まともに食べてけないよぉ!ピザ食べさせてあげるから仕事手伝ってぇ~!」
大の成人女性が机に突っ伏したまま泣き言を吐き出し始めた。とても見るに堪えない惨めさを感じ得ない状態だ。
「仕方ない…困った怪獣娘さんが居るのならGIRLSとして協力させてください」
見かねたアキはミオの肩に手を置いて一時的に協力することを約束した。
「ホントッ!?ありがどぉ~我が妹分よ!!」
「うぅっ…制服が…」
突然泣きじゃくるミオに抱き着かれアキの制服が涙で濡れらされた。
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ミオに連れられて新宿区内の駅から東口に位置する大型ヴィジョン前に3人は訪れた。
「今日はここで待ち合わせている依頼主さんから迷子探しを請け負っているの」
3人が広場を歩いていると広場内で1人の怪獣娘がミオを待っていた。
「あっ、あの~ブルーコメットさんですか?」
「はい、ブルーコメットの天城ミオです…ご依頼された方ですね」
待っていた怪獣娘は二束で髪の毛をまとめ上げた所謂“ツインテール”と言う髪型にドレスの様な特殊な獣殻(シェル)を纏った少女だったが…
「あっ、君は確か…芸能課の…」
「えっ、アギラさん!?」
アキはその怪獣娘と顔見知りであり、同じGIRLSの怪獣娘だった。
「あら、お知り合い?」
「あっ、はい…GIRLSの芸能課でアイドルタレントをしている『ツインテール』といいます」
怪獣娘ツインテールは丁寧に深々と頭を下げて御辞儀したが…何やら悲しげな表情を浮かべていた。
「ツインテールさん、どうしたの?」
「ううっ、実は…家族が…居なくなっちゃったんです!」
ツインテールの依頼は迷子探しのはずだが家族の失踪ごとであろうことを打ち明けた。
「家族が?…ソレは一体どんな方なんですか?」
ミオはまずツインテールから逃げてしまった家族の特徴を尋ねた。
「家族と言いますか、唯一無二の友達であり姉妹のつもりで一緒に居続けたのに…昨日忽然と…だから一緒にグドンちゃんを探してください!」
「「グドンちゃん?」」
アキとミオは聞き慣れない名前に首を傾げた。
「はい、私のカイジューソウルは少々特殊で…ツインテールとして怪獣娘に覚醒したと同時期に私のソウルから小さな怪獣が生まれてしまったのがグドンちゃんなんです」
ツインテールのソウルライザーの待ち受けには確かに小さなぬいぐるみの様な両腕が鞭になっている刺々しい怪獣だった。
「へぇ~怪獣娘からこんな小さな怪獣が生まれることもあるんだね」
「はい、それはもう生まれた時からずっと友達として家族として片時も離れず…私のお尻を嚙んできたり、髪を食べちゃったり、執拗に私の足に鞭でじゃれついて来てくれたり…もうかわいくてかわいくてぇ」
彼女のカイジューソウルの特異性が生み出した怪獣グドンとの思い出を語るがその思い出一つ一つにアキたちは共感できないツインテールに対するグドンの様子に別の意図を感じ得なかった。
「それ本当に家族なの?」
「家族ですぅッ!グドンちゃんは確かに隙あらば私の首を鞭で締めて来たり、私のソウルライザーが何故か『おいしいエビの食べ方』とか調べられていたりもするけどそれでも私にとっては大切で無くてはならない存在なんですぅッ!!」
ツインテールは両手をブンブンと振りながらグドンがいかに自分にとって無くてはならない存在であることを強く熱弁するが、その熱弁したエピソードもまた愛玩動物のじゃれつきとは明らかに違うような気がしてならなかった。
「ミオさん…今、ソウルライザーで調べたんですけど…グドンと言う怪獣は元々新宿地下から出現したツインテールを捕食するために出現したと記録されているんですけど」
