若き大空は儚き笑みに恋をする   作:ルカ乃泉

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Target 1

 俺の名前は沢田綱吉。ここ並盛中学に通うごくごく普通の中学生だ。

 

「ヘーイツナ!パス行ったぞ!」

「ぶっ!」

 

 クラスメイトが投げたボールは俺の手を見事にすり抜け顔面に直撃する。

 

「またかよツナ~」

「頼むぜ()()()()!」

 

 運動もダメ、勉強もダメ、そんなダメダメな俺についたあだ名が『ダメツナ』。

 クラスメイトが零れたボールに向かって走り去っていく中、情けなく鼻血を垂らしてうずくまる俺はまさしく()()()()の語源を説明するに足る姿だろうね。

 

 そんなくだらない事を考えながら、今日も俺はため息を零した。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

「てめーのせいで負けたんだからな!」

「ご、ごめん…」

 

 体育が終わるといつもの如くクラスメイトA、B、Cに囲まれ、怒鳴られる。

 見る人が見ればいじめにも見える構図だけど、まぁいつも通りだからみんな特に気にも留めない。

 各々が「疲れたー」なんてぼやきながら体育館から去っていく。

 

「と、ゆーことで罰として体育館のおそうじ頼むな!俺たち貴重な放課後は遊びたいから」

「えっ…そんな!」

 

 そしてこれまたいつも通り、放課後に体育館の掃除が担当になっているクラスメイトから負けを理由に掃除を押し付けられる。

 

 

「じゃ、ファイトだダメツナ!」

「しっかりなー!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 そしてそして、これまたいつも通り一人体育館に取り残される俺。

 我ながらいつも通りすぎて怒る気にもなれないね。

 体育ではミスの連発。クラスメイトの無茶な要求もはっきり断ることができない。

 こんな惨めな自分に慣れてしまった自分が恥ずかしいっていうか、一周回って笑えてくるって言うか…。

 

「どーせ、バカで運動音痴なダメツナですよーだ」

 

 そんなことをぼやきながら、俺は105対12で負けたスコアボードを手に体育館を片付けていく。

 

 ………。

 

 ……いや、ほんとごめんね。ダブルスコアってレベルじゃないよね。むしろよく手を出さなかったよクラスメイトA…。

 

 これが俺の日常。

 ダメダメで人の足ばかり引っ張るお荷物。ついでに今日のテストも当然の如く1桁。

 いいところなんて自分でも探すのが難しいくらいの俺がなんでまだ学校なんかに通い続けているかというと…

 

 

 

 

 

 ひとえに、単位が欲しいからだ。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

「綱吉ー、学校から電話あったわよ。また学校途中からサボったんですって?あんた将来どうするつもりなの?」

「べっつにー…」

「あんたみたいに退屈そーにしてても楽しく過ごそうと一生は一生なのよ!ああ生きてるって素晴らしい!ってと感じながら生きてほしいのよ!」

 

 母さんには悪いけど俺は十分幸せなんだけどなぁ。

 ダメツナって言われようとこうしてぐーたら毎日を過ごすことがどんなに幸せなことか…。

 

「…母さんそういうこと恥ずかしいから外では絶対言わないでよね」

「ま、…そうそう!ツー君今日家庭教師の先生来るの!」

「家庭教師!?」

 

 冗談じゃない、せっかく親にも何にも言わせないように卒業できる単位ギリギリを調整しながらわざわざ学校へ行ってるっていうのに!

 これじゃいやいや学校に行っていた意味がなくなるどころかこの幸せなぐーたらライフが勉強漬けの地獄へと変わってしまう!!

