「‥‥‥‥‥‥ふぁぁ」
重い瞼を開いて小さく欠伸。右手で目を擦り再び欠伸。
幸子は違和感を感じて辺りを見渡す。自分が横になっているのはオフホワイト色のベッドの上。
然程大きくない個室のこの部屋も同様オフホワイト一色。ベッドの脇には小さな収納棚が備え付けられていた。どうやら病院‥‥‥いや、泊地内ならば医務室か。しかし幸子が知るショートランドの医務室とは内装が随分と違う。まだ知らない場所もあったのかと思いつつ、喉も渇いたしベッドから降りようと上半身を起こして‥‥‥更なる違和感に気付いた。
「痛っ‥‥‥痛たたたた‥‥‥」
急に身体を動かしたせいなのか、左の脇腹にジンジンと鈍い痛みが響く。痛む箇所に思わず左手を伸ばし押さえる。
自分に掛かっていた毛布を捲る。幸子が着ていたのは無地のピンク色の患者衣。確かにト級戦で重傷を受けたのは覚えているが、あれは確か左腕だった筈。今痛むのは左脇腹だ。そういえば左腕には怪我の影も形も無い。左腕は入渠して治ったと考えられるが、それなら今の左脇腹の鈍痛は何なのだろう。
患者衣を捲ってみると、身体には包帯が巻かれていた。患部とみられる左脇腹は厳重に固定されている。何が起こっているのか理解が出来ない。こんな傷程度、再度入渠すればすぐに治る筈なのに。取り敢えず入渠しに行こうと考え、ベッドから降りようとゆっくり足を伸ばす。
立ってみると、何だか身体がフワフワする感じがある。何というか、ずっと横になっていて久し振りに立ったような感じ。
フラフラと不安定に揺れながらドアの方へと歩く。途中で棚に飾ってある鏡が目に入り、無意識に視線を向けてみて驚いた。
「‥‥‥へっ!?」
思わず左手を伸ばして鏡を掴み、そこに映った自分の顔を見つめる。どこをどう見ても輿水幸子、自分自身の顔だったのだ。
「‥‥‥流石はボクの顔、今日もカワイイですね!」
‥‥‥違う、今はそうじゃない。いや、元の輿水幸子に戻れたというのなら嬉しい事には違いないのだが、そうじゃない。寝惚けていた頭を無理矢理起こし、幸子は思考をフル回転させる。これはつまり身体が人間に戻ったから艦娘ではなくなった、だから傷は入渠では治せなくなったという事ではないか?そして艦娘ではなくなったという事は、幸子はこの泊地では不要な存在になったという事ではないのか?もしや弥生ではなくなったから卯月に刺されたという事ではないのか?
サーっと血の気が引いていく。ならば今この部屋から出るのは悪手なのではないだろうか。幸子を卯月から遠ざける為にこの部屋に隔離されている可能性が高いという事では?
怖くなってベッドの方へとヨロヨロと戻る。脇腹を押さえ静かに毛布の上に腰掛け、幸子は再び周りをキョロキョロと見回した。
ふと窓の方が気になって腰をあげた。カーテンをゆっくり開けてみると‥‥‥見覚えのある街並み。日本語で書かれた看板も幾つも見える。どう見ても日本の風景だ。東京●●区の病院から見える風景。
ますます混乱する。艦娘ではなくなったから日本に連れていかれたのか?そんなに長く眠っていたという事は重体だったという事なのか?
コンコン、と扉をノックする音が聞こえ、それに「はい」と思わず応える。扉の向こうから「おや、起きたのですか」という聞いた事のある声が聞こえ、幸子の身体が驚愕でブルッと震えた。
扉が静かに開かれ、声の主が姿を現す。銀色に輝くウェービーロングヘアを靡かせ優雅に歩いてくる抜群のスタイルの彼女こそ、『銀色の王女』と称えられるトップアイドルの一人、四条貴音その人だった。
幸子を見るなり「‥‥‥面妖な」と呟いた貴音の事を暫く呆然と見つめていた幸子は、ある一つの結論に行き着く。
‥‥‥全て『夢』だった?
