赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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脳無対オールマイトは原作通りなので全カット。南無。
30分程前に前話投稿してます。お気をつけて。




「ーーーヴィランよ…!こんな言葉をーー知っているか!」

 

上空から打ち付けられた脳無はそのダメージを吸収できないまま、無防備な体勢になる。

 

“ショック吸収”の速度を上回る連打撃。防御の姿勢すら取れず、大きな拳が迫ってくるのをただ呆然と見ることしかできない脳無。

 

「更に向こうへ…!ーーーPlus…Ultra‼︎‼︎」

 

振り抜かれた拳は脳無を遥か上空へ吹き飛ばし、ドーム型の天井を破壊し見えなくなっていく。

 

「…コミックかよ…!究極の脳筋だ…」

「デタラメな力だ…再生も吸収も無いことにしちまった…!」

 

ワタシの耳に、そんな生徒達の声が聞こえてくる。

 

『…確かに速いけど、目で追えないって訳じゃない。ーーー本当なのかな?弱ってるって話』

 

主犯らしき少年が煽る様に告げたその言葉に、ワタシは皮肉の意味を込めて返す。

 

「やはり衰えた…。全盛期なら、5発も撃てば充分だったろうに…。ーー300発以上も撃ってしまったよ」

 

ーーーそして、時間切れだ。

 

「…チートが……!」

 

「…ワタシが来る前から脳無は少し弱っていたからね!まだワタシは全然やれるぞ!」

 

ハッタリだ。弱っていたのは確かだが、今のワタシが時間切れギリギリである事は間違いない。

 

「ーーーークソっ!脳無さえいれば…!」

 

悩め。迷え。時間を稼げ。()()()が来るまで!

 

「…うん、そーだ。…目の前にラスボスがいるんだもの」

 

…その願いも儚く打ち砕かれ、ヴィラン2人はこちらに向かって来る。来るんかい…!

 

瞬間。飛び出して来た緑谷少年。雄英指定ジャージの隙間から見える足は、どす黒く痛々しい色に変色していた。

 

ーーーー本当に…!君ってやつは…!

 

それに対応した死柄木の手のひらが緑谷少年の顔を掴もうとする。その一瞬前。

 

手のひらは銃弾によって撃ち抜かれた。スネイプ君の個性、“ホーミング”だ。

遠距離にいる相手の位置を一瞬で把握し、急所を撃ち抜くことができる個性は、的確に死柄木の手を撃ち抜いた。

 

「ーーーチッ!…次は殺すぞ…オールマイト…!」

 

そんな言葉を吐き捨てながら、ワープゲートに飲み込まれていった死柄木。

 

ーーーー終わったか。

 

周囲を見ると数々の雄英教師ーープロヒーローがこの場を制圧していた。

 

それを確認したワタシは地に伏している緑谷少年を見る。

 

「何も…出来なかった…っ!」

 

と、悔しがっている彼に、慰めと感謝の言葉をかけようとしたが、ワタシはそれを中断する。

 

ーーーいつのまにか背後に立っていた九ノ瀬少年に、ワタシは前を向いたまま話しかけた。

 

「キミかい?脳無を抑え時間稼ぎしたのは」

 

 

 

 

ワタシの姿はもはや半分本当の姿(トゥルーフォーム)に変わってしまっている。九ノ瀬少年からの角度では見えないだろうが、後ろは向けない。

 

九ノ瀬少年は普段と変わらぬ様子で口を開く。

 

「はい。『目を合わせる』なら時間は稼げますし」

 

「ーーー誤魔化さなくてもいいよ、『冴える』君」

 

一瞬。背中越しでもわかるくらい雰囲気が変わる。悪の感情だ。しかしいつものトーンは崩さなかった。怖いくらいに。

 

ワタシは言葉を続ける。

 

「入って1番にこの広場を見た時に気づいたよ。キミの“目”を見てね」

 

ーーーーーー『暴力は暴力しか生まないのだと!お前を殺す事で、世に知らしめるのさ!』

 

死柄木の一見理想論かと錯覚してしまう、自己正当化の言い訳に対して、ワタシはこう返した。

 

