ISACfA《インフィニット・ストラトスAnd Counting for Answer》   作:傭兵No41

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はい、またもやお待たせしました。
何て言いますか、その……またもや要らないことを書きなぐっていったらどんどん長くなっていって…

えーと…いや、まぁお楽しみください!


mission9 打倒、代表候補生!絆と一夏と秘密の特訓計画!?

「安心しましたわ」

 

そう言って来たのはオルコットさん。それにしても唐突だな………そもそも、安心って何に?

 

「結果が見えていた……とは言え、訓練機を専用機で一方的になぶるなど、ネズミをなぶる猫の如き醜悪な行為……その様な行いでオルコットの家名を汚さずにすむのですから」

 

ああ……そう言うことか。専用機……完全に自分に調整された機体。それをある程度自由に使えるって言うのがメリットが大きいって言うのは分かる。分かるんだが……そこまで訓練機と専用機で性能が違うとは思えないだけどな。ネクストとノーマル位の性能差があれば話は変わってくるだろうが……自分用に調整されているか、いないかの違いはあれど少なくとも同じIS同士なら、そこまで戦力に差があるように思えない。

 

「うーん……オルコットさん。ちょっと聞きたいんだけど」

 

「…………なにかしら?」

 

俺が話しかけた途端、若干顔をしかめるオルコットさん……分かってたけど、分かりやすすぎじゃないか?

 

「いや、専用機と訓練機ってそんなに差があるものなのか? 確かに、自分用に調整されてるって言うのは大きいんだろうけど…同じISだろう? 俺の考えじゃいつ届くのか分からない専用機よりも、多少は乗って使い慣れた訓練機の方がマシなんじゃないかと思うんだけど」

 

俺の言葉を聞いて、オルコットさんは頭を抑えてため息を一つ。妙に様にはなってるが……俺はそんなに変な事を言ったような記憶は無いんだけど。

 

「あなたは………本当によく分からない方ですわね。一見、それなりに知的なのかと思えば……あなたは先程の山田先生の授業、聞いていたのでしょう? まぁ……良いでしょう。このセシリア・オルコットが庶民であるあなたに教えて差し上げましょう。ISには学習機能がついているのは……先程の授業でご存知ですわね? それで自身を常に操縦者にとって最適な状態へとアップデートしているのです。つまり、乗れば乗るほどISは扱いやすくなるのです。ですが、訓練機にはそれがありません。考えてもご覧なさい……不特定多数の生徒が搭乗するものに特定の人間の癖をつけてしまっては、訓練機の意味がありませんもの。……お分かりいただけて?」

 

なるほどな………けれど、結局ISに乗りなれていない俺と一夏には専用機だろうと訓練機だろうと変わらない気がするが……。

 

「………どうやら、まだ納得いっていないと言う表情ですわね?」

 

だから何でこう、俺の心が読めるんだ。これでも元傭兵だから多少はポーカーフェイスには自信があったんだけどなぁ……。

 

「確かに、与えられたばかりの専用機と訓練機とでは大した差は無いように思えます。ですが、それでも専用機と訓練機の間には確かな差があるのです。自分のためだけに調整されたIS――ソレとの一体感は後は自分で専用機に乗って、直接確認した方が良いでしょう」

 

「……なるほどな。ありがとうオルコットさん。けど、どうして俺に塩を送るような真似を? 下手したら俺は専用機じゃなく訓練機で闘いに臨むつもりだった。その方がそっちにとっては………」

 

……おかしいな。オルコットさんがだんだんイライラしてるように見える。いや、俺はおかしな事は言っていないはずだ。

 

「先程言ったことをもう忘れまして? これだから男性という生き物は……一週間後の代表決定戦はわたくし、セシリア・オルコットの実力を示す絶好の機会なのです。既に結果は見えているとは言え………その相手がISの事も分からないようなド素人ではわたくしの実力を示す所か、ただの弱い者虐めの謗りを受ける事になりかねません。よって、わたくしはあなた方に塩を贈る事も辞さないのです。お分かり頂けまして?」

 

相変わらずすごい自信だな。……つまり、俺と一夏は随分と舐められてるみたいだな。面白い。

 

「ああ、よく分かった。オルコットさんが俺達を舐めてるって事は」

 

