ISACfA《インフィニット・ストラトスAnd Counting for Answer》 作:傭兵No41
絆織「「何?」」
作「あ、ゴメン。もうじき本編始まるから要件だけね! あのさー、絆くんキミ前回ノブリス・オブ・リージュって言ってたじゃない? それ間違いだってさぁ!!」
絆「Σ」
作「元はフランス語で、正しくはノブリス・オブリージュ。しかも英語だとノーブル・オブリゲーションだってさぁ…ははは、笑っちゃうよねぇ! 俺もてっきり貴族の責務=貴族と言えば英国紳士=イギリスだよねぇ………ってさぁ。ホント、キャラじゃないことってするもんじゃないよねぇ」
絆「させたのアンタだろ!」
織「(爆笑中)」
作「まぁ、でも修正はしたけどストーリーの関係上このまま行くからよろしくねぇー! じゃぁ…本編も始まるし、茶番はもう終わりだ」
絆「茶番始めたのもお前だろ!」
織「爆笑(ry」
「うぐぐぐぐぅ…」
放課後。一夏はぐったりと机の上に突っ伏してた。まぁーったく、そんなんでセシリアと決闘するとか良く言えたもんだよ。
「おい、一夏…初日からそれで一週間後の決闘大丈夫か?」
「いや、そうは言ってもな……大体、何で絆はついていけてるんだよ?」
「そりゃあ……俺はお前と違ってキッチリ参考書呼んで勉強してきたからな」
「くそ、裏切り者め……なぁ、織歌ってテストパイロットやってるんだよな?」
「ん? そうだけど?」
「オルェもん~俺にISの勉強を教えてくれ~」
「「ああ、それ無理だ」」
「おい、何で絆まで一緒になって返事するんだよ?」
「いや、だって私、殆ど感覚でやってるから人に教えるの苦手だし…」
「何より考えてみろ、一夏。こいつがそんなメンド臭いことすると思うか?」
うんうん。全くだ。何で私が一夏の勉強みてやらなきゃならないんだか。そもそも私自身筆記はギリギリだっての。その辺、流石は付き合い長いだけあって分かってるじゃない、キズナは。
「き、キズナ…お、お前は俺を見捨てないよな……?」
「ハイハイ、男の子なんだからそんな捨てられたチワワみたいな情けない顔をしない。そもそもアンタ、一週間後にはセシリアだけじゃなくてキズナとも闘うんでしょうが。敵に施しを求めて恥ずかしくないの? 意地があんでしょー、男の子には?」
「そうは言ってもなぁ……けどそう言われると俺にも意地が…むむむぅ…」
「まぁ、どうしても分からないとこは俺も見てやるから頑張ろうぜ、一夏」
「まぁーたアンタはそうやって甘やかして…そんなだからコイツ馬鹿のままなんだよ」
「ゲフッ! くぅ…やっぱそう言ってくれるキズナには悪いけど今回は俺一人で…やっぱり俺にも意地が…」
「ストーップだ、二人とも。全く、一夏のその心意気は買うけどな…今回みたいな試合は久しぶりだしな。お前ともなるべくイーブンな状態で真剣に闘りたいんだよ、俺も。」
「絆……」
「ただしISの基本的なとこと、お前が頑張ってもどうしても分からないところだけな。それに……」
「それに?」
「それでもし無様な闘いなんてしたら、その場で全殺ししてやる」
あーら…珍しい。キズナがこんなに闘る気になってるなんて…これなら私も立候補しとけば良かったかなぁ。……やっぱ良いや、メンド臭いし。それにここなら機会は幾らでもあるでしょ。
「くくく…OK。分かった、キズナ。じゃあこの借りは来週の試合で纏めて返してやる!」
ふぅーん…一夏もやる気だねぇ。二人して拳ぶつけてイイ顔しちゃってさー…全く。暑苦しいったらないよ。…べ、別に羨ましくも負け惜しみでも無いからね!
良いんだ、お楽しみは後にとっておくから。
「織斑くん、絆くんまだいますかー?」
「およ? マヤちゃんどーしたの?」
クラス副担任のマヤちゃんだ。キズナと一夏に用があったみたいだけど…入ってきた瞬間に「ま、マヤちゃ…?」とか言ってフリーズしてる。なんかあったのかな?