アキのソウルライザーには『地底怪獣グドン』に関するGIRLSのアーカイブに記載されていた。その内容から要約するには確かにグドンはツインテールの捕食関係にあることがハッキリと明記されていた。
「うっ、うん…まぁ、どんな形であれ愛情表現は人それぞれ!どんな依頼であっても御引き受けいたしますよ!」
ミオは自信満々にグドンの捕食本能には目を瞑って依頼遂行に専念するが…
「…と言うワケで、ユウゴ君 出番よ!」
「お前が調べるんじゃねぇのかよ」
ミオは一切探偵としての責務などユウゴにすべて丸投げてきた。
「私の類まれな調査力ならすぐに見つかるでしょうけど…ここは一つ、ユウゴ君の実力が衰えていないかチェックさせてもらおうじゃないの」
「お前はどの立場でモノを言ってんだ」
自信満々に胸を張ってユウゴの実力を品定めようと建前を述べるミオに対してツインテールは『あの人が調べてくれるんじゃないんですか?』と苦笑いするアキに尋ねた。
「はぁ…おい、そこのエビ」
「えっ、エビって…私のことですか?」
エビと表現されたあだ名で呼ばれるツインテールにユウゴから手をこまねかれ渋々彼の元に近づくと…
1メートルほどの距離から瞬時にユウゴはツインテールが認識も出来ない速さで彼女の頭上に何かが通り過ぎて行った。
「?」
「お兄ちゃん、今ツインテールさんに何かした?」
「んっ、コイツの髪の毛」
「いつの間に!?まったく気付きませんでしたけど…」
髪の毛1本を痛みも無く手早く抜かれていたことに驚愕したツインテールだが…肝心なのはその髪の毛を何に使用するかであった。
「そのグドンとやらはお前の髪も常食とする偏食持ちだったよな…と言うことはお前の髪の毛はグドンにとって執着的私物であるという事だ」
ユウゴはツインテールの髪の毛がグドンにとって執着するほどに私物化した物質であると予想を立てた。
「つまりだ…俺が今、あんたの髪の毛を持っている時点であんたの髪の毛は俺の私物に塗り替えられた 野生の動物にとってこれは侮辱的行動と見なす習性があるなら…」
ユウゴの見立てに呼応するように広場の中に茂る木の枝草が激しく揺れ始め、何かが勢いよく飛び出してきたが…ユウゴはすかさず謎の物体を剛腕で掴み取った。
「キシャァアアアアアアアアア!!」
「このように簡単におびき出せるわけだ…」
ユウゴの手には小さな鞭をブンブンと振り回しながら首を掴まれたグドンをしっかり抑えられていた。
「グドンちゃんッ!?」
「こんなアッサリ…」
「ふふぅん!さすが私が見込み育て上げただけはあるわね」
驚愕する2人、なぜか自慢げに自惚れするミオ、ただ唯一わかることはグドンを早くにも見つけたことにより調査は終了かに思われた。
「グドンちゃ~ん!どこ行ってたのよぉッ!心配したんだからぁ!」
待ち望んでいたグドンとの対面にツインテールは強く抱擁するが…
「キシャァアアアアアアアアア!!」
「もぉ~…そん…なに…強く…じめかえざれげげげげっもももっぐぅえッ!?」
「ツインテールさん!?顔が真っ青になってますよ!?」
抱擁するツインテールに対してグドンは伸縮性の高い両手の鞭でツインテールの首を絞め掛かり彼女の顔を見たこともないくらいにうっ血させて泡を吹かせた。
そして、そのまま意識を失ったツインテールの隙を見計らって彼女の手から逃れ再び新宿の街中へと走り逃げて行った。
「あぁ~!グドンが…」
青ざめ泡吹くツインテールを介抱するアキは逃げていくグドンを見逃すことしかできなかったが…
「追うわよ、ユウゴ君!」
「なんで俺まで…」
