【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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※番外編は前書きを読んでください。

タイトルに「番外」とついているものは本編をある程度読んでから読むことをお勧めします。ネタバレになりますので、この位置まで読んでいれば読んでも問題ないですよ、というのをタイトルに(第○○話読了後推奨)といった風に記載します。それを参考にしてください。

さらに、番外編は本編を無視して書くことがあるので「1.~」「2.~」といったように注意書きを記載している場合があります。そちらを見て問題ないと思った方は読んでいただけると幸いです。

1.本編終了後、同じ年の三月あたりです。


番外:突撃、敵連合の実態(1)(本編読了後推奨)

 我々はついに、あの地へ足を踏み入れようとしている。念のためにとクルー一同家族に別れを済ませ、期待と緊張、そして恐怖を持ちながらそこへたどり着いた。物々しいかと思いきや、所々ファンシーな装飾が施されている巨大な門。我々を見下ろすそれが今まさに開かれようとしていた。

 

 ゆっくり開かれた門から顔を出したのは、まだ顔に幼さを残しつつも着実に大人への道を歩み、また敵としての最高峰への道をも歩んでいる(ヴィラン)

 

「あ、これはこれは朝早く。取材ですよね?どうぞどうぞ」

 

 月無凶夜。彼が今回我々を案内してくれる、敵連合(ヴィランアカデミア)の代表補佐である。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、ホントは代表の弔くんが出てくるべきなんでしょうけど、ほら、敵連合が動き出したばかりですから色々忙しくて」

 

 敵連合内部を取材したい、という依頼がきたのは数週間前のことだった。なんでも未だに敵連合が恐怖の対象であり、その実情を知らなければ国民が安心できないとのことで、それを言われてはこちらも承諾するしかなく、何やら覚悟を決めた面持ちの取材班の皆様と敵連合を歩いている、という次第だ。

 

「敵連合は上層と下層に分かれていまして、上層にいるのが社会復帰できそうな敵、敵予備軍だった人たち、あとは色んな理由で預けられた子どもたちですね」

 

「それにしては、この階層には一人も見当たりませんね」

 

 ディレクターらしき人の言葉に一つ頷いて上の階を指す。

 

「上層一階、ここは朝一は使わないんです。探せば敵連合の職員が色々準備してますけど、そっちに行っちゃうと見せられないものがあるので、ちょっと上層二階に行きましょう」

 

 どんな体格の人でも乗れるように作った巨大なエレベーターに乗り込み、上層二階へ上がる。何か移動する度に身構える取材班に申し訳なく思うが、その恐怖を緩和、払拭するのが僕のお仕事。これは気合いを入れなければ。

 

 しばらくして上層二階につき、エレベーターの扉が開いた。そこに広がっているのは、

 

「緑……?」

 

「そう、ここは自然エリア。朝に体を動かしたり、子どもたちが遊んだりするところですね。朝一はここに集まって運動しています。朝に慣れるというのは社会に出る上で大事なことですから」

 

「あの、それでは今ここにいる人たちは敵、ということでしょうか」

 

「そうですね。予備軍だった人もいますけど……大丈夫ですよ。上層に上がってこられるのはもう敵に一切の未練がない人たちですし、普通に日常を過ごしている人たちと変わりません」

 

 怖がっていたのでフォローを入れる。そりゃ全員敵って聞いたら怖いよね。普通の人からすれば犯罪者なんだから。殺されるとか、ひどい目にあわされるとか思ってしまっても無理はない。ここにいる人たちはもうそんなことしないんだけど。

 

「えーっと、あ、いたいた。おーい!」

 

 それぞれの時間には生徒たちを見る職員がいる。指導者であり、その時間の責任者だ。そして、この自然エリアの責任者は三人いて、そのうちの一人が僕たちに気付いてこっちにきてくれた。

 

「月無か。そういえば今日だったな」

 

 やってきたのはスピナーくん。カメラの前なので少し緊張しているのが面白い。

 

「自然エリアの責任者、スピナーです。あと二人いるのですが、生徒たちから離れるわけにはいかないので、申し訳ございません」

 

 あのスピナーくんが敬語。少しでもいい印象を与えなきゃいけないからそうしてくれるのはありがたいんだけど、まさか使ってくれるとは。いや、バカにしてるわけじゃないんだよ。

 

「名前だけ言えば、マスキュラーとステインの二人です。私よりも有名ですので、皆さんご存知かと思いますが」

 

「血狂いとヒーロー殺し……」

 