「そ、そんなことより! 織斑くんと絆くんの寮での部屋割りが決まったので……えっとですね、これが二人に割り振られた部屋の鍵です」
そう言って二人に鍵を渡すマヤちゃん。おや? 今度は二人が揃ってフリーズしてるよ。
「「ちょ、ちょっと待ってください!」」
「や、山田先生? 確か一週間は俺達自宅から通うって話じゃ…」
「そ、そう! それに部屋も決まって無いって聞いたし荷物だって…」
「いえ、そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを急遽無理矢理変更した見たいです。……二人ともその辺りの話を政府から聞いてます?」
二人にしか聞こえないように喋るマヤちゃん。まぁ、私は近い場所にいるし、丸聞こえ何だけどさ。しかし、政府…政府ねぇ。あの自分の尻で椅子を磨くしか能のないクソッタレの無能で低能で役立たずのゴミ虫どもめ。思い出したらイライラしてきた。ああ、政府ってのはろくに情報統制すら取れない日本政府のことね?
二人がIS操縦できるってニュースが流れたあと、国中の変態科学者どもが家に押し寄せて来て、馬鹿の一つ覚えみたいに『お宅の絆くんの生体を調べさせてほしい』って。
あの時は凄かったなぁ。
どこに行っても科学者って人種は変わらないなぁってキズナと呆れてたら…普段あんまり怒らないお父さんとお母さんがマジで怒り狂ってたからなぁ。キズナはソレを見て複雑そうな顔してたね。嬉しいような申し訳ないような。素直に喜んどきゃ良いのに。まぁ、最終的には二人が暴れてるところに私とキズナも混ざったけどさ。
「そう言うわけで、政府の特命もあって、とにかく寮に入れるのを優先したみたいです。一ヶ月もすればきちんと二人の部屋を用意できると思いますから、しばらくは我慢してください」
「「つ、つまり、暫くは知らない女の子と相部屋?」」
おーおー…見るからに肩落としちゃって…この二人ちゃんと付いてるのかね? 何が…とは言わないけどさ?
「そ、そうなりますけど…だ、ダメですよ! ルームメイトの子にへ、変なことしちゃ!」
マヤちゃんの目には、この見るからに落ち込んでる二人がそんな風に見えるのか。
「「しませんよ!」」
「……はぁ。とにかく、部屋はわかりましたけど、荷物は一回家に帰らないといけないですし、俺も絆も今日はもう帰っても良いですか?」
「ああ、いえ。荷物なら――」
「既に私が手配しておいた。ありがたいと思えよ、織斑」
「ど、どうもありがとうございます…」
ちーちゃんも相変わらずブラコンだなぁ…行動早すぎるでしょ。
「まぁ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯の充電器があればいいだろう」
わー、そして相変わらず凄い暴君。私だったら無理。せめて愛用のミュージックプレイヤーがないと退屈で死ねる。
……私も随分変わったよねぇ、昔と。お母さんの影響かな?
「それと、絆の方はご両親にお願いしておいた。感謝しておけよ。……お二人共、お前の事をそうとう気にかけていたぞ。そのせいか……荷物の量が結構な量になっていたが」
「そ、そうですか…」
全く。苦笑いしてるけど嬉しそうにしちゃってまぁ。
「あ、それと……二人は大浴場は暫くは使えませんけど、問題ないですよね?」
「え? 俺、大浴場使いたかったんだけどなぁ……」
「……なぁ、さっき喋る前にモノを考えろって言ったばかりだろ…?」
「なるほどねぇ…一夏は私や箒と風呂に入りたいのかぁ~……このエロ一夏」
「い、いや、やっぱりいい! 大浴場俺達だけで使えないなら、やっぱり使えなくてもいい!」
ブッ!