少しずつ思い出してきた。そうだ、ストーカーに脇腹を刺されてその場に倒れて。今まで眠っていたという事か。ならば貴音は忙しいのにスケジュールの合間を縫って態々幸子のお見舞いに来てくれたという事だろう。
「ボクの為に‥‥‥ありがとうございます。ですけどボクならこの通りもう大丈夫ですよ。カワイイボクは何時も幸運に守られてますからね」
お礼の言葉を述べる気持ちとは違い、表面だけは軽いように取り繕う。何せとんでもない夢だったのだ。夢とはいえ死に掛け、身体を食い千切られ、砲撃を受け。きっと刺された事から来る恐怖があんな夢を見させたに違いない。あんなリアルな夢を。なにせ、普通なら夢というモノは見ても覚えていないか内容をボンヤリとしか記憶してないかなのに今回のモノは全てハッキリと覚えている。殺されかけたレ級や苦戦の末に倒したト級、電や衣笠、ショートランド泊地の面々、明石や卯月、白露達。そう、夢とは思えない程にハッキリと。
だが。貴音の「そうですか。弥生もどうやら無事戻れたようですね」という一言が、幸子が脳内で下した結論を全て砕いた。空耳‥‥‥では無い。貴音は今確かに『弥生』という名を口にしたのだ。
「貴音さん、あの‥‥‥弥生って」
「駆逐艦弥生。弥生は『かんむす』と言っていましたね。輿水幸子、貴女の代わりにその身体に宿っていた少女です」
違っていた。全て夢ではなかったのだ。幸子は本当に弥生と入れ替わっていて、艦娘として向こうの世界で生活していたのだ。
本来なら、無事自身の身体に戻れた事を喜ぶべきなのだろう。しかしながら幸子の両方の瞳から、ポロポロと大粒の涙が流れ始めた。
あんなにお世話になっておいて、お礼の言葉すら伝えていない。一緒に苦労を共にし最後は笑いあえた電にも、ずっと優しく面倒を見てくれた白露にもお礼も別れの挨拶も出来ていない。どうせ戻れるのなら、向こうの世界の面々にもっとちゃんと言葉を伝えてから、自分の気持ちを整理してから戻りたかった。
「おや‥‥‥輿水幸子、どうしました?」
「何でも‥‥‥何でもありませんよ‥‥‥グズっ、エグッ‥‥‥」
その場にへたり込み、幸子は嗚咽を洩らし泣き続ける。プロデューサーが事態に気付いて部屋へと駆け込んで来たのはその10分後の事。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから数ヵ月。幸子も無事退院し、今は事務所に向かうプロデューサーの車の後部座席左側に座って紅茶のペットボトルを飲んでいた。
あの夜に白露が飲ませてくれたダージリンのセカンドフラッシュには遠く及ばないが、紅茶を飲むと何だか頑張れる気がするのだ。
これから幸子の復帰記念ライブの打ち合わせ。武道館を押さえたというのだから頑張るしかないのだ。このライブを絶対に成功させて、あれからすっかり仲良くなった貴音に必ず追い付いてやるという気持ちで。
「プロデューサーさん、ちょっとコンビニに寄ってください」
紅茶に合うお菓子が欲しい、それとその紅茶のお代わりも。そう思って何気無く頼んだ幸子にプロデューサーは聞こえないようにと「幸子は相変わらずブレないな」と一人ごちる。
「聞こえてますよプロデューサーさん。全く、プロデューサーさんはボクの言う事を聞いてくれればいいんですよ」
「お前なぁ‥‥‥わかったわかった、次コンビニがあったら止まってやるよ」
そう小言は言っているものの、幸子の顔には笑みが浮かんでいる。幸子の首にはネックレスが揺れている。ボールチェーンの先に揺れているのは指輪だ。シルバーで出来た、飾りの無い細い指輪。丁度幸子の薬指に填まるサイズ。別にプロデューサーが幸子の事が好きで送ったとかでは無い。退院祝に何か欲しい物はあるか、何でも(できる範囲なら)買ってやるとプロデューサーに言われて幸子が選んだものだ。指に填めると色々勘繰られるので填めるな、とプロデューサーに釘を打たれた結果ネックレスにして忍ばせている代物だ。幸子としてはプラチナ辺りが欲しかったのだがシルバーで妥協した。勿論、艦娘のケッコンカッコカリの指輪を意識したものだ。
