赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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話数ズレてしまってるので前話を見てない方もいるかと思われます。申し訳ありません。


情報戦

「…1年ステージ。第1種目もようやく終わりね?ーーそれじゃあ結果をご覧なさい!」

 

モニターに上から表示される名前の数々。1位から順に表示されていくそれは、42位で終わっていた。

 

1位の横にあるのは緑谷出久の名前。その下には轟焦凍。更に下には爆豪勝己。

 

…。

 

肝心の僕の名前はそこから遠い。むしろ下から数えた方が断然早い。そして、見つける。

 

39位の横にある名前、九ノ瀬遥。まぎれもない、僕の名だ。

 

「あれー!私と同じくらいだね九ノ瀬君!」

 

隣を見ると A組の透明ガール、葉隠透さんが話しかけて来た。僕は困惑した様子で返す。

 

「えっと…そんなに意外?」

「うん!意外と順位低いね!」

 

買い被りすぎだよ、と笑って返すも、僕の心は少しだけ傷ついていた。

 

葉隠透の名前は僕の真上、つまり、38位という訳だ。

 

「…まぁ、そりゃそうか」

 

なぜなら、この“障害物競走”僕は『隠す』を常時発動して走り抜けただけなのだから。個性“透明”の彼女と順位があまり変わらないのは納得しかない。

 

ーーーーそしてこれは、僕の狙い通りの結果だ。

 

会話もそこそこに、葉隠さんと別れた僕は、ミッドナイトの立つステージ前へ進み出す。

 

その時、肩を掴まれた。僕は振り向いてこの手の主を確認する。

 

「やぁ☆」

 

「…青山君」

 

お腹に手を置き、プルプルと震えている青山君がそこにいた。トイレの場所でも知りたいのだろうか。

 

「どうしたの?」

 

「監視カメラの無い最後のトンネル。そこに、気絶している人がいたね☆」

 

「…あぁ、そういえばいたーーーー」

 

「キミでしょ?倒したのは☆」

 

…へぇ。僕は順位が表示されているモニターを見る。青山優雅は42位。予選通過者の中では最下位の結果だ。

 

まぁ、()()()()()()()()()か、そりゃあ。

 

「…キミがこんなに下位なのも、皆を観察する為だよね☆僕がキミを見つけたように」

 

僕は思わず笑う。正直に言って青山君に看破されるとは思ってなかった。

 

笑いながら僕は返す。

 

「まぁね。それが、どうかした?」

 

「僕からは一言。中々スマートだったよ、あの技☆」

 

そう言い残して彼は去っていった。きっとトイレに向かってるんだろう。間に合えばいいけど。

 

青山君は42位。つまり、僕が気絶させた元39位の彼がいたらランク外だった訳だ。その事による感謝を言いたかったのかな…?

 

A組の中でも、彼は最も不思議な人だ。個性的とも言える。

 

こういう時ふと、心が読めたらいいのに、なんて思ってしまう。

 

 

 

 

青山君の言う通り、今回の“障害物競走”は観察を念頭に置いて行動していた。

 

そもそも、第1種目で 1位を取っても特に意味は無いのだ。これは予選。ある程度のボーダーが決まっており、その中に入る事が絶対条件だ。

 

そしてこれは、B組の“個性”の使い方を直に見る事が出来るチャンスなのだ。

 

対して僕は『隠す』しか使ってない事で情報を全く見せない。これは中々のアドバンテージなんじゃないかと思う。

 

さて、その気になる“予選のボーダーライン”をどうやって知る事が出来たか、についてだけど。

 

単純だ。前回、前々回、その前回と、“雄英体育祭”のあらゆるデータを分析した結果だ。もちろん、『覚ます』を使って。

 

分析した結果、予選のボーダーは『40〜50』の範囲だとわかった。これ程注目されているイベントだし、エンターテイメント性も加味すると、例年のボーダーは大幅に変化しないだろう。

 

あとは『隠す』を使って妨害を受ける事なくB組の個性を観察しながら、40位以内に入るだけ。

 

元39位の彼には本当に悪いことをした。予選通過者が40位未満の可能性もあったので、39位がベストだったのだ。

 

“必殺技”の試し打ちにもなったから、僕としてはそこまで後悔してないけど。

 

…予選で 1位の緑谷君も僕と同じように“分析タイプ”だから、ある程度の順位を保つだけだと思っていたんだけどな。

 

まるで誰かに“体育祭で目立って欲しい”と頼まれたかのようにトバしてきている。

 

『ーー僕も本気で獲りに行く』

 

うん、いいね、アツい戦いになって来た。

 

ひとまず僕は賭けに勝った。これで第2種目から楽になるんじゃないだろうか。

 

“個性”を明かしてないアドバンテージ。これは大切にしていこう。

 

『覚ます』を持つ僕にとって、“情報戦”で負ける事はあり得ない。

 

こうやって調子に乗った僕は、“出る杭は打たれる”ってあるんだな、と思い知る事となる。

 

 

 

 

「さぁて、気になる第2種目の発表よ。…第2種目はこれ!“騎馬戦”よ!」

 

ミッドナイトが指差すモニターに表示されたのは騎馬戦の文字。

 

もちろん、僕ら予選通過者はざわつく。

 

「き、騎馬戦⁉︎」

「…個人戦じゃないけど、どうやるのかしら?」

 

そんな疑問に答えるように、ミッドナイトはモニターを駆使して説明する。

 

