ISACfA《インフィニット・ストラトスAnd Counting for Answer》 作:傭兵No41
それじゃぁみんなー、ISACfAはっじまっるよー!
翌朝、IS学園グランド――その片隅。
そこで顔を会わせる俺達四人―――額にデカイ絆創膏を張った俺と、なんかくたびれた感じの一夏と、微妙に気まずそうな箒と、心なしか疲れてる様なオルカだ。
……ドイツもこいつも何があった?
オルカと箒はともかく………一夏、お前はまたなにかやらかしたのか?
「「なぁ」」
「一夏」
「絆」
「「何があった?」」
取り合えず………俺は自分の事情を説明した。ちょっとだけ事情を省いて。いや、躓いて転んでテーブルの角に頭をぶつけたのは事実だから、嘘は言ってない。オルコットさんと同室だって事は伏せたが。
そしたらオルカのヤツは腹を抱えて爆笑し始めた………いや、分かってたよ。分かってるんだけど、それと実際に目にしてムカつくのは別物だよな?
さて、次に一夏の事情を聞いたんだが………。
「いや、その……俺は箒と同室で………」
「OK、分かった。もう皆まで言うな。把握した」
「だーから箒も何か気まずそうだったのか………このラキスケ一夏」
「ゲブハッ!」
一夏に痛恨のダメージ。
「………」
箒は顔を赤くしてうつ向いている。……コイツら分かりやすすぎるだろう。
「………だから箒もいたのか。でもまぁ、ちょうど良いしペアに別れてまずはストレッチから始めるか」
「オーケぇ。そんじゃ、私は箒と組むよ」
まぁ、無難だな。じゃぁ俺は一夏と………。
「…………んなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、箒さんごめんなさいノックしなかった俺が悪かったのでもう木刀は勘弁してください何で木刀で木製の扉貫通できるんですか俺は鞄のなかの竹刀を取ろうとしただけなんです下着まで抜き取る気は無かったんですごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……ブツブツブツブツ」
……恐らく、昨日の事がフラッシュバックしたんだろう。一夏はハイライトを失った焦点の合ってない目で何処とも分からないところを見つめてひたすらブツブツ呟いている。まずい、早く一夏をこっちに呼び戻さなければ。
「おい! しっかりしろ、一夏! おい!」
俺は一夏の肩を強く掴んで前後にブンブン振り回す。
「ごめんなさいごめんなさ……ハッ! わ、悪い絆。も、もう大丈夫だ」
良かった、普段の一夏だ。目の焦点も戻ってるしもう大丈夫だろう。
「一夏、昨日何があったかは聞かないでおくし、忘れろとも言わない。だけどな、共同生活するんだからノック位しろ、な?」
「あ、ああ………そ、ソレで今何やってんだ?」
「ペアに別れてストレッチだ。取り合えず一夏は少しでも体を動かして気分を変えろ。な?」
「お、おう……」
こうして俺達の朝の日課は始まった。
「でさぁ? 結局、一夏に何されたわけ?」
私は箒の背中をゆっくりと体重を掛けるように押しながら、何があったのか聞いてみることにした。いや、大体分かるけどやっぱ気になるじゃん?
