ISACfA《インフィニット・ストラトスAnd Counting for Answer》   作:傭兵No41

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皆さま、お久しぶりです。えー……大変長らくお待たせしました。戦闘シーンの思いの外の難しさに執筆が難航し、戦闘シーンを書き上げながら見返して言ったら、今度は色々加筆していったり修正したりで……お待たせした割りに、出来は……(汗

と、ともかくっ!
クラス代表決定戦、始まります!


mission10 クラス代表決定戦~白と藤~

「……なぁ。オルカ? 俺の専用機って………」

 

「もうじき届くんじゃない?」

 

 

ここはIS学園第三アリーナのピット。俺とオルカはここで俺の専用機が届くのを待っている。因みに今は――。

 

「いや、もうすぐって………一夏達との試合まで、一時間切ったんだけど」

 

「……私に聞かれても分かるわけないでしょ。最悪、訓練機のラファールで戦えば良いじゃん。もしもの時のために学園側で気を聞かせて確保しておいてくれたんだからさ」

 

クラス代表決定戦、当日だったりする。

結局、この日まで俺も一夏も専用機は届かなかった。あげく、運が悪く訓練機の使用は中々申請が通らず、結局初日を含めて二日しか乗れてない。……同じ状況の一夏はどうしてるだろうか? あっちはもう専用機が届いているんだろうか………。因みに、一夏も箒もここには居ない。一夏達は第三アリーナの反対側のピットで待機している。

理由は単純。クラス代表決定戦は総当り戦の形を採り、初戦は俺と一夏、次が俺とオルコット……さん、最後に一夏とオルコットさんの順番で闘うことになった。単純に一番勝ち星が多い者が勝者となる。何故、俺と一夏が初戦に回されたかと言うと答えは簡単で、初心者の俺と一夏に配慮したそうだ。まぁ、ここまでは俺の想定通り。唯一の誤算と言えば、未だに俺の専用機が届かない事か。

 

「大丈夫だよ~、きっちー。きっちーならきっと訓練機でもうまくやれるよ~」

 

本音の根拠の無い慰めも、今の俺には少しむなしい。

――と言うか、間に合わないの前提ですか。いや、もういっそ腹を括ろう。そう思うと、途端になんだかやれそうな気分になってくる。……多少の不安は残るが、やっぱり本音には感謝しなくちゃな。

 

「ああ、サンキュー本音。なんだかやれそうな気分になってきた。そもそも、使ったこともない機体でぶっつけ本番ってのも不安だったんだ。だったら、もう一日でも長く使ったラファールでいった方が良い。もう専用機なんか来なくたって――」

 

その時。

プシュッ、とピットの扉から気の抜け音がした。

 

「いやぁ~、ゴメンゴメン。ちょっと作業に遅れちゃってさぁ! ケドま、こんなのよくある話だし、問題ないよねぇ? ぶっつけ本番になっちゃったケド。じゃ、早速で悪いけど――初期化(フォーマット)最適化(フィッテイング)景気よく始めちゃいますかぁ♪」

 

突然開かれたピットの搬入口。そこから突然届いた声に、本能が警戒する。

ソコには白衣に身を包んだ、見るからに軽薄そうな長身の男が立っていた。その男は大柄で、焼けた肌に白く逆立てた短髪に無精髭が如何にもずぼらそうだ。そして唇にはピアスが一つ。

男はピアスを着けた唇にニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべて立っている。

……誰だ、コイツ?

第一印象は胡散臭い男、ソレに尽きる。くたびれたワイシャツとネクタイ、スラックスは兎も角、白衣が非常に似合っていない。

 

「あ、君がキズナくんかなぁ? イヤー、オルカちゃんから話は聞いてたけど、ホントソックリだよねぇ、外見がさぁ! イヤ、よろしく頼むよぉ世界に二人だけの男性操縦者くん。なんったって、俺が開発したストレイドはウチの野心作だから。イギリスの専用機なんかケチョンケチョンにしちゃってよねぇ!」

 

白衣の男はフランクに俺に近寄ると、俺の手を握って楽しそうにブンブン振り回してくれている。……握手のつもり何だろうか。てかストレイドって……もしかして俺の専用機なのか?

開発したって………この見るからに怪しいおっさんが?

オルカの知り合いなのかと視線を送ると、オルカは心底気まずそうな――まるで会いたくなかったという様なしかめっ面で男を見ていた。

 

「ああ………直接来たんだ、主任」

 

「お? ソコにいるのは我が社の誇る専属パイロットのオルカちゃんじゃないのぉ! いやぁ、久しぶりぃ、元気してたかなー? IS学園に入ってからはスッカリ連絡もくれなかったからねぇ、会いたかったよ! てか、いい加減俺のこと名前で呼んでくれたって良いでしょー? もう結構な付き合いになるんだしさぁ? って、ああ、そうだそうだ! ソレよりも()()()()()ISが完成したからねぇ、ソッチ見てよ! ――きっと、ご期待通りの出来の筈だ。御要望通りの……ね。ま、ちょっと時間は掛かっちゃったケドさぁ!」

 

……ん? 今この男何て言った? やけにハイテンションに話すものだから若干聞いてなかった。いや、でも確かに言ってたよな。頼まれてたISが完成した――と。つまり、この男が――。

 

「頼まれてたって……俺の、専用機?」

 

「あ、ゴメンゴメン。ちょっと主役が置いてきぼりだったかなー? ケドま、どーせ主役は俺の作ったISだしぃー、別に気にしてないよね。それじゃあ、お待ちかねのお披露目と行こうかぁ? あははははは♪」

 

「――主任。その前に、自己紹介をなさった方がよろしいかと」

 

そう言って、さらにピットに入ってきたのは黒いスーツをピリッと着こなした冷