 

「【お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年、教科は問わず。 リボーン】ですって!素敵でしょ!」

 

「胡散臭いんだよ!俺、ぜってーやだからね!どーせ何やっても無駄なんだから!」

 

 

 

 

「ちゃおっす」

 

 言い争う俺と母さんの間に、気づけば1人の赤ん坊が立っていた。

 え、マジいつからそこにいたの?俺が帰った時には絶対いなかったぞ。

 

「3時間早く来ちまったが、特別に見てやるぞ」

 

 ていうか何その恰好…。黒いスーツに黒い帽子、まるで漫画の中のマフィアみてーな格好して。

 や、まてまて俺。格好の前にまず色々とツッコむところがあるだろ!

 

「…ボク、どこの子?」

 

 このよくわからん状況にたまらず母さんがツッコみを入れる。

 ファインプレーだ母さん。まず俺もそれをめっちゃ聞きたかった。

 

「ん?俺か?俺は家庭教師のリボーンだ」

 

 リボーン。

 今こいつ、リボーンって言ったのか? 

 

 

「…ブッ、あははっはははははは!おいおい、胡散臭い広告の主が誰かと思えばこんなガキかよ!あーはっはははは!」

 

 

 

 俺の記憶にあるのはここまで。

 そこからはいきなり視界から赤ん坊が消失。と、思いきや眼前まで一瞬で距離を詰め、華麗なベビーキックを俺の下顎に直撃させた。

 

 

 

 (ってことは何?俺赤ん坊に気絶させられるの?たった1撃で?あ、まずい。どんどん床が近づいてくる…。赤ん坊より弱い俺って、ほんっとダメ、ツナ………。)

 

 

 崩れゆく意識の中、俺は自分のダメさ加減に再びため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「(想像以上の貧弱っぷりだな。…だが、最後のあの表情。()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

 今も母親に介抱されながら間抜け面を晒しているツナを見やる。

 運動もダメ。頭脳もダメ。良い所を探す方が難しい甘ったれ。

 だが。

 

「…家光の言う通り、中々どうして悪くない素材かもな。」

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、眠った記憶がないのに見慣れた天井が目に入って来る。

 

「…あぁ、そっか。俺あのちんちくりんの蹴りで気絶してたんだっけ…。」

 

 辺りを見回すと、事の元凶である赤ん坊は床で横になる俺を放置して優雅に俺のベットで寝ている。

 …この野郎。俺がいくらダメダメだからって調子に乗るにも程があるだろ。

 ていうか母さん。息子が気絶した後に床で寝かせるって…。

 

「これもすべてこの訳の分からない赤ん坊のせいだ…。おい!起きろ!赤ん坊だからって俺の部屋で勝手は許さないぞ!」

 

 俺は一瞬躊躇した後に、思い切って赤ん坊の服を掴む。

 あれ?ちょっと、世界が…回る?あ、反転した。

 

「ふげっ!!」

 

 間抜けな声を漏らしながら、大きな音を立てて背中から床に打ち付けられる。

 今この赤ん坊、俺のこと投げ飛ばさなかった?え、まじ??

 

「俺にスキはないぞ、本職は殺し屋だからな」

 

 器用に鼻ちょうちんをふくらませながら、赤ん坊がそう答える。

 こいつ何を…、この赤ん坊が殺し屋?

 んな馬鹿な。フィクションにしたってもう少しリアリティが…

 

 

 

 

「俺の本当の仕事はお前をマフィアのボスにすることだ。」

 

 

 

 

 

 時が止まった。

 不思議と、本当になぜかわからないけどこの赤ん坊の言葉が俺の中にストンと落ちた。

 

 理屈じゃない。理由なんてわからない。だけどこれだけははっきりとわかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「…はぁ?俺がマフィア…?寝ぼけてんのか?」

「嘘じゃないぞ。俺はある男からの依頼でお前を立派なボスに教育するよう言われてんだ」

 

 冗談で流さない。

 この赤ん坊は俺の誘導に釣られることなく話を続けてくる。

 

「……」

「やり方は俺に任されてる。これからビシバシ行くから覚悟しとけ」

 