こ、コイツやっぱアフォだ♪ 変な誤解されて慌ててるんだろうけど、この環境でこんな事言ったらどうなるか…今日一日で学ばなかったのか…ほんとアホだわー、コイツ♪
「お、俺達だけ………も、もしかして織斑くんと絆くんってそ、そう言う…だ、ダメですよ! そんな不健全なのは!」
「ちょっ!? 違う! 違いますから!」
「お、落ち着いて下さい山田先生! 俺も一夏も至ってノーマルです! てか、あなた教師でしょう!?」
「ねぇ? 聞いた?」
「うん、聞いた聞いた。やっぱり織斑くんと絆くんって……」
「必死に否定してる所が余計にあやしい」
「授業中や休み時間もやたら親しかったし………キズ×オリ………ありね」
「イヤイヤ、オリ×キズも……新しい、惹かれるわね」
「大至急、二人のこれまでの交遊関係と私生活を洗って! 今すぐに! 費用は幾らかかろうと構わん! 徹底的に洗い尽くせ! 良いか、
おーおー盛り上がっちゃってまぁ………さて、楽しそうだけど私は巻き込まれないうちに退散しよう。あ、そう言えばキズナと一夏の部屋聞いてないけど…まぁ、また後で聞けばいっか。
今、私は寮の廊下を私が宛がわれた部屋に向かって歩いている。人生二度目の見知らぬ他人との共同生活。自分のルームメイトはどんなヤツだろう。
取り合えず、私と相部屋になった人間には御愁傷様と言っておこう。私は私自身、あんまり人付き合いが得意な方ではないと理解しているし、そもそも人に合わせるつもりもない。
まぁ、気に食わないヤツで無ければそれでいいや。
逆ににこっちが気に入っても、相手がこっちを気に食わないってパターンもあるしね。アイツみたいに。
とかなんとか考えてたら、目的の場所に着いていた。……さて、ここが今日から暫くの私の部屋か。
「邪魔するよ」
――まぁ、相手がどんなヤツだって大した違いなんて無い。
そうして、私は深く考えずに鍵を開け、部屋の中へ入っていった。
――全く、今日は散々でしたわ。
世にも珍しい男性のIS操縦者でしたが…やはり、所詮男は男。無知で愚かだとは思っていましたが、まさかあそこまで愚かとは。
「織斑一夏…」
わたしくは知らず知らずのうちに名前を呟いていました。彼は愚かとしか言いようがありません。必読の参考書を古い電話帳と間違えて捨てるなど考えられないことですもの。いえ、それよりも代表候補生と言う単語すら知らないとは……もはや呆れすら通り越して怒りすら覚えます。
ただ、稀少な男性と言うだけでろくな知識もなく、本来であれば優秀な――優秀な者の中から選ばれたものが通うことを許されるこの学園に――ただ男あるからと、ソレだけの理由で居ることが我慢なりません。
――そして何よりも。
「烏丸…絆」
今思い出しても、本当に腹立たしい限り。最初、多少は見所があると思っていました。態度には不満が残りましたが、それでも分と言うものを弁えている…そう感じました。
――しかし、それも所詮はわたくしの買い被り過ぎでした。
『
ただ、物珍しさからクラス中の関心を買って推薦されただけだといいますのに、何を勘違いなさったのか――。
『他人と他国を貶めて優越感に浸る――それが高貴な者の責務か。全く、生きやすそうで羨ましいよ。貴族って言う生き物は』
――わたくしの国の言葉で、よりにもよってこのわたくしに貴族としての在り方を問い、このわたくしを何も知らない分際で侮辱して――
『本当の事を言ったまでだろ…これ以上言い合ったって仕方ない。そっちの流儀に合わせるよ。――決闘だ、セシリア・オルコット』
――あまつさえ、身の程知らずにも『決闘』などと!
許せません。許せる訳がありません。わたくしが――わたくしが両親亡きあとに相続した、莫大な遺産とオルコットの家名。ソレをあの意地汚いハイエナ共から守るために、わたくしがどれだけの苦労したか……どれ程の努力を持って、この代表候補生の立場を勝ち得たか。
ソレを全く知りもしないであろうあの男に侮辱され、よりにもよって……そのわたくしに軽々しく『決闘』などと!