「…………い、一夏に裸を、み、見られた……」
「やっぱりかぁ~…ホントにアイツはどうしようも無いなぁ………」
「い、いや! その、だな。い、一夏だけが悪い訳では無くてだな………」
「へ?」
「私も同室の者はてっきり女性だと思っていたからな………そ、その……ついバスタオル一枚でシャワー室から出てきてしまってだな…」
「あー………なるほど。それで欲情した一夏に押し倒されたと?」
箒がその言葉を聞いた瞬間ガバッと体を起こして振り返ってきた。……いや、冗談なんだけど。一夏にそんな度胸無いしね。でも、やっぱり箒のこの反応は見てて面白いな。
「お、おし!? 押し倒……ば、馬鹿者! い、いいい、一体何を………」
首まで真っ赤にしちゃって…可愛いったらありゃしない。
「あははは♪ 冗談、冗談だってば♪」
「じょ、じょじょじょ冗談!?」
「そ。一夏にそんな度胸あったら箒も苦労しないだろうしねぇ。……それに、ホントのとこ言うとちょっとガッカリしたんじゃない?」
「ソレは………まぁ、確かにな…。これでも多少は自信があるつもりなんだが……一夏の意気地無しめ…って、おい! お、おる織歌!? 何を言わせるんだ!」
イヤー、ホンット箒弄りは楽しいなぁ。6年振りなだけに懐かしさよりも新鮮さを感じるよ。
「アハハハハ、ゴメンゴメン♪ ……でもさ、この際だから言うけど…ハッキリ告白しちゃえば? アイツは生半可な事じゃ多分箒の気持ちに気付かないよ? アイツの朴念仁っぷりはもう筋金入りだから。箒が転校してからもアイツ凄かったんだから。キズナと違って自覚なしに女の子の告白次々振っていってさ………あれは告白した子達が哀れだった」
「そ、そんなになのか!? し、しかし告白か………ぐぬぬぬ…」
あーあー……真剣に悩んじゃって。欲しいなら悩むような事じゃないと思うんだけどなぁ………ま、見てて面白いし別に良いかな?
「まぁ、頑張りなよ」
「う、うむ。ありがとう、織歌」
さて、あれから二時間くらい四人で日課のトレーニングを終えた後、私たちは一旦部屋に戻り、シャワーを浴びてから食堂に集まる事にした。
部屋に戻ると………何と本音は起きていた。朝は弱そうなタイプだと思ったのに…意外だ。
「あ、おるるん~お帰り~…あれ~? それともおはようかな~?」
「……ただいま、本音。それと、オハヨ」
本音は既に着替えていて、既に制服だった……んだけど、制服の袖が余りまくってて手が完全に隠れているどころか、余剰分が手があるであろう位置から垂れさがてて……何て言うか幽霊?みたいな感じっていったら分かりやすいかな?
いや、本音自体は別に幽霊っぽくないんだけど。
「おるるんは~朝早いんだね~。何やってたの~」
「……日課のトレーニング」
「お~、おるるんは頑張り屋さんなんだね~」
「……そんなんじゃないよ。ああ、そうだ。朝御飯一緒にいく? キズナに箒と一夏も一緒だけど」
ずいぶん素っ気ない態度に誘い方だとは思う。だって……嫌いではないけれど、なんかこの子苦手なんだもん。
「おお~! いくいく~おるるんのお誘いじゃ断れませんなぁ~」
だって言うのに、本音は満面の笑みで喜んでるし。何て言うか本当にやりづらい……喜んでるのを見て満更でも無い自分がいるのが特に。
食堂に来ると既に一夏と箒が同じ席で朝食をとり始めていた。オルカはまだ来ていないらしい。さて、俺は何を食べるかな………朝はバイキング形式なのか。…どこの高級ホテルだよ。まぁ、適当に食べたいモノを乗せていくか。
「お? 絆ーこっちこっち!」
「分かってるから大声で呼ぶな!」
「……お前は相変わらずよく食べるのだな」
そう言って僅かに顔をしかめる箒。……なんでだ?
「……そうか? オルカもこれくらい食べるぞ?」
そう言って俺は一夏の隣に座る。ちなみに俺の朝食メニューはごはんに味噌汁に塩鮭、冷奴に野菜サラダに温泉卵にだし巻き玉子にざるそば、デザートにヨーグルトだ。我ながらバランスはいいと思う。ただ、惜しむらしくはだし巻き玉子に温泉卵で卵が被ってしまった事か。先に温泉卵を見つけておけば卵焼きは取らなかったのに………温泉卵見つけたら取るしかないだろ?
「お待たせー」
なんて考えてたら後からオルカの声が。振り替えると、オルカが見慣れない子を連れている。……何処かで見たような気もするけど…誰だっけ?