すぐさまミオとユウゴは逃げだしたグドンを追って走り出して行った。
それから数時間後の区内の公園ベンチでアキはツインテールを介抱する内にツインテールは目を見開いて起き上がった。
「グドンちゃんは!?」
「ゴメン、逃げられちゃったけど…今お兄ちゃんたちが全力で探しに行ってるよ」
「そう…ですか…」
グドンに激しく拒否されて落ち込むツインテールを見たアキは彼女の背中をさすった。
「大丈夫だよ…またグドンのことならすぐに見つけれるよ」
「うんうん…そうじゃないんです、また私の元に戻ってもグドンちゃんは私を拒絶する…ずっと一緒に居て来たのにあんなに拒絶されたのが初めてで…私ッ…わたしッ……こんな辛い気持ちを抱くなら…いっそ“消えたい”です」
アキの慰めに耳を貸さないツインテールは深く落ち込んだ末に彼女の気持ちの中で『この世から消えたい』と言う感情が芽生えていた。
それを聞いた瞬間、アキは周囲を警戒して周りを見渡したが…例の謎の怪物はいなかった。単にアキの時のように『居なくなりたい』と言う感情とは違うのか、あるいは怪物たちの共通する条件に合わないのか、悲しむツインテールの前には現れなかった。
「ツインテールさん、そんなことないよ!グドンは確かにツインテールさんから激しく抵抗して離れたけど…ツインテールさんはグドンが自分から逃げ出した理由をちゃんと考えたの?」
「そっ…そんなの沢山考えましたよ…でも、何が原因なのかわかんないです」
「分からないのを分からないでいるなんて…グドンは逃げ出したけど、ツインテールさんもグドンから逃げているじゃないですか」
「ふえっ…どういうこと…」
「グドンの事を分からないからって原因から目を背けてもグドンを深く理解せずに、何をあの子が求めているのかもと考えないで…挙句に消えたいなんて思ってもますますツインテールさんがグドンから逃げているだけですよ」
アキはグドンに対して後ろ向きになりかけていたツインテールを激励した。
「今はグドンの方が確かにツインテールさんから離れているかもしれないけど…それにはきっと何か理由があるはずだよ…またお兄ちゃんたちが連れて来てくれた時にはしっかりグドンと向き合おう」
「あっ…アギラさん」
「ボクも離れていたお兄ちゃんとようやく向き合えるように為れて来た…君も同じようにグドンと向き合えば、グドンもそれに応えてくれるよ…きっと」
アキは笑顔でツインテールの悩みに答えるとツインテールの落ち込みつつあった表情はハッキリと明るい表情が現れるようになっていた。
「そうですよね!アギラさんの言う通りです…グドンちゃんが離れたからって私どうかしていました…ありがとうございます、なんだか勇気が出てきました」
ツインテールは立ち上がってそれまで『消えたい』と思っていた気持ちが晴れやかになった様子にアキもまた笑顔になる…が…
「んっ?…キャァアアア!?」
突然、ツインテールの身体が未知なるエネルギーに身体が包まれて座っていたベンチを離れ、空中に浮きあげられていた。
「ツインテールさん!?…あっ!?」
アキが周囲を見渡してツインテールの身に起きている原因を探るも…公園内の木に身を潜める人影が見えた。
「ビガラゴゾザ、“ダゴン”…フタグンッ」
木の影から手を伸ばして何らかの念力攻撃でツインテールの身体を浮かせて捕えていたのは尖って長い耳を持つ鬼人の様な凶悪な表情を浮かべるまた新たな怪物だった。
「ツインテールさん!ソウル…ライ、うわぁッ!!」
アキは自らのソウルライザーを掲げて変身しようと試みるも…アキの腕を蹴り上げて変身を妨害する別にもう1体の耳長の黒い怪物が現れた。