その一言の何が可笑しかったのか、オルコットさんは手を口元に当てて不敵に笑い出す。ソレに対して、俺も出来うる限り好戦的な笑顔をオルコットに返す。

 

「フフ……舐めるも何も……純然たる事実でしょう? まぁ、理解できたのなら精々努力することです。このわたくし、セシリア・オルコットが叩き潰すに値する程度には。その努力ごと叩き潰してこそ、わたくしの勝利もより映えるのですから。試合が終わった後も、そんな表情が出来るのか……楽しみにさせていただきますわ。それでは、ご機嫌よう」

 

そうして優雅に髪を払い、一礼してから去っていくオルコット。いちいちそういう動作が様になってるのが面白いなぁ………。

ああ、本当に面白い。面白いなぁ、セシリア・オルコット。きっと彼女は一週間後を楽しみにしているんだろう。なら、思いっきり期待に応えようじゃないか。

――見せてやるよ、元傭兵(リンクス)の実力を。

 

「おーい、絆ー。いつまで座ってるんだー?一緒に飯食いに行こうぜー?」

 

……一夏が居ないと思ったら、あの野郎しっかり逃げてやがったな。

 

 

 

 

 

さて、ところ変わって学食。凄い混みようだなぁ………これは。けど、どうにか五人揃って昼食は取れそうだ。もちろんメンバーは俺、オルカ、一夏、箒、本音だ。注文は全員日替り定食だが、俺は追加で月見山菜天ぷらうどんを、オルカはチャーシュータンメンを頼んだら、回りがぎょっとした顔をしてこっちを見てくる。一夏と箒と本音は揃って苦笑いを浮かべて………謎だ。

なんだか物凄い視線を集めながら、俺達は食事を食べ始めた。

 

「……でさ? 正味勝てると思ってんの、アンタら。セシリアの実力は知らないけど相手は腐っても国家代表候補生、ソレも専用機持ちだよ?」

 

「うむ。絆も珍しくやる気になっているようだが、勝算はあるのか?」

 

へぇ…… 流石は六年は会ってないとは言え箒は幼馴染みだな。流石に分かるか。どうせ長い付き合いで誤魔化したって分かるなら、隠したってしょうがない。だったらここは正直に言うか。

 

「「無い」」

 

「……え?」

 

一夏とハモった。しかし、俺の言葉に気付いた一夏がぎょっとした顔でこっちを見てきた。……なんだ? 俺が勝てるとでも言うと思ったのか?

 

「何でお前が一番意外そうな顔をしてるんだよ………考えても見ろ、俺がIS動かした経験はお前と同じだぞ。何でその俺が勝てるって断言できるんだよ?」

 

「や、ま、まぁ、確かにそうなんだけどな……」

 

「ソレでよくあんな啖呵を切れたものだな、お前たち……」

 

「けど~、二人とも専用機貰えるんだし~、ちょっとは希望が見えてきたんじゃない~? 二人とも羨ましいな~」

 

ニコニコしながら話に入ってきた本音。袖に隠れた手で器用に箸を使ってるな……どうなってるんだ、あれ?

 

「まぁ、勝機なんて無くても、どーせ勝ちに行くんでしょ、アンタ達は」

 

「勿論。俺達を誰だと思ってる? まー、勝つのは()だけどな」

 

「絆も言ってくれるよなぁ………でもな? オルコットにもお前にも()が勝つ」

 

「何か出来ることがあれば手伝うぞ一夏。それと絆」

 

「俺は一夏のオマケですか、そーですか。……はぁ、まぁ良いや。一応ありがとう箒。じゃあ、明日から実戦形式で一夏とひたすら戦って欲しい。二人っきりで」

 

二人っきりでの部分を思いっきり強調して、最後にボソリと他の人間には聞こえない声量で「箒の望み通りにな」と付け加える。ククク、さっき俺を置いて一人でさっさと逃げ出した罰だ。精々箒にしばかれろ、一夏。

 

「い、一夏と……? う、うむ! しょ、しょうがないな! ならば私がやるしか無いな!」

 

「ああ、箒。容赦なく一夏をシバき倒してくれ」

 

案の定、篠ノ之箒大先生は大いにやる気を出してくれたようだ。目を輝かせて視線で然り気無く感謝を伝える箒に、俺は親指をグッと立てて小さなサムズアップを返し………ちょっとだけ罪悪感に包まれた。うん、ちょっとだけ。幼馴染みの純情を利用して一夏に然り気無く仕返ししてる俺がなんかこう………すみません本音さん、お願いだからそんな無垢な笑顔を俺に向けないで。罪悪感がマッハになるから。

