赤目のヒーロー   作:ささやく狂人

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「とりあえず、実際に話してみて判断したいです。ワタシは」

「そいつがヤツと関係してる可能性は高いだろう。個性を複数持っている時点でヤツの手にかかっていると考えるべきだ」

「それはわかりますが…映像を見た限りそこまで悪い印象は感じませんでしたよ」

「…その判断はオレがする。お前は人を信じすぎだ、とにかく会う約束を取り付けてくれ、そこにオレも同席する」



採点基準

『春から雄英教師のワタシが投影されたァ!』

 

「……はい?」

 

少しばかりの緊張感を持って開いた合否通知。

その瞬間No.1ヒーロー、オールマイトが投影された。おなじみのフレーズを口にして。

 

オールマイト。

別名、平和の象徴。彼の圧倒的な力とカリスマ性でヴィランの犯罪数が低下し続けている事からそう呼ばれている。ちなみに個性はまだ明らかになっておらず、彼自身も爆笑ジョークで個性を明かそうとしていない。そんな彼が雄英教師、か。中々驚きだ。

 

そんな新任の英雄が今僕の目の前に投影されている。そんな事に少し困惑しながらも映像の中の彼は続ける。

 

『…普通ならここで合格!と告げて歓迎の言葉を並べるのだが……個人的に直接会って君に聞きたい事があるんだ。今日の夕方6時、君の家の前で会えないかな?いきなりで申し訳ないが、よろしく頼む!』

 

そこで映像は途切れた。

 

返事をしたところで向こうには伝わらないだろうが、了承の意を込め頷く。とにかく合格という結果はわかったので安心だ。

 

メディアで見るオールマイトとは違う、真剣な表情。No.1ヒーローにこんな顔をさせる行動をしただろうか。身に覚えがない。

 

ただこんな貴重な機会を断る理由も無いので、素直に外へ出る準備をする。

 

今は5時半、雪も溶け始めた季節だがまだ時刻的に肌寒い。部屋着のパーカーを脱ぎクローゼットからコートを取り出す。

 

近くの自動販売機で温かいコーヒーでも買って家の前で待つことにした。

 

 

 

 

予定通り缶コーヒーを2つ買って家に向かうと、2人の人影を見つけた。

1人はスーツ姿のオールマイト、本人と会うのは初めてだが、威圧感を持ちながらもヴィランという風格など感じさせない笑顔を顔に浮かべている。紛れも無い、No.1ヒーローの風格がそこにはあった。

 

もう1人は黄色いコスチュームを纏った背の低いご老人だった。ある程度プロヒーローの知識を持っている僕でも存じ上げない。オールマイトのサイドキックとかだろうか。

 

同時に2人もこちらに気づいたようで、互いに近づく。まずは挨拶からだろう。

 

「初めまして、オールマイト」

 

「やぁやぁ!ワタシが来てるよ!九ノ瀬君!」

 

「えぇ、知っています。…それで、そちらの方は?」

 

僕はオールマイトの隣にいる老人に目を向ける。

僕の問いにオールマイトが答える。

 

「…あぁ、この方はグラントリノと言って、私の知人だ。…知らなかったかな?」

 

僕は正直に答える。

 

「はい、知りませんでした。有名な方だったのなら失礼な事を言いましたね。申し訳ない」

 

未だ何も喋らないグラントリノさんに軽く頭を下げ謝罪の意を表す。

グラントリノさんが口を開いた。

 

「いいや、オレは表立ってヒーロー活動をしてないからな。知らないのも無理はないぞ。気にしなくていい」

 

……じゃあ何故オールマイトはあんな質問をしたのだろうか。

少し疑問は残るが、まだ本題にも入っていない。というか家の前でこれ以上話すのも近所の噂になりそうだな。なんせNo.1ヒーローがいるんだから。

 

「とりあえずちょっと場所を変えようか!ワタシが来て目立ってしまいそうだし!」

 

…流石No.1ヒーロー、気遣いもしっかりできるようだ。

 

「えぇ、近くの公園でいいですか?今家の中散らかってるので…。あ、あとこれどうぞ」

 

僕は缶コーヒー2つを彼らに差し出す。ホントはオールマイトと自分の分だったが、まぁ些細な問題だ。冬用のコートだから寒さには困らない。

 

 

 

 

公園に着いた僕らはベンチの近くで話を始める。ベンチが近くにあるのに座らないというのも変な話なので、グラントリノさんには座ってもらった。お年寄りに席を譲るのは日本人の美徳の1つだ。

 

僕は話を切り出す。

 

「…それで、聞きたい事ってなんですか?」

 

オールマイトは困ったような笑顔で、返す。

 

「それより遅れてしまったが、入学おめでとう!まずは今回の入試についての、雄英教師からの評価から説明させてもらおう」

 

へぇ、しっかりと採点基準とかも教えてくれるのか。流石雄英だ。今後の参考になるので正直助かる。

ただ、これが本題では無いのだろう。合格者1人1人に採点基準を教えてたら莫大な時間を要する。恐らく他の人は映像で明かされたに違いない。

 

僕は相づちをうって先を促す。

オールマイトは周りに人がいない事を確認して話し出す。一応個人情報だからだろうか。

 

 

「まず、筆記!ボーダーは超えているもののギリギリだったな。終盤の応用問題はともかく、基本でのミスがかなり目立ったぞ。特に数学だ!ハハハ!」

 

これに関してはぐうの音も出ない正論だ。僕は中学の授業はあまり聞いてる方では無かった。一度習った範囲だったからだ。それと、無断欠席がかなりあったようだ。僕の記憶のなかでは皆勤賞なのだが。

 

オールマイトは続ける。

 

「次に実技試験だが…一言で言ってしまえば優秀だよ、君は。ただ、学校側が提示した仮想ヴィランのptは合格者平均を超えてはいなかった。初動が遅かったのと、同時に倒したからと言っても2人にptは入らない、そこは平等に等分だ!そこに気づけていなかったのが原因だろう。しかし!ヒーローの活動はヴィラン退治のみではない!そう!レスキューポイント!」

 

ptが達していなかったのはアテが外れて驚きだった。が、しかしもっと意外なのはレスキューポイントだ。

これは数値化されていないptだろう。その存在は予想していたが、内容は見事に外していた。

 

オールマイトは続ける。少し興奮した声で。

 

「君が、いや、君たちは0ptロボにも立ち向かい、その場にいた人の避難を見事に果たした!これは45のレスキューポイントという教師陣からの評価で、2人に加点されている!」

 

どうやら『協力』による加点はあまり無いようだったが、ヒーローとしての行動を学校側は評価しているようだった。恐らく最後に助けに来た爆破君にもレスキューポイントは与えられているだろう。

 

「…と、まぁ学校側からの採点は以上だ。これらを統合して、九ノ瀬遥は実技入試では合格、三位という好成績を残した。おめでとう!」

 

どうやら教師としての話が終わったようで、喉が渇いたのかコーヒーを飲む。ただ、まだ本題は終わってないだろう。

 

ベンチに座っていたグラントリノさんが立ち上がって、僕の方を向き、僕を見上げる。少し睨んでるようにも見える。

 

「とし…オールマイトから聞いたが、お前、個性を複数持っているんだって?」

 

厳密に言えば『能力』だが、僕は「はい」と頷く。

オールマイトがグラントリノさんを止めようとする素振りを見せるが、グラントリノさんは続ける。

 

「…それは、誰から与えられたものだ?」

 

 

正直、何を聞かれてるのかわからなかった。

 

季節は冬の終わり。

春が近いのにも関わらず、冷たい風が僕の身体を冷やした。

 

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