数分もしないうちに、車は近くにあったコンビニの駐車場へ。「幸子は車内で待ってろ」とプロデューサーが一人で適当に買いに行って来ようと車の扉を開ける。幸子は「お願いします、プロデューサーさん」と何気無く返事をして、何気無くふとコンビニの方へと視線を向ける。
「‥‥‥ぶふぉっ!?」
視界に入ってきた光景に、幸子は口に入っていた紅茶を盛大に吹き出した。プロデューサーの車は大損害を被っているが自分の服に被害は無い辺りは流石は幸子だ。
そんな事は置いておいて。問題はそのコンビニとコラボしているであろうゲームだかアニメだかのイラストである。コンビニに立てられていたのぼり旗に描かれていたのは、多少アニメチックになってはいるもののどう見ても白露その人だ。制服も白露型改二の、白露が着ていた制服そのもの。
「プッ、プロデューサーさん!何ですかあれは!?」
「何って何だよ?」
「アレですよアレ!コンビニとコラボしてるアレですよ!」
まさかこんな所で白露のイラストを見るとは夢にも思っていなかった。それ以前に異世界の、この世界とは無縁のものと思っていたものを目にした衝撃は計り知れない。
「あ、アレか?あれは艦これっていうゲームらしいぞ?あのコンビニと頻繁にコラボしてるらしくてな。その他にもリアルイベントにもかなり力を入れてるみたいだ」
幸子はプロデューサーを無視して、車から飛び降りた。走ってコンビニに入店。
菓子の並んだ棚の上には、ファイルが3種類。どう見ても白露‥‥‥というか『SHIRATSUYU』と書かれているので間違いないが‥‥‥が浴衣を着ているイラストが描かれたファイル、他には時雨、それと村雨が浴衣を着ているファイル(幸子は時雨と村雨の事は知らないが)。
他にもカップ麺の棚の上には艦これにちなんだピンバッジが置かれ、パンのコーナーには艦これのイラストが入ったパンが並んでいる。
チョコレートを3つ買うとファイルが1つ貰えるらしい事を突き止めた幸子は適当なチョコレートを3つ掴むと、迷う事無く白露のファイルを手に取る。何の抵抗も無くそれをレジへと持って行き購入。幸子本人は必死に隠しているつもりだが、嬉しそうな表情をしていた。
(せめて大切にしますよ、白露さん)
満足気に車に戻って来た幸子を、プロデューサーは呆れたような表情で見ている。
「‥‥‥何ですかプロデューサーさん」
「いや、幸子がゲームに興味持つとか珍しいなと思ってな。そうだ、何なら艦これのプロデューサーに頼んでやろうか?イベントに呼んで貰えるかも知れないしな」
別にリアルイベントがどう、とかでは無い。白露本人に興味があるだけだ。しかしながらその声優と仲良くなれば白露の声で励ましの言葉等を言ってくれるかも知れない。頼んでもいいかも知れないとは思う。
「そうですね、機会があったらお願いしますよ」
◆◆◆◆◆◆
更に翌々日。学校から帰って来た幸子は、スマートフォンの液晶を見ていた。アプリを起動。立ち上がったゲームは勿論『艦隊これくしょん』だ。
最近登録がR18で無くなったらしいというこのゲームを、プロデューサーに言って幸子が遊べるようにインストールしてもらったのだ。
「フムフム、まずはサーバーを選ぶんですか。これは当然ショートランド泊地サーバーですね」
空いていたサーバーは大湊、桂島、ショートランドの3つ。これは迷わない。嘗て幸子が切磋琢磨したショートランド泊地一択だ。画面は次へ移動し、初期艦選択画面へ。
「次は‥‥‥初期艦?を選ぶんですか。電さん以外は知らない艦娘ですね‥‥‥これは誰がいいんですかね?」
さて、困った。電以外は知らない艦娘だ。電を選んでもいいのだが、他の艦娘を選ぶ事で大きなメリットを得られる、とかいう仕様だったら困る。
ここはプロデューサーが「困ったら掲示板で聞くと教えてくれるらしいぞ」と言っていたのを思い出し、幸子なりに調べた艦これの最大手と言われる掲示板に匿名で書き込みをしてみた。
ーーーーー
777: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:30
初めまして始めたばっかりの新人なんですけど、初期艦?は誰にした方がいいんですかね?