それを要約するとこんな感じ。

 

・騎馬は2〜4人。

・予選の順位によって振り分けられたptを合計したハチマキを騎手は付ける。

・最下位が5ptで、上位へいくにつれて5ptずつ上がる。

・ 1位は特別に1000万pt

 

…隣の緑谷君が石化したかのように固まる。ちなみに『合わせる』は使っていない。だというのに、蛇に睨まれた蛙のように、萎縮してしまった。

 

そんな空気の中でも、ミッドナイトは説明を続けている。

 

「ーーーそれじゃこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」

 

さて、39位の僕は20pt。自チームの騎馬ptは高くしておきたいだろうし、これは難航しそうかな…。

 

と、思っていた矢先だった。

 

「…九ノ瀬。俺と組んでくれ」

 

声の主を見て、僕は少しだけ驚く。正直彼から声をかけてくれるとは思ってなかった。

 

「…メンバーは?」

 

「八百万にはもう声をかけてある。あと1人は、飯田の予定だ」

 

機動力、攻守ともに優れたメンバーだ。それにしても判断が早いというか何というか。

 

なぜ僕を選んだのかはわからないが、誘ってくれたのはありがたい。

 

「よろしくね、轟君」

 

「あぁ。ーーーー1千万を獲りに行く」

 

もちろん、僕もそのつもりだ。

 

 

 

ーーーなんて息巻いていた自分を殴りたい。

 

まんまと轟君に嵌められたね。参った参った。

 

「…時間もない、早く教えてくれ。お前の“個性”について」

 

…自分で言うのもなんだけど、A組の中で最も謎が多い人ってのは僕だと思う。

 

正確には、底が知れない生徒、だろうか。

 

過去類を見ない“個性複数持ち”として扱われているのだから、当然の話だ。先生方には苦しくも異形型と説明したけど、それはただの理論上可能と言う話。

 

はたから見れば、“個性”を複数持つ超人として、扱われ、警戒される。

 

いや、僕も『能力』について永遠に秘密にするという訳じゃない。けど、やっぱり『冴える』については話すのが抵抗はあるし、進んで話す気は特に無かった。

 

ただ、話さないことでこの“雄英体育祭”において相手の想定を上回る動きが出来る事は確かなのだ。僕は遠形先輩の言葉を思い出す。

 

『手の内を明かしているクラスメイトが敵となるから、それを超える“進化”を見せないと!って話さ!』

 

それなら手の内を明かさなければいい。…という予定だったのだが、今回の騎馬戦では仲間となる相手に、話さないというのはおかしな話だ。

 

チームの雰囲気に関わるし、更には連携がうまく取れない恐れがある。それで負けたらまさに本末転倒だ。

 

僕はため息をついて口を開く。仕方ない。手早く説明して轟君達の個性について理解を深める方が賢明だ。

 

「“目を合わせる”は名前の通り。“目を合わせた相手”を石化させる個性だよ。厳密には相手の身体の動きを止める。思考すらも止めるよ。…ただ、その効果が相手の目を反射するせいか、僕の身体も止まる。持続時間は4秒」

 

…僕の身体すら石化してしまうのは僕が偽物の器だからなんだと思う。『合わせる』がレーザーとして考えるとイメージしやすいけど。相手の目を通して反射した『合わせる』は“元”人間の僕の身体には効果を発揮するらしい。

 

「…“奪う”ってやつと同時に使えねぇか?その隙に“氷結”で動きを確実に止められるんだが」

 

“障害物競走”のスタートと同時に出した氷結はA組以外にも回避した生徒が多かった。恐らくその事を考えて“確実”という言葉を使ったのだろう。

 

「ごめんね。同時使用は何度か試してるんだけど、うまくいってないんだ。A組の人には“奪う”を使って視線を集中させても、“合わせる”までのタイムラグの内に目をそらされちゃうと思う」

 

『合わせる』について何となく知ってるA組には、通用しない。けど。

 

「それはつまり、初見の相手には通用するという事じゃないか?」

 

そう、飯田君の言う通り、B組達には十中八九通用するはずだ。初見の相手には『奪う』と『合わせる』のコンボで相手の動きを止める事が出来る。

 

話を聞いていた八百万さんが困ったように呟く。

 

「…けど、緑谷さん達には通用しませんのよね」

 

ただ、僕らが狙うのは1000万だ。

分析型の緑谷君は『合わせる』について当然対応してくるだろうし、効果は見込めない。

 

緑谷君のグループは常闇君、麗日さん。そしてサポート科の…確か、発目さん、だったはずだ。

 

先ほどの“障害物競走”で観察した所、彼女の発明品は恐るべき性能を持っていた。だから立てれる作戦がある。

 

「…多分だけど、緑谷君達の機動力はサポート科の人の発明品に頼ると思うんだ」

 

「それがどうかしたのかい?」

 

飯田君の疑問に僕は答える。確かに、この『能力』は表立って使った事は無かった。

 

「“覚ます”って個性を使おうと思う」

 

まったく、これで障害物競走のアドバンテージ(情報)が無駄になったな。

 

よりにもよってこんな強敵に『能力』を説明するというのは、後のトーナメント戦での不安が残る。できれば3人とは対戦したくない所だ。

 

そんな不安を抱えながら、僕は3人へ『覚ます』の説明を続けた。

 




轟グループの上鳴の代わりに九ノ瀬となっております。
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