「ボンビギファダガッ、グビファザラグバ…“ダゴン”」
黒い怪物はアキの制服の襟をつかみ上げてまるでアキの姿を見定める様にして恐ろしげな眼光がアキに向けられた。
「アギラさん!…どうしよう、助けを呼ばなきゃ…あっ!ソウルライザーがッ」
謎の念力場によって空中に捕らえられたツインテールはソウルライザーを取り出して助けを呼ぼうとするも手から滑り落ちてしまった。
しかし、そこへ…
「キシャァアアアアアアアアア!!」
「グドンちゃん!?」
落ちたソウルライザーに飛びつくようにグドンが大きな口でキャッチすると…小さな身体はそのまま地面に着地して見せた。
「とぉお~りゃぁああ!!」
そこへアキを捕える耳長の黒い怪物に飛び掛かっていったミオも到着するも…耳長の黒い怪物は華麗に避けた。
「ありゃぁ~あッ…なんちゃってぇ~、本命は…こっちよ!」
蹴りに失敗したかに思われたミオの行動だったが…怪物がミオを避けると想定した上で真の目的をカモフラージュしていた。
「ソウルライド!ベムラー!!」
それは自らが変身するためにアキのソウルライザーを手に取ってすかさず画面に指をタッチして青い光と共に身体が眩い光に包まれたミオは頭から二本の角が伸び、硬質な鱗で覆われ、腰の裏から根の太くも先が細い尻尾を生やして怪獣娘『ベムラー』へと変身を遂げた。
「はぁ~あッ!!」
ベムラーは自身の身体を青い球体エネルギーに覆わせて…一気に縦横無尽に加速して、耳長の黒い怪物にぶつかって捕らわれたアキを助けつつも球体の中へと彼女を入れ、念力で宙を浮かばされているツインテールも球体の中へと入れると…球体は地面に着地してエネルギーは消失すると中から2人を抱えたベムラーが現れた。
「怪我は無い?二人とも」
「みっ…ミオさん…」
「探偵さんが…あの最初の怪獣娘さん、ベムラーさんだったんですか!?」
「う~ん…まぁGIRLSの中ではそうなっているんだろうけど…そうよ、私が最初の怪獣娘にして怪獣娘の怪獣娘による怪獣娘のための怪獣探偵ベムラー、よろしくねッ♡」
事情を知らない驚愕するツインテールに自己紹介とばかりに片目をつぶってウインクするベムラーだが…彼女たちを助けてもまだ問題は解決していなかった。
「“ダゴン”ヒガバンゾオゾゾッ!」
「“ダゴン”ビガズンゾゾス!」
捕えていた獲物を横取りされたことに腹を立てたのか怪物たちはそれぞれ武器を魔法陣から取り出して、色白い耳長の怪物は見た事の無い弓矢、黒い耳長の怪物は湾曲した片刃剣を二振りも取り出してブンブンと振り回す独特な剣術さばきを見せた。
「ありゃりゃ…武器なんか出しちゃってまぁッ…こっちは両手の華を抱えるのに精一杯なのにぃ~…あとは任せたぁあ“怪獣王”ッ!!」
ベムラーが点高らかに呼びつけた声に応えるが如く、公園内から紫色の閃光が黒い耳長と白い耳長の怪物に衝突して吹き飛ばした。
「たくっ…結局俺が全部やるのかよ」
怪獣娘たちの窮地に高速で到着したのはミレニアム形態のゴジラであった。
しかし、怪物たちは直ぐに体勢を立て直して立ち上がり武器を持ち構えゴジラへと向ける。
ゴジラも怪物たちと睨み合うも…視線は少しズレてグドンへと向いた。
「おい、そこの矮小怪獣…いつまでそうしているつもりだ」
話しかけられたソウルライザーを銜えたままのグドンはドキッと身体を身震いさせて、またも颯爽と逃げようとしたが…
「逃げるなぁッ!お前は自分の獲物を横取りされておめおめと逃げる程度のみみっちい怪獣かッ!!…その程度で怪獣と呼ばれていた存在だったなら一生逃げ隠れして動物のように惨めを晒し続けろ!!」
