【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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第3話 社会見学前夜

 どうやら、明日は社会見学に行くらしい。行先はかの有名なUSJ。絶対嘘だと思って問いただしてみると、雄英高校にあるウソの災害や事故ルーム、略してUSJというらしい。

 

「え?それ僕死ぬんじゃない?」

 

 いくらウソの災害や事故だからと言って、僕からすれば最大限の凶器となりえる。僕にかかれば猫だってゴミの中や川の中にワープさせるマシーンになるのだ。ウソの災害や事故なんて、ドストレートに危険すぎてむしろ笑えてくる。

 

「お前死ねないんだろ?なら大丈夫だろ」

 

 何言ってんだこいつ、と目で語る弔くんは、僕を信用するような言葉を口にした。人の温かみはこんなにも優しい気持ちになれるのかと感動しかけたが、弔くんの性格を考えると、これは「お前は死なないからどんなひどい目にあってもいい」という意味である。おい、聞き捨てならないな。

 

「いざというときは私か先生が回収しますので、ご安心を」

 

 黒霧さんがそういうなら仕方ない。それに先生が僕を回収してくれるならなお安心だ。回収という言い方が気になるけど、もう今更そういうことを指摘してもキリがない。それに僕がそういう扱いに目くじらを立てる度弔くんが嬉しそうに笑うのだ。人を馬鹿にして笑うのはよくないぞ。腐敗臭のする性格め。

 

「ならいいけど……僕を連れて行って大丈夫なの?個性の都合上、あんまり団体行動に向いてないっていうか」

 

 僕の個性は不幸で、僕自身は常に、あとは設定した相手を不幸にできる。先生曰く僕は人に迷惑をかけたくないと言いつつも心の中ではどうでもいいと考えているので、誰かを巻き込むことを不幸と考えていないということから僕にのみ不幸が降りかかるらしいが、雄英に入学したようなキラキラする若者たちは、きっと他人を巻き込むことが何より不幸に違いない。それは一般人然り、敵然り。となると、僕の個性は雄英生に発動した時点で無差別な殺戮兵器となる。

 

 それに、幸せな人にはめちゃくちゃ効く僕の個性だ。最悪、チンピラくんたちが全員死ぬことも考えられる。

 

「構わねぇ。あいつらは所詮捨て駒だ」

 

「そっか。なら構わないね」

 

 少々心が痛むが、弔くんが言うなら気にしないことにしよう。僕の居場所はチンピラくんたちのところじゃなくて、あくまでもここだし。こんなに不幸が控えめになる居心地のいい場所は二つとない。はず。

 

 僕の個性がなくなれば別だろうけど。

 

「お前の個性は幸せなやつには滅法強いんだろ?なら連れて行かねぇ選択肢はない」

 

 それに、と弔くんは続けて、

 

「お前は対オールマイトの切り札になりえる……らしいから、今回はその試運転だ。だからお前にはオールマイトとは会わずに、バラけさせたガキの相手をしてもらう。お前の天敵のイレイザーヘッドもいるかもしれないからな」

 

「イレイザーヘッド?」

 

 その言葉を聞いて、僕はハゲ頭を思い浮かべた。ハゲが僕の天敵とは、どこまでもしょうもない男である。僕。

 

 よく聞いてみると、目でみるとその人の個性が打ち消されるという個性らしい。その人の目だけもらえないかな。えぐりだして僕の目に移植する、みたいな。そういえば先生は人の個性を奪って誰かにあげられるみたいだし、頼んでみようかな?

 

「一応言っとくが、イレイザーヘッドの個性を貰おうなんて考えるなよ。そんな幸運、お前の個性が許すわけがない」

 

「何が起こるかわかったものではありませんからね」

 

 そんな考えが顔に出ていたのか、弔くんと黒霧さんに釘を刺されてしまった。いいじゃないか別に。この不幸って個性めちゃくちゃ邪魔なんだよ?君たち不幸にしてやろうか。

 

「でも僕がもらえたところで自分の個性は消せないのか。雑魚じゃんイレイザーヘッド。だからハゲなんだよ」

 

「更に言っておくがイレイザーヘッドはハゲじゃない。むしろぼさぼさだ」

 

 こういうときって普通ふさふさって言わない?そう疑問に思っていると黒霧さんも頷いていた。どうでもいいけど、黒霧さんって真っ黒だから頷くとか、そういう動作がわかりにくいんだよね。もっと声に出して伝えてほしい。コミュニケーションを知らないのか?