「……ああ。この子は布仏本音。私たちと同じクラスで私のルームメイト。一緒に食べても良いでしょ? ああ、それでキズナと一夏はもう知ってると思うから省くけど、そっちは篠ノ之箒。私達の幼馴染み」
皆の視線に気付いたのか、オルカに紹介された布仏さん。布仏さんが一緒でも別に良いんだが………オルカが出会って一日の人を誘ったっていうのに少し驚いた。一夏も、暫くは会っていなかった箒も少し驚いてるみたいだ。
「ど~も~、ルームメイトのおるるんからご紹介頂きました~、布仏本音だよ~。本音って呼んで~」
なんだか随分スローペースで……だぼだぼの袖に隠れた手で器用にトレーをもって………て、違う。今布仏さんなんて言った?
「「「お、おるるん!?」」」
ハモったのはもちろん俺と一夏と箒だ。いや、驚くだろう。オルカをそんな呼び方するなんて……怖いもの知らずなんだろうか?
いや、オルカは別に自分がなんて呼ばれようが気にしないタイプの人間だから、呼び方一つで怒ったり……なんて事は心配してない。心配しては無いんだが、オルカは……何と言うか、纏ってる雰囲気が獰猛な獸を彷彿とさせる。だから、昔からオルカを初見の人間は第一印象で余り近付きたがらない。例外と言えば、箒とあの子くらいか。
そんなオルカにいきなり懐いてる布仏さんに俺達は驚いている。いや、確かに慣れれば頼りになる姉貴分の様なヤツなんだが、それでも会ってそう時間が経っている訳でも無いのにここまで懐いてるなんてな………箒はなんか少しだけ嬉しそうだが。
「ふっ。おるるん………おるるんか。布仏……いや、本音。織歌は昔から人付き合いが下手でな。私は同室の者と上手くやれるか心配だったんだが……うん、これからも織歌と仲良くしてやってくれ 、本音」
「オッケ~、任された~しののん~」
「し……しののん?」
「アンタは私の母親か。それと箒には人付き合いが苦手とか言われたくない。あんたは私より人付き合いが苦手だったでしょうが」
「グッ! そ、そんなことは……」
「おやぁ? 四六時中不機嫌そうに仏頂面でクラスからずっと浮きっぱなしでしたのは何処のドチラさんでしたかしらぁ~? ねぇ? ミス・ブシドー?」
「ぐぬ…ぐぬぬぬ………ふっ。確かに今までの私ならば言い負かされて居ただろうが……フフフ、随分と可愛らしいあだ名ではないか。なぁ………『おるるん』?」
「ヤ・メ・ロ『しののん』」
織歌も箒もにこやかに微笑みながら、互いに相手に視線をぶつけている。なに下らないことやってるんだ、コイツら。
「まぁまぁ、落ち着けって二人とも。折角の料理も冷めるし、のほぼ……のほほんさんも困って………無かったけど、取り合えず座ったらどうだ?」
ナイス、一夏。けど、お前今布仏さんの名前噛んで、あだ名にして誤魔化したろ。ちなみに布仏さんはオルカと箒を見て笑ってる。
「二人は~仲良しさんなんだね~。良いなぁ~羨ましいな~おるるんも~しののんも~」
「「……」」
織歌はそれを聞いて黙って席につく。若干その顔は赤いような気がする。箒も若干赤い。布仏さんは今のを見てて仲が良いって言えるのか。凄いな。うーん…
……だからこそ、オルカに懐いたのか。
「まぁ、これからよろしく。布仏さん?」
「本音って呼んで~」
「OK。よろしく本音」
「うん~、こちらこそ~きっちー」
「き………きっちー?」
取り合えず、この子のネーミングセンスはかなり独特だと思う。
「けど~……きっちーも~おるるんも~よく食べるよねぇ~……?」
「「え? そう?」」
ちなみに、オルカの朝食はトースト三枚、スクランブルエッグ、ベーコン、ミートボール、ハンバーグ、ウィンナー、唐揚げ、フライドポテトにサラダにミネストローネ、デザートにパンケーキ。……やけに茶色が多い気がするが……まぁ、量としては俺と同じで普通だと思う。やっぱ食えるときに食っとかないとな。食えなくなって後悔しても遅いし。
「何でそれでお前達は………」
「お前ら、ホンット昔からよく食べるよな………」
「私も~お菓子は食べるけど~…凄いね~」
何で皆微妙な顔をするんだ?
