【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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※番外編は前書きを読んでください。

タイトルに「番外」とついているものは本編をある程度読んでから読むことをお勧めします。ネタバレになりますので、この位置まで読んでいれば読んでも問題ないですよ、というのをタイトルに(第○○話読了後推奨)といった風に記載します。それを参考にしてください。

さらに、番外編は本編を無視して書くことがあるので「1.~」「2.~」といったように注意書きを記載している場合があります。そちらを見て問題ないと思った方は読んでいただけると幸いです。

1.本編終了後、同じ年の二月あたりです。

2.登場人物
→凶夜、弔、出久、轟、飯田、麗日


番外:ハッピーバレンタイン(1)(本編読了後推奨)

「弔くん」

 

「なんだ?」

 

「えっと、触れない方がいい?」

 

「……」

 

 季節は冬。月は二月。そして日は十四日。二月十四日と言えばあの有名なイベントの日であり、世の男子学生がそわそわしだす日である。歳だけは学生の僕も例にもれずそわそわしていたのだが、代表・代表補佐室の扉を開けた瞬間それは吹き飛んだ。

 

 代表・代表補佐室にはデスクが二つ並んでおり、それぞれ弔くん、僕のもので、その手前に大きめのテーブルとそれを挟むようにソファが置かれている。そのテーブルの上に、段ボールが積まれ、中から何やら可愛らしい箱が飛び出していた。

 

「ハッピーバレンタイン、だとよ」

 

 弔くんは何やら疲れた様子。とりあえず部屋の中に入って段ボールを見てみると、『荼毘様へ』とか『死柄木様へ』とか書かれている。なるほど、ハッピーバレンタイン。

 

「朝一で黒霧が持ってきた。俺たちの活動が受け入れられてきた証拠とも言えるが、少し辟易するな」

 

「辟易だなんてとんでもない。好意は素直にありがたく受け取らないと」

 

「よし。じゃあ俺たちに渡すためそれを渡す相手ごとにわけてくれ。俺は忙しい」

 

「えー、めんどくさ」

 

 わかりやすいアクションとして手を一度叩く。すると僕の隣に空になった段ボールが積まれ、テーブルの上に渡す相手ごとにわけられたチョコが綺麗に並べられた。ほんと便利でなんでもありな個性だ。ありがたい。

 

「平和な使い方するなァ」

 

「いいことじゃん。えーっと……へー、弔くん結構貰ってる。モテモテじゃん」

 

「代表やってると注目度も違うからな」

 

 せっかくいっぱい貰ってるというのに弔くんは余裕そうだ。あれか、大人ぶってるのか?本当は嬉しいクセに。僕も数個貰ってるからめちゃくちゃ嬉しい。なぜか弔くんより少ないけど。

 

「ただ、やっぱり荼毘くんは多いねー」

 

「うちで受け入れてる女生徒も何人かやられてるしな。お前なんとかしとけ」

 

「荼毘くんに言ってくれない?」

 

 最近子どもの相手ばかりしてるから性格がどんどん柔らかくなって、見た目冷たいのに性格が温かいっていう見事なギャップを獲得している。あんなの前にしたら誰だってメスになるだろ。本人は自覚ないし。

 

「じゃ、これ届けるね」

 

「あぁ、頼む」

 

 また手を叩く。すると分けられていたチョコが綺麗さっぱり消えた。僕の個性が正しく発動しているなら、みんなの部屋にチョコを届けられているはずだ。多分スピナーくんあたりは今頃照れまくっているだろう。みんなのチョコをちらっと見てみたら何個かガチっぽいのがあったし。

 

「あぁ、一つ言っておくが調理室には行くなよ。トガとエリとマグネとラブラバが何か作ってるらしい」

 

「お、僕たちにくれるのかな?」

 

「かもな」

 

 あ、届いたチョコにはほとんど無反応だったのに嬉しそうな顔してる。わかりやすくなったなぁ。それとも僕たちの前ではわかりやすいだけなのかな?