 

「さて、本題はお前がどのエリアに行くかだ。お前の個性のことはお前が一番わかってるだろ。だからお前が決めろ」

 

 僕の個性のことは先生が一番わかってると思うけど。なんとなく。先生がいなかったら範囲の設定なんかできっこなかっただろうし。

 

 僕は黒霧さんからUSJの地図を受け取り、どんなところがあるかじっくりと眺めた。なんか、旅行前にどこに行くかを決めてるみたいでわくわくする。実際はどこでひどい目にあうか決めているんだけど。

 

「大雨・暴風ゾーンはなしだね。雄英の子を見つけられない可能性がある」

 

「あぁ、お前にはできるだけ怪我をしてもらいたい」

 

「弔くんって僕のこと嫌いなの?」

 

「いや、好きだ。お前の不幸がな」

 

 やっぱり先生と似てるな、弔くん。

 

 弔くんが僕に怪我をしてもらいたいらしいので、その要望を踏まえつつ消去法でゾーンを削っていく。

 

「となると、水難ゾーンもなし。僕泳げないし」

 

「そうなのか?いや、そうだろうとは思っていたが」

 

 むしろ義務教育を受けず、個性の制御と勉強ばかりしていた僕が泳げたらそれはものすごい才能の持ち主ではないだろうか。もちろん、そんな才能が不幸な僕にあるわけがない。個性が発現する前は泳げていたのかもしれないが。

 

「山岳ゾーンもなし。雄英の子が来る前に落っこちちゃう」

 

「お前クズと一緒ならそこまで不幸にならないんじゃなかったか?」

 

「念のためだよ」

 

 僕の不幸を舐めちゃいけない。常に最大限の注意を払う必要がある。

 

「火災ゾーンは……うん、やめとこう」

 

「やめとこう?」

 

 あの時のことを引きずってるわけじゃないけど、できれば避けておきたい。個性の発現があの状況だったから火はむしろ得意分野だと思うけど、あまり肉を焼きたくはない。無条件で一番怪我をしやすいところだけど、やめとこう。

 

「となると、土砂ゾーンか倒壊ゾーンだけど……」

 

「倒壊ゾーンだな」

 

「やだよ。目と耳が潰れちゃうかもしれないし、そうなると役立たずじゃん」

 

 というわけで僕は土砂ゾーンにしよう。チンピラくんたちに僕を囲ってもらえば土砂に巻き込まれることはないだろうし。不幸なのは僕だけで、チンピラくんたちを不幸にしなければいいからね。

 

「おい、怪我をするって話どうなった」

 

「そこらへんは雄英の子にボコボコにしてもらうから」

 

 我ながら情けないな、僕。襲撃しに行くのにボコボコにしてもらうって何?女の子相手なら歓迎だけど。できれば蹴りで。マゾかよ。

 

「というか、なんで怪我してほしいの?先生から僕の個性に関係するって言われたの?」

 

「あー、関係するっちゃするな」

 

 怪我することが不幸に関係する?なんだそれ。僕が不幸そうな状況であればあるほど不幸が強くなるってこと?追い打ちすぎでしょそれ。どんだけ報われないんだよ。

 

「まぁ、怪我をすればわかる。わからねぇかもしれんが、先生はお前に対する試験みたいなもんだって言ってたな。自分で気づけ、らしい」

 

 試験か。学校ぽくてテンション上がるな。

 

「僕の個性に関して僕自身で気づけって?不幸な僕に気づけるのかな」

 

「先生曰く、絶対に気づけるらしいですよ」

 

 ……ということはつまり、不幸な僕に気づける程度には絶望的で、最悪な個性だってこと?それに気づくことが僕にとって不幸だってこと?

 

 それは、なんというか。

 

「気づきたくないなぁ」

 

「気づけ。お前の個性は理解さえすれば最悪だからな」

 

 なんで理解するだけでひどい目にあわなければならないのか。運命は僕をいじめすぎだと思う。今のめちゃくちゃ痛いやつみたいじゃない?思春期とか中二病とかなかった僕からすると恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい。実際に穴があったら入りたくなくても入ることになるんだろうけど。

 

「楽しみにしてる。お前は、明日を境にまた一歩こちらに近づくことになる」

 

「ってことは、弔くんともっと仲良くなれるってこと?」

 

 僕のセリフに弔くんはものすごく嫌そうな顔をしたけど、気にしない。弔くんは僕の中で嫌がっているときは大抵照れ隠しだって決めつけてるから、きっと弔くんも僕と仲良くしたいに違いない。

 

 そうと決まれば、頑張ろう。明日はUSJの土砂ゾーンに行って、雄英の子に会って、ボコボコにされて、個性について理解すればいい。

 

 個性について理解するのは難しいだろうけど、他はそんなに難しいことじゃない。いつも通り流れに身を任せれば、勝手になっているだろう。なんせ、ひどい目にあうことに関しては右に出るものはいないから。

 

 主観だけどね。

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