そして、何よりも――そう、何よりも気に入りませんのはあの男のあの『眼』。
あの時のわたくしは――今思い起こすと恥ずかしい話ではありますが、感情の制御が出来ず、本気で殺意を抱きました。ですが……ですが、あろうことか、あの男はソレを受けても全く動じず平然とし――笑ったのです。
クラス中で何人気付けたか……それさえ分からないほどの微妙な表情の変化。しかし、あの男は確かに笑っていたのです。楽しそうに。
そう、その眼はまるで――そう、まるで数多の激戦をくぐり抜けた、歴戦の戦士のような――
ギリィッ
やはり、気に入りません。わたくしと違い、平和な島国で平凡な日々を過ごして来た男に――あんな眼ができるはずが無いのです。
――そう、いつもいつも女性の顔色ばかり伺う情けない男に、あんな表情などできる筈がありません。
――証明、しなければ。
このわたくしのブルー・ティアーズと、このわたくし……セシリア・オルコットの実力を。
そして、あの男に刻み込まなければ。セシリア・オルコットの名と、わたくしに挑んだ愚かしさを。
……あら? どなたかいらっしゃった様ですわね……?
誰でしょう……ああ、ルームメイトの方でしょうか?
――この怒りは今は胸の内にしまい、今はこのルームメイトを歓迎しましょう。
なぜならこのわたくし、セシリア・オルコットは何時如何なる時でも、優雅に、気品に、誇りに満ちてなければならないのですから。
「全く、今日一日は大変だったなぁ………。なぁ、絆。これから俺達、この学園でやってけるかなぁ……」
教えられた部屋に向かって歩く俺達の足取りは、非常に重いものだった。
なんと言うか…疲れた。その一言につきる。あのあと教室は収まりがつかないほど盛り上がり、結局俺達は逃げるように教室から抜け出してきた………女子ってコワイ。
「なるべく上手くやってくしかないだろ……一夏」
「だよなぁ……」
「「はぁ………」」
溜め息だってつきたくもなる。アグレッシブ過ぎるだろう、ここの女子は。
「……ん? どうも、ここが俺の部屋らしい」
「あ、ここなのか?」
俺の割り振られた部屋の前に、無事つけたらしい。
「ああ、一夏? 明日朝のトレーニングどうする?」
「もちろん付き合うさ。明日からまたよろしくな!」
「ああ、分かった。そう言えば一夏は1025室だったよな?」
「おう、何時でも遊びに来てくれよ!」
「そっちもな。じゃ、また明日」
暫く一夏を見送ってから、俺は扉をノックした。暫く待つこと数秒。部屋の中から返答があった。
『ちょっとお待ちください』
……はて? なんか何処かで聞いたような声だけど………?
「お待たせしました。ルームメイトの方でしょうか? わたくしはセシ……」
「「…………」」
これは何かの嫌がらせですか、千冬さん。流石にこの仕打ちは酷くないですか?
扉を開けて出てきたのは…オルコットさんだった。
俺とオルコットさんの時が止まる事数秒。
オルコットさんが固まった笑顔のまま扉を閉めて………ガチャッと鍵がかかる音がした。
「………」
もう一度鍵に書かれた番号と、部屋の番号を確認する。……何度見直してもここが俺の部屋である事実は変わらないらしい。当たり前だが。
「はぁ…」
一つ、溜め息を短くこぼすと、俺は意を決して扉にかけられた鍵を開け、部屋の中へ入る。やっぱり目の前にはオルコットさん。顔は笑ってるが、ぎこちなくヒクヒクしている。非常に気まずい。
「あら? 鍵は閉めたはずなのですが……不法侵入は犯罪と言うことも理解できない程あなたは低脳でして?」
「不法侵入じゃない………ほら」
言って、オルコットさんに鍵に書かれた部屋番号を見せる。それを見て顔をしかめるオルコットさん。
「……わざわざ盗んで来ましたの? なるほど、決闘ではわたくしに勝つ自信が無いものですから、決闘前に闇討ちに来ましたのね? あなたには誇りも御座いませんの?」
「いや、盗んだんでも闇討ちに来た分けでもなくて………」
