50m走、握力測定、立ち幅跳び、反復横跳び、ボール投げ、持久走、上体起こし、長座体前屈。
この8つの種目でいくつか大きな結果を残さないといけない。まず考え付いたのはこの発想だ。しかし見事に身体増強の『能力』である『目を醒ます』が大活躍のラインナップだ。やはりヒーローになる上で、『醒ます』引いては『冴える』のコントロールは必要な事を再認識させられる。
だがそのヒーローになる一歩目で除籍になってしまったら元も子もない。とにかくこの試練は乗り越える、必ず。
〈50m走〉
50m走の結果測定にはゴールラインに配置されている三脚の様な機械が使われている。ラインを越えたら勝手にタイムを教えてくれる優れものだ。近づいてみると超小型カメラが付けられているのがわかり、かなりハイテクな様だ。やはり雄英、格が違う。
メガネ君ーーーー飯田天哉くんの個性は『エンジン』で、両足についているエンジンで超スピードを生み出す。この種目にうってつけの個性で記録は3.04秒、流石だ。
飯田君と一緒に走った蛙吹梅雨さん。個性は『蛙』で、四足歩行で体をいっぱいに伸ばす走り方だった。記録は5.58秒。
浮かす系女子である麗日お茶子さん。個性は『
麗日さんと一緒に走った尾白猿夫くん。彼の個性は『尻尾』らしく地味だがバネとして使っていた。記録は5秒49。
尾白君の結果を見届けた僕は先生にトイレにいく旨を伝えてこの場から離れる。赤く輝く目を隠しながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いきなり僕に『ワン・フォー・オール』を扱えるようになる筈もなく、50m走は7秒02というパッとしない結果に終わってしまった。次で挽回しよう、と自分を鼓舞するも不安は拭えない。そんな中僕のオタク気質な性格がクラスメイトの個性を気にさせる。
次に走るのは雄英入試の時に出会って、今も仲良くしてくれてる九ノ瀬遥くんだ。一緒に走るのは幼馴染のかっちゃん。このテストは順番などは生徒自身で決める形式で、九ノ瀬君がかっちゃんを誘ったようだった。
そういえば、九ノ瀬君はさっき更衣室で「爆豪君が僕にだけ態度が違うように思うんだけど、何かしちゃったかな…」と困った様に笑っていた。朝も今日も教室で何か話してたし、どうやら九ノ瀬君はかっちゃんと仲良くなりたいようだった。それならこの組み合わせも納得だ。
九ノ瀬君の個性はまだ知らない。相澤先生の話を聞いていた時、僕と同じように焦っている印象を受けたから、このテストではあまり有利ではないのかもしれない。
九ノ瀬君とかっちゃんがスタートラインで準備をする。九ノ瀬君がかっちゃんに何か言いたげな表情をしていたが、彼は結局何も言わなかった。
無機質なスタートの合図が鳴る。
瞬間。かっちゃんは個性『爆破』で手のひらからジェットを吹き出すようにスピードを上げていく。その際、爆破による影響で黒煙が2人を覆う。すぐさまかっちゃんはその中から出てきてゴールを決め、記録は4秒13。悔しいけど、やっぱり凄い。
ところが、黒煙が晴れて全体を見渡せるようになっても、九ノ瀬君の姿は見えなかった。
僕ら面々がざわつきながら彼の姿を探す中、かっちゃんゴールした
『2秒32』
「………は?」
すぐさまゴールの方を見やると、息一つきれてない九ノ瀬君の姿を見つける。いや、突然そこに現れた。僕の視点からだと走ってる姿は全く見えなかったし、そもそもタイムがおかしい。なんでかっちゃんより早いんだ。なんとなく相澤先生を見ると、眉根を寄せて不機嫌そうな顔を九ノ瀬君に向けていた。
九ノ瀬君はそんな相澤先生の視線を真っ直ぐに受け止め、まるで自慢するかのように爽やかに笑う。
何故か僕にはそんな彼の笑顔が貼り付けた様な物に見えてしまって、不気味だと思ってしまった。