ゴジラからは最早視線を怪物たちに戻したままグドンに見向きもしないままグドンへの怪獣としての否定を吐き捨てた。
「グルゥシャァァッ…」
ゴジラに叱責され俯くグドンは頭を横に振って赤い目をキラッと光らせるとツインテールのソウルライザーを真上に投げ飛ばして落ちて来た所を大きな口でガブッとソウルライザーを丸呑みにして取り込むとグドンの身体は見る見る内に宿る怪獣としての力が増幅して…身体はゴジラより頭1つ小さいが怪獣娘たちが見上げるほどに大きく変化して身のため1メートル超えの怪獣グドンへと変貌を遂げた。
「ギィシャァアアアアアア!!」
「フンッ…及第点だ」
ゴジラとグドンは瞬く間に耳長の怪物二体の間近まで迫ってゴジラは黒い方に連続打撃、グドンは白い方に鞭で連打するも耳長の怪物たちは魔法陣を展開して炎や氷を発生させてゴジラとグドンの前にぶつけると一瞬にして水蒸気を発生させ目暗ましをした。
更にそんな目暗ましも束の間に黒い耳長の怪物は剣を白い耳長の怪物は近接用の短剣を2体の怪獣へ貫こうとした…が、黒い耳長の怪物の腹にはゴジラの燃える様な赤い拳、白い耳長の怪物にはグドンの鞭が首に巻き付いて…いずれの致命的なダメージが加わって耳長の怪物を沈黙させ…彼らの持つ武器は手から落ちると同時にこの世から消えるようにして塵となり消失した。
そして、耳長の怪物たちもダメージが決定的になり同じく塵となって消えた。
「…エルフタイプだったか…いよいよ本当にこの世界が歪み始めて来たか」
ゴジラは塵となって飛び去った耳長の怪物たちだったものを見つめていたが…グドンはそんなゴジラを前に真っ赤な目を静かに閉じて…片足を地面につけてもう片足は屈伸し曲げて宛ら王様に跪く家来が如き仕草でグドンはゴジラに対して跪いた礼を尽くした。
「ふむっ…まぁ怪獣としては及第点だが、その決意に免じて敬意を送ってやろう」
ゴジラはグドンの額に三画の自身の背ビレのようなマークをなぞってグドンへの敬意と称賛を与えた。
「これを元にこれまで通りに怪獣として励め…お前を必要とする者の声に応え、忠を尽くせ」
グドンは怪獣の王からの言葉を深く噛みしめて頷き、赤い目を見開いて立ち上がってグドンはゴジラの袂からツインテールたちの元へと歩いて帰って行った。
そして、その後ろにゴジラは再び高速の閃光と共に消えて行った。
「グドンちゃ~ん!!」
ツインテールが涙を流しながらグドンに抱き着いてきた。それは離れ離れになっていた者同士の涙の再会の様でもあった。
「よかったね、ツインテールさん」
「ハイッ、グドンちゃんがこんなに大きく成長してくれて…私は……痛いくらいうれしいです」
喜びながらもツインテールは頭からグドンに齧られていた。
「ツインテールさん、それ大丈夫なんですか?」
「あぁ大丈夫、大丈夫、コレ、甘噛みだから…」
甘噛みと本人は言うが…実際確かに流血は無いがとても甘えて齧っている様には見えない構図にアキの内心に再び心配の気持ちが過った。
「ガァッ…グェッグェッ…グボォァッ!!」
甘噛みに続いてグドンは喉の奥から変な声を出しながらツインテールの頭上に無色透明な体液と共にソウルライザーを吐き出した。
「うわぁっ!?グドンちゃん!?」
その体液を頭からツインテールが受け止めてしまい…ツインテールの頭から身体はベタベタになった。
「ギャフンッ!」
そして、吐き出したグドンも元の小さなサイズへと戻ってツインテールの頭へと落ち着いた。
「よっ…よかったですね…ツインテールさん…グドンも…戻ってきてくれて…」
少し引き気味のアキはツインテールと距離を取りつつも精一杯の喜びを伝えた。
「うっ…うん、おかげでグドンちゃんもこうしてまたそろって何よりですぅ…また姉妹のように仲良くしていきますぅ」
