赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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雄英体育祭編
フレンド申請


ヴィラン連合によるUSJ襲撃事件の翌日。

 

メディアへの対応や負傷者への治療なども兼ねて学校は臨時休校となった。

 

『ーー警察の調べによると犯人グループは自らをヴィラン連合と名乗り、今年春から雄英高教師に就任したオールマイトの殺害を計画していたことが新たにわかりました』

 

朝起きて家のソファに座って、テレビを見ていると、雄英襲撃の報道が流れていた。

 

『警察は72名のヴィランを逮捕しましたが主犯格の行方は依然としてわかっていません』

 

72名。1クラスと数人のプロヒーロー相手になら充分な数だが、質が悪かった。幸いな事にチンピラ同然だった事で、僕らには大きなダメージは残ってない。

 

僕はテレビの電源を切って、自分の部屋に戻る。

ベッドに寝転んで、目を瞑るが、眠くはならない。

 

「…はぁ」

 

切島君に聞いた話だとあの脳無を倒したのはオールマイトらしい。切島君達が増援に来た時には僕は後ろでただ見ていたと聞いている。

 

『醒ます』では脳無を倒せなかったのか、意図的に倒さなかったのかは判断つかないが、やはり『冴える』は何か目的を持って行動している。

 

ーーー会いたかったぜ、死柄木弔。

 

確か、そう言っていた。つまり、死柄木に会う事が『冴える』にとってメリット、という訳だろうか。

 

だめだ、考えても無駄だ。ヴィランの思考をトレースするのは僕じゃ無理だ。

 

それに、僕のこの思考すらも『冴える』は読み取れるのかもしれないし、考えたところで無駄というものだ。

 

「…よっし!」

 

暗い気持ちを切り替える様に声を出して、机に向き直る。

 

机の上に置いてあるパソコンを起動し、久しぶりだが、お馴染みのゲーム画面へと移動する。

 

『ヘッドフォンアクター』

 

 

 

 

「…うわ、危な」

 

スコアを表す画面を見て、思わず声を漏らす。

 

コノハ 34pt

 

M,S 33pt

 

僅差で勝ったが、運の要素も多少はあったと思う。前回と時間が空いて久しぶりのプレイとなったけど、それでもこの結果には驚きを隠せない。

 

このM,Sさんの上達速度は凄まじいものだ。日頃からパソコンに触れている事は間違いないだろう。生粋のゲーマーかIT関係の職業とか、その辺だろうか。

 

『覚ます』で電子化すれば更に圧倒的なスコアを叩き出す事は出来るが、それはもちろんフェアじゃない。

 

勝負の後はお互いに労い、当たり障りの無いチャットでM,Sさんはルームから抜け出した。忙しいのだろうか。

 

僕は少し迷った末、“フレンド申請”という文字をクリックした。

 

 

 

 

『クソ学校っぽいの来たぁああ‼︎‼︎』

 

ゲーム三昧の一日が終わり、いつも通り雄英に登校し、朝のHR。

 

包帯でぐるぐる巻きの相澤先生から告げられた言葉に、僕らA組の面々は騒ぎ出す。

そんなやかましい環境にかき消されるのは僕の呟き。

 

「雄英体育祭…かぁ」

 

まぁ心踊る行事ではあるけど、こうなると問題は…。

 

尾白君が僕の心中を代弁するように尋ねる。

 

「ヴィランに侵入されたばっかなのに体育祭なんかやって大丈夫なんですか?」

 

世間体から鑑みてもここで開催するのはあまり良くないんじゃないだろうか。普通の高校なら中止にして親御さんを安心させる対応かと思う。

 

ただ、雄英は普通の高校ではない。

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えらしい。警備も例年の5倍に強化するそうだ」

 

なるほど。確かにそういう考え方もあるか。

 

「ウチの体育祭はプロヒーローへ自分をアピールする絶好の機会だ。

年に1回、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るなよ」

 

相澤先生はそう言って、朝のHRを締めくくった。

 

 

 

 

そして昼休み。

 

雄英体育祭の話題でもちきりの教室から出て、食堂へ向かう。

 

すると赤と白の特徴的な髪色の背中を見つけた。方向的に食堂へ向かう事を察し、笑顔をつくって声をかける。

 

「1日ぶりだね、轟君。一緒に食堂へ行ってもいいかな?」

 

轟君はこちらを見ると、少し目を見開く。

 

「…あぁ、別に」

 

…?なんだか冷たい反応だ。いや、入学当初から軽く会話して、暖かい反応が返ってきた事は無いけど。

 

はて、彼に何かしただろうか。僕の顔に何かついてるって事はありえないだろうし。

 

そんな疑問を抱えていると、轟君から話しかけてくれた。珍しい。

 

「…お前、個性を色々持ってるんだってな」

 

「うん。…それがどうかした?」

 

まだクラスメイトに全てを明かした訳じゃないけど、ハイブリッド型では説明できない程の個性持ち、ってのは伝わってるみたいだ。

 

轟君は警戒した様に口を開く。

 

「…それ、再生もあんのか?」

 

「うん、あるよ」

 

これに関しては特に嘘をつく理由もない。

 