俺もオルカも不思議な顔で見つめあい………。
「いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻者はグラウンド十周だ。遅刻しようものなら覚悟しておけ!」
千冬さんの良く通る声が食堂に響き渡った瞬間、周囲がざわめき始めた。見れば、周囲の生徒達が慌てて目の前の料理を口に運んでいる。……当たり前か。この学園のグラウンドは一周五キロはある。それを十週なら駅伝並みの距離を走ることになる。体力を着けるには最適かもしれないが――それで授業に遅れてしまったら本末転倒だ。少しだけペースを上げるか。
「「ごちそうさまでした」」
「「「はやっ!?」」」
「や、仕方無いだろ? 俺のだって本当はもう少し味わって食べたかったんだけど」
「んじゃ、皆お先ぃ~♪」
そう言って俺とオルカは席を立つ。
「お、お前ら! 良く噛んで食べないと体に悪いんだぞ!?」
「あ、あり得ん………あの量を二十秒足らずでか!」
「ま、待ってよ~おるるん~きっちー~」
背後からかけられる言葉を一切気にせず、俺達は食堂をの出口まで歩いていく。因みに、上からジジ臭い事を言ってるのが一夏、良くわからないがなんか驚いてるのが箒、最後の呼び止めてるのが本音だ。悪いな、現実は非情なんだ。
「喋ってて良いのか? 遅刻したらグラウンド十周が待ってるぞ?」
「喋ってる時間なんて要らないよねぇ~。それで食えるって言うならさ~?」
二人で振り返ってそれだけ告げると、俺達は食堂を出ていった。背後から慌てて料理をかっ込む音と、なんかむせるようなくぐもった声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだな、多分。
さて、今は授業の合間の休み時間。一夏達もどうにか授業に間に合い、授業中は何事も無く開始された。途中、山田先生がISの生体補助機能を、男子の俺と一夏が居ることを忘れてブラジャーに例えて説明してくれた時にはちょっと教室の中が気まずい空気に包まれたが。
だが、それよりも俺の興味を引いたものがある。それはISには意識の様なものがあり、それによって操縦時間によってIS自身が操縦者の特性を理解してより性能を引き出せる――つまり、ISにはいわゆる自己学習型の高性能AIと自己進化機能の様なものが付いている点。山田先生によれば、ISは道具ではなくパートナーの様な存在らしい。相互理解を深めることによって、ISは自身を操縦者により適した状態に最適化させる。そんなモノはネクストにさえ搭載されていなかった機能だ。興味を引かれるのも当然、ある意味ではISはネクストを超えているんじゃないか?
確かに、兵器としての側面ではネクストの方が圧倒的に優れているだろう。対価に人体改造と自分の寿命とかなりの苦痛を支払う事になるが、ネクストはAMS適性さえあれば男女問わず操縦でき、低くても操縦技術や経験等によって補う事も出来る。GA社の最高戦力であるあの人も、低いAMS適性でかつては粗製と嘲られたそうだが………いや、あれは絶対嘘だ。あんなに強い人が粗製と言われてたなんて誰が信じるんだ? むしろ、あの人を一番最初に粗製と言ったヤツの顔が見てみたい。きっととんでもない勘違い野郎だろう。
……いけない、話が逸れた。
だが、それでも。例え女性にしか操縦できないと言う致命的な欠陥を持っていたとしても、ISがネクストに劣っているとは俺には思えない。何て表現したら分からないが………ネクストが完成された兵器である事は間違いない。対してISは……未完成の兵器……と、言ったら良いんだろうか?