「まさか、ルームメイトだ、とでも? 流石にそれはあり得ませんわね。悪い冗談、できの悪い悪夢ですわ」
「…………」
「……何故、黙っているのですか?」
「いや、全く持ってその通りで……その、今日から暫くよろしくお願いします………?」
そう言って頭を下げる。俺は何で最後疑問系になったんだろう。
「あらそうでしたのそれはそれはご丁寧にこちらこそよろしくお願いいたしますわ――」
そう言って頭を下げるオルコットさん………良かった。概ね好意的に受け入れられ――。
「――なんて、言うわけ無いでしょう! あ、あああ、あなたがルームメイト!? よりにもよってあなたが!? あああ、あり、あり得ませんわ!!」
――る訳無いよねー。
扉はしっかり閉めておいた。あとはこの部屋の防音性能に期待しよう。
「な、なぁんであなたが! よりにもよってあなたなんですの!? 何故!?」
「お…落ち着いて、オルコットさん。落ち着いて話し合って……せめて妥協点くらいは決めよう!」
「お、おち?! 落ち着いて居られる訳が無いでしょう! ふざけないで下さい! 先程あれほどわたくしを侮辱した男を前に、落ち着ける訳が無いでしょう! そ、そもそも…何故、あなたはそうも落ち着いて居るのですか、ににに、憎たらしい!」
もう、オルコットさんはキーーーーッ!って感じになって俺の襟首掴んでブンブンブンブン振り回してくる始末で……駄目だ。とてもじゃないが話になりそうにない。
仕方がない。今日は千冬さんに部屋割りを変えてもらう相談して、駄目そうなら何処かで野宿でもしよう。
そう決めて部屋を出ていこうとしたら――
「キャッ!」
オルコットさんがバランスを崩して転けた。俺は慌ててオルコットさんの腰に手を回して抱き止め、そのまま一緒に床に――。
ドゴスゥッ!
――倒れたと思った瞬間、俺の目から火花が散った。
突然の痛みに俺は自分の頭を抱えた。
「――い」
「い?」
幸い、オルコットさんは抱き止めたのが幸いしたのか、床にへたりこみ呆然とした顔でこっちを見上げている。パッと見、怪我はない。
うん――だったら遠慮はいらないな。
「――いっっっっっっっっってぇえええええええええーっ!」
俺は自分のデコを押さえて、恥も外聞もなく床の上を足をばたつかせながら転がりまわった。例えるなら、殺虫剤を吹きかけられたアレの様に悶えてる。いや、マジで痛いんだって。
「ッ! ど、どうなさいましたの?」
俺の奇声と行動に一瞬ビクッと体を震わせると、何が起こったのか分からないといった風に俺に聞いてくるオルコットさん。
「て、テーブルぅううう!? あ、頭! 頭がわ、割れるぅううう!?」
「……はい? テーブル? 頭がどうし………あ、あなた!? あなたのおでこから血が流れてるじゃありませんか!? まさか、あなた、テーブルの角におでこぶつけてしまいましたの!?」
「え? 血? ちょ!? ま、マジでぇッ!?」
「わたくしのハンカチをお貸ししますから、それで頭を押さえてあなたはさっさと保健室に……いえ、ぶつけたのは頭部の様ですし、わくしが先生を呼んできますから、あなたはそこで大人しくしてなさい!」
さっきまでの空気はどこへやら。突然の事態にかえって冷静になれたんだろう。意外と優しいところもあるじゃないか。
「イテテテ…あークッソいてぇ………ちょっと良いか、オルコットさん?」
「まだ何か? ……それと下品ですわよ」
「あー、そりゃ悪かった。んで…そっちは怪我無い?」
「あ、あなたのような見るからに怪我人という人に心配されるいわれはありませんわ!」
顔を真っ赤にして否定して………まぁ、確かに言う通りだと思うと、つい笑ってしまう。
「そっか、良かった」
「……へんな方ですわね」
「ああ、あともうひとつ」
「……まだ何かあるんですの?」
「ありがとう、オルコットさん」
「……ッ!」
最後の言葉を聞くと、オルコットさんは走って行ってしまった。俺の怪我そんなにひどく見えるのか?