 

「ええ!? ちょ、待った! そ、その前にちょっとでもISのトレーニングした方が良いんじゃないか?」

 

「な、なに!? い、一夏! わ、私と二人っきりで稽古するのが不服なのか!?」

 

「い、いや! そう言う訳じゃないけど、ちょっとでもISの操縦に慣れといた方が良いじゃないかと思ってだな、俺は!」

 

「そう言うと思ってな。ほれ」

 

そう言って俺が取り出したのは、二枚の紙切れ。

 

「訓練機の貸し出し使用許可証だ。俺も少しでもISの操作に慣れておいた方が良いと思ってな。昨日の放課後、部屋で頭かち割った後に申請してきたんだよ。ただ、訓練機の貸し出しもかなりの人が申請してるらしくてな、生憎と毎日乗れそうって訳でも無いんだよ。で、だ。一つオルカに聞きたいんだけど……」

 

「ズルズルズ……ふぁに?」

 

せめてモノを飲み込んでから喋ってくださいよオルカさん。てか、最初に話を振ったのはお前だろ! 何で話を振った本人が他人事のようにラーメン食ってんだよ!

 

「……色々突っ込みたい事はあるけど置いておいてだな…。オルカ、ISの操縦は自分の体を直接動かす感覚とそう大差ないって俺は見てるんだけど……その辺りはどうだ?」

 

「ズルズルズルズルズルズル…ふん、ふぁいふぁいひょんふぁひゃんひひゃひゃあ? ひゃあ、ひょっひょひひゃいひゃふぁふぁふふぇふぉふぇ」

 

いや、何て言ってるのか分からん。頼むからせめて飲み込んでから喋ってくれ。ソレ、スゲェ汚ねぇから。

 

「全く……せめてモノを飲み込んでから喋れ。下品だぞ、織歌。全く、この辺りの悪癖も昔から変わっていないとはな…まぁ、代わりに私でも良ければ答えよう。答えはその通りだ。多少、細部に違いはあるがな。……だが、それがどうしたと言うんだ?」

 

「OK。それじゃ、話を戻して一夏の質問に答えよう。箒は知らないと思うから説明するけど……箒と別れて、中学上がってからのここ三年間、一夏は一回の組手どころか一回の素振りさえもしてない」

 

「……ッ! 何だと!? それは本当か、一夏!」

 

ガタッと音をたてて立ち上がり、一夏を睨み付ける箒。そんなに意外だったのか。だが、このままじゃ話が進められない。

 

「まぁ、そんなに一夏を攻めないでやってくれ。中学上がってから、こいつは千冬さんの負担を少しでも減らそうってずっと放課後はバイトに明け暮れてたんだから」

 

「そう……か。ソレでは…仕方がないか」

 

「おりむ~はお姉さん思いなんだね~、私も~なんとな~く分かるな~」

 

納得してくれたのか渋々座り直す箒。本音の、多分嘘偽り無いだろう笑顔で言った感想に、俺もつい表情を崩してしまう。

 

「納得してくれたか? まぁ、俺達と朝のトレーニングだけは殆んど欠かさずやってたから体力面での心配は無い。無いんだが、如何せん一夏が忘れた剣と立ち合いの感覚を箒には一夏に思い出させてやって欲しいんだ。立ち合いでの感覚だけだったら俺とオルカでもどうにかなるんだけど………」

 

「ズルズルズル………ゴクンッ。あー、確かに、剣術は無理だね。だって、私も絆も()()はからっきしだし」

 

「そう言うことだな。つまり、箒以上に適任は居ないって事だ。そう言う訳で……かなりハードスケジュールで一夏にはキツいと思うけど、これから一週間の放課後は訓練機に乗れる時にはISの基本的な操縦を。乗れない時には箒と剣術の稽古。さらにそれと平行してISの――」

 

「ねぇ? 君達が噂のコ達かな? 確か、代表候補生のコと決闘するとか聞いたけど、ホント?」

 

