赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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クソ赤目野郎

前世とは違い至って健康体の僕にとって0ptロボの攻撃を躱すのはそこまで難しい事でも無かった。そもそも時間稼ぎが目的だしそれに徹すればいいだけだ。しかし、ロボに反撃する為の矛はまだ無い。

横っ跳びしながらロボの無機質な拳をスレスレで躱す。地面をえぐる風圧でそのまま吹っ飛ばされるがしっかりと受け身をとる。

 

 

見上げると逆の拳がすぐさま飛んでくる。すぐさま近くにいた2ptロボの『目を奪って』ロックオンさせ僕の前に2ptロボが出てくる。僕を倒すために。0ptロボの拳で殴られた2ptロボは木っ端微塵に吹き飛ぶ。この場合ポイントは入るのだろうか。

 

こんな風に逃げ回っていたが、そろそろ攻撃手段が欲しいところだ。先生から見てこのままだと逃げ回る臆病者だろう。

ただ、攻撃するのは僕じゃない。

 

「…何やってんだクソ赤目野郎」

 

爆音

 

気にくわないツンツン頭。手のひらからは煙。

 

まったく、君なら来ると信じてたよ、なぜか。

 

攻撃する術はこれでいい。もう『目を奪う』理由もない。ちょっと来るのが遅いのは誤算だが、大体予想通りだ。

 

「俺が来ることも想定済みって顔だな…。イカレ野郎が」

 

君程のセンスなら余裕があったと思っただけだ。路地裏の小競り合いで僕の『能力』上この近くから離れさせてしまったから登場が遅れたんだろうけど。まぁ、来るだろうとは思ったけど、一応南西範囲だけ『目を奪って』おいたよ。クソ赤目野郎が裏切った事を知らせる為にね。

そうすれば激昂した彼は嫌でもこの付近まで来るだろう。

 

そう言いたいが少し疲れて何も話したく無い。口が達者なイメージが崩れちゃうかな。

それに、もう彼はロボの上で破壊を続けてる。口に出しても意味ないか。

 

なんとか上を見上げる。

 

…助けてもらってなんだけど、彼はヒーローっていうよりやっぱヴィランみたいな雰囲気出してるなぁ。

 

 

 

 

『残り30秒だぜぃ!?』

 

プレゼントマイクによる親切なアナウンスだ。30秒で0ptロボが倒せるだろうか、爆破君。

…久しぶりに能力を酷使してしまったせいか頭の中で声が響く。爆破君のロボ破壊を見上げながら、その声に耳を傾ける。

 

『ンダよ、今回も俺に頼らないつもりか?『目を醒ます』を持つ俺なら余裕で合格できるってわかってんだろ?』

 

「…うるさいな、『冴える』黙ってろ」

 

『普段は俺の存在を『隠し』てるのに、今出て来れたのは俺が必要だから、ってわかってんだろ?』

 

…『奪う』を酷使したから、お前を『隠す』事に意識が回らなかっただけだ。『奪う』と『隠す』を1人で同時に扱う事は不可能だし。

まるで言い訳のような文を作りながら、強制的に脳内から追い出す事にする。

 

「…お前の主は僕だ」

 

『ヘイヘイ。でも主サマの為の行動ならいいだろ?ちょっとだけ体借りるぜ、主サマ?』

 

ーーーまずい。

 

「…っ!爆破君!離れろ!!」

 

 

 

『目を醒ます』

 

それは言ってしまえばこの世界で身体増強系に位置する『能力』だ。人並み外れたパワーを持ち、僕の身体に1番適合している『能力』であり、実際に『蛇』に選ばれたのは僕だ。見ただけの情報だが、腹に穴が空いてもそこから身体を造り直す、というかなりの再生能力も持つし、銃弾もなんて事無く受け止められる。

正直に言うと、これを扱いきれればこの試験なんて余裕だった。ぶどう君と協力する必要なんて無いくらいに。

 

ただ『目を醒ます』能力の持ち主が『目が冴える蛇』だった。それだけだ。

 

『目が冴える蛇』

これを『能力』と一括りにしていいのかはわからないが、自我を持つ『蛇』だ。『冴える』という言葉の通りかなり賢いだろう。狡猾とも言うべきか。この『冴える』に前世の僕らは負け続けた。殺されていた。

 

…その地獄に終止符を打つ為には、全ての『能力』を僕が受け持つしかなかったのだ。ただ、その時点では、『冴える』は『醒ます』を保有していた。僕の中にあるのは『醒ます』と『冴える』で1つの『能力』なのだ。

 

つまり今の僕が『醒ます』を使える状況というのは、『冴える』に意識を預ける事である。

 

『目が冴える蛇』というヴィランに。

 

そしてそれは、僕のヒーローとしての負けを意味する。

 

 

 

 

意識が戻った時には0ptロボなんて跡形も無く消え去っていた。地面には僕を始点としてえぐれた跡が残っている。『冴える』があの数秒で何したのか、なんて考えたくは無かった。こんな結果が、僕の為になると思っていたのか。

 

試験終了のアナウンスは既にされていたようで、ぶどう君が立ち呆けている僕の側へ駆け寄る。…少しだけ、怯えた表情で。当然だろう。僕の個性は注目を集める程度のモノと認識していたのだから。

 

「お、お前…大丈夫かよ?」

 

「…大丈夫。ちょっと、聞いてもいいかい?」

 

「…何だよ」

 

聞かなければいけない。知らなければいけない。いつかは彼を受け入れなければいけないだろう。前世で僕のヒーロー達を殺したヴィランだとしても。この超人社会では、『醒ます』が必要なのだから。

 

「僕は、どうやって0ptを倒した?」

 

ぶどう君自身も信じられない風景だったようで、困惑しながら僕の問いに答える。

 

 

「…その場で右腕を一振りしてただけだぜ?風圧でロボは全て吹っ飛んでた」

 

全く、どこかのNo.1ヒーローのようだな。『醒ます』で天気は変えられるかどうかは知らないが。ただ、やはり『醒ます』の強大さは異常だ。そしてその強大な力を手にした『冴える』というヴィラン。僕が『冴える』に屈した瞬間、それは僕がヴィランになった瞬間だ。恐らく、『冴える』はこの街を支配する。

 

ぶどう君が恐る恐る僕に聞く。

 

「…なぁ、どっからあんなパワー出したんだ?…お前、何者なんだ?」

 

それは僕も答えるのが難しいんだ、ぶどう君。けど、今は。

 

「ヒーローだよ」

 

少なくとも、今は。

 

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