 赤ん坊にしてはあまりにも不自然なくらい流暢且つ知性を感じる話し方。

 ダメツナとはいえ、中学生の体躯を一撃で昏倒させられる戦闘能力。

 そして今の言葉。

 " ボスになるための教育 "

 

「…なんで、俺なんだ?俺は見ての通り運動も勉強もできないただのダメな中学生だぞ?」

 

 現状それだけが疑問なんだ。

 

 日本で " マフィア " なんて名乗る組織はほとんどと言って良いほど存在しない。日本では" ()()() "だ。

 それならばこの赤ん坊を差し向けたマフィアっていうのは海外、おおよそヨーロッパあたりの組織だろう。

 

 だがここで問題になるのは()()()()()()、ということ。

 一般的にそういった組織の次期ボスが決まるのは2通りのパターンがあると思う。

 1つ目は腹心の部下に次がせること。

 もちろん俺はそんな組織の方にご知り合いはいないし、そもそも友達だって皆無だ。

 

 ………うん。

 そして2つ目は、ボスの直系の血筋の人間に次がせること。

 俺の知る限り、俺の家系にはそういった組織の方がいらっしゃるとかは聞いたことがない。

 だが、現にこうして目の前に「マフィアのボスに育てるために来た」なんてのたまう不可思議な赤ん坊がいるのも事実。

 つまり、認めたくはないけれど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる。

 

 

「……!調べたとおりだな。バカのくせに変なところで頭が回りやがる。」

「…うるさいな、バカなのは知ってるよ!ともかくなんで俺がそんな役割をしなきゃいけないのかってのを教えてくれよ!」

「俺はボンゴレファミリーのボス、ボンゴレ9世の依頼でおまえをマフィアのボスに教育するために日本に来た。」

「へぇー…、9世ってことは9代も続いてるのか。結構すごいところなんだな。」

「当たり前だ。ボンゴレファミリーは現マフィア界のトップに君臨するマフィアの頂点だぞ?」

「ぶっふぅっ!…ななななんでそんなとこのボスに俺がならなきゃいけないんだよ!」

 

 赤ん坊から超絶爆弾発言が落とされた。

 

 アカン。これはアカン。俺の全細胞が耳を塞げと命令してくる。

 これは絶対に関わっちゃいけない案件だ。なんだよ!なんなんだよ!もっとこう、ほら!片田舎の細々とした感じじゃないの!?

 もうこっからは想像つくよ!そんな大それたマフィアがわざわざ平和ボケした日本に住んでる俺を後継者にしたがるってことは……。

 

「黙って聞いてろ。ボンゴレ9世が高齢ということで、ボスの座を10代目に引き渡すつもりだったんだが、最有力候補のエンリコは抗争の中打たれて死亡。」

「ひっ!」

「その次のマッシーモは沈められ。」

「ひいいいっ!」

「秘蔵っ子のフェデリコは先日骨で見つかったそうだ。」

「もうやめてくれぇっ!」

「そんで、10代目候補で残ったのがお前だけになっちまったんだ。」

 

 それみたことか!それみたことか!!!

 生々しいよ!てか全滅って何考えてんだよ!フェデリコさんでよかったじゃん!何で殺しちゃうんだよ!

 

 ……あ、そっか。血筋以外の方々。

 うおおおおおお!!

 そもそも9代目?はなんで俺をそんな危ない世界に放り込むのに赤ん坊を送って来るんだよ!

 もっとこう、あるじゃない?「君に大切な話があるんだ…。」みたいなのをスーツ着た初老の男が話し始めるノリ!

 俺この赤ん坊にもう3回はぶん殴られてるからね??