人が話してる最中に割り込んできて…終るまで待てなかったのか? それに噂もなにも……IS学園に通学している男性操縦者とか俺と一夏しか居ないんだから確認取るまでもないだろう。しかも、決闘するって話はもうかなり広まってるのか? リボンを色を見るに………三年生か。IS学園では一年生は青、二年生は黄、三年生は赤とリボンの色が違う。確かに、見ればクラスメイトの女子達より大人びた雰囲気を持ってるが……人が話してる最中に話しかけてくるなんて、最低限のマナーも守れないのか、上級生のくせに。その小動物みたいな人懐っこい顔で何もかも許されるとか思うなよ。

 

「はい、そうですけど」

 

突然の乱入者に戸惑いながらも律儀に返事を返す一夏。なんか、話に割り込まれた事にちょっと……そう、ちょっとだけ腹を立てた俺が、まるで心が狭いみたいじゃないか。

 

「でも、君達って素人だよね? IS稼働時間はどれくらい?」

 

「……大体、二〇分位だと思いますよ。俺も一夏も」

 

「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんでしょ? だったら軽く三〇〇時間はやってるわよ。……でさ? 私が教えてあげよっか? ISについて。それなら勝てないまでも、結構イイ線行けると思うよ? ……どうかな?」

 

ああ、ダメだこの人。

多分、この人に悪気は無くて、善意で言ってくれてるんだろう。きっと、この人自身もいい人なんだろう。

でも、最後の一言だけは余分だ。

勝負に絶対なんてない。確かに、一般的に見れば代表候補生にド素人二人が挑む何て、結果は火を見るより明らかなのかもしれない。でも、それでも――。

 

「おは――」

 

「すみません、先輩。お話はありがたいですが、結構です」

 

断ろうと思って声を出した俺の言葉を遮って、一夏がキッパリと先輩の提案を拒絶する。

 

「確かに、俺達が代表候補生に挑むなんて無謀な事かも知れないですけど………それでも、勝負の舞台に立つ以上は勝つぞ!って気持ちは忘れたくないんです。だから、先輩の気持ちは嬉しいですけど……すみません。それに、教えてくれる人ならもう三人もいますんで」

 

そう、キッパリ言った一夏の姿を実に楽しげに見つめるオルカ。箒は箒で一夏を頬を染めながら誇らしげに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

六年ぶりに再会した幼馴染み達。

その中の私の初恋の相手――織斑一夏。

親友との誓いだと言うことも勿論あったが――共に学んだ彼との絆だと思って励んできた剣の道。

去年の全国剣道大会で優勝した事を、昨日は我が身の事の様に祝福してくれた一夏。自分が剣の道を歩き続けた事が無意味ではなかった、一夏との確かな繋がりであったんだと、間違いではなかったとそう言ってくれてるようで素直に嬉しかった。

だからその分、さっき一夏が剣を置いたと聞いた時には衝撃的だった。

私の一方的な思い込みだというのに、それでも、まるで――裏切られた様な気持ちになった。

だが、それも私もも尊敬している彼の姉――千冬さんの為だと聞いたときには、幾分か溜飲も下がったし、あの優しい一夏はあの頃のままなんだと、安心もした。

私にも尊敬している姉がいる。色々と問題のある姉ではあるが……だから、尊敬する姉の負担を少しでも減らしたい一夏の気持ちもよく分かる。

何よりも、一夏の今の言葉。当時は生意気な光を宿した眼が印象的だった私の初恋の幼馴染みは――今はその眼に強固な意志の輝きを宿して、より男らしく、格好良く成長していた。私はそんな一夏が誇らしい。私を頼ってくれた事が――嬉しい。

 

「……で、でも、あなた達一年生でしょ? 勝つつもりだったなら、なおさら私の方が教えられると思うけどなぁ」

 

話しかけて来た上級生は顔を赤く染めて、なおしつこく食い下がろうとしている。自分の好意を無下にされて怒っている……とは私は思わない。きっと、今の一夏の言葉に惹かれたのだろう。だが――。

 

「ふぅ~ん? そんなこと言っちゃうんだ~? アライアンスのテストパイロットやってるんだけどな~、私?」

 

「え? じゃ、じゃあ……あなたも専用機持ち?」

 

さも面白い事があったように言う私の親友(織歌)が、挑発的で好戦的な笑顔を私に向けてくる。

ふっ…織歌、お前に言われるまでも無い。私の一夏を誰かに渡すつもりなんてさらさら無い。なら、きっと今が――。

 

