【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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USJ襲撃
第2話 学友とゲーム


 僕の不幸は周りの人間がクズばかりだからか、外に出て猫を撫でていたら川に流される程度になりを潜めていた。もうちょっとマシに潜め。

 

 黒霧さんが助けてくれたものの、弔くんには「外に出るな」と顔を4本の指で触れられながら脅された。すると、先生から「弔と凶夜が一緒に行動すればマシなはずだよ」という言葉をいただき、僕が外に出るときはいやいや弔くんもついてくることになった。となると黒霧さんも一緒になるわけで、最近はちょくちょく3人でおでかけしている。あと僕は猫が嫌いになった。

 

 そんな中、とある計画のために僕が一緒に行動しても問題ないようなクソ野郎どもをスカウトしていたのだが、なんともまぁ、弔くんに意外なカリスマ性があることがわかった。なんというか、弱い者の味方というか、弱い者の気持ちがわかるというか、ここらへんの他人の心につけ入るスキルは、先生とどこか通じるものがあると思う。

 

 そういう話をチンピラにしてみたら、どうやら僕にも不思議なカリスマがあるらしい。なんでも「こんなやつがいるなら俺たちはいけてるほうだ」と思えるとか。言い換えれば、僕という存在によって前を向かせることができるということで、大変素晴らしいカリスマである。おかげでスカウトした初日は僕の姿を一目みようというチンピラであふれかえっていた。そんなに下なのか。僕は。

 

 弔くんに「舐められてんじゃねぇよ」と言われたので、「マジカルマジカル、不幸になーれ」とお調子者な感じでチンピラのうちの1人を不幸にしてみたら、たちまち「厄災の神」と恐れられるようになった。なんでも、僕が不幸にした瞬間家が敵に襲われ、わかりやすいくらいの無一文になったらしい。ぎゃーぎゃーうるさかったので、「やられる覚悟もないのにここに立ってるんだ?」とそれらしいことを言ってみたら静かになった。弔くんには殴られた。

 

 君が舐められてんじゃねぇよとかいうからこうなったんだ、と反論すると、今度は「崇められてんじゃねぇよ。丁度いいところねぇのかお前」と言われた。丁度いいところに調節できるような人間なら、今頃君の隣に立っていなかったと思う。

 

 そんなこんなで僕が敵連合に入学してから数日。かの有名なヒーロー科のある雄英高校に弔くんと黒霧さんが潜入するというので、僕もついていこうとしたところ、「お前がいると必ず目立つからくるな」と言われた僕はめちゃくちゃ暇していた。最近はいつも弔くんと黒霧さんと一緒だったため、この暇が苦痛で仕方ない。

 

 ので、チンピラくんと遊ぶことにした。不幸にしたチンピラくんである。

 

「チンピラくん。ゲームしよー」

 

 暇すぎたのでバーに呼びつけ、バンバンとカウンターをたたきながら言うと、チンピラくんは呆れたような目で僕を見た。あれ?崇められてるんじゃなかったっけ?

 

「ゲームって……月無さん、ゲーム恐ろしく弱いじゃないですか」

 

 そう、僕はゲームが恐ろしく弱い。それもそのはず、不幸なんていう個性を持つ僕は、運の関わる要素を持つゲームで勝てた例がない。弔くんと黒霧さんと時々ゲームをするが、運要素があるゲームではとことん勝てない。じゃあ運要素がないゲームをすればいいじゃないと思うかもしれないが、果たして、それでいいのだろうか?そんなことをしたら個性に屈服したようなものではないか?

 

「ふっ、僕らは敵連合。例えそれが自分の個性であろうと負けちゃいけないのさ」

 

「月無さん……」

 

 チンピラくんはなぜか涙ぐんでいた。あれは尊敬とか感動とかではなく、憐みの色が強い気がするのは気のせいだろうか。

 

「というわけで、今回やるのは数字あてゲーム!」

 

「数字あてゲーム?」

 

「うん、僕が考えた(大嘘)ゲームさ」

 

 ルールを説明しよう。

 

 1.お互いに0~9までの数字を組み合わせた4桁の数字を作る。この時、数字の重複はなし。不正を防ぐために紙に書いておく。

 

 2.先攻後攻を決め、先攻が0~9の数字を組み合わせた4桁の数字を宣言する。宣言された側は宣言された数字と自分が作った数字を比べて、場所と数字があっていればH、数字だけあっていればBと宣言する。例えば、作った数字が1234で、宣言されたのが1546なら、1があってるから1H、4が数字だけあってるから1B。

 

 3.(2.)をお互いに繰り返していき、4桁の数字を当てた方が勝ち。当てられた方が負け。

 

「おっけー?」

 

「まぁ、はい。要は4桁の数字を当てればいいんですよね?」

 

 ふふ、こんな理解度のやつに僕が負けるわけがない。僕は不幸だけど頭がいい。って先生が言ってたから、これで僕の不幸を加味しても勝率は70パーセントは固いだろう。僕はこのゲームを発見した時、すぐに答えを見つけ出す方法を編み出した。いや、僕が作ったんだった。今のなし。

 

「じゃあ、経験者の僕が後攻でいいよ」

 

「わかりました。4桁の数字ができたら教えてください」

 

 ここは、今適当に思い浮かんだ「文字数」という言葉を頼りに、1986にしよう。

 

「決まったよ」

 

「俺も決まりました。じゃあいきますよ?」

 

 さぁこい。僕の脳には既に君の負ける姿が浮かんでいる。そしてその瞬間、僕の不幸克服の第一段階が終了したことになる。

 

 僕の進化の礎となれ!