未完成であることが、兵器にとって最悪のレッテルであることは他ならない俺が良く理解している。だけど………果たしてISを
むしろ、兵器として捉えること自体、
十中八九、製作者である束さんからしてみれば、兵器としてしか捉えられない事は侮辱でしかないのかもしれない。オルカも、この件に関してはなにかしら思うところがあるみたいだし。一応現在、建前上はアラスカ条約でISの兵器への転用は原則として禁止されている。だが、さっきも言ったがそんなのは所詮は建物出しかない。兵器としての転用が禁止されていながら、軍用IS何てものがある矛盾。
なら、ISの性能しか見れない世界は――俺は。
「ねぇねぇ、織斑くんと絆くんさぁ――」
「……あ」
思考の海に沈んでいた俺を、誰かの声が掬い上げる――そして、ふと気が付けば。
「はいはい、質問しつもーん!」
「今日の昼ヒマ? 放課後ヒマ? 夜ヒマ?」
「二人の好みのタイプってぇ~、どんなタイプー?」
どういう状況だ、これは?
「いや、そんないっぺんに質問されても…」
明らかに昨日よりも積極的な女子達に、目を白黒させながらもどうにか返答しようと心みる一夏だが……回りの女子達は一夏の返答を聞くきがあるのかどうかすら疑わしい位に盛り上がっている。これはあれか、もうプライドは抜きだ!みたいな展開なのか。それにしても明らかに人数が多すぎるだろう。まるで見覚えのない顔もいくらか混じっている……ふと、視線を教室の入り口に向けるとチケットだか整理券だか分からない紙切れを配っている生徒がいる。有料で。そう、有料で。……随分景気が良さそうじゃないか。頭が痛くなってきた。
「千冬様って自宅ではどんな感じなの!?」
また頭が痛く(物理)なるような質問を……たまたま一夏と目が合ったので、このままでは素直に喋りそうな一夏の為にアイコンタクトで視線を教室の入り口に向ける。一夏も俺にならって視線を教室の入り口に向けると……先程の紙切れを販売していた生徒の頭に出席簿を落とす、今話題の冥王様の姿が。
(……分かってるな?)
(分かってる。助かった、絆)
「あ、もうじゅぎょうはじまるみたいだから、みんなせきにもどったほうがいいんじゃないかー?」
わ、わざとらしい、何て酷い棒読みだ。流石と言うか、やはりと言うか、こんなおざなりな説得では納得いかないのか、大半の子が渋っている。
が。
「ほう? 殊勝な心がけだな、織斑。貴様達も少しは見習って、さっさと散れ。休み時間は終わりだ」
予想外の方向から援護があった。見れば一夏が冷や汗を流している。流石千冬さん、プレッシャーが半端ないな。
「ああ、そうだ。織斑、お前の専用機だが用意するのにもう少し時間がかかる」
専用機……だって? 誰に? 一夏に?
「へ?」
「予備機がない。だから学園で用意するそうだ。少し時間はかかるがな……どうした? 少しは嬉しそうにしたらどうだ?」
「俺に………専用機」
不適に笑う千冬さんと、噛み締める様にその言葉を、事実を受け止める一夏。
ああ、良かったな……一夏。お前はずっと力を欲しがってたものな……あの時から。
「ふん……本来、専用機は国家あるいは企業に所属する者にしか与えられない。しかも、国家代表候補生でも専用機を持つことのできない者さえいると言うのに、世界に467個しかない貴重なISコアの内の一つが、ISを動かして間もないぺーぺー以下のド素人である貴様に貸し与えられるのだ。この学園や政府にしてみれば、ただのデータ取りの為の機体かも知れないが……その事実をどう捉え、どう活用するかは織斑、貴様次第だ。……せいぜい覚悟を決めて臨むことだな」
純然とした事実を一切の脚色も、気休めも抜きに突き放すように語る千冬さん。その些か厳しすぎるともとれる言葉には、力を持つことの意味と覚悟と決意、そして得たことで満足せず修練に励むよう一夏に促そうとしているのがわかる。
だけど――。
「ッハイッ!」
