ある人の体験談を基に大きく脚色を加えて書いてみました。少しエッチな事を匂わせる場面がありますので苦手な方はブラウザバックしてください。
●諸星 翔太…一人称の人物。体験談を話してくれた人の性格などを反映している。
●古霊 真由美…翔太の彼女。今回の登場シーンは少ない。
●角川千夏…ギャルっぽい女の子。翔太のバイト仲間。
「ねぇねぇ、諸星君は明日暇?」
「角川さん!うーん、明日は暇かな?」
アルバイトを終えて制服をロッカーにかけていると、同じメンバーの角川千夏(かどかわ ちなつ)ちゃんが声をかけてきた。茶色い髪に引き締まったボディが特徴の快活な雰囲気の彼女には色々黒い噂がある。やれ複数の男性と関係を持っているだの、やれ援交しているだの…真偽不明の内容ばかりだが、最近彼氏と別れた事が噂を広げた原因なのだろう。
「よかった〜!ライブのチケットを2枚買ったんだけどね、友達が急用で行けなくなったの。もしよかったら、一緒にライブとかどうかなって」
「いいの?」
「うん♪歳が近いっていうのもあるけど、諸星君は気心知れてるからっていうのがねぇ♪いいでしょ?」
「いいけど…」
なんだか面倒ごとに巻き込まれそうな気がしたが、バイト仲間で且つ1番可愛い子と一緒にライブが観られると思うと無意識のうちに首を縦に振ってしまうのだった。
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「おまたせ〜♪待った?」
「いや、今来たばかりだよ」
次の日、それなりの格好で待ち合わせ場所に着くと…おへそを出したセクシー且つ爽やかに見える服を着た千夏ちゃんがやって来た。そのフリルの入ったスポーツブラっぽい服はいかがなものかと思ったが、警官が注意しない辺りセーフなんだろう。
「じゃあ、行こっか」
「うん……あ、そうだ。これ…熱中症対策に生理食塩水を作ってみたんだ。甘くしてるから美味しいはずだよ」
「ホント!?ありがとう♪」
そんな話をしながら僕は千夏ちゃんと一緒にライブ会場に向かった。暑いのだろうと薄着とタオルを常備していたが案の定暑い。
「ねぇ見て!限定グッズだって!」
「見てみるね。僕行ってくるよ」
「うん」
行列の最後尾に並んでいる間、僕は冷静になり真由美さんに黙って行ってしまった事を少し後悔していた。他の女の子と一緒にデート?みたいな事をしていれば普通傷つく筈だ。可愛い女の子に誘われて浮かれてしまった自分をぶん殴りたい。千夏ちゃんが見たいというバンドを見てから帰ろうか…そう思いながら待つ事20分。ようやく売り子さんの前にたどり着けた。会場限定のリストバンドとタオルが最後の一個余っていた。
「これください…!(げっ、高い…)」
2点で1万近くふんだくられた僕はヤレヤレと思いつつ、商品を鞄に閉まって指定した合流場所に向かったものの…そこに千夏ちゃんの姿は無かった。
「あれ?居ないなぁ……」
トイレかと思い待つ事15分……全く帰ってこない彼女に僕は不安な気持ちを抱いた。一緒に並べば良かった。
「どこ行ったんだろう……ひょっとしてナンパされたのか?」
そう思いながら歩き回っていると…ふと…歓声や音楽の中で千夏ちゃんの言葉を拾った。が、予想は悪い方向に的中した。圧迫感で辛そうな声…卑猥な言葉……間違いない。レイプされている!そう思ってからは早かった。警備員に必死にお願いして周囲を見回ってもらった。不安な気持ちで待つ事10分……怒声が響いた。バンドの音楽で掻き消えていたが、私服警官の人達が男達を引っ立てていった。その様子を見て僕は不安な気持ちになった。千夏ちゃんは大丈夫だろうか?そう思っていた時、彼女が戻ってきた。会った時の服を着て戻ってきた彼女は僕を見ると不機嫌そうな顔をしていた。
「大丈夫だった?」
「……どうして通報したの?」
「え?」
僕はその言葉にギョッとした。そして、噂が事実である事を理解してしまった。レイプされたのではない、最初からそれが目的だったのだ。
「ごめん、僕…知らなくて。あ…これ!お代要らないから!」
僕はいたたまれなくなって買ったグッズを押し付けて会場を走って出ていった。悲しくて…どうしても真由美さんに謝りたくて、僕は全速力で走った。
「真由美さん!ごめんなさい!」
真由美さんと同棲している家に帰るなり、僕は土下座をして謝った。驚く彼女だったが…すぐに笑顔で頭を撫でてくれた。大体の事情を理解したらしい。
「僕…真由美さんに黙って…………」
「いいの。戻ってきてくれたんだもの…私は嬉しいわ」
「……っ」
「さっ!しみったらしい話はおしまい!一緒にビデオでも観ましょ♪」
「うん!」
その後、僕は真由美さんと一緒にソファに座って彼女が大好きなB級映画を観た。安っぽくて下手な演技やシナリオばかりだが、真由美さんはそれが好きらしい。僕はポップコーンを食べながらそんな楽しい時間を過ごした。
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次の日、僕は不安な気持ちでバイト先に行った。千夏ちゃんになんて言われるんだろう?外堀を埋められて居場所を失ったりするのだろうか?それとも復讐されるのだろうか?
