【完結】僕の『敵連合』   作:酉柄レイム

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第8話 路地裏の喧嘩

 黒霧さんのワープゲートから出た僕は、とあるビルの屋上に放り出された。放り出されると大抵大怪我をする僕だが、黒霧さんがそんなミスをするはずもないので、今の僕は無傷である。

 

「じゃ、黒霧さん。また後でね」

 

「よい働きを」

 

 黒霧さんはクールに告げて、弔くんの下へとワープしていった。そういえば今思ったんだけど、僕どうやって帰ったらいいんだろう。どれだけ暴れても回収しに来てくれるならいいんだけど、暴れて迎えにきてくれなかったら僕が自力で逃げ回るしかないのかな?まぁいっか。多分先生が助けてくれるでしょ。

 

 僕は自分の不幸を最大限に警戒しながら、ビルの下を覗き込んだ。するとそこには先輩がいて、何やら男の子をいじめている。あれ、たぶん雄英の子だ。銃の人をやったときに近くにいた子な気がする。なんでここにいるんだろ。職場体験かな?ということは轟くんもいるかも。

 

 あ、そうだいけないいけない。先輩を見つけたんだったらここに誰かを連れてきて目立たせないと。……でも、なんかめんどくさいな。雄英の子がいるならあの子を生かして、つながりがあるって伝えてもらった方がいいんじゃないかな?なんか殺されそうになってるけど。ここは僕が一肌脱ぐしかないか。人肌脱げるかもしれないけど。

 

 僕が意気揚々と飛び降りようとしたその時、先輩がいきなり現れた出久くんに殴られ、吹き飛ばされた。危ない。僕が飛び降りてたら絶対僕が殴られてた。飛び降りた勢いと殴られた勢いが一気に顔に来るなんて冗談じゃない。でもそんな冗談を引き起こすのが僕の個性。面白くない冗談だ。

 

 出久くんがきたなら安心かな?オールマイト並みのパワーを出せるはずだし、さっきのパンチでも大怪我をしていない。大丈夫だ。先輩なんかイチコロだ。後は適当なタイミングで僕が出て、つながりを認識してもらえばいい。思ったより簡単な仕事だった。

 

 だが、先輩が刀を舐めた瞬間出久くんの動きが止まり、再び雄英の子がピンチに陥ってしまった。血液を摂取することで動きを止める個性?だから傷を作れる刃物をあんなに持っているのか。というかマズいぞ、どうしよう。

 

 あれ?でも出久くんは見逃されてるっぽいし、いいのか。いやよくない。先輩を殺させなきゃいけないんだった。やっぱむずすぎるだろこの仕事。

 

 僕が賢い頭をうんうんと悩ませていると、路地裏に再び乱入者が現れた。僕が見慣れない炎とともに現れたのは僕の友だち。

 

「轟くんだ!!」

 

 嬉しくなった僕は何も考えずビルの屋上から飛び降りた。まさかこんなところで友だちに会えるなんて、僕はついている。いや、そんなことはありえないからついてないのか?まぁそんなことはどうでもいい。氷なんていう僕を完全に封殺できるかもしれない個性を持っている轟くんを前にして、僕が現れないなんて冗談あってはいけない。

 

 飛び降りた僕は地面に激突し、ぐちゃぐちゃで無残な姿になった。飛び降りて死ななくなったのは、飛び降り経験値の賜物だろう。

 

「あいたたた。これはもうすぐ死ぬかもしれない。助けて先輩!」

 

 ごろん、とうつ伏せになっていた体を仰向けにしながら先輩に助けを求めると、先輩はかなり冷え切った目で僕を見た。エモノも鋭ければ、眼光も鋭いのか。

 

「何しにきた」

 

 短い言葉で非難するように言う先輩は、なぜだかものすごく怒ってるみたいだった。もしかして僕が倒れているからだろうか。確かに、このままでは失礼だ。

 

 僕はぎょろぎょろと目を動かし、殺してもよさそうな人を探した。先輩にやられて動けなさそうな人、先輩の粛清対象なら、殺してもいいはずだ。少なくともこの場では。

 

 今僕は死んでないから死なないだろうけど、瀕死になるのは間違いないから、ごめんね!

 

迷惑な押し付け(サプライズプレゼント)

 

「かっ……」

 

 僕は壁に寄りかかっていたヒーローっぽい人に怪我を押し付けて元通りになると、ゆっくりと立ちあがった。ヒーローっぽい人がひゅーひゅー言っているので、大丈夫かなと心配になりつつ、友だちとの再会に笑みを浮かべた。

 

「何って先輩。友だちに会いに来たんだ!久しぶりだね轟くん!知らない間に熱い男になっててびっくりしたよ!」

 

 手をあげて挨拶する僕に、轟くんは左手に灯していた炎を消した。今でもちょっと炎は怖いから、消してくれるのはありがたい。僕の心情を気遣ってじゃないだろうけど。多分僕の個性を警戒したんだろう。

 

「……USJの時といい、お前の個性。どうやら自分の傷を押し付けるらしいな」

 

「自分の傷を……!?」

 

 轟くんが冷静に、だけどどこか焦ったように言うと、出久くんが倒れながらも僕を睨みつけ、声をあげた。

 

「そのために、飛び降りてきたのか……!人を、殺すために!命をなんだと思ってんだ!」

 

 出久くんは優しい子なんだろう。本気で怒ってるっていうのがわかる。でも、言っていることは何かおかしい。

 

「殺すために?いや、僕はここに来ようと思って飛び降りたら怪我しちゃっただけで、誰かを殺そうなんて思ってなかったよ。ただ……」

 