自分じゃそんな大怪我って感覚は無いんだが………まぁ、良いか。
「それで………あなたはわたくしに貸しを作ったつもりなのかしら?」
幸い、この男の傷は大した事は無かったようです。
――まさかこんな男に庇われた挙げ句負傷させてしまうとは……このセシリア・オルコット、一生の不覚ですわ。
「え? いや、そう言うわけでは無いんだけど…」
何よりも気に入らないのは、先程やって来た保健室の先生にどうしてこうなったか理由を尋ねられた際に、この男は何のつもりか『ちょっと躓いて転んだ先にテーブルが……』などと答えたのです。
――男のくせに。
それを盾に取って、この部屋に居座ろうものでしたらまだ可愛げもあったでしょうが――。
「さて、それじゃぁ……」
そう言うと、彼は部屋のすみにある段ボール箱から着替えを取り出すと部屋を出ていこうとし――
「お待ちなさい。どちらへ行くつもりですの?」
「え? いや、オルコットさんは俺の事嫌いだろう? だから出ていこうと……」
と、こんなことを言うのです。
これでは、わたくしがただ駄々をこねる子供のようではありませんか!
「……お待ちなさい。確かにわたくしの敵であるとはいえ、怪我人を放り出すなどとオルコットの名を汚す様な真似を、あなたはこのわたくし、セシリア・オルコットにさせるつもりですの?」
「え? ……それじゃぁ?」
「ええ。非常に不本意ではありますが……あたなの同室を、このわたくしセシリア・オルコットと同室することを、このわたくしの寛大な心で許可しましょう。……光栄に思いなさい。た、但し! 不埒な真似をするようでしたら容赦は致しませんわ!」
「……そっか、ありがとう。それじゃ、これから暫くの間よろしく。オルコットさん」
……全く、本当に気に食わない、変な男ですこと。
まぁ、良いでしょう。わたくしの実力の証明も先程の制裁も――全ては、来週の決闘で。その間位は……せめて穏やかに過ごさせてあげるのも、まぁ、悪くはないでしょう。
ですが――その時が来たら。
容赦なく教えて差し上げましょう。わたくしに挑んだ愚かさと、ご自分の身の程を。
部屋に入ると、そこには…
「あ~、おるるんだ~」
なんか、喋る着ぐるみがいた。
え? 何で縫いぐるみ……いや、着てるから着ぐるみ? まさか、それ私服? イヤイヤイヤイヤ、流石にそれは無いでしょ私。しっかりしろ私。……でも現に着てるしなぁ。って言うか、この子もしかして私のルームメイト? マジで? イヤイヤイヤイヤ、気に食わないようなヤツじゃなきゃどんなのだって良かったけど、これには流石の織歌さんも予想外だよ。予想の斜め上行ってるよ。って言うか、サイズ合って無いじゃん。袖ダボダボじゃん。って言うか、それは狐? 狐の着ぐるみなの? 素材がちっこいから、袖ダボダボなのも可愛くて似合ってるっちゃ似合ってるけど、この子女子高生だよね? 女子高生でそのセンスってどうなの? って、違う違う今重要なのはそこじゃない。あまりに予想外すぎて突っ込みどころが多いからって、今私は頭のなかで何回「って言うか」って言った……じゃ無くて。
「お……おるるん? え? それって私?」
「そだよ~。おるかだから~、おるるん~。あ~、もしかして~おるるんが私のルームメイトさんだったり~?」
なんだろう。ファッションセンスも独特だけど、かなり性格も特殊らしい。人懐っこい子だな。
「や、まぁ……一応、この部屋の住人なんだけど………私の事知ってるってことは、アンタ一組の子なの?」
「そーだよ~。あれ~? おるるん~、もしかして私の事知らないの~? せっかく自己紹介もしたのに~?」
非難がましそうな目でこっちを……微妙に目が潤んでるし…小動物見たいで可愛いな。
「や、ごめん。基本的に私って他人の自己紹介とか聞かないから……で、アンタ誰?」
プクーって頬っぺた膨らませて…多分怒ってるんだろうケド………全然怖くないどころか可愛いな。
「む~~………はぁ~。ま~、おるるんはそんな人だと思ってたけど~、思ってましたけども~……私は~
「OK。これからよろしくね、本音。私の事もおr」
「うんうん~、これからよろしくね~おるるん~」
……のんびりしてるだけかと思ったけど。結構、我の強い子なのかもしれない。言外に私の希望を却下してくるあたり。まぁ、呼び方なんて好きに呼んだら良い。ずっとカラードのリンクスとか首輪付きって呼ばれるよりマシだ。多分。
「ああ、そうだ。本音はもうシャワー浴びた? 私はこれから荷ほどきしなきゃいけないから」
「じゃあ~、先にお風呂頂いちゃいま~す」
「悪いね。じゃあサクッと終わらせちゃいましょーかね」
まぁ、荷物って言っても大して無いんだけどね。精々着替えと日常必需品とミュージックプレイヤー位だし。さっさと終らせて歌でも聞こうか。
「~~~♪」
いやぁ、本音がシャワー浴びにいってくれて良かった。いたらこんな風に歌えないしねぇ。好きな曲を聞いてるとどうしても歌いたくなっちゃうんだよね…ひょっとして私、お母さんに洗脳されてる?