「ですね。どちらも元タルタロスに収監されていました。ですが、今は私とともに自然エリアの指導者及び責任者となっております」

 

 自然エリアは細かく分けると山、草原、森林、川と四つある。それらがすべて監視できるようにカメラが設けられており、怪しいことをすれば一発でわかる、というわけだ。疑うような真似はしたくないけど、一応しておかないとね。

 

 あと、ここを作るのは先生に一番頑張ってもらった。いやぁ、個性が色々あると便利というか、無理させてしまって申し訳ないところである。

 

「今は森林で鬼ごっこをしています。自然と触れ合うことは豊かな心を育て、健康にも良い影響を与えます。鬼役は都度変わりますが、初めは基本的に責任者ですね」

 

「鬼ごっこ……」

 

 体を動かすと言っても、ただひたすら走ったりだとか筋トレだとかそういうものではなく、基本的に遊びながら体を動かしている。体力をつけておいて損はない。が、ただ運動するだけじゃ疲れるだけで、嫌だなぁという気持ちが先行しちゃうかもしれないから、どうせなら楽しく運動しようというわけだ。

 

「いつも私たちから逃げ切ろうとみんな躍起になっています。こちらもプロですから、簡単には逃がしませんが……そうですね、ここでは力の入れ方と抜き方、それらを主に学んでいます」

 

「入れ方と、抜き方」

 

「朝起きてすぐに体を動かし、その後に様々な授業を受けねばなりません。そうなると当然その授業に使う体力を残しておかなければならないわけです。ですから、常に全力でいるわけにはいきません。ですから、次第に力を抜く、ということを覚えるわけです。あまりにも抜きすぎていればペナルティがありますが」

 

「その、ペナルティとは」

 

 ここにいるのが全員敵だから、きっと取材班はとんでもないペナルティを想像しているんだろう。ボコボコにして独房にぶち込むとか。もしかしたらもっとひどいことを想像しているかもしれない。

 

「食事の給仕係です」

 

「きゅうじ」

 

 間抜けな声を出したディレクターさんに思わず噴き出した。子どもに与える罰みたいだもんね。だからこそみんなやりたくない、というか僕だって誰だってやりたくないことだと思う。

 

「ここは全国から人が集まるので人数がバカにならない。ですから給仕も大変なわけで、全員やりたくないんですよ。ですから適度に力を入れ、抜く。まぁ、なんだかんだ全員仲間意識が強いので、給仕を手伝ったりするのですが」

 

「それでは罰にならないのでは?」

 

「誰かのためを思って行動しているのに、罰が必要なのか、と思いまして。罰を受けている側も誰かにそうさせるほどの人物であると言えますし。その辺りの見極めはしっかりできていますよ。科学的に実証できるかはともかく、我々はプロですから」

 

 プロ、というのはもちろん敵として、ということである。僕たちはお仲間を見つけるのがものすごく得意だからね。何か悲しい特技だけど、無駄ではないはずだ。

 

「さ、そろそろ行きましょう。スピナーくんもありがとね」

 

「礼を言われるようなことでもない。あぁそれと、みなさん。ここは安全ですが念のためこの男から離れないようにしてください。上層ではともかく、下層では特に」

 

 優しいなーと思いながら去っていくスピナーくんの背中を見送り、エレベーターに乗り込む。次に向かうのは上層三階だ。ここはさっきと比べて警戒する必要がまったく……ない、とは言い切れない。

 

 エレベーターの扉が開くと、取材班の人たちが一斉に呆けた。まぁ、敵の本拠地と思ってきてこれを見れば、そうなるだろうね。

 

「ここはキッズエリア。子どもたちのための階層です」

 

「……楽しそうですね」

 

 目の前に広がるのは様々な遊具で遊んだり、絵を描いたり、おままごとをしたりして遊んでいる子どもたちの姿。これだけみるととても敵連合って名前の施設だとは思えない。

 

「ここにも責任者が三人いて……」

 

「あー!凶夜だ!」

 

「ほんとだ!凶夜さんだ!」

 

「ちょ、まってまって!」

 

 説明しようとしたところに子どもたちが押し寄せてくる。嬉しいけど今はタイミングがちょっと。

 

「今日は何教えてくれんの?」

 

「私国語!国語がいい!」

 

「みんなごめんねー。今お仕事中なんだ。また後でくるから、その時まで待っててくれる?」

 

 手を合わせて謝る僕に、不機嫌を隠そうともしない子どもたち。正直に育ったね。誰に似たのやら。

 

「ぶー、だ。ぶー!」

 