778: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:40
ファッ!?新人さん!?
ーーーーー
書き込んで僅か10秒。あっという間に返事が来た事に驚いた。何か書き込もうとした幸子を他所に、どんどんレスが増えていく。
ーーーーー
779: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:45
>>777
新人だっ、囲めっ
780: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:46
>>777
新人だっ、お茶をお出ししろっ!
781: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:50
>>777
初期艦なんてゴトランドに決まってるだろ!
782: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:55
>>781
初期艦なら大天使五月雨ちゃん一択なんだよなぁ
783: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:40:56
>>781
ばっかお前初期艦は漣に決まってるだろいい加減にしろ
784: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:41:15
>>783
叢雲なんだよなぁ
785: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:41:25
>>781
新人にゴトランドネタはやめてさしあげろ
786: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:41:44
>>777
マジレスすると誰を選んでも大丈夫だぞ
5人とも比較的すぐ手に入るからな
ーーーーー
「なるほど、誰でも大丈夫なんですね。それなら電さんでいいですかね」
掲示板に言われるまま、幸子は電を選択。その旨を掲示板に報告してみた。
ーーー
787: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:42:20
777です。皆さんありがとうございます。会った事のある電さんにしました
788: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:42:25
>>787
おっ、おう…
789: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:42:35
>>787
比叡「うわぁ」
790: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:42:48
>>787
…艦娘遊撃隊に電ちゃんっていましたっけ?
791: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:43:01
皆さん失礼ですね!本当ですよ!
ーーー
本当だと思わず書き込んでしまったが、冷静に考えてみたら信じてもらえる筈がない。(やっちゃった)と思いつつ、幸子は気を取り直しゲームを進める事にする。
「‥‥‥初めての建造、ですか。出来れば白露さんが出てくれればいいんですけど。あ、でも狙った方が良い艦娘とかあるんですかね?」
建造画面では燃料、弾薬、鋼材、ボーキの数字がそれぞれ30~999の範囲で変更できる。他のゲームのようにここで手に入れた方が良い艦娘とかがあるかも知れない。またあの掲示板に書き込むのも気が引けるが、聞いておくだけならと思う。
ーーー
811: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:55:31
777で書き込みした者ですが、初めての建造で狙った方が良い艦娘とかあるんですかね?白露さんとかどうやって狙うんですか?
812: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:55:51
>>811さっきの新人さんか。最初のうちは最低値のALL30で大丈夫だぞ
813: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:56:02
>>811
この艦娘が居ないとクリアできない、とかは無いから最初は気軽に建造して大丈夫
814: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:56:31
>>811
股間に聞け
815: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:56:54
>>811
白露か。白露は良いぞ。やはりおっ○いは正義
816: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:57:11
>>811
タシュケントかジャービスかフレッチャーが狙い目だぞ
817: 名無しの提督さん 20/06/20(水)18:57:24
>>816
鬼畜ゥ!