 

「ボンゴレの初代ボスは早々に引退して日本に渡ったんだ。それがツナのひいひいひいじいさんだ。つまりおまえはボンゴレファミリーの血を受け継ぐれっきとしたボス候補なんだぞ。」

「…何言ってんだ。そんな話聞いたことないし、そもそも俺はマフィアなんかのボスにはならねーよ。」

 

 とっとと帰れ。

 そんな意味を込めつつ、赤ん坊をベッドから引きずり出そうと肩に手をかける。

 

 

『ピーッピーッ』

 

 

 赤ん坊の肩に触れた途端、どこからか不快な警報音が鳴り響く。

 

「因みに俺の眠りを妨げると割と本気で死ぬから気をつけろよ。」

 

 謎の警報とともに俺の下へ飛んで来る無数のダイナマイト。

 

 

 

 ……Dynamites?

 

 

 

「わわわわってめーなんてもんをおっ!?」

 

 慌てて外に投げ捨てようとする俺、見事に転倒。

 床に散らばるダイナマイト。気が付けば優雅にベッドで寝ていたはずの赤ん坊の姿は見えない。

 あいつ一人で逃げやがったな!?

 

 

「くっそぉ!絶対マフィアなんかにはならないからなーーー!!!」

 

 

 

 俺の絶叫は、平和な日本の住宅街では聞こえるはずのない無数の爆発音によって掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしツナ。これからアンケートをするぞ!」

「おいリボーン。」

 

 あれから一晩がたった。

 昨日のひと騒動で俺の部屋はほぼ全焼。

 部屋のゲームやテレビ、漫画を始めとして家具全般が焼け焦げて使い物にならなくなり、俺の唯一の憩いの空間がたった一晩で消し飛んでしまった。

 そんな惨状を作り出した元凶に対して抗議の意味も込め、例の赤ん坊ことリボーンをジト目でにらみつける。

 

「お前、何か俺に言うことはないの?」

「悪いなツナ。身の危険を感じて思わず条件反射で回避運動をとっちまった。まぁツナも無事だったんだからいいじゃねぇか。」

「なーにが回避運動だ!回避運動取るくらいなら爆弾弾けばよかっただろ!あっ、こいつ『その手があったか』みたいな顔してんじゃねーよ!絶対わざとだろ!!!」

「まぁそんなことはおいといてだな。今日は折角ツナの学校が開校記念日だからな。学校があるときはあんまりこういう時間が取りづれーから、今後のために正直に答えろよ。」

 

 俺の抗議をさらりと受け流し、話題を変えてくるリボーン。

 置いとくなよ。人の部屋爆破全焼させてんだぞ?

 

「そんなことってなんだよ…。因みに質問は正直に答えなかったらどうなるんだよ。」

「……雨の日は冷たいんだろうな。」

「今度は屋根か!屋根を吹っ飛ばすつもりか!?わかったよ正直に答えるから!」

「最初からそうしとばいいんだよ。」

 

 いけしゃあしゃあとのたまうリボーン。

 この野郎……。

 

「まず1つ目だ。ツナ、お前勉強はどれくらいできる」

「…学校じゃ中の下ってところ……おいちょっとまて!無言で天井にバズーカを向けるな!わかった!わかったよ下の下だよ!」

「しょっぱなからしょーもない見栄を張ろうとすんな。調べられる限りならお前のことはリサーチ済みだぞ。」

「ならなんでこんな公開処刑みたいなことを…。」

「本人の口から確認することが大事なんだぞ。」

 

 がしゃこんと天井に向けたバズーカを脇に置く。

 てかそのバズーカどっから出したの…?

 

「じゃあ2つ目だ。心から信頼できる、もしくはいつも行動を共にしてる無二の友人はいるか?」

 

 うっ、地味に心に来る質問しやがって…。

 

「…いないよ。」

「勉強もダメ、友人も0ときたか。お前ほんとダメツナだな。」

 

 ほんとこいつ言いたい放題言ってくるな。

 もっとこう、可愛げ?とかないの?