「はい!子どもが勉強にやる気を見せてるのに放置はよくないと思います!」

 

「うーん、僕が面倒見たって感じするなぁ」

 

「ほんと、困ってます。最近子どもたちに凶夜くんの影がちらつくようになったんですよ?」

 

「お、ヒミコちゃん」

 

 子どもに囲まれて嬉しさ半分困り半分でいたところ、救世主、我らが女神が現れた。その名はヒミコちゃん。『凶夜サマ』から『凶夜くん』と呼んでくれるようになり、もう結婚してもいいんじゃないかと思っている最近である。ちなみに呼び方を変えたのは「子どもが真似したらダメですから」という理由。子どものためかよ。素晴らしい。

 

「みんな、凶夜くんは忙しいみたいだから荼毘くんと遊びましょう?」

 

「はーい!そうします!」

 

「荼毘くん……」

 

「ヒミコちゃん、あの子女に目覚めてない?」

 

「荼毘くんが悪いのです」

 

 あとなぜヒミコちゃんの言うことはすぐ聞くのか。僕先生っていうより友だちとして見られてない?これ正解な気がするんだけど、どうだろう。今度エリちゃんに聞いてみよう。

 

「というわけで、私がキッズエリアの責任者トガヒミコです。あとの二人は荼毘くんとマグ姉で、えーっと、呼んできた方がいいです?」

 

「あぁ、あらかじめ職員の資料は渡してるから編集で説明入れてくれるみたい。子どもたちの相手で忙しいだろうし呼ばなくてもいいよ。ありがとね」

 

「はーい。では、説明しますね」

 

 ……エプロンつけてるヒミコちゃん、やはり可愛いな。

 

「ここ、キッズエリアでは見ての通り子どもたちが遊んだり、勉強したりします。基本的には少しずつ勉強に慣らしていって、徐々に親元を探しつつ学校へ行って、という感じですね。勉強は慣れてきた子は時間割を組んだりしていますが、組んでいない子は最低限の勉強をして遊んでもらっています。あとは勉強したくなったらする、という形ですね」

 

「これだけ遊べれば勉強したがらなさそうなのですが……」

 

「勉強も楽しいもの、と思ってくれれば一瞬ですよ。それまでが難しいんですが、凶夜くんはその辺りものすごく上手ですね」

 

「いやぁ」

 

 褒められると照れる。さっきも何教えてくれるの?って寄ってきてくれた子がいたし、僕の授業は評判がいいみたいだ。

 

「例えば遊び道具を仲良く分けたいならどうすればいいか、そういう時に算数を教えて『必要なものだ』と思わせたり、言葉で遊びながら文章を教えたり、凶夜くんと一緒にいるとみんな楽しそうなんですよね」

 

 ここで、ヒミコちゃんは「いけないいけない」と首を振り、

 

「すみません、このエリアの説明でしたよね。基本的には親元を探す、というのが第一です。あとは必要最低限の知識、人との関わり方、道徳。なんでも楽しめるいい子たちを育てています。私としてはここに子どもがくる必要のない社会になるのが一番だと思っているのですが、中々そうもいかないみたいですね」

 

「……なんというか、その、ありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそ。そろそろお勉強の時間なので、これで失礼しますね」

 

 言って、ヒミコちゃんは忙しく仕事に戻っていく。前の笑顔も可愛かったけど、最近になってするようになった笑顔もふわりとしててすごく可愛い。うーん、ファンができないか心配だ。

 

「すみませんね。動き出したばかりなので、あまり時間が取れないんです」

 

「いえ、構いません。ですが質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

「何でもしてください」

 

「では、あの子どもたちというのは一体どのような背景があってここにくるのですか?」

 

 エレベーターに乗り込み、飛んできた質問に腕を組む。色々あるけど、うーん。

 

「基本的に身寄りのない子が施設に入って、そこで問題が起きたりしたらここにくる、っていう感じですかね。何らかの理由で集団生活が難しいとか、人と関わるのが極端に苦手とか、そういう子がよくきます」

 

「なるほど。では、保護施設の最終点だという捉え方で間違いないですか?」

 

「ですね」

 

 言っている間に上層一についた。緊張と恐怖が緩和されつつあるのを感じながら、今授業を行っているであろう教室に向かう。

 

「上層は最初に言った通り社会復帰間近の人たちがいるので、社会で必要なことを学ぶ場でもあります。今から見に行く授業はその一つですね」

 

 向かうのは広い教室。数百人ほどは入れそうな教室のドアに手をかけて、ゆっくりと開いた。

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