赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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脳筋

校門前で話し続けるのも邪魔なので、そろそろ動く事にする。

 

「それじゃ、行こうか」

 

そう言って2人で並んで歩き出す。

ふと気になったので緑谷君に聞いてみた。

 

「そういえばさっき浮いてなかった?あの茶髪の女の子の個性なのかな?それとも君の?」

 

すると緑谷君は下を向いて饒舌に話し出した。かなり早口だ。

 

「いや、僕の個性じゃないよ。あの人が僕に触った瞬間浮いてたから、多分触れたものを浮かす個性だね。浮かした後も操作できるなら遠距離攻撃もできそうだし、自身を浮かせられたら空中の移動でもできるからかなり強い個性だ…でも物を浮かす個性でも上限はやっぱりあるかな…人を浮かせたままにして行動不能にするのもできるだろうし…」

 

あ、ヤバい人だ、願わくば演習会場が別でありますように。

お互い頑張ろう、別の会場で。ブツブツという音が聞こえて来そうな彼の呟きを聞き流し、実技試験の説明会場へ向かう。

 

 

 

 

願いが通じたのか試験会場は緑谷君と別になった。彼はB会場で僕はA会場だった。

実技試験のルール説明はプロヒーローのプレゼントマイクによるものだった。

簡単に言うと『ポイント効率良くロボットを倒す』というものだった。

 

正直に言っちゃうとこのルールだと僕の能力じゃかなり厳しい。対人戦ならともかく、機械相手だと『能力』がかなり制限されてしまうのだ。

前にも言ったが僕の能力は複数ある。だからある程度の苦手な場面はカバーできるとは思っていたが…。

この試験ルールで1番役に立つのは『身体増強』などの物理的に強い力だろう。ただロボを破壊し続ければ良いだけだし、僕もそれが理想だ。それに近い『能力』も一応僕は持っている。しかし僕には現時点では扱いきれないのだ。

 

『能力』が強すぎて身体がもたない、というわけではない。そもそも小さい頃に発現したのならそれに見合った体になるだろう。個性を発現したての赤子じゃあるまいし。

 

…僕の『能力』の問題は精神的なものだ。僕が『身体増強』させると、僕はその身体を動かすことが出来ない。

 

とにかく筋力にはあまり頼れない。一世一代の入試で博打をする気もない。だから今使える『能力』でこの試験を乗り切るしかない。

 

僕は頭を切り替え、作戦を模索しながらA会場に向かった。

 

 

 

 

『スターーーーーーートゥ!!!』

 

「……え」

 

唐突な開始の合図。しまった。結局何も思いつかなかった。

とにかく走り回って周りの様子を伺いながら考える事にする、何かのヒントが欲しい。

 

いきなりの開始だったので多くの人が1番に飛び出した人に勢いでついて行っていた。とりあえずその人並みに紛れて僕も追いかける。

 

前方にいるのは手のひらから爆破を繰り返し上空を勢いよく移動しているツンツン頭の少年だった。確か緑谷くんの友人だったと記憶している。

 

彼は素人から見てもわかるほどの桁外れな才能を持っていた。ロボットを余すことなく壊していく。しかもスムーズに。その姿は圧倒的だった。そんなライバルの存在は僕を奮い立たせる。

 

ーーーー負けてられないな。

 

とにかく0ptの現状を打破しないとね。

 

 

 

勢いで飛び出した人も冷静さを取り戻しそれぞれに散っていく。僕はそれらを改めて観察する。

 

真っ黒な鳥みたいな人は爆破君を避けるように動き、ぶどうの実を頭にくっつけている少年も困っている様子で動き出した。

 

そんな周りの様子を見ても案の定何も思いつかなかった。

なんだこのルールは。どう考えても不利すぎる。愚痴なんて言いたくないがどう考えても個性によって有利不利が出てくる。プロヒーローってのは脳筋であればいいのかと疑ってしまう。

 

 

とにかくパワーが足りてないし僕だけじゃ補いきれない。

それなら協力要請でも何でもするべきだろう。ネットゲームでもあるあるだ。

だから次は、協力する相手に絞って周囲を見渡す。

 

黒い鳥の様な彼は黒い影のような生き物を出して的確にロボットを破壊していた。なかなか興味深い個性だが彼は1人で何とかなっているから僕の力なんて必要ないだろう。

 

ぶどうを投げ続けている少年は泣いていた。ぶどう君が投げたぶどうはその場にくっついてぶどうに触れた瞬間ロボはそこから動けないようだった。ぶどうじゃないなアレ。当たり前だけど。ただ彼には僕と同じように攻撃力がないらしい。親近感がわく。僕も泣きたい。

 

身体中を金属化してロボットを殴り壊している少年もいた。機動力には欠いているが僕がそれをカバーできるとは思わないし、カバーできたとしても僕にポイントが入らないだろう。トドメをさすのは彼なのだから。

 

ピンク色の髪をしたエイリアンガールもいた。彼女は酸を飛ばしてロボを壊しているようだが、遠距離攻撃だと躱しているロボも出てくる。周辺に酸を撒き散らしているようだからあまり近づきたくない。

危ないし。まぁ彼女もその辺は気をつけているようだが。

 

5秒ほど考えた末に、協力する相手を決め、僕は歩き出した。

その『目』を真っ赤に染めながら。

 

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