ーーー
その内容に「はぁ‥‥‥」と溜め息。察するに最初は気にせず最低値で建造して大丈夫らしい事は分かった。燃料30鋼材30弾薬30ボーキサイト30で建造してみる。
「建造時間?何ですかこれ?あ、短縮できるみたいですね」
どうやら10数分の建造時間をスキップできる事に気付いた幸子は、あまりよく理解していないままに建造を終了。出来た艦娘は、弥生だった。
「弥生さん、ですか。向こうの世界でのボクの身体だったわけですし、秘書艦にしておきますか」
幸子は深く考えずに駆逐艦弥生を秘書艦にした。その瞬間、幸子の頭がグラッと大きく揺れた気がした。
「え‥‥‥あれ‥‥‥」という言葉を残し、幸子はその場に倒れた。意識が遠退き、視界が真っ暗になっていく。
◆◆◆◆◆◆
ゴボゴボゴホ‥‥‥
幸子は気が付くとお湯の中に沈んでいっていた。
お湯が口に入ってくる。非常に苦しい。このまま溺死してなるものかと慌てて水面から顔を出す。
「‥‥‥ブハッ!?死ぬかと思いましたよ‥‥‥‥‥‥?」
直ぐに気付いた。見たことのある大きな浴槽を持った浴室‥‥‥ショートランド泊地の入渠施設そのものだった。
「えっ、嘘ですよね‥‥‥?」
キョロキョロと視界を動かした幸子の右隣。いつも持ち歩いていたファイルに描かれたイラストの本物、白露がお湯に浸かりながら心配そうにこちらを見ていた。
「弥生ちゃん、大丈夫?」
久し振りに聞いた白露の声に、幸子は思わず涙ぐむ。「白露さんっ!白露さんなんですね!?会いたかったんですよ!」と大袈裟にダイブし白露に抱き付いた。白露の方も「‥‥‥まさか幸子ちゃん?幸子ちゃんなの!?」と気が付いたようだ。
「あたしも会いたかったよ、幸子ちゃん!でもどうしてまた弥生ちゃんと入れ替わったの?」
幸子はハッと我に返った。そうだ、どうしてまた弥生と入れ替わったのか。切欠は恐らくあの『艦これで秘書艦を弥生にした』という行動だと推測は出来るが‥‥‥。
「輿水!?お前っ!!何で弥生と入れ替わってるっぴょん!!早く元の世界に戻れっぴょん!!」
幸子の左隣から、今度は卯月の声。卯月は飛び付いてきて幸子の両肩を掴みグラグラと身体を揺すってくる。
「出来るならボクだって帰りたいですよ!もうすぐ武道館ライブなんですからね!」
「おーそれならとっとと帰れっぴょん!早く弥生を返せっぴょん!」
「まあまあ二人とも、少し落ち着いて」という白露を他所に、裸のまま幸子と卯月の罵倒は続く。
「帰れこの馬鹿輿水!うーちゃんはお前を追い出すの諦めないっぴょん!!」
「えぇボクだって絶対帰ってやりますからね!ライブまでには帰ってやりますよ!」
◆◆◆◆◆◆
倒れていた幸子はムクリ、と上体を起こした。起動したままの艦これのアプリを閉じて、スマートフォンに登録されているアドレスを探し、通話ボタンを触る。
『どうしました、輿水幸子』
電話の相手は貴音だ。幸子‥‥‥はフゥ、と小さく息をはいて、「駆逐艦弥生、です。今から会えませんか」と一言。
『‥‥‥‥‥‥面妖な』
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>『弥生』ほか駆逐艦一隻を含む艦隊で鎮守府正面海域に進出、敵主力を捕捉撃滅せよ 【達成】
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というわけで。艦これ世界を往き来する事になった幸子の戦いはこれからだエンドとなりました。ライブまでに任務を達成し元の世界に戻れたかは‥‥‥幸子のみぞ知る。
それではまた別の機会にでもお会いしましょう。最後まで読んでいただいてありがとうございました。