赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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片鱗

爆破君と協力して0ptロボを倒す。それが当初の目的だった。

先生方からの採点基準は明確ではないが、恐らくロボ破壊のptは基準値を超えているだろう。ただ、そうなると気になるのは数値化されていないptだ。

 

これはヒーロー試験。それならプロヒーローの仕事を参考にしての基準だと予想した。そこでテーマになるのは『協力』だ。ヴィランを倒す為の連携。最近はヒーロー同士のチームアップが少しずつ行われているようだ。

 

その結論にたどり着いた時、先生方にそのアピールをする為の作戦を考えた。それがぶどう君と『協力』した作戦。

 

ただ1つの誤算は爆破君だった。試験上悪い事ではないのだが、言ってしまえば僕らの作戦は人のptの横取り。そこでマイナス精査を食らう事は無い。

ただそれに不満を持った生徒との口喧嘩。これは由々しき事態だろう。

 

会話が聞こえているかどうかはわからないが、ヴィランがいるのにヒーロー同士で口喧嘩をする状態。これは紛れもなく減点だ。

 

だから、最後に爆破君と『協力』する姿勢を見せる必要があった。

そもそも『協力』なんて採点項目など無く、減点0、杞憂に終わる可能性もあった。

 

まぁ正直、爆破君は恐らく合格するだろうし、後々仲良くするキッカケを作りたい気持ちが8割くらいだった

 

 

とまぁ、ここまで色々と考え抜いて出した結論、行動をアイツは全て台無しにした。

 

『冴える』の言葉を思い出す。

 

『主サマの為の行動ならいいだろ?』

 

ヤツが何を考えてあの行動をしたかは、いくら考えてもわからない。

アイツには、僕には見えない何かが見えているんだろう。

 

 

 

 

共に戦った仲間、ぶどう君と試験会場を後にする。攻撃を避けた際の怪我も擦り傷程度だったので、リカバリーガールの治癒も丁重にお断りしておいた。色々と迷惑をかけた爆破君を探したのだが、見つからなかった。

広い廊下を人混みに紛れながら2人で歩く。

 

「…多分僕らは合格だと思う。採点基準がかなり突飛なものじゃなければ、だけど」

 

「おぉ!やったなぁ!これで心に余裕が出来たぜ!俺、筆記には自信あるし!」

 

彼と一緒にいるのにいつまでも考え混むのは失礼だろう。無邪気に喜ぶ彼を見て、頭を切り替える。

 

「…にしても、お前の個性、すげぇな!2つ持ってるなんて!血筋とか?」

 

「……ん?2つ?」

 

少し、その問いに何か引っかかる。僕は彼の前で『能力』を発動させた。その種類は3つと記憶している。

 

1つは、ファーストコンタクトの『目を隠す』

 

次に、裏路地作戦の要の『目を奪う』

 

そして最後に『目を醒ます』

 

『冴える』の存在は知らないだろうし、知っていても数が合わない。

また考え込みそうになる僕の思考に、ぶどう君の声が響く。

 

「え?『自分への注目操作』と『超パワー』の2つじゃないのか?」

 

…あぁ、たしかに。そういう考え方もできる。『目を隠す』は注目されないようにしていた、個性の応用って事か。というかそもそも個性の3つ持ちなんて考えもしないだろう。

 

僕はぶどう君に噛み砕いて『能力』の説明をする。

 

「いや、僕は『姿を隠す』個性と、『注目を集める』個性と、『身体増強』で………!」

 

実はまだ色々持っているんだ、と繋げて話そうとした瞬間、電撃が走ったかのように閃く。

 

そこで『冴える』の行動にも合点がいった。

 

『個性』の複数持ち、それは雄英にとって手に入れたい人材だ。そんなことは僕も当然気付いていた。だから『隠す』と『奪う』の2つを使ったのだ。僕は路地裏作戦の時点でそのアピールは完了した気になっていたが、それじゃ不十分だったのだ。複数持ちのアピールをするなら、方向性の違う個性を使うべきだった。

 

最悪僕だけでも合格する布石は打っておいたとあの時点では考えていた。けど、それは成功してなかった。だから『冴える』が改めて『醒める』の力でアピールしたのだ。それは、確かに『僕の為の行動』だ。

 

…そんな事考えもしなかった。他者からの視点が無いと見えない答えだ。

 

こんな事に気づいたからといって『目が冴える蛇』を飼いならす事には繋がらないかもしれない。そもそも『冴える』の目的はもっと別なものなんだろう。僕になんか想像もつかない、他の理由。でも、僕は素直に嬉しかった。まだまだ謎が多い『冴える』の行動原理、その片鱗を知る事ができたから。

 

…そして、それに気づかせてくれたこの小さい彼には、感謝してもしきれない。本当に。

 

僕が個性の3つ持ちと聞いて大騒ぎしている彼を見る。

 

彼の名前はまだ知らない。けど今は聞かない。お互いに。

 

 

そして入学式の日、僕らは約束を果たす。

 

これが、ぶどう君ーーーーー峰田実くんとの再会だ。

 

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