 赤ん坊から可愛げ取ったら無でしょ。何でこんな辛辣な赤ん坊ができあがるんだよ。

 

「…うるさいな!ていうかなんでそのあだ名知ってるんだよ!」

「言っただろ。お前のことは大体リサーチ済みだぞ。じゃあ最後だ。…ツナ、お前彼女とかいるか?」

「いるわけないだろ!お前わかって言ってるだろ!」

「じゃあ好きな奴でもいい。そういう対象に見てる女はいねーのか?」

 

 ………。

 あれ、いない。

 俺中学生だよね。

 彼女どころか好きな子すらいない俺って、流石にヤバイのでは…?

 

「ふー、ツナは勉強ができなくてスポーツもできない。おまけに人望もなく、彼女どころか好きな子もいない童貞ってことか。こんなんが次期ボスとはボンゴレの未来が思いやられるな。」

 

 どうやらアンケートが終わったらしく、やれやれと首を振りながらため息をつくリボーン。

 

「ほっとけよ、どーせ俺は何のとりえもないダメツナだよ。」

「すげーなその負け犬根性。何か一つでも取柄とかねーのか?」

「そんなものあるわけないだろ?あったらダメツナなんて呼ばれねーよ。」

「それもそうだな。」

 

 

『通してください。私急いでるんです』

『そんなこと言うなよお嬢ちゃん。かわいーね、どう?この後俺と一緒にお茶でも』

『いやっ!放してください!』

 

 リボーンのアンケートが終わるやいなや、窓から質の悪いナンパとそれに絡まれている女の子らしき声が聞こえてきた。

 俺?もちろんこの場でステイしてるよ。

 常に最悪の事態を想定する頭脳派の俺は絡まれている女の子がか弱き善人を喰らう美人局の可能性まで考慮するのだ。

 

「ツナ、助けに行かねーのか?」

「ばっか相手を見てみろよ、最近並盛で悪さしてるって噂の黒曜中のヤンキーじゃないか。俺が勝てるわけねーだろ?ボコボコにされて女の子がナンパに連れていかれて終わりだよ。」

「ほんとすげーなその負け犬根性」

「ほっとけ」

 

 

『やめっ、大声だしますよ!?』

『ヒヒっ、逆らうと痛い目見るぞ?俺はやさしーからあんま女の子の顔に傷つけたくねーんだけどなぁ?』

『っ!』

 

 

「……」

 

 ほんの少し、ほんの少しの興味で窓の外をもう一度見る。

 事が起きているのは調度俺の家の前。

 俺の安息の地、マイハウスに侵入されるまであと1歩足らずってところか。

 おいヤンキー。お前分かってるだろうな。俺の家の敷地内に入ったらあれだかんな。

 ほら、その、あー、箒。箒でバシバシってシバき回すからな。

 絶対入るなよ。

 

 …それにしても女の子の方は心なしか余裕が無くなってきてる様に見えるな。

 相手の黒曜チンピラも何本か頭のネジ外れてそうだし、ああいうタイプはやるって言ったらやるタイプだ。

 幸い今の時間帯この住宅街は人が通らない。

 子供は学校、大人は仕事か買い物に出かける時間帯だからね。

 つまりあの女の子は不幸にもチンピラに屈するしかないってことだ。

 名も知らない女の子、南無。

 

 

『おっ、その顔いいねぇ…そそるぜ』

『ひっ……いや、誰か…』

 

 

「……」

 

 う、リボーンめっちゃ見てくる。

 なんだよなんだよ。お前俺のことリサーチしたんだろ?

 なら俺の貧弱っぷりを全部知ってるってことだろ?なのになんでそんな目で見てくるんだよ…!

 それにまぁこんな白昼堂々と誘拐まがいのことなんてしたらまず間違いなく人目に付く。

 そこから警察が特定してヤンキーの方も捕まるし、俺が行ってできることなんて何もないんだよ。

 わかるだろ?それくらいさ。

 

 

 

 

 

『誰か…!誰か助けてっ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおまえっ!そうだそこのお前だ!頭の悪そうな面しやがって!今すぐその子から離れろっ!」

 

 2階の窓から飛び降りて道路に降り立ち、一気に女の子と黒曜性の間に入る。

 正直足が痛い、あと膝も。

 あーあーあーあー俺のバカバカバカバカ勢いでなんてことしてるんだよ俺は!

