赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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『705.2』

 

『個性把握テスト⁉︎』

 

相澤先生の指示によってグラウンドに集められた僕ら。紺を基調とした運動着を身につけ待機していた所、彼が口にしたのは意外なワードだった。

僕は思わず口を開く。

 

「あの、入学式とか、ガイダンスとかはしないんですか?」

 

すると先生は怪訝な顔をして、僕の方に向き直る。気怠げな表情に見えるが、その目には僕に対する嫌悪感を感じ取った。…グラントリノさんの様に警戒されているのだろうか。僕は思わず顔をしかめる。

 

「…ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまたしかり」

 

つまり、相澤先生独自の判断という事だろうか。そしてそれは学校側も問題にしない。入学式に1クラス丸々出ないというのはどうなんだろう。まだ見ぬ校長先生が悲しむ姿を思い浮かべる。

 

相澤先生は続ける。

 

「お前たちも中学の頃からやってるだろ?個性使用禁止の体力テストを。…国はいまだ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。ま…文部科学省の怠慢だな」

 

唐突に文部科学省への悪口を言う相澤先生。ただその意見はわからなくもない。中学の頃に行われた個性把握テストでは、もどかしい思いをした生徒は少なからずいただろう。

 

「実技入試成績のトップは爆豪だったな。中学のときソフトボール投げ何メートルだった?」

 

へぇ。爆豪君が実技入試トップだったのか。確かオールマイトは『実技試験では合格、3位だった』と言っていた。2位は一体誰なんだろうか。

 

相澤先生に聞かれた爆豪君はつまらなそうに答える。

 

「67m」

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ、思い切りな。道具はそこにある。はよ」

 

急かす事も忘れず爆豪君に見本を促す。指名された爆豪君はすぐさま準備を終え、白円の中で意識を集中させ、大きく振りかぶる。

 

「死ねぇええぇぇ!!」

 

(死ね……)

 

不謹慎な掛け声と共に投げ出されたボールは爆破によって起きた爆風に乗って遥か彼方へと飛ばされる。67mなんて余裕で超えた、大記録だ。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

相澤先生は手に持っていた記録機の画面を僕らに見せる。恐らくボールと繋がっているのだろう。僕らが目にした数値は『705.2』

 

「何これ面白そう!」

「個性思いっきり使えんだ。さすがヒーロー科!」

 

騒ぎ出す1年A組の面々。そんな姿を見て相澤先生は薄く笑う。

 

「面白そう…か。ヒーローになるための3年間そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

その笑みと雰囲気から僕らは嫌な予感を感じとる。笑みを保ったまま先生は続ける。

 

「よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」

 

先生は恐らく前々から決めていたのだろう事を白々しく発表する。すると先ほどの笑顔溢れる騒ぎとは違う意味で騒ぎ出すA組。僕自身も冷や汗が止まらない。僕にとってもこの試験は中々に厄介だ。

 

周りを見ると他より一層顔を青ざめている緑谷君が目に入る。彼もこのルールでは分が悪いのだろうか。そういえばまだ彼の個性は聞いていない。

 

「俺自身としてもこれからお前らを教えていく立場として、今のお前らがどれだけ個性を扱えるか、伸び代はどれくらいあるのかはしっておきたい。…手加減などせずに、本気で取り組んでもらいたいからこその判断だ」

 

相澤先生の方を見ると丁度僕と目が合う。今の発言はまるで僕が『能力』をまだ明かしていない事を知っているようだった。もしくは“底が知れない生徒”などの評価をもらっているのかもしれない。

 

相澤先生は僕から目を逸らし僕ら全体を見る。

 

「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

男性にしては長い黒髪をかきあげながら、先生は続ける。

 

「これから3年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。更に向こうへ…PlusUltraさ」

 

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