そんなもの、一夏にとっては意味がない。千冬さんの言葉に一夏は決意と覚悟の籠った返事と毅然とした表情で応える。
現在、ISのIS足らしめる主要機関であるISコアはアラスカ条約に加盟している国家が管理する467個しか存在していない。ある時を境に世界で唯一ISコアを製造できる束さんがそれ以上のISコア作成を拒否しているからだ。つまり、束さんがコッソリISコアを造る……なんて真似をしなければこれ以上ISコアが増えることはない。それを踏まえれば、これがどれだけ重大なことか分かるだろう。
決意と覚悟を新たにしたその一夏の表情を見て、自然と自分の顔が緩むのがわかる。
今はこの親友を祝福しよう。俺の僅な嫉妬なんてものは、きっと些細な事だから――。
「あ」
と、感慨に耽っていると、オルカがふと何かを思い出したように声を上げて、こちらに振り返ってきた。
「そうだ。ねぇ、キズナの専用機の事なんだけど」
「「「……は?」」」
何だ? 専用機って? 俺そんな話聞いてない。俺も一夏も千冬さんもポカンとした顔をしている。クラス中も静まり帰って食い入るようにオルカの言葉に耳を傾けている。
「……あれ? キズナとちーちゃんに言わなかったっけ? アライアンスの技術開発部の主任にアンタの事話したら、是非ともキズナのISを用意させて欲しいって。クラス代表決定戦の事伝えたら、なんか凄い燃えてたよ?」
あんまりにも唐突な話に、千冬さんもちーちゃんと呼ばれた事を気にしていない。
「……いや、初耳だし。そもそも俺の意思は? 政府とか学園の許可は?」
「いや、アンタの意思とかそんなもん無いようなもんでしょ? 許可は確か………主任の話だと、政府の方でもアンタのIS用意させるつもりで色々考えてた所に、アタシの使ってるのと同タイプのISを双子のアンタに使わせたらデータの比較も楽だしって、強引にねじ込んだらしーよ? ちょうど
「……学園への申請はどうした?」
「ああ、それは私の方から学園に申請を………」
即座にポケットから携帯端末を取り出してどこぞへ連絡を取る千冬さん。ここだけ見れば良くできるOLだなぁ。私生活は壊滅的だけど。
「ああ、すまない。織斑だが、至急確認をとって欲しい事があってな。烏丸絆の専用機の申請に付いて調べてもらいたい。………………そうか、初耳か。では、書類などの提出もされていないんだな? ……分かった、仕事中すまなかったな。……織歌、事務局の方でも初耳だそうだが?」
「…………テヘ♪」
スパシッ!
「お~る~か~? 何が、舌を出して、テヘッ♪だ、キサマァ…それと、出席簿から、手を、離、さんか……! ぎぎぎぎ…」
「ご、めぇ~ん♪で、も、ちょーっと、手を、離すのは、無理、かな~? だって、私、そういう趣味、無い、し。ねぇ~、いい加減、諦めようよ、ちぃぃいーちゃぁあん! グギギギ…」
「織斑先生と呼べと、言ってるだろうが、馬鹿者がぁぁぁぁ………!」
神速とも言える速度でオルカの脳天に出席簿をうち下ろした千冬さんと、回避が間に合わずに真剣…………いや、出席簿白羽止めでそれを止めたオルカ。二人ともそのままの体勢で力を込め続け睨み合っている。凄まじい拮抗状態だ。……酷く下らないけど。うん、凄くどうでもいい。
あー、しかし俺の専用機かー……どんなのだろうなー……。楽しみだなー……なんかオルカを見てると不安になってくるけどねー………はははは、俺の専用機はオルカに申請忘れられる位だしなー……はぁ。
「き、絆くん? ど、どこを見てるんですか? ちょ、ちょっと絆くん戻ってきて下さいー! お、織斑先生も織歌さんも授業を始めましょうよー!」
そんな山田先生の声が聞こえてきた気がしたが……きっと気のせいだろう。
はい、と言うわけで今回も日常回になりましたが…いかがでしたでしょうか?
お楽しみのクラス代表決定戦まであとわずか…もそっと更新はやくできたらなー…速さは力ですから!