 ヤンキーめっちゃにらんでんじゃん俺この後ボッコボコボコのボコにされて、いやそれじゃ済まないんじゃない!?

 

 

「……ふっ」

「…!あなたは…」

 

「あぁぁん!?テメェこらモヤシ!何しとんじゃ!俺は今その子とデートに行こうとしてたところんだよ!早くどけ!」

「どどどかないぞぞぞ!絶対どくもんか!」

「誰に口来てんだもやし野郎がっ!調子に、乗るんじゃ、ねぇっ!!」

「げふっ!おっ、あ"ぅっ、お"っっ!!」

 

 ダメツナの俺がカッコ良いヒーローに何てなれる訳もなく、想像通りボコボコのボコにされる俺。

 挙句の果てにヤンキーの拳が顎にクリーンヒットして綺麗に吹っ飛ぶ俺、超カッコ悪……。

 

 見たかリボーン?お前これで満足か?俺がボッコボコにされて吹っ飛んでんのに何ニヤニヤしてんだよぶっ飛ばすぞ。

 

 

「合格だぞ、ツナ。」

 

 

 は?

 何が?

 …リボーンさん?銃持ってんのにはもういちいち驚いたりしないけどさ。

 向き逆!!!狙うのは俺じゃなくてヤンキー!!!

 お前俺とうんこの区別すらつかないのかこの赤ん坊!!!

 

 

 

 

 

 

「いっぺん、死んで来い」

 

 

 

 

 

 

 は…ぁ…?

 

 

 

 

 

 

 

 その時、閑静な住宅街に一発の発砲音が鳴り響いた。

 

 

 

 リボーンの放った弾丸が俺の眉間にクリティカルヒットした。

 

 俺、死ぬんだな…。

 これでこの世ともさよならバイバイか…って今はふざけてる場合じゃないよな。

 あーあ、くっそ、もったいない…。

 死ぬ気でやればもしかしたらあの子をヤンキーから助けられたかもしれないのに。

 死ぬ気で、助けてれば!!!

 

 

 

 

 

 

 

復活(リ・ボーン)!死ぬ気で助ける!!!」

 

 

「えっ…えっ…///」

「ぶっひゃひゃひゃひゃ!テメーなんだそりゃ!曲芸か?吹っ飛んだと思ったらいきなりパンイチになりやがって!」

「うるさい!死ぬ気でお前をぶっとばす!!」

「ひゃははは!お前みたいなモヤシが何しようどぉっっ!」

 

 常人ではありえない加速で肉薄したツナはうんこの鳩尾に渾身のパンチをぶち込む。

 うんこは道路と平行に吹っ飛び電信柱にめりこんだ。

 

 

「おい!そこの女!無事か!」

「えっ!あっ!はいっ!」

「そうか……ってあれ?」

 

 あれ、俺がやったの?

 俺が?何で?どうやって?

 そもそも俺リボーンに殺されたんじゃ…。

 

「危ないところを助けていただき、ありがとうございます。()()()()()()

 

 うぎゃああああああ!!!眩しい!!眩しすぎる!!!

 なっにこの子!後光が差して見えるくらい笑顔が眩しいんですけど!

 そりゃあナンパするわ!!こんな子見たことないもん!!

 超可愛い!顔ちっちゃ!何か良い匂いする~~!