 

「でも、そうなると荼毘くんが大変だよね?」

 

「心配するな。代わりの職員が入ってる。そろそろあいつらの代わりになれるようなやつらを育てないといけないから、今回のことはちょうどよかったな」

 

 なるほど。敵は一芸に秀でた人がそこそこいるからラブラバさんのポジションはあまり心配いらないけど、ヒミコちゃんとマグ姉のポジションは大丈夫かな?子どもの相手ってそんな簡単じゃないから少し心配だ。

 

「まぁ、荼毘がいる。お前は安心して雄英に行ってこい」

 

「はーい」

 

 そう、今日は雄英に行く日。ヴィラン学第二回だ。学生が色めき立つこの日に僕みたいな人間が行くのは申し訳ないけど、遠慮なくのぞき見しちゃおう。そして勇気が出せないガールがいたら背中を押すんだ。そして恋のキューピットと呼ばれ僕もモテる。完璧な作戦だ。

 

「寄り道すんなよ」

 

「恋の寄り道はしちゃうかも、ね?」

 

 ものすごい勢いでデスクとテーブルを越えて、飛び蹴りをくらわされた。そんなに怒らなくてもいいじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 その日一日のヴィラン学が終わり、昼休憩。僕は出久くんと轟くんの隣、対面にお茶子ちゃんと飯田くんという並びで座って食堂で昼食をとっていた。

 

「いやぁ、感想とか質問とか読んで思うけど、みんな真面目だよね。正直僕の授業なんて聞いてくれないと思ってた」

 

「月無自身はまぁ、アレだけど。授業内容自体は普通にためになるからね。みんなそこは認めてるんじゃないかな」

 

「一部『死ね』って言葉書いてくる子いるけど」

 

「かっちゃんだ……」

 

 爆豪くんは柔らかくして読めば普通の感想と、的確な質問をしてくれるが、所々暴言が挟まれている。あの子は人を悪く言わないと死ぬ病気にでもかかっているのだろうか。

 

「敵連合の見学もいつか行くみたいだしな。先生がそんな風なこと言ってた気がする」

 

「お、マジで?轟くんが言うならそうなのかな。帰ってから弔くんに聞いてみよう」

 

 雄英からそういう依頼があるなら弔くんに届いているはず。流石に敵連合内部に入るとなると雄英と敵連合だけの問題じゃなくなるから時間はかかるだろうけど、いつかきてもらっていい敵連合を見せられるといいな。それを実現するためにしっかり仕事しなければ。

 

「で、聞いていいかい?」

 

「ん?何?飯田くん」

 

「その山盛りのチョコは、まさか昼食のつもりか?」

 

「あぁ、ごめんね。甘い匂いさせちゃって」

 

 結構な数貰ったからすぐに消費しなきゃいけないと思って食べてたんだけど、ご飯食べてるときに甘い匂いしたら嫌な子もいるよね。でも手作りって日持ちしないのもあるから、こういう機会に食べておかないと。

 

「昼食にチョコばかり食べると栄養バランスが悪い。健康にも支障をきたすぞ」

 

「僕の個性があればどうとでもなるからね。体を健康状態にできるし、チョコに飽きてきたら『一口目の美味しさ』を感じられるようにもできる」

 

「え、羨ましい。ね、それって私にもできるん?」

 

「できるよ。それを君が幸福と思うなら。試しにお米食べてみて?」

 

 僕の言う通りにお茶子ちゃんがお米を口に運ぶのを見て、個性を発動させる。

 

「わ、ほんまや。ずっと発動してて」

 

「もちろん。女の子のために役立てるなら僕は幸福だからね」

 

「すごい個性なのに使い方が地味だ……」

 

 出久くんは地味だって言うけど、個性はこういう平和な使い方をした方がいいに決まってる。お茶子ちゃんめちゃくちゃ嬉しそうだし。ご飯を美味しそうに食べる女の子って良くない?僕だけ?