『目を醒ます』で身体を造り直す時の話だろう。まぁ再生と言って構わない。

 

いつも無表情の轟君の顔が強張る。これまた珍しい。

雄英体育祭のライバルとして認めてくれた、みたいな感じかな。

 

…あぁ、そうか。轟君はその場にいなかったとはいえ、僕のコスチュームの有り様から察したのだろう。

 

僕のコスチュームの腹と背中には太い腕程の穴が空いていた。それはつまり、腹に風穴を空けられても再生で元どおりになれる事を意味している。“再生”については賢いクラスメイトなら気づいてるかもしれないな。

 

まぁ、ちょっとグロいし強すぎるよね。轟君にとっては。

 

本当はこの“再生”も僕は満足に扱えていないのだが、わざわざ言う必要は無い。弱点を教える様なものだ。

 

お互いに警戒するという、変な空気が流れてしまい、僕は会話の種を探す。

すると、麗日さんと飯田君の会話が耳に届く。

 

「ーーデク君なんだろうね?オールマイトに呼ばれて」

 

「USJの事件でオールマイトがヴィランに襲われた際、1人飛び出したと聞いたぞ。その件じゃないか?…2人の超絶パワーは似ているし、オールマイトに気に入られてるのかもな。流石だ」

 

「うんうん!」

 

つまり、今は緑谷君とオールマイトが一緒にいると言う事か。

 

入学から観察しても、2人の仲が良いのはすぐにわかった。飯田君の言う通り、気に入られているのだろう。

 

「………」

 

ふと隣の轟君を見ると、飯田君達の方へ目を向けて、考え込んでいるようだった。

 

その目からは僅かな憎悪が読み取れ、僕は1人首を傾げた。

 

ちなみにお揃いにして食べた蕎麦はとても美味しかった。

 

 

 

 

轟君と一緒にそばを食べた昼休みも終わり、今日の全ての授業も終わった。

 

帰りのHRも合理的に短く済まされ、僕らは放課後を迎えた。

 

特に教室に居残る理由も無いし、試してみたい事もあったので、さっさと帰り支度を終え、教室から出ようとする。その時、相澤先生から声をかけられた。

 

「おい、九ノ瀬」

 

僕は振り向いて、言葉の続きを待つ。

 

「…体育祭の種目は探るなよ」

 

「げ」

 

思わず声を漏らした。恐らく相澤先生は『覚ます』のハッキングで体育祭の内容について調べる事を禁止してきたのだ。

 

今ちょうど考えていた事なので顔をしかめていると、ため息をつきながら相澤先生は口を開く。

 

「…プロになるには臨機応変な対応力も必要な要素だ。過去のデータで予想するのはいいが、そこまでされると平等性に欠くだろ」

 

ごもっともな話だ。雄英程の情報レベルなら『覚ます』で調べるのも一苦労だし、苦労が減ったと考えよう。それじゃ、今日は何しようかな。

 

相澤先生の話も終わったようなので、僕は教室のドアを開け、帰ろうと足を踏み出そうとする。その足はすぐに止まった。

 

「…なにこれ」

 

そこにあったのは多くの人だかり。ほとんどの人が初対面で、A組の教室内を見ようと試みている。ザワザワとうるさい。

 

「ななな、何事だぁ⁉︎」

「出れねぇじゃん、何しにきたんだよ⁉︎」

 

後ろを振り向くと麗日さんと峰田君が驚愕の表情を浮かべていた。さらに後ろには爆豪君がおり、気にもとめず足を進める。

 

「ーー敵情視察だろザコ。そんなことしたって意味ねぇから。どけモブ共」

 

うん、とりあえず知らない人をモブって言うのやめようか。

 

そんな爆豪君に返すのは紫色の髪をした目つきの悪い少年。無気力系男子、という風を装っているがその目には何か力がこもっている。

 

「噂のA組どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだよなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

爆豪君の言い方が100悪いとはいえ、少しトゲのある言葉を返す少年。

言葉を遮るようで悪いが、少し言い返す。

 

「…そうやって一括りにされるのは心外かな。敵情視察するならもっと詳しく見てほしいね」

 

爆豪君のような荒い人ばかりじゃないし。

 

笑顔で言い返した僕を見て、不機嫌そうな顔になる少年。

 

敵情視察しても無駄だよ、という風に受け取られたかもしれないな…。

 

「余裕だねぇ…。敵情視察?少なくとも俺はいくらヒーロー科とはいえ調子に乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

 

それは楽しみだ、と返したつもりだが、彼の後ろからする大きな声にかき消された。よく見ると入試の時の金属君だった。確かB組だったっけな。

 

「隣のB組のモンだけどよぉ!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ったんだが、エラく調子づいちゃってんなオイ!」

 

この大きな声を皮切りに、この場はちょっとした騒ぎになる。切島君達も爆豪君を責めだす。

 

「おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねぇか!」

「上にあがりゃ関係ねぇ」

 

「くっ…シンプルで男らしいじゃねぇか」

「いやいや騙されんな無駄に敵を増やしただけだぞ」

 

「はぁ……」

 

だめだこりゃ。

 

収集がつかない事を察した僕は『隠す』を使いながらこの場をこっそりと抜け出した。

 

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