 

「いやっ、そのっ、…あれ?」

 

 やっばい生涯で一番テンパってるわ。

 もうこれ以上ないってくらいテンパってる。

 頭真っ白だもん。今なんか違和感あったけど消え去ったもん。

 

「おいツナ。気色わりーからその気持ち悪いニヤけ面はやめた方がいいんじゃねーのか?」

 

 夢、覚めたわ。もう何か一気に思考がクリアになった。

 やめてくれない?そういうストレートな言葉の暴力。

 心身ともに悲鳴を上げてるんですけど。

 はい、違和感ね。はいはい。

 

「君、何で俺の名前知ってるの?」

「ん、とりあえず今ツナが考えてることは俺が全部答えるぞ。」

 

 俺の質問に対して、女の子が答える前にリボーンが間に入って来た。

 

「おじ様!」

「おっ、おじ様!?君、こいつ赤ん坊なんだけど…。」

「とりあえず中に入れツナ。さっきからおまえパンイチってこと忘れてるだろ」

「えっ、あっ、あああああああ!!」

 

 周りを見回すと「半裸の男がいたいけな少女を襲おうとしている」という構図に見えたのか、遠巻きに噂しているおばさんにケータイを片手に何やら慌てているサラリーマンと、何やらちょっとした人だかりができ始めていた。

 待て、お前ら何でうんこが女の子に絡んでる時には出てこなかったんだ。

 メガネクイクイするな社畜野郎、張り倒すぞ。

 

 俺は恥ずかしさのあまり逃げるように家に駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 

     

■■■

 

 

 

 

 

 

「で、まずは自己紹介からだな。この子の名前はユニ。ジッリョネロファミリーの現ボスだぞ。」

「ユニです。よろしくお願いしますね、沢田さん」

 

 あれから、とりあえず助けた女の子とリボーンを交えて俺の部屋で話をすることになった。

 そして何やら女の子と面識があるリボーンに説明を求めたところまではよかった。

 なに?ボス?しかも現ボス?

 見た目普通に中学生、俺と同じくらいだよね?

 

「…うん、よろしく。ところで君いくつなの?」

「初対面の女にまず聞くことがそれか。きもちわりーぞツナ。」

「う、いやだってさ!」

「い、良いんですおじ様!沢田さんの疑問も至極当然のことですし…。」

「全く、ここら辺も考えねーとな。…ユニはお前と同じ13だぞ。」

「お、俺と同じ…。」

 

 まじか。

 容姿が超若く見える美魔女みたいな線も考えてはいたけど、改めてはっきり言われると衝撃だ。

 俺と同じ年齢で、同じ境遇。

 まさかこんなフィクションみたいな設定の人間が俺以外にも存在したなんて…。

 

「ジッリョネロとボンゴレの先代ボス、まぁこっちはまだ継承式が終わってねーから現ボスは9代目なんだが、その二人が随分と仲が良かったみたいでな。ボス同士、お前らにもまぁ仲良くしてほしいってわけで、ツナは次期10代目ボスとして、ユニはボスとしての教育をしばらく一緒に見てくれってのが俺の依頼だったんだ。」

「え?じゃあもしかして…。」

「そうだぞ、今日からユニはお前の家で面倒見ることになってる。俺はこの町についてまだあんま詳しくねーからユニのこといろいろ頼んだぞ、ツナ。」

「ふ、不束者ですがよろしくおねがいします!」

 

 わたわたと頭を下げるユニ。

 可愛い。

 こんな子と一つ屋根の下で生活できるなんてマフィアのボスも悪くないんじゃあ…。

 …じゃなくて!!

 

「勝手に決めるなよリボーン!」

「悪いがお前に拒否権はないぞ。ちったぁ喜びやがれ、同い年の女と同棲なんて滅多に経験できることじゃねー…。」

 

 リボーンが何やら俺の顔を見て言い淀む。

 自分の話を止めるなんて傲岸不遜なコイツらしくない。

 もしかして俺の顔に何か付いてるのか…?

 

「いや、顔がきめーぞ。」

 

 

 

 

 俺をマフィアのボスにすると豪語する赤ん坊の家庭教師。

 そして現れた別のマフィアの女の子。

 俺の生活は、この2人との出会いを経て大きく変わることになる。

 

 そんな気がした。

 

 

 

 

 …俺の顔、キモくないよね。

 

 

 

 

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