【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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第27話 ヤクザへ

 若頭と会った日から数日。僕たちは現本拠地に集まっていた。みんな帰ってくるたび何かしらの家具を持ってくるので、仕切りを用意してそれぞれの部屋を作ったりしている。壁を作れる個性の人とかいないかな。ここって広いけど部屋がないから仕切り立てないとダメなんだよね。それってプライベートな音が聞こえちゃうから、ちょっとよくない。

 

 本拠地の中央には会議テーブルよろしく大きな円卓がある。僕たちは何か全体で話すべきことがあると、決まってここに座っていた。別に長方形の会議テーブルでもよかったのだが、なんとなく席順で優劣をつけているみたいで好ましくなかったのと、単純に声が届きづらそうだと思ったから円卓にした、らしい。ちなみに今の席順は弔くんの左に僕、順に、ヒミコちゃん、マグ姉、トゥワイスさん、スピナーくん、コンプレスさん、荼毘くん、黒霧さんとなっている。この順番で円卓を囲んでいる感じだ。

 

 ヒミコちゃんが僕の腕に噛みついてチウチウしようとしていたのをマグ姉が「コラ!凶夜くんを食べるなら、いい意味で食べてあげなさい!」と僕の評価を地の底に落とすような注意をしたとき、弔くんが口を開いた。あ、あとぜひ食べてください。

 

「月無とトゥワイスは知っているが、死穢八斎會と手を組むことになった」

 

「死穢八斎會……あぁ、ヤクザか」

 

 荼毘くんはその名前を知っていたみたいで、納得したみたいだった。恐らく荼毘くんは暴れまわっていた関係上、一番そういう情報を得やすかったからだろう。

 

「やだ、極道ってこと!?危険な香り!ドキドキしちゃう!」

 

「ヤクザって、私たちと何が違うんです?」

 

 マグ姉は頬に両手をあてていやんいやんとくねくねしていた。隣にそんな人がいるのに、ヒミコちゃんは首を傾げて僕に聞いてくれる。その可愛さににこにこと笑みを浮かべつつ、僕は説明してあげた。

 

「ヒーローが出てくるまで裏社会を取り仕切っていた団体で、今は監視されてる敵予備軍ってとこかな」

 

「時代遅れの天然記念物さ」

 

 僕の説明に付け加えるように、コンプレスさんが肩を竦めながら言った。今から協力しようって相手に時代遅れの天然記念物扱いは失礼だと思ったけど、実際そうだから仕方ない、のかな?

 

「それで、協力ってどういうことだ?」

 

 スピナーくんが腕を組んで弔くんを睨みつける。先輩のフォロワーだから、ヤクザと協力すること自体が気に入らないんだろう。睨まれた弔くんは「落ち着け」と言ってから、

 

「こっちから向こうに人を寄越すってことだ。まぁつまり、ヤクザ入りだな」

 

「……それはまた」

 

 黒霧さんはこの意味をいち早く理解したみたいで、呆れたように呟いた。多分この段階では、あの場にいた僕とトゥワイスさん、そして黒霧さんしかわからない。

 

「なんだ?ヤクザになれってことか?」

 

 荼毘くんが頬杖をつき始めた。気に入らないと顔に書いている。多分、ヤクザはルールが多そうだからって理由で行きたくないんだろう。大して仲もよくない相手からああしろこうしろと言われるのはストレスだ。特に僕たちみたいな連中はね。

 

「ヤクザになるのは一時的だ!死柄木はメリットだけ掻っ攫おうとしてるのさ!」

 

 あの場にいたトゥワイスさんは元気がいい。自分が敵連合の有益になりそうなものを見つけてこれたことにテンションが上がってるのかな。いつもの何倍も愉快そうだ。

 

「あいつらの功績、努力。すべて俺たちが貰おうと思ってる」

 

「悪だくみさ。いつものね」

 

 個性を破壊するクスリなんて、僕でなくても欲しがるに決まってる。どんなヒーローだって撃ち込まれればイチコロだ。あれがあれば戦闘は大分楽になるし、色々なことにも使える。色々な悪だくみができる。

 

「それで、ヤクザを潰すため、誰かに行ってほしいんだ。向こうの要望は黒霧、トガ、トゥワイス。月無は絶対いらないって言われてしまった」

 

「ほんと失礼だよね。目の前で言うんだよ?そら僕だって向こうの立場なら絶対いらないって言うけどさ」

 

 これでも弔くんの右腕らしき存在だ。そんな右腕がいらないなんて言われてしまうなんて、組織として格好がつかない。あれ、僕のせいじゃない?これ。

 

「が、月無は押し付けることにした。俺の右腕だって言って、信頼の証だと。めちゃくちゃ嫌そうな顔してたな、あいつ」

 