少々苦笑いながらも喜びを表すツインテールにベムラーが近づいてグドンを見つめた。
「…やっぱり…ツインテールさん、あなたの頭の上の子…どうやらオスみたいよ」
「ええっ!?オスッ!?」
「グドンって男の子だったの!?」
ベムラーはアキのソウルライザーを使ってグドンが吐き出した体液の染色体をスキャンして見た結果は確かに判定上オスであることが伺えた。
「ツインテールさん、あなたのお尻には怪獣娘として覚醒する前に人の様な形をした大きなシコリがあったでしょ」
「ギョッ!?どっ、どうしてそれを…」
誰にも言っていなかったツインテールの秘密を突然ベムラーが暴露したことでツインテールは赤面してお尻を隠した。
「探偵として依頼人の素性を調べるのも仕事の内です…それで、調べたんですがあなたが生まれた病院のカルテを御調べしたのですが…あなたには本来、双子の弟さんが生まれる予定だったそうです」
「わっ…私に、弟がッ!?」
更にツインテール自身も知らない真実がベムラーの口から告げられた。
「けれど双生児には稀に片方へ栄養が行きすぎて、もう片方が片方に吸収される形で生まれるはずだった片方の名残りだけがハッキリと残ってしまう『畸形嚢腫』と言う症例があるそうです…グドンがあなたのお尻を執拗に噛みつくのには、その子がもともとあなたの一部であり、あなたの片割れでもあった名残りだからです」
ベムラーから聞かされた真実にツインテールは頭に乗ったグドンを抱えてジッと見つめると決して離れる事の無い根深い繋がりがあることを知った事によりツインテールの目から涙が浮かび上がってきた。
「そうだったんだ…ずっと…ずっと…私の中で生き続けたいって思っていたんだね、グドンちゃん…生まれてこさせれなくて…ごめんね」
ツインテールはグドンを強く抱きしめた。それに応えるようにグドンも抱きしめ返すが…今度は締めに来るような強さで無く、本当の抱擁を返してくれるようになった。
ツインテールに取って地底怪獣グドンは天敵だった…しかし、怪獣娘ツインテールと共に誕生したグドンは紛れもなく彼女にとっての掛替えのない家族であることに変わりなかった。
そして、ツインテールはグドンを抱えたままアキとミオに深々と礼をして夕焼けに染まる空の下を歩いて帰って行った。
「ミオさん…ミオさんって本当に探偵さんだったんですね」
アキはミオが見せた持ち前の調査力に脱帽していたが…
「ちょっと、それどういう意味!?ずっと私の事なんだと思っていたワケッ!?」
「う~ん、ピザ屋でバイトする自堕落な自称探偵の…フリーターさん?」
「それかニートだな」
辛辣な評価をしていたアキにさらに被せてユウゴも帰ってきていた。
「二人して酷くないッ!?」
「だったら少しはそれくらいの働きぶりを出せよ…そんなだから経営がうまくいかない貧乏探偵のままになんだろうが」
「あぁ~もう煩いな!今回ばかりは私のおかげで真実に辿り付けたんだから実質私が大活躍でしょ!巡り巡って私が偉いの!総合的に偉いの!少しは褒めてよ!」
ミオはプンプンッと頬を膨らませながら自分を美化しつつも子供染みた態度で自分の事を棚に上げたが…
「褒める間でもねぇよ…あんたが実力くらい、俺が一番よく知ってるよ」
「ぶっ…なっ…なによッ急に…おっ、お姉さんを褒めたって何も出ないわよ!」
「姉かどうかは知らねぇが…少なからず俺にとってあんたはお袋に次いで母親代わりくらいには思ってるよ 一応世話には為ったからな」
突然のユウゴからの思いがけない言葉にミオの顔は夕焼けに染まる赤い空のように同じ色をしていた。
