赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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先程、4話と5話をまとめたので、話数にズレが出ているかと思われます。ご了承ください。


幕開け

緊張と期待の日々はあっという間に過ぎていき、僕らはその日を迎えた。

 

ーーー雄英高校体育祭。

現役プロヒーローもスカウト目的で観戦に来るため、ここで活躍した生徒・注目を集めた生徒は今後の進路で有利となるため、業界への個性アピールには最適の行事。

 

主役はやはりヒーロー科で、ここ、 1年A組控え室でもピリピリした空気が流れている。

 

今日はクラスメイトがライバルとなるのだから、当然といえば当然だが、少し緊張しすぎの様な気もする所だ。

 

「みんな準備は出来てるか!?もうじき入場だ!」

 

休める為に瞑っていた“目”を開けると、学級委員長の飯田君が僕らに指示を送っていた。そんな彼の動きも緊張からかカクカクしている。いや、これは関係ないか。

 

「緑谷」

「轟くん…どうしたの?」

 

そんな飯田君を横目に、轟君は緑谷君に話しかけていた。

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。ーーーーけどお前、オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ」

 

「…おお~クラス最強が宣戦布告?」

「おいおい急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって」

「…仲良しごっこじゃねぇんだ。何でもいいだろ」

 

そんな轟君の言葉に、緑谷君は困惑する。傍観していた上鳴君は重い空気を吹き飛ばす様に茶化し、切島君は喧嘩腰の轟君を止めている。

 

そんな中、緑谷君は戸惑いながら、顔を俯かせながら口を開く。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかはわかんないけど…。そりゃ君の方が上だよ。ーーーというか、大半の人に敵わないと思う」

 

これまで傍観を決め込んできた僕だが、思わず口を出してしまった。

 

「いやいや、緑谷君もそう悲観しなくてもーーー」

「でも!」

 

僕の言葉を遮る様に、言葉を重ねる緑谷君。その目に迷いなんて微塵も無くて、不思議とボール投げの時の様に、かっこいいと思わせる。

 

「みんな…本気でトップを狙ってるんだ。最高のヒーローに。遅れをとるわけにはいかないんだ」

 

緑谷君は一呼吸置き、俯いていた顔を上げ轟君を真っ直ぐに見据える。

 

「ーーー僕も本気で獲りに行く」

 

それを聞き届けた僕は、爆豪君に目を向ける。

 

「………」

 

轟君から“宣戦布告”されなかった事に苛立っていると思っていたが、予想に反して静かに目を瞑って意識を集中させていた。いつもの荒さは無く、真剣な様子なのは誰もがわかった。

 

轟君や緑谷君に興味が無いのか、2人より倒したい相手が他にいるのか。まぁ、後者な気がする。

 

『ーーーこっからだ!俺はこっから!俺はここで1番になってやる!』

 

僕は期せずして聞いてしまった彼の言葉を思い出す。

 

ーーーー()()で行くよ、爆豪君。

 

 

 

『刮目しろオーディエンス!群がれマスメディア!1年ステージ生徒の入場だ!ーーーーつっても、やっぱ目当てはこいつらダロ⁉︎』

 

『敵の襲撃を受けたのにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた、奇跡の新星!』

 

『ーーーヒーロー科、 1年A組ダロォ⁉︎』

 

そんなプレゼントマイクの解説と共に入場した僕らを包んだのは、怒号の様な大歓声だった。

 

会場を見渡し歩きながらも、僕は思わず呟いた。

 

「…うわ、人が凄いな」

 

「まぁ話題もってるからねー、ウチら」

 

耳郎さんの言う通り、僕らはUSJ襲撃事件の生還者として取り上げられている。この事件関係で見に来る、って人も多い。下手すると3年生より注目されているかもな。

 

予想しているよりも多い人数で少し気圧されてしまった。これ程の人数の前で『目を奪う』を使ったら大騒ぎになりそうだな。

 

『奪う』に関しては調整をしっかりと気をつけないと。最近は“必殺技”の為に多用していたから、調整は今まで以上にうまくできると思うけど。

 

『話題性では遅れを取るが、こっちも実力派揃いだァ!ヒーロー科、 1年B組!…続いて、普通科、C、Dーーーーー』

 

A組(僕ら)に続いて、他クラスの紹介も当然される。

 

B組に関しては今日までの準備期間でそれなりに調べてきている。といっても、“必殺技”の特訓やちょっとした調べ事も並行していたので、名前と個性程度だが。もちろんプライバシーに関する事は一切触れていない。

 

B組担任、ブラッドヒーロー“ブラドキング”は、その厳つい風貌に反して、生徒について丁寧にまとめていた。…職員室のパソコンに。

 

「いや、種目に関しては調べてないからセーフ…うん、セーフ」

 

「…何ブツブツ言ってんの。緑谷みたいになってるけど」

 

隣にいた耳郎さんから冷ややかな視線を受け我に帰った僕は、耳郎さんに曖昧な微笑みを返し、ステージの上を見る。

 

ステージの上には爆豪君が立っていて。

 

「…せんせー。俺が一位になる」

 

ちょっとした騒ぎになった。

 

うん、絶対やると思った。

 

 

 

 

そんな暴動から数分後。18禁ヒーロー“ミッドナイト”からの第1種目の発表が行われた。

 

「ーーーー気になる第1種目はこちら!“障害物競走”よ!」

 

こうやって、体育祭は幕を開けた。

 

前も言ったけど、前世の僕は病弱だった。そのせいで運動会などの行事はほとんど参加してこなかった。

 

だからだろうか。こんなささやかな“幕開け”というのが、僕にはとても嬉しく思える。

 

辛い事もまだまだあるけど、やっぱりこの世界に来て良かった。

 

心から、そう思えた。

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