会話もそこそこに、緑谷君と話しながら校舎内を進む。時間に余裕があるとは言えない。慣れてない場所なのもあり気持ち急ぎながら教室を目指す。
1年A組。かなりの高倍率をくぐり抜けて辿り着いた、選ばれた40人の内の20人がクラスメイトとなる。そんな中の1人が、僕の隣にいる彼、緑谷出久くんだ。
確かによく見たらしっかりと鍛えられている。気弱そうな態度と対照的に筋肉などはついていて、合格という結果には意外とは思わない。しかしこの超人社会、やはり気になるのは彼の個性だ。直接聞いてみようと思ったその時、緑谷君が立ち止まる。
「あ、着いたみたいだね。怖い人がいなければいいけど…」
どうやら着いたようだ。考え事に夢中で気づかなかった。僕たち2人はバリアフリーの関係なのか異常に大きいドアの前に立ち尽くす。
緊張してるような彼を励ます。
「まぁ学生とはいえヒーロー志望。そこまで素行の悪い人はいないと思うよ?」
僕はそう言ってドアを静かに開ける。
そこで目に入った光景は。
「机に足を掛けるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「あぁ?テメェどこ中だよ?端役が!」
見事に素行の悪い爆破君とメガネをかけた青年が几帳面に注意をしているところだった。
なるほど、彼が居たか…。そういえば緑谷君と爆破君は知り合いだったっけか。怯えていたのも納得だ。
絶望感が見事に表情に出ている緑谷君に聞いてみる。
「あー、あの髪ツンツンの彼って、名前なんて言うの?ほら、机に足かけてる」
「…爆豪勝己。僕はかっちゃんって呼んでる。幼馴染なんだ」
爆破君ーー改め、爆豪君の本名を聞いた僕は、教えてくれた緑谷くんに軽くお礼を言って、爆豪君に近づく。
後ろで緑谷君と誰かが会話してるのが聞こえてそちらの方を見やると“浮かす系女子”と話していた。一応顔見知りだからだろうか。
そのまま歩みを進めて爆豪君の目の前に立つ。メガネの少年は僕が爆豪君に用がある事を汲み取ったのか、緑谷君に話しかけていった。試験で一緒だったのかな。
爆豪君の表情を見るも、あまり感情が読み取れなかった。不機嫌そうではあるが、少し表情が硬いようにも見えた。
僕は切り出す。
「…入試の時、危ない目に合わせてしまったと思う。ごめん」
そう言って軽く頭を下げる。深々と下げられても悪目立ちしそうだし。
実は謝る機会をずっとうかがっていた。試験の時は結果的に彼を利用するために呼び寄せて、結局巻き込むかもしれなかったレベルの攻撃で勝手に解決してしまった。彼はしっかりと躱したようだが彼からしてみればあまり良いことではない。
彼はぶっきらぼうに返す。
「…別に」
こうやって謝られるのに慣れていないのか、拍子抜けするほど簡単に許された。この件で恨まれていたら面倒だし、許してくれるのなら助かるが。
しかし入試のときに見た彼とは態度が全く違うのは、少し不可解だった。メガネくんへの対応の様に素を出してない様に見えるし、それはちょっと不満だ。ただこの空気ではそんな事言えないので、この場を流そうと発言する。
「そっか。それは良かっーー」
「お友達ごっこしたいならよそへ行け。ここはヒーロー科だぞ」
僕が彼に返事をしようとした時、聞き慣れぬ声を耳にする。
声がした教室入り口を振り向くと、そこには寝袋に入って横たわっている小汚い人がいた。いや小汚いな。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
☆
指定された通りの席に座り最初のHRが始まる。しかし座席表を見て気づいたが、何故だかこのクラスには21個の席がある。5×4の席で1つだけあぶれている形だ。ちなみに僕がその1つの席で、前に峰田君、緑谷君と続いている。調べた情報では1クラス20人と聞いていたが、何か理由があるのだろうか。
そんな事を不思議に思いつつ、担任、相澤先生の話を聞く。
「全員、配布された運動着を着てグラウンドに集まれ、今すぐだ」
会って数分でクレイジーな先生という事がわかる。
やはり、雄英は他と一味違うという事か。