「……私は、篠ノ之束の妹ですから」

 

――闘う時だ。

 

「篠ノ之って…………えぇ!?」

 

尊敬する姉の名前に頼る自分を未熟だと、卑怯だと私自身も思う。

だが、それがどうした。

これは――既に闘いだ。

今は未熟だ、卑怯だと、そんな謗りは甘んじて受けよう。

 

「ですので、結構です」

 

「そ、そう……それなら、仕方ないわね…」

 

自らの敗北を認めたのか、上級生は背中を丸めて去っていった。

ふと織歌を見れば、織歌が満足そうに私を見て笑っていた。

織歌、今はまだ姉さんの名を借りなければ闘いにも勝てない未熟者だが――いずれ私は千冬さんも越えてみせる。その意思をありったけ込めて、私は織歌に不敵に笑って見せた。

 

「一夏、早速今日の放課後からお前に剣を基礎から叩き込んでやる。――覚悟しておけよ?」

 

「おう! 臨むところだ!」

 

まずは――この想い人に、一週間後の決闘で勝てるように、稽古をつけるところから始めるとするか――!

そう決意して。

 

「あー……そこの約二名。盛り上がってるところ悪いけど、今日の放課後はISの操縦訓練だから」

 

「「……はい」」

 

その幼馴染み()の一言で、急激に落とされた。

絆、お前はもう少し場の空気を読んでくれても良いだろう!

 

 

 

 

 

 

「で……そっちはどうだ、一夏?」

 

「まぁ、その、……どうって言われてもな」

 

「「…………」」

 

放課後。今は第三アリーナに俺達はいる。

当初は俺と一夏、それにオルカと箒と本音の五人で集まる筈だったんだが………。

 

「きゃー、見て見て! 織斑くんの引き締まった体! あの露出してるお腹回り!」

 

「絆くんは……何で織斑くんに比べて露出が少ないの!? もうちょっとサービスしてくれても………」

 

「でもさ………見てよ、あのISスーツのライン。ISスーツ越しでも分かる線の細さに鍛えられた肉体。何よりあのウェストの細さ!」

 

「眼福~眼福~」

 

「二人とも打鉄(うちがね)が似合ってるわよねぇ………また、二人の物憂告げな表情がなんとも…た、たまらん!」

 

「打鉄の白い装甲が…………もう、何て言うかイイッ!」

 

「創作意欲が……高まるぅ………溢れるぅ………ウ腐腐腐」

 

「し、視界からリビドーが逆流するぅぅぅぅう!」

 

逆流せんでいい。あと高めるな、間違っても溢れさせるな。どいつもこいつもそんなモノは纏めてゴミ箱に捨ててくれ、頼むから。あと、本音さん。然り気無く喧騒に混ざって眼福とか言わないでくれ……ISのハイパーセンサーで聞きたくなくても聞こえてるんだから。

 

「「…………はぁ」」

 

俺も一夏も顔を見合せて、げっそりした顔で溜め息をつく。何でこんなにギャラリーが増えてるんだよ………。大方、昼休みの俺達の会話を聞いてた子達から広がったんだろうけど。

 

「……一夏、もう諦めよう。これも集中するための訓練だと思って」

 

「そう思わなきゃやってらんないな………はぁ。で、打鉄を展開したのは良いけど………これからどうするんだ?」

 

今、俺達が展開、装着しているのは、世界弟二位のシェアを誇る日本国産の量産型弟二位世代IS打鉄(うちがね)だ。打鉄は昔の日本の武将を彷彿とさせる甲冑のようなフォルムをしており、肩少し離れた所に左右一つづつ特殊繊維で束ねられた装甲板――物理シールドが直接取り付けられずに浮いている。非固定浮遊部位(アンロックユニット)と言うらしい。そして、腰回りを覆うように展開さている装甲……フォルムに関して言えばこんなところか。

性能面では防御に重きを置き、継戦能力を高めた近接向きの汎用型。火力は今一で単独での運用は心許ないが、支援機としては優秀。何よりも整備性と扱いやすい事から、初心者向きの機体だ。

 

「――そうだな。取り合えず拡張領域(バススロット)内に入ってる使用可能な武装を確認して、一通り武器の展開(オープン)収納(クローズ)の反復と基礎的な機動……かな」