「まっ、まぁ~見ない間に随分とお世辞が言えるようになったじゃない…あっ、あははっ、あははははッ…アダッ!イデッ!!キュゥ~…」
「みっ、ミオさん!?」
足取りおぼつかぬままにミオは混乱して電柱にぶつかったり標識ポールにぶつかったりしながらその場で目を回しながら倒れた。
「何やってんだよ…おい、アキ 反対側持て」
「うっ、うん」
ユウゴとアキは左右から腕をつかんでミオを起き上がらせたが完全に意識を失って気絶していたことが伺えた。
「でも意外だなぁ~…お兄ちゃんにもそんな一面があるんだぁ~」
「うるせぇな…社交辞令だ、社交辞令」
真顔で誤魔化すユウゴの顔を覗き込むアキはクスクスと口元押さえて笑った。
「お兄ちゃんって恋愛感情とかあるの?」
「お前、俺をなんだと思ってんだ…少なからずあるとは思う」
「ホント~?じゃぁミオさんの事はどう思っているのさぁ」
「社会不適合者」
夕焼けから沈む太陽の輝きが消え始めた群青の空が広がる頃にミオの探偵事務所へと歩むのであった。
アンバランス小話
『ピザパ』
依頼に向かう少し前、事務所の待合のテーブルいっぱいに広げたのは持ち帰ったピザと事務所内に設置していた冷蔵庫に入っていたジュース類を氷いっぱいに敷き詰めたコップへ並々に注がれた。
「いや~久しぶりにユウゴ君に会えて私もテンション上がっちゃって~恥ずかしい所を見せちゃったね」
「いっいえ…ピザおいしいです」
アキはミオが持ち帰ったピザを御馳走になりながら2人で微笑みながら共に食事をしていた。
「ありゃ、ユウゴ君は食べないの…ピザ」
「呆れて食欲も湧かんわ」
「お兄ちゃん、今は自分でお店開いて料理とか作っているんですよ」
「まぁ~やっぱ結婚するなら料理も出来て収入も安定した人がいいなぁ~…チラッチラッ」
「竜ヶ森湖に沈んでろ」
あからさまなミオの態度に呆れて頬杖をついたユウゴはピザを食べる二人を見ることさえなく目を閉じてソファーで横になっていた。
「そういえば、ミオさんはお兄ちゃんが怪獣であること御存じだったんですね」
「まぁね…なんやかんやで怪獣のイロハを教えた私だったりするからぁさぁ~」
「誰にも教わっておらんし、貴様から教わる事など無い」
「んもぉ~、照れちゃって~…家族ぐるみでの付き合いじゃないの…そうだ、このデカい子の小さかった頃の写真見る?」
「えっ、あるんですか?ボクの家でも殆どないのに…」
突然の提案にアキはユウゴの知らない一面に興味が湧き、ミオがデスク裏から引き出したアルバムが姿を現した。
「見てもつまらんぞ」
「それを決めるのはボクだよ…どれどれ」
そのアルバムに映っていたのは赤ん坊の頃のユウゴだった。
「うわぁ~結構愛らしかったんだね…どうしたらこんな生き物に育つんだろう」
「うるせぇ」
赤ん坊の時のユウゴと現在のユウゴに差の開いた大きなギャップにアキは驚かされた。
「コレがわたしだよ、よくこの頃は一緒に遊んだなぁ~」
ミオが指差す被写体の少女こそ幼少期のミオだった。
「二人共とっても可愛らしいですね」
「ホントにどうしてこの子があんな風に育っちゃったのかしら?」
変わり過ぎているこの差には二人は首を傾げて疑問視する。
しかし、次のページに捲った写真には…
「うっ…!?」
『幼いミオを頭から嚙付く赤ん坊ユウゴ』『野生のシカを仕留めて血に染まる赤ん坊ユウゴ』『ミオのおやつを力づくで奪った後の赤ん坊ユウゴ』『ミオに逆エビ固めを決める赤ん坊ユウゴ』と既にこの頃から狂暴性が伺えた。
「あの時は正直どっかの星の戦闘民族の腸喰い破って生まれた地球外生物の赤ちゃんかと思ってたなぁ~」
笑い事じゃない笑えない話にアキはドン引きした