 

「9186」

 

「は?」

 

 待って。僕のつくった数字ってなんだっけ?確か1724?そうだ。そうだった。僕は紙をびりびりに破いて新しい紙に1724という数字を書いた。

 

「ちょっと待ってくださいよ!何堂々と目の前で不正を働いてるんですか!」

 

「うるさいよ!だってこんなん僕の負けじゃんか!こっからの勝ち方なんてバカでもわかる!」

 

「いや、俺大バカですし、もしかしたら月無さんが運よく俺の数字を当てられるかも」

 

「ほんとだ。2H2B。僕の運の良さを見せてやろう」

 

 よく考えればこんなチンピラがまともな考え方できるわけがないし、僕がここで運の良さを見せつけば、それは克服の一歩となる。

 

「じゃあ行くよ!2391!」

 

「あ、0です」

 

 よし!これで数字が4つ消えた。後はじわじわ追い詰めていくだけだ!

 

「えーっと、俺の番ですね。1986」

 

「バカ!バーカ!正解だバカ!でてけ!二度と僕の前に現れるな!」

 

 全然面白くない。なんだこのゲーム。誰とやっても最大2手で負ける気がする。僕だけが不幸になって周りのみんなを幸運にしてる気がする。

 

 むしゃくしゃした僕はチンピラくんを追い出し、詰め将棋を始めた。運要素がないので、心のオアシスである。

 

 ちなみに弔くんが帰ってきた後やってみたが、見事に一手目で敗北した。黒霧さんともやったが、一手目で敗北した。激怒した僕は人生ゲームを取り出したが、約束手形を取りつくしたところで涙目になった僕を慰める形で終了した。

 

 ただ、弔くんが僕の醜態をみてえらく楽しそうだったので、よしとする。が、やっぱりムカついたので夕飯のおかずをよこどりした。僕のおかずがすべて崩壊させられた。ボロボロになったおかずを平気な顔をして食べていたら、びっくりしたような目で見られたんだけど、なんでだろう。たぶん、ボロボロになったものすべてをノーミスでつかむ僕の箸使いに恐れをなしたのだろう。

 

 ただ、なぜか黒霧さんが僕の頭を撫でながらおかずをわけてくれた。僕はかわいそうな目で見られることが多い気がする。

 

 ちょっとした後、弔くんが「将棋でもするか」と誘ってくれた。この前やったとき僕が勝ってしまい弔くんが癇癪を起したから嫌いなのかと思ったけど、誘ってくれたのならぜひやろう。

 

 負けた。こっそり練習していたらしい。悔しい!!

 

 

 

『やぁ、弔、凶夜。色々と順調みたいだね』

 

 弔くんに4本の指でつつかれながらおちょくられていると、モニターがついて先生があらわれた。色々とってなんだろう?一つは雄英に関することだと思うけど、

 

「あ、もしかして生活のことについても?」

 

『あぁ。凶夜、不幸の副産物か、君は察しがいいね』

 

 褒められちゃった。あんまり先生に褒められると基本的に先生大好き人間の弔くんがいい顔をしないので困るが、褒め言葉は素直に受け取っておくが吉である。

 

「察しがよくなってしまうほど不幸だって憐れんでるんだよ、バカ」

 

「バカって言うな!この前僕に将棋負けたくせに!」

 

「ついさっきその負かした相手に負かされてんだろ。ちゃんと考えてもの喋れ」

 

 悔しくなった僕は再び駒を並べ始めた。今度は僕が負かしてやる!

 

 そう僕が意気込んでいると、先生が笑いをこらえるような調子で話だした。

 

『弔、凶夜。将棋は大局を見る目を養うのにいい。実践に勝るものはないが、できるだけ毎日やるといいよ』

 

「毎日?こいつの相手を毎日すんのは疲れるぞ」

 

「負けるのが怖いの?」

 

「上等」

 

 パチ、パチと将棋を始めた僕たちに、先生が問いかける。

 

『君たちは、将棋の駒ならどれが好き?』

 

 それは、どういう問いかけなんだろう。役に立つからとか、単純に強いからとか、そういう答えを求めて問いかけているものではない気がする。なら僕の答えは決まっている。

 

 僕が答えようとすると、弔くんが先に答えてしまった。

 

「王」

 

『それは、どうしてだい?』

 

「死なねぇから」

 

 いや、相手に負けたら死ぬと思うんだけど……まぁ、負けを考えないっていうのは弔くんらしいか。やるからには勝つが当たり前だもんね。

 

「僕は、歩かな」

 

 僕があげたのは前にしか進めない歩。相手の陣地に入れば金の動きができるけど、そうなるまではほかの駒の道を開いたり、壁になったり釣り駒になったりと大忙しの駒である。

 

『それは、どうしてだい?』

 

 弔くんに対する問いと同じ問いをしてきた先生に、僕は歩を一歩前進させながら答えた。

 

「歩である限り、前にしか進まないから。それに、何度やられても次がある」

 

「だが、取られたら相手の駒になるだろう?」

 

 ん?あれ、弔くんの王が好きって、もしかしてそういうこともある?自己投影しすぎじゃない?僕が言えた義理じゃないけど。ただ、お忘れだろうから言わせてもらう。

 

「僕は死なないし、死ねないよ。だから、相手の駒にもならない」

 

「今将棋の話してんだろ」

 

 あれ?わざわざキメ顔で言ったのに、軽く突き放された。しかも飛車とられた。いつの間に。

 

 慌てる僕がおかしかったのか、先生が楽しそうに、満足そうに笑っていた。後で黒霧さんが教えてくれたが、弔くんも微妙に笑っていたらしい。僕に恥かかせてそんなに楽しいか。

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