 

ISは拡張領域(バススロット)と呼ばれるデータ領域に、粒子化(インストール)された武装を収納し、操縦者の意識によって自由に展開、収納が出来る。これによってISは幅広い戦術を取ることが出来る。……正直、幾らなんでもオーバーテクノロジー過ぎるだろう。ネクストにこんな機能があれば、ネクストの載積限界を気にせずに武装を収納して………いや、やっぱ駄目か。確か拡張領域に武装詰め込みすぎとIS事態の情報処理速度が遅くなったりデメリットがあるらしいし。

さて、それじゃ使用可能な武装の確認でもするか………

 

《展開可能武装一覧》

近接ブレード《葵》――展開可能

アサルトライフル《焔備》――展開可能

 

俺の意識に直接、展開可能な武装が表示される。俺はアサルトライフルを選択。目を閉じて意識を集中、手にアサルトライフルを持っているイメージをし――

 

「――少し遅いか?」

 

無事に展開出来た。意識内に直接表示された武装展開までの時間を見ると……一,四五秒。意識を集中してこの時間じゃ………駄目だな。実戦じゃ立ち止まれない。動きながらの展開を余儀なくされるから、下手すれば武装の展開をさせてもらえるかどうかも危うい。

 

「く、うぬぬぬ……で、出来た!」

 

随分力んだ末にようやく展開出来たらしい。一夏が選んだのは近接ブレードか。

 

「こりゃ………武装の展開は要訓練の必要あり、だな。このままじゃ俺も一夏も武装展開してる間に潰されるぞ」

 

「そうだなぁ……出来れば織歌にコツとか聞きたかったんだけどな」

 

その一夏の一言でふと気付く。そう言えば俺も今日の放課後に入ってからアイツの姿を見ていない。何だろう、凄く嫌な予感がする。

 

「……オルカのヤツ、何処にいった?」

 

そう口に出した途端、俺の中で嫌な予感がよりいっそう強くなった。絶対、ロクな事にならないって言う予感が。

 

「あれ? 上空にIS反応………?」

 

一夏が言った通り、ISのハイパーセンサーから送られてくる情報。そこには確かに、上空から急速に下降してくる一機のISの反応が。

 

(――まさか)

 

ズゥゥゥゥン………と重い音と盛大な土煙を上げて、それは俺と一夏の前に着地した。

 

「――遅かったじゃない」

 

やがて、土煙が収まってくるにつれ、ハッキリしてくるその姿。

地上を駆ける獰猛な肉食獣を彷彿とさせる、細いが力強い脚部。

その脚部の膝の部分から突き出た、鋭い先端を持った近接物理ブレード。

 

「武装の展開まで随分待ったよ」

 

脚部と同じく細いが、獰猛さを感じさせる、肘が突き出た独特の腕部。

前面に突き出た、独特の形状の肩部。

レーシングカーを想像させる、背面に装備されたパーツ。

 

「もう――言葉は要らないよね?」

 

俺に――かつての愛機、AALIYAHを彷彿とさせるソレ――血の様に暗い、(くら)い紅のISを纏って――オルカは俺達の前に姿を表した。

 

 

 

 

 

 

「いや、説明しろよ!」

 

「ちょ、一夏! 私が折角気分を盛り上げようと、頑張って演出したってのに、そう言うこと言っちゃうの、アンタ!?」

 

はぁ~、やれやれだわー…。とか言いながらISの手で頭を抑えるオルカ。俺はオルカがやろうとしてる事に何となく気付いているので、オルカが展開している武装に注目する。

まず、右手に持っているのは、MOTORCOBRAに似た名称不明の銃。銃身下部が、鋭さを帯びていて、恐らく銃剣としても使用可能。次に背後に浮いている、長大な物体。これが問題で、左右の肩の後ろに浮いてるソレは、見た目は蟹の甲殻を中心で二つに分けたような装甲に包まれた、三つの銃身を持ったガトリング………に見える。砲身が三つでは些か少ないように思えるが………問題はその口径。三つ全部の口径が全部バラバラなのだ。恐らく、複数の弾頭を使い分けられるんだろう。しかも、下部にはスラスターらしき物が顔を覗かせて………何だろう、すごく嫌な気配を感じる。

