赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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ぶどう君

『能力』の使用中は僕の両目は真っ赤に染まる。

前で鉄の棒を槍のように持っているぶどう君には見えないだろう、見たら少し怖がるかもしれない。

 

「…なぁ、これでロボが来るのか?向こうから?」

「大丈夫だよ、今、来る」

 

『目を奪う』という能力はその名の通り、目を奪う。言い換えれば注目を集める。ただこの『能力』はかなりピーキーだ。暴発してしまうとうっかり売れっ子人気アイドルになってしまうかもしれない。それほどに注目を集めるのだ。ヒーローとしては広告業務とやらもあるだろうしメディア面で役立ち、戦闘では囮の役割を担えるだろう。

 

ただ、この場合はロボだ。例えばこの『能力』が『人の注目を集める』というものならこの作戦は台無しだ。試験終了まで待ちぼうけを食らう事になる。

しかしもちろんそこは実験済みだ。さっき交通標識の近くで『目を奪えば』ロボはこちらに寄って来たし、そこで解除すると僕に近づく事なく酸の回避を始めた。余談だがその酸は交通標識にかかり折れやすくなってしまった。偶然にもそれは今僕らの手元だ。

 

「ーーきき、来た!!!」

 

ぶどう君が叫ぶ。

 

「…落ち着いて。動きが止まった所を刺そう」

 

僕らのいる場所はかなり細い裏路地だ。

ここならロボの避ける手段もないし、ぶどう君の個性も設置しやすい。

 

普通ならこんなところにロボは来ないだろう。ここに来る輩といえばただの臆病者だ。そんなの、合格するわけがない。

ーーーそれを、僕の『能力』で可能にする。

更にいえば、元々ロボと戦闘していた人はおびき寄せたロボを追って来るかもしれない。それでもこの試験において、裏路地まで深追いして時間を使うのは得策ではない、すぐさま他のターゲットを見つけるべきだ。

一気にロボを集めてしまうと不思議がる生徒も多くなりこの作戦がバレてしまうので、そこは僕の調整次第だ。

 

 

引き続き動きが止まった1ptロボを倒す。

掛け声をかけて同時に倒すことに意味があるかはわからないが、プロヒーローになるなら協力するのも必要なのだ。これを判断しないのなら、雄英高校なんて名門校じゃない。落ちても全く悲しくない。

 

それに僕らはスタートからかなりの遅れをとっている。だからこれから誰かが取るptを『奪っても』全く心が痛くならない。そもそもこれは入試だ、遠慮は無用。僕がヒーローになれれば、それでいい。

 

正直この作戦が成功したのはかなり嬉しい事だ。恐らくかなりのペースでロボを壊すことができている。

 

僕1人でも合格する布石は既にうっておいたのだが、ぶどう君と一緒に合格できるのは喜ばしい事だ。彼の名前でも予想してみようか。

 

 

そうして僕らがかなりのペースでロボを破壊し続けていた時、彼はやって来た。上から。爆破しながら。真っ赤な目で彼を見上げる。

 

 

「…テメェらか、俺の獲物奪ってんのは」

 

…全く、調子に乗りすぎだ、九ノ瀬遥。

 

 

 

「…ごめん、ちょっとロボは任せた、ぶどう君」

 

そう言って僕は武器から手を放す。

 

「…あぁ、お前はどんどんおびき寄せろ!」

 

お言葉に甘えて、『能力』を発動させたまま爆破君を見上げる。

こんな裏路地まで人が来るとは思っていなかったが、彼なら納得がいく。ここまで深追いして時間ロスを気にしないというのは余程優秀で余裕があるんだろう。

だが、そんな強者が僕らに手を出す理由もない。

 

「悪いね、僕の個性だ。ところでそんなに睨みつけてどうしたんだい?この試験はロボをヴィランと想定してのものだ。僕らに構っているのはヒーローとして良くないだろう?」

 

言外に、ここから立ち去れ、と告げる。屋上から見下ろすのは結構だ。彼は優秀な、プロヒーローの卵だ、僕らの遥か上をいく才能を持つ。だからといって、僕らの邪魔をしないでほしい。君のような強者が、僕ら弱者を妨害するのは、気にくわない。弱者をいたぶる悪党ってのは1番嫌いなんだ。この考えは筋力増強の『能力』が使えないのにも関係はある。

 

「…ケッ。口が達者だな。赤目野郎。悪いが、俺は1位を取りてぇんだよ。お前らにこれ以上獲物取られちゃ、クソみたいな気分なんだわ」

 

たしかに彼は恐らく既に合格ラインは超えているだろう。だから僕らに構うことは無いと思っていたが、入試1位、首席を狙ってるなら話は別だ。僕がおびき寄せたロボを爆破する事もあるだろう。この場合に関してはロボの破壊に先手を取られた僕らの負け、爆破君にもペナルティなどは無いだろう。そしてそれは僕らにとって不利な決断。

 

…はぁ。なんとなく負けた気分だが、ここは退いてもらおう。

僕は南西方向を指差す。

 

「…僕の個性には範囲がある。君がポイントを伸ばしたいのなら向こうに行って伸ばしてくれ。向こう側のロボに個性は発動しない事を約束しよう。これ以上のヒーロー同士での会話は不毛だ」

 

「英断だ。ここでデタラメ教えるのはヒーローとして良くねぇよなぁ?」

 

爆破君はニヤニヤして言う。

さっきの僕の発言の意趣返しか、なかなか底意地が悪い。とりあえずこの試験の設定を使って追い返す文言を考える。

 

「…そうだね。向こうの範囲のヴィランは君に任せた。こっちは僕らに任せてくれ」

 

それを聞いた彼も設定に乗っかって皮肉を返す。

 

「あぁ、そうだな、プロヒーロー同士、頑張ろうぜェ?」

 

「健闘を祈ってるよ」

 

それを聞いた爆破君は南西方向へ向かって行った。

それを見届けた僕はぶどう君に任せっきりだったロボ破壊を手伝う事にした。

 

「ごめん、ぶどう君、任せちゃって。大丈夫?」

 

「あ、あぁ。それは大丈夫だ。アイツ…俺らごと倒すのかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

 

「いや、それはありえないよ。先生が見てるんだ。ヒーロー同士のいざこざなんてマイナス点だよ。1位を目指してるらしいしね。プレゼントマイクも言ってたろ?生徒同士の戦闘はご法度だって」

 

「そうか…。アイツ、そこまで考えてこっち来たのか。時間のロス気にせずこっちに来て情報もらう方が良いって思ったんだな。単細胞でも無かったか」

 

「まぁ、そうだね。見た目に似合わずクレバーな男だ。戦闘のセンスも見た限りピカイチだし」

 

「問題は性格だな」

 

「…それしか問題がないのが、1番まずいね。改善されたら恐ろしい、雄英で同じクラスにならない事を祈るよ」

 

するとぶどう君はニヤニヤした顔で振り返る。

 

「なんだよ、お前、もう受かった気なのか?って目赤いな!?大丈夫か?個性の使いすぎとかかよ?」

 

…ホントに優しい子だ。なまじ精神年齢高いから子供扱いしてしまうが、とても優しい、ヒーローに向いてる少年だよ、君は。だから今、ここで一緒にいるんだ。

 

「…ううん。大丈夫。それじゃ、ラストスパート行こうか!」

 

「おぉ!任せろ!」

 

僕らは気合いを入れ直し、周囲に警戒しながらもptを稼いでいった。

 

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