ーーーーーー『…無茶苦茶だな。そういう思想犯の“目”は静かに燃ゆるもの…!自分が楽しみたいだけだろ…!』

 

USJに入って視界に入った九ノ瀬少年の姿。白髪のウィッグが取れて黒髪になった彼の目からは、そんな“思想犯”の目に見えた。

 

「ーーーーだから、すぐわかったよ。キミは話に聞いていた通りの、『冴える』ーーそうだね?」

 

九ノ瀬少年ーーーいや、『冴える』はため息をついて答える。

 

「ヤレやれ…侮っていたよ。No.1ヒーロー。見た目は変わってないのは確かだが、“目”を見るだけで区別がつくか…。ヒーロー歴が長いだけあるな」

 

「…意外とすんなり認めるんだな?」

 

「別に。オレの前科でもあれば捕らえられるだろうが、オレは罪を犯していない。ムしろ脳無と戦ったんダ。褒められるべき功績だろう?」

 

そう。ワタシは『冴える』がヴィランという確証を持っていない。口頭で聞いただけの情報だし、現に脳無と戦ってくれた。それは紛れもなくヒーローだろう。

 

だから、今捕らえる理由はない。

 

「…でも、ワタシは生徒を信じてるよ。九ノ瀬少年をね」

 

「……まぁ、そうナンだろーな。今もスナイプがオレをこっそりと撃ち抜ける準備中だ」

 

聞いていた通り、中々厄介な蛇らしい。スナイプ君の“ホーミング”すらも察知している。つまりそれは、教師陣は“九ノ瀬少年を(ヴィラン)として扱っている”という事。

 

「…にシても、“ショック吸収”速度を上回るっていう脳筋発想は無かったな。やっぱり、コの世界で1番厄介なのはアンタだ」

 

「ーーかといって、今ワタシを殺す事はしないんだな」

 

ギリギリマッスルフォームの状態とは言え、今の状況なら『冴える』がワタシを殺す事は可能だ。

 

会議室で貰ったメモに書いてあった、『目が冴える蛇』の説明を思い出す。

 

“非常に狡猾な蛇で、表立って殺人などの行動はしないと思われる。その後のリスクが大きいので”

 

今ワタシを殺せば『冴える』はヴィランとして扱われ、警察に追われる身になる。だから今は行動しないのだろう。

 

けど、彼の口から出たのは違う理由だった。まるでこの茶番に飽きたかのように、つまらなさそうに告げる。

 

「ーー別に?アンタの時代はもう終わるかラな。そのまマ朽ちていけよ?“先生”?…次は、オレだ」

 

そう言って場が凍りついた瞬間。コンクリートの壁がワタシを囲う。これでワタシの姿は誰からも見えなくなった。

 

 

ーーありがとう。セメントス君。もう限界だったよ。

 

ワタシはマッスルフォームを解き、ガリガリの身体になり、コンクリートの壁に寄りかかる。

 

「どうしたものか…」

 

会議室で話した九ノ瀬少年の顔を思い出す。

 

それは、泣きそうで、脆い、呪われているような悲痛の表情だった。

そんな顔で、「僕をヴィランとして扱ってほしい」と言ったのだ。彼を『冴える』の呪いから救い出したかった。

ただ、今のワタシは『冴える』に手を出せない。

 

そして、『冴える』の顔を思い出す。

 

長年やってきたヒーロー活動の中で、これまで見てきた思想犯とは格が違う。そんな目だった。

 

そして、あの赤い目が本格的に行動を起こす時には、ワタシは彼の言う通り朽ちているのだろう。

 

“次”がいつになるかどうかはわからない。

 

けど、“次”の彼には、まだ教える事が沢山ある。オール・フォー・ワンの事も、先代の事も。それら全てを教えて、悪と向き合う頃。

 

彼は九ノ瀬少年と戦う事になるだろう。

 

ワタシじゃ九ノ瀬少年を救えなかった。

 

“次”は君だ。緑谷少年。

 

そんな生徒2人の成長(たたかい)を、ワタシは側で見ていたい。2人の“先生”として。

 

だから、そう簡単に朽ちる訳にはいかないのだ。

 

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