だが、やっぱりソレ以上に俺が気になるのは……左腕に直接取り付けられた、金色に輝き、冷たい光を返す凶爪。いや、俺にとっては凶爪と言うのも生ぬるい、死の象徴。

……どう見てもMOONLIGHTにしか見えません、むしろMOONLIGHTそのものです、ありがとうございました。

 

「光が………まぶしい光が………バーって…バーって………ばーーーー……………」

 

「「き、(キズナ)ァ!?」」

 

「ちょ、ど、どーしたんだよいきなり!? し、しっかりしろ、絆あああ!」

 

「あばばばばばばばあばばばばばばばばばばば……レザブレ恐いレザブレ恐いレザブレ恐いレザブレ恐いレザブレ恐いレザブレ恐いレザブレ恐い………」

 

「き、キズナ、ご、ゴメン! 流石にもう大丈夫だと思って………私が悪かったから戻ってきて……って、キズナ? キズナアアアアアア!?」

 

 

 

 

気が付いたら、時計の長針が十分位進んでいて、ISを展開したまま棒立ちしていた。その間何があったのか覚えていないが、どうしてこうなったかは何となく分かる。

原因はオルカの専用機――名をクリムゾンヘイトと言うらしい――が、左腕に装備している高出力大型レーザーブレード《アテナ》を見たのが原因だろう。だって、この形状、どう見てもISサイズにミニチュアライズされたMOONLIGHTにしか見えない。

 

「いや、ホンッッットゴメン! 流石にもう大丈夫だと思っててさ………やっぱ、まだ辛い?」

 

普段は傲岸不遜を絵に描いた様なオルカが、顔の前で手を合わして平謝りしている姿は何て言うか、新鮮だ。コイツがこんなにも素直なのは、生前俺を殺して下さってトラウマを与えてくれたご本人様ってご自覚がおありになるからだ、クソッタレ。

 

「絆……大丈夫か? 一体どうしたんだよ?」

 

「ああ。大丈夫だ、問題ない」

 

そう言って心配そうに顔を一夏が覗きこんでくる。俺達の事情を知らない一夏じゃ、何が起こってるか分からなくて心配するのも当然か。

………俺も、あれから大分経っていたからもう大丈夫だと思っていたが……はぁ、心の中で毒づいてる場合じゃないな。

 

「いや、大丈夫だ。心配かけて悪かったな、一夏。気にしないでくれ。オルカも……確かに急だったからちょっと驚いたけど、もう大丈夫だ」

 

「……そう? ……なら、もう何も言わないケド…」

 

「……今のはちょっとって言うレベルなのか?」

 

「ああ。ちょっとだ。ソレ以下でもソレ以上でもない。ほんの、ほんのちょっとだけ驚いて取り乱しただけだ。大丈夫だ、問題ない。だから一夏もこれ以上気にするな。言いな、気にせず詮索もするなよ」

 

一夏にニッコリ笑って、笑顔で顔を近付けて強く言い聞かせる。すると一夏は首をコクコク降って、素直に頷いてくれた。うんうん、素直なのは良いことだ。

…………まぁ、言ったことは大嘘だけど。今だって思い出すと膝が微かに震えてるのが分かる。オルカは何か言いたげにこっちを見ているが、何も言わない。今はソレが有難い。俺もいい加減、克服しないといけない。

――オルカに勝つためにも。

 

「ケド……どうしようかなぁ……最初は二人と闘うつもりで来たんだけど………あ、そうだ。ソレじゃあ、三人でIS使って追いかけっこしようか?」

 

「「……は? 追いかけっこ?」」

 

「そう、追いかけっこ。私とアンタ達二人で。でもこれだけだと捕まえられないだろうから………そっちは足止めに武器使って良いよ。あと、も一個ハンデにそっちが二人とも瞬時加速(イグニッションブースト)使えるようになるまで、私は瞬時加速は使わないでいてあげる。……IS初心者のアンタらにはレクリエーションを兼ねた良い訓練になると思うけど?」

 

内心で悪くないと、オルカの提案に頷く。今の俺の状態じゃ、オルカ相手にまともに闘うのは難しいだろう。ソレは恐らくオルカも望むところじゃない。かといって、普通に訓練したんじゃ俺のトラウマは克服出来ないし、一夏の飲み込みも………一夏には悪いが、あんまりよくはないだろう。むしろ、今の俺達にはこう言う遊びを兼ねた訓練だと思えない訓練の方が向いている気がする。これなら、俺のトラウマを克服するにはちょうど良いし、何よりISの基礎的な機動訓練には最適だろう。俺達が馴れてきたら内容を少しずつ変えていけば良いしな。