……っと、どうやら本音が出てきた見たい。じゃあ、私もシャワー浴びる準備しようかな。
「あれ~? もう歌うのやめちゃったの~?」
ヤバ。聞こえてたの? 失敗したなぁ…うるさく無かったかな?
「もっと聴いてたかったのに~。おるるんの意地悪~」
あら? 意外と好評だった? けど自分の歌を誉められるってなんか恥ずかしいな。まぁ、悪い気はしないけど。
「いや、本音が出てきたなら私も入ろうかなって」
「あ~、それじゃ仕方ないよね~。じゃあ~お風呂上がったらまた聞かせて~」
「え? いや、それちょっと、かなり恥ずかしいからやめて」
「えぇ~? おるるんの歌声~、綺麗で優しかったし~恥ずかしがる事なんてないと思うけどな~?」
「や、人前で歌うのはちょっと……てか、うるさくなかった?」
おい、何で私こんな素直に喋ってるんだ?
なんか本音と喋ってるとペースが………布仏本音、恐ろしい子。
「えぇ~? そんなことないよ~。もったいない~」
「や、勿体無いって言われても………」
……何でそこで瞳を潤めるの!? べ、別に今知り合ったばっかりの子が、泣こうが喚こうが私の知ったこっちゃ無いし! で、でも何なの、この妙な罪悪感は……?
本音………なんて恐ろしい子。
「…………あ~……じゃぁ、一曲だけ。それで良い?」
「やった~。おるるん大好き~」
人懐っこい不思議な子だなぁ………。正直、ちょっと……いや、こういうタイプには初めて会ったけど、かなり苦手かも。
「そう言えば~、さっき歌ってたのは何て曲~?」
「……タイトルは『キミの記憶』。私の、お気に入り」
それだけ言って、入浴準備を終えた私はバスルームに逃げ込んだ。だって、なんか気恥ずかしいし。本音はちょっと苦手かもだし。
でもまぁ……本音がルームメイトだったってのは、悪くなかったかもね。
「おるるんの歌声……とっても綺麗で優しかったけど~……とっても悲しそうだったなぁ~……悪いことしちゃったかな~? でも聴きたいし~……むむむむぅ~。あんまり気にしちゃうのも~おるるんに悪いし~、折角だし~純粋に堪能させてもらお~♪」
そう、本音が呟いた言葉は、バスルームにいた織歌には聞こえなかった。
作「いやぁ、ルームメイトは本当に悩んだよ………けれど順当に行くと部屋割り君ら同室になっちゃうしねぇ…そんなの、誰も見たくないだろう? 作者の僕としては役者と観客の皆様にはタップリ楽しんで欲しいからねぇ」
絆「横暴だ! オルカは兎も角何で俺のルームメイトオルコットさんなの!? ストレスで俺の胃に穴でも開けたいの!? てか、アンタもキャラブレ捲りだな!」
作「いやいや、僕からのキミに対する愛情だよ。あ・い・じょ・う」
絆「歪んでるよ………」
作「今さらだねぇ。さて、観覧席にお座りの皆様におけましてはお楽しみ頂けたでしょうか? 拙い演出に脚本ではありますが、皆様にお楽しみいただける事こそこの身の幸せ。それでは次の開演まで暫しのあいだのお別れとなります。次の開演を楽しみにお待ちくださいませ…」