 僕は息絶えたヒーローっぽい人を一瞥して、悲しみを抑えながら言った。

 

「彼は、ツキがなかっただけさ」

 

 先輩に目をつけられた上、僕がここに現れるという不幸。ほんとについてない。もしかしたら僕と同じ不幸の個性持ちかもしれない。あれ、でも死んでるから不幸じゃないのか。それとも押し付けを持ってないから?どっちにしろ死んじゃったから迷宮入りだ。

 

「勘違いしないでよ。僕は別に殺したくて殺してるわけじゃない。ただ僕の周りにツキがない人がいるだけで、僕自身もツキがないだけだ。強いて言うなら、僕に殺させるような原因を作った方(・・・・・・・・・・・・・・・・)が悪い」

 

 僕の言葉を聞いた瞬間、轟くんが分かりやすいくらい動揺した。出久くんはそれを見て、焦ったように叫ぶ。

 

「轟くん!耳を貸しちゃダメだ!アレは君のせいじゃない!」

 

「っ、わりぃ、緑谷」

 

 ん?やっぱりUSJのこと気にしてたのかな。それは悪いことをした。いや、僕は悪くないんだけど、轟くんが悪いとも思えないから。第一、あの時殺させる原因を作ったのは弔くんだ。つまり、弔くんが全部悪い。

 

 轟くんは震えていた体を抑えると、確かな意思がこもった目で僕を睨みつけた。

 

「何と言おうとお前は人殺しの敵。それだけは変わらねぇ」

 

「何か、色々と吹っ切れた目をしてるね。ちょっと興奮しちゃうな」

 

「おい、いい加減にしなければお前も殺すぞ」

 

 僕が轟くんとの会話を楽しんでいると、先輩に背後から声をかけられ、頬を切られて舐められた。くせぇよ。

 

「粛清対象を殺してくれたのには礼を言うが、お前は趣味が悪すぎる。俺があのガキを殺すまで、大人しくしておけ」

 

 そういうと先輩は轟くんの方へ走りながらナイフを投げた。突然のことに反応が遅れたのか、轟くんの頬にナイフがかすり、切り傷ができる。轟くんに何すんだ!僕が黙っちゃいないぞ!動けないけど。

 

 ただ、傷ができたことによって先輩の個性の発動準備が整った。一度血を摂取されればもう勝ち目はない。いや、轟くんは炎と氷を出せるから、まだ抵抗はできるのか?

 

「轟くん!そいつ、多分血の経口摂取で相手の動きを止める!」

 

「目の前で見てた。わかってる!」

 

 轟くんは先輩に近づかれることを嫌ったのか、近づいてくる先輩に向かって氷結する。USJでも見せてくれたとおりかなり大規模な氷結だったが、先輩はその場で跳躍すると氷を足場にして氷結を避けきった。ほんとに動きを止める個性一つだけなの?

 

「己より素早い相手に対して自ら視界を遮る……愚策だな」

 

 言うと、先輩は氷を切り刻んだ。お前絶対別の個性持ってるだろ。なんだそれ。強すぎだろ。というかこのままじゃ轟くんがマズい。ここはひとつ、僕の得意分野をお見せしようか。見えないんだけど。

 

(僕から先輩へ、不幸の迷惑な押し付け(サプライズプレゼント)

 

 僕の不幸という個性はバレていないはず。これで僕が手を加えたこともバレず、先輩が不幸にもやられてくれるだろう。相手は雄英の子だから殺されないだろうけど、捕まった時点で先輩は大犯罪者だから、表にでることはないはずだ。

 

 早速不幸が現れたのか、先輩は出久くんに首根っこを掴まれ、壁に引き摺られていた。ちょっと面白い。しかも、壁に引き摺られなんかしたら不幸が必ず働く。どんな運動能力を持っていたとしても、その上、その隙をつくように不幸が訪れる。

 

「くっ」

 

 先輩は出久くんに肘打をして離脱したが、引き摺られたとき目に破片が入ったのか、目から血を流している。そのせいで変な着地をしたのか脚が少し震えていた。

 

「大丈夫?」

 

「お前、何かしたか?」

 

 あれま、気づかれた?言わなきゃわからないだろうけど、察しがいいね。恐ろしい。

 

「そんなことするわけないじゃん。それより先輩、その状態で大丈夫なの?よかったら、いい提案があるんだけど」

 

 先輩が僕の方を見た。興味を示してくれたみたいでよかった。

 

「僕を傷つければ、その傷がそのままあの子にいくけど、どう?」

 

「!!」

 

 それが聞こえていたのか、出久くんがものすごい速さでこっちに向かってきた。反応の早さは流石だが、正面からきて先輩を越えられるわけがない。

 

「あ」

 

 そういえば先輩目と脚を怪我したんだった。どこか動きの鈍い先輩の攻撃を潜り抜け、出久くんは僕のところへたどり着いてしまった。

 

「緑谷!」

 

「うん!」

 

 そして轟くんの声が聞こえたと思ったら、僕は勢いよく投げられた。ちょっと楽しいが、その楽しさは異常な冷たさによって消え失せる。轟くんが僕を動かないようにするために、空中で凍らされたらしい。僕の視界は上空に固定されてるし、押し付けようにも誰がどこにいるのかわからない。対処完璧すぎじゃない?というか僕これ捕まらない?

 

「ハァ……阿呆が。何しに来たんだ」

 

「それは同感だが、人の事気にしてる暇あるのか?」

 

 なんか先輩やられそうだし。僕何してんだほんと。生きてる意味あるの?ないから死ねないかな。死ねないだろうな。

 

 僕はどこか遠くで聞こえる決着の音を聞きながら、これからどうしようかと考え始めた。

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