 

「あ、なんでチョコかと思ったら今日バレンタインか。月無くんでもそんなにもらえるんやね」

 

「僕でもって失礼じゃない?これでも敵からは大人気なんだけど」

 

 お茶子ちゃんって結構毒吐くよなぁ。悪気はないんだろうけど、知らず知らずのうちに人を傷つけていそうだ。僕くらいのメンタルじゃなきゃ今のもやられてたね。スピナーくんとか結構繊細だし。

 

「あ、そういえばお茶子ちゃんは誰かに渡すの?バレンタイン」

 

「ぐっ、!?」

 

「麗日くん!?」

 

「おっと」

 

 なぜかお茶子ちゃんが喉を詰まらせたので、個性を使って治してあげる。「え、どこいったん?こわ」と困惑しているお茶子ちゃんに再度同じ質問を投げかけると、困った様子で曖昧に笑った。ふむ。

 

 ここで焦って答えを濁すということは、渡すことを知られたくないということがまず第一に考えられる。その場合なぜ知られたくないかということになるが、単純に茶化されるのが嫌、もしくはこの場に渡す相手がいて、しかしまだ踏ん切りがつけられないから、ということが考えられる。ここから導き出される結論はつまり。

 

「え、僕にくれるって?」

 

「ごめんなさい」

 

「ストレート謝罪……日本の心……」

 

 ショックだ。これだけチョコを貰えてるからいけると思ったのに。冷静に考えれば僕に用意してるわけがないんだけど。調子に乗っていたのか?

 

 しょうもないことを話していると全員が食べ終え、教室に戻り始める。僕はもう雄英に用はないので帰るだけなのだが、ちょこっとだけちょっかいを出そう。

 

「ねね、お茶子ちゃん」

 

「?」

 

「相手、出久くんっしょ」

 

「!!?」

 

 女の子がしてはいけない顔で首を振り、出久くんが聞いていないか周りをきょろきょろしだした。心配しなくてもいいのに。

 

「僕の個性で話を聞かれることはないから、言ってみ言ってみ?」

 

「こういう俗っぽい話好きなん?」

 

「そりゃもう。したことなかったし」

 

 お茶子ちゃんが気まずそうな顔になってしまった。うそうそ今のなし。嘘じゃないけど。

 

「で、実際のとこどうなの?反応的には確定だけど、何か悩んでる感じ?」

 

「え、なんで」

 

「純粋な子は感情見えやすいからねー。あ、戦うときは目を見て『何か作戦があるな?』って気づかれることもあるから気を付けた方がいいよ」

 

「身に染みてます……」

 

 感情表現豊かだな、この子。付き合いやすい子って感じだ。もちろん友だちとしてね。きっと優しくて純粋な子なんだろう。うちのエリちゃんには負けるけど。

 

「んー、なんか、邪魔にならんかなーって」

 

「邪魔?」

 

 お茶子ちゃんは迷いながらも話し始めてくれた。目を合わせてくれないのは僕が目を合わせられないほどキモいからだろうか。いや、あんなにチョコを貰ったんだからそんなはずはない。……そもそも僕は本当に女の子からチョコを貰ったのか?

 

「や、ほら。デクくん頑張ってるのに、足引っ張ることにならんかなーって」

 

「んー、大丈夫でしょ」

 

「軽っ」

 

「それが気になるなら、邪魔にならないような渡し方すればいいんだよ。日頃のお礼とか、変な意味で捉えられないようにさ。何より」

 

 恐ろしい推論を頭に浮かべながらぺらぺら喋る。まさか女の子じゃないなんてことありえないよね。みんな可愛い包装してたし。マグ姉もあんな感じのことするけど、そんなそんな。

 

「お茶子ちゃんが渡したいって思ったなら渡すべきだと思うよ。出久くんも貰えたら嬉しいはずだし」

 

「……簡単に言うなぁ」

 

「まぁ、渡して面白いことになればいいと思ってるし」

 

「話さんかったらよかった」

 

 呆れ顔になって僕を追い越し、お茶子ちゃんが行ってしまった。このままでは僕の評価が下がりっぱなしになってしまうので、背中に一言。

 

「今度どうなったか教えてね!」

 

「……」

 

 じーっと睨まれた後、舌を小さく出してべーってされてしまった。あの子、アレを素でやってるとしたら天才だぞ?




季節を無視して書きました。そして長くなりそうなので一旦区切り。

それはそうと、Twitterフォロワーの明火様から完結記念イラストを頂き、掲載許可も頂いたのでこちらと『あとがき』の方にも載せておきます。めちゃくちゃ嬉しいです。素敵なイラストありがとうございました!


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