「あ……」
「お、おはようございます…」
千夏ちゃんはいつもの制服を着ていた。でも、あの日の言葉が突き刺さり、いつものように喋る事は出来なかった。いつの間にか溝が出来ていた。
「諸星君と角川さんはもう帰っていいよ」
「お疲れ様です」
仕事を終えて、制服を脱いでいると…千夏ちゃんに声をかけられた。
「諸星君…ちょっといいかな?」
「……なんですか?」
そう返すと…千夏ちゃんは体を少し折り曲げて謝ってきた。その姿に驚く僕に彼女は言葉を紡いだ。
「ごめん!私…あなたの事を都合のいい男子だと思って利用したの!でも、諸星君は私の事を本気で心配して探してくれたんだよね?」
「?」
「あとで警察署に行って事情を説明してお兄さん達を釈放してもらったんだけどね、あの時の諸星君…必死に助けて欲しいって頼んでたって聞いたの。私…自分の事でいっぱいで、諸星君の事全く考えてなかった!会場限定のグッズまで買ってくれて、一緒に楽しもうって思って待ってくれてたのに……」
「もういいよ。後でその人達にも謝らないといけないし」
「それはいいの!お兄さん達、よくある事って笑って許してくれてたよ」
僕の心に千夏ちゃんへのトキメキは無かった。真由美さんを裏切った悲しみの方が強かったからだ。
「でさ、私…何かお詫びしたいんだけど……」
そんな中、少しチラッと胸元を見せて上目遣いで声をかける千夏ちゃんに僕は首を横に振った。それは真由美さんへのさらなる裏切り行為だ。
「そういうのはいいよ。僕の早とちりが原因だから、こっちが悪い。だから、お詫びを叶えてくれるなら…この話はもう終わりにして欲しい」
「え?」
「もし付け加えるとしたら、いつも通りにお喋り出来る関係に戻りたいな。いいバイト仲間でいて欲しい」
「諸星君…本当にごめんなさい」
いつものように挨拶して出て行った僕は帰り道にふと自分の言った言葉を思い出して後悔した。一度歪んでしまった関係は元通りになる筈なんて無いのに……
「辞めた!?」
「えぇ、一身上の都合でね。どうしちゃったのかしらね?」
「さ、さぁ?」
次の日…千夏ちゃんがバイトを辞めた事を知った。バイトを辞めると言いに来た彼女は髪を短く切ってチーフに謝ったらしい。
「(……ハハ、僕はまた間違えたんだなぁ)」
もしあの時、千夏ちゃんが望んでいた解答をしていたら彼女は残ってくれたのかもしれない。いや、どの道無理だ。あの日僕が犯した勘違いは取り返しのつかない事態にまで発展してしまった。どうしようが手遅れだ。
「ありがとうございました〜!」
代わりに入ったシフトのおばちゃんは「可愛いくていい子だったのにねぇ」と黒い噂をばら撒いた当人の癖に偽善ぶった言葉を呟いていた。
たった1つの余計な事が連鎖して取り返しのつかない事になるという話でした。まぁ、真由美さん以外の2人がどっちもどっち(翔太は浮気・千夏ちゃんはアレな人だった)という内容ですが、解釈は人それぞれです。ただ、誘惑を断った理由を聞いた時に「その子へのトキメキは無くなってたし、今のカノジョへの裏切りになるから」と言った事で「あぁ、この結末は必然だったんだろうな」と感じてしまいました。お目汚し失礼しました。