 確かに。眉間にこれでもかと皺を寄せて、僕が睨まれてしまった。提案したのは弔くんなのに。絶対僕の印象悪いよね。

 

「で、黒霧はやれない。他にやってもらうことがあるからな。そうなると自動的にトガとトゥワイスになるが……月無を押し付けたせいか、もう一人要求されてしまった。俺としては、できるだけ人を攫いやすい個性を持っている方がいい」

 

 人を攫いやすい、というのはどうやら個性を破壊するクスリは人から作っているらしい、ということからだ。はっきりとは言っていなかったが、多分そうだ。だって、個性なしに科学的に作れるものなら、僕たちが存在を知っていてもおかしくなかった。個性を破壊するなんてもの、目立たないわけがないからね。

 

「そうなると俺か。あんまり気が進まないなぁ」

 

 人を攫うって言うならコンプレスさんが一番だ。触れるだけで圧縮して持ち運べてしまうんだから。触れられた時点で抵抗はできない。強すぎない?コンプレスさん。

 

「んーなら、私でもいいの?」

 

 乗り気ではないコンプレスさんを見て、マグ姉が手を挙げた。まさか自分から行こうと言ってくれる人がいるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりする。でも確かに、そうか。攫うっていうならマグ姉の磁力も向いている。コンプレスさんは触れなきゃいけないけど、マグ姉は少し離れていても磁力を付加して引き寄せることができる。問題は、相手がめちゃくちゃ強かったら、っていうところだけ。でもそれならどっちみちコンプレスさんでも無理か。

 

「いってくれるなら、助かる。ありがとうマグネ」

 

「いやん!お礼何ていいわよ!それに私、極道気になっちゃって!」

 

 マグ姉はそう言うが、多分みんなが乗り気じゃないからだろう。マグ姉は面倒見がいいというか、なら私がと言える人というか、とにかくいい人だ。本当は甘えちゃいけないんだろうけど、正直助かってる。

 

「……トガ、トゥワイスはどうだ?」

 

「俺はいいぜ!嫌だけどな!」

 

「私も、凶夜サマと一緒のお仕事なら行ってみたいです」

 

 ボロボロになるかもしれないですし、と付け足すヒミコちゃんは、恍惚とした表情を浮かべていた。そんなに見たいの?その現場に立ち会うとものすごく危ないんだけど。もしかしたらがあるし、できれば見せたくないなぁ。

 

「ありがとう。正直、こんなに早く決まるとは思っていなかった」

 

 弔くんもすんなり決まったことにびっくりしているみたいで、気持ち目を少し見開いていた。それでもお礼を言える辺りきちんとしていると思う。お礼一つで結構違ってくるからね。ありがとうと言われて気分が悪くなる人はあまりいないと思う。いるとしたら相当捻くれている。

 

「数日後、迎えを寄越してくれる手筈になっている。それと、その日からヤクザが潰れるまではここにずっといてもらう。何があるかわからないからな」

 

 そう言うと、弔くんは僕、ヒミコちゃん、マグ姉、トゥワイスさんを順番に見て、言った。

 

「目的は、ヤクザの努力を貰うこと。お前らならできると信じてる。何かあったら俺たちがサポートする。安心して、そして帰ってこい。それだけだ」

 

 弔くんは返答を待たず立ち上がると、弔くんの部屋である仕切りの向こうへ行ってしまった。恥ずかしかったのかな?

 

「弔くん、絶対照れてます」

 

「かわいいわねぇ。でもああいう子だからついていきたくなっちゃうのよ」

 

「いいやつだよな!感じ悪いぜ!」

 

「あんまり言わないで上げてね。多分聞こえてるから」

 

 仕切りしかないとこういう言葉も聞こえちゃうから、やっぱり壁が欲しい。いや、むしろこれは聞こえた方がいいのかな?弔くんは聞こえない方がいいだろうけど。

 

「なぁ、この近くで行動すんのはいいのか?」

 

「いいけど、暴れないでね。目をつけられたらもしものとき手が足りなくなるから」

 

 荼毘くんはつまらなさそうにそっぽを向いた。暴れる気だったな?

 

「それじゃあひとまずこれで解散。ヒミコちゃんとマグ姉とトゥワイスさんは向こうにいったときのことについて話し合おう」

 

 解散の合図を出すと、ヤクザ組四人以外が立ち上がって各々の時間を過ごし始めた。荼毘くんが頭をたたいてコンプレスさんが肩をたたいてきたけど、なんでだろう。頑張れってことかな?深い意味はないかもしれない。

 

 僕は暇になったのか、ヒミコちゃんに意味もなく足を踏まれながら、話し合いを始めた。

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