赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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俺のヒーロー

『残り2分半を切ったゼイ!?』

 

プレゼントマイクのアナウンスが会場に鳴り響く。

 

ふむ、2分半…そろそろだろうか。

そう考えた瞬間、爆音が鳴る。心なしか地面も少し揺れたように思える。

共にロボを破壊し終えたぶどう君が慌てる。

 

「おわっ!?なんだこれ!?」

 

うーん、結構近いな。これはまずいかもしれない。

 

「どうやら0ptロボが動き出したみたいだよ、ぶどう君」

 

そこで気づいたようだ。原因がわかったからか余裕の表情である。

 

「なんだ、そんな事か。それならお前の個性抑えてくれよ?デカいロボが来ても倒せないだろ俺たちじゃ」

 

僕の『目を奪う』能力はもう消してる。赤目じゃない事を見ればわかると思ったが、発動中は赤目になる事を言ってなかったな、そういえば。まぁ今はいいか。

 

「もう消してあるよ、個性は。…それより、僕らはどうするべきだと思う?」

 

質問の意図がわからないようで首を傾げるぶどう君。少し言葉足らずだったか。

 

「何言ってんだ?俺らがでかいロボに立ち向かっても何も良い事はないだろ?ここならかなり安全だろーし。あ、場所を変えるって話か?」

 

その返しはちょっと意外だった。彼は少し臆病なところがあるから理由もなく籠城策を推してくると思っていたが、思ったより考えられていた。

でも僕は彼の案を否定する。

 

「…まだ向こうの様子がわからないけど、さっきのロボ出現の音からするとかなり近い所にいるとは思うんだ。そして僕から見ても想定外に大きそうだ、おそらく0ptロボ周辺の生徒は混乱しているし、場合によっちゃ怪我するかもしれない。」

 

僕がこれから言う事を汲み取ったのか、ぶどう君の顔が青ざめる。

 

「…ロボ周辺の人を助けるって事かよ。…ここで俺らがptを稼ぐのは可能なんだろ?人は来ないでロボだけおびき寄せるようにできる程お前の個性は万能だろ?それじゃダメなのか?」

 

またもや意外。僕の『能力』についてちゃんと考察していたようだ。その考察は正解だ。でもダメなんだ。

 

「多分、君の案は言い換えると怪我人を見捨てる事だ。僕らのように戦闘に不向きな人が怪我する事だってあるだろうし、避難させる必要がある。それにーーーーーーこの試験でまだ誰も救ってない。ロボを倒すだけじゃダメなんだ。それだけじゃ、ヒーローにはなれない、僕はそう思うんだ」

 

少し考えたい様子のぶどう君だったが、悪いけどあまり時間はあげられない。残り2分のアナウンスからかなり経っている。避難させる姿勢を先生方に見せるには少し時間が足りない。それに、彼が先に着いてしまうかもしれない。

 

「…1つ、訂正させろ。俺はお前にちゃんと救われてる」

 

「…うん」

 

「だから、従う。作戦、あるんだろ?」

 

 

 

 

僕は走って細い路地から大通りへ出る。

そして目にするのは今までのロボとは比べものにならないくらいのサイズの0ptロボ。

その周辺を見る、まだ逃げ遅れた人がいるようだった。当然だ。これは入試、自分自身の安全を確保する事を優先するだろう。手を差し伸べる事はない。

 

ーーーでもそれはヒーローじゃない。

 

僕は何人もヒーローを知っている。その人達はこの世界にはいない。彼らは僕が1番尊敬するヒーローだ。みんな集まって、命を、街を救おうとしていた。

 

たとえもう会えないとしても、彼らを目指す気持ちは変わらない。僕のヒーローはこの世界で数多くのヒーローに会ったとしても、ずっと彼らだ。

 

だから、彼らがくれたこの『能力』で僕は誰かを救う。

 

『目を奪う』を発動して巨大ロボを見上げる。

 

「ーーーーこっち見ろよ」

 

 

 

 

足が震えて上手く走れない。

それでも俺は暗い路地を進みながらアイツが言った作戦を思い出す。

 

『僕が囮になる。個性でロボの気を引きつける。その間に避難誘導をしてくれ。避難する場所はここだ。君がさっき言った通り、ここは安全だからね。時間はこっちでたっぷり作るから。単純だろ?』

 

『…いや何言ってんだ!?それじゃお前が危ないだろぉが!人だけおびき寄せればいいだろここに!』

 

『ロボはともかく、人を強引に移動させる事は出来ない。ロボの場合はターゲットを貰いやすいから、だ。今回は特殊パターンなんだ。この個性の真の使い方は囮だよ』

 

…アイツの個性は注意を引きつける程度のモノ。ロボの場合はそれが大きく響いたって事だろうか。だとしてもアイツの負担が大きすぎる。

正直この作戦には不満だ。

それでも従う。それ程の実績があると、俺は思ってしまった。たかだか数分の協力で。

 

『…そして何より、君の声は高めでよく響く。大声張り上げて避難させてくれよ?』

 

そんな冗談を言って、アイツは笑った。

 

アイツとは別ルートで大通りに出て周りを確認する。0ptロボはアイツの仕事だ。そっちは見ない。

 

怪我人はいないようだが逃げ遅れたヤツが4人いるようだった。

俺は息を吸い込み声を張る。アイツにも届くように、

 

「こっちが安全だ!!!死にたくネェやつはこっちに来い!!」

 

 

そっちは任せたぜ。俺のヒーロー。

 

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