 

「けど……ホントに良いのか? 正直、無抵抗の女の子を男二人で武器を持って追いかけるってのは………なぁ?」

 

甘い。認識が甘過ぎるぞ一夏。コイツは俺達と違ってもう二年くらい前からIS乗ってるんだぞ。ソレに何より――

 

「もう忘れたのか、一夏。コイツはオルカだぞ? あの、オルカだぞ? コイツとその辺の女の子を一緒にしたら、女の子に失礼だ」

 

オルカには悪いと思ったけど、一夏の認識を念を込めて訂正する。ソコに若干、気を使わせってしまったオルカへの感謝を込めて、冗談混じりに。

 

「アァン? キズナ、今アンタなんつったコラ? ……まぁ、良いや。一応、一夏に言っとくけど、武器は使わないけど無抵抗………だと思ってると痛い目見るよ?」

 

やっぱりな、と苦笑する。コイツはただ追いかけられて喜ぶようなタマじゃない。

 

「武器は使わないけど、迎撃はするよ? あと、ISの手でタッチする以外ノーカウントだからね? おーけぇ?」

 

「「OK!」」

 

「じゃあ、最初は私の鬼から。IS展開して十秒立ったら追いかけるからね。じゃあ……おいで、『クリムゾンヘイト』!」

 

首に着けていた紅いチョーカーに触れて、ISを展開するオルカ。こうして俺と一夏と、オルカを混ぜた初のIS訓練は開始された。結果は………ご想像にお任せする。

 

 

 

「まぁー………初心者にしては頑張った方……かなぁ? キズナも一夏も……ホントはもうちょっと頑張ってほしかったけど」

 

……くそ、今に見てろよ。トラウマを克服したら絶対に眼にもの見せてやる…!




ちょっとした妄想

「有史以来、人類は様々な技術によって導かれて、その文明を発展させてきた。……じゃあ、IS程の技術がもたらす、文明の行き先って、一体なんだろうね………?」
『おはよう。戦闘行動を開始するぜ』
「うごけええええええええええええええええ!」

UNTHANG―INFINITE・STRATOS・NEXT―

『おはよう。インフィニット・ストラトス白式の独立戦闘支援ユニットのICHICAだ。説明は………って、姉さんがランナー!?』


「ここ半年の間に、地球の情勢はかなり変わりました。……ORCAは地球全体に宣戦布告し、連合軍も抵抗はしましたけど………戦争って言えるものさえ起こりませんでした」


『白式…』
「お前、ラウラか?」


「ICHICA……クラニアムに向かうつもりなんだろう? 答えてくれ、ICHICA……!」
「箒か?」
「千冬さん、ICHICAはクラニアム中枢で自爆するつもりなんです!」


「あはははは!見てよ、ちーちゃん!ISとの完全な結合!全てを終わらせる破壊を!」
「とまれえええええ!」


「白式とアンサングの性能は………うん、まぁー、大体同じぐらいじゃない? でも、二機がに並ぶには絶対的に欠けているプログラムがあったりなかったり~。ねね、聞きたい? 聞きたいちーちゃん?」
「いいから早く言え」
「ちょ、タンマタンマ! 言う、束さん言うからアイアンクローはやめてぇ! いたたた………えー、ゴホン。二機が並ぶために絶対的に必要なプログラム、ソレは……フロム(公式)のレギュレーション」

「後は勝てるかどうかは………操縦者次第かな」

「後、クラニアム計画の目的は支配じゃないよ。クラニアム計画の真の目的……ソレはね闘争だよ、ちーちゃん。……来た」

「オルカアアアアアア!」
「待て、箒!」
「あはははははははは!クラニアムは私を選んだ!ISの意識が、ヒトの無意識が!闘争を望んでるのさ!見て、これがISの意思だよ!!」


『戦闘終了。アンサングの勝利だ。当然の結果だな……まぁ、ありじゃないか。キサマ』

想像から製作完了までおよそ二十分程度の妄想です。
細部の補完は皆さんの脳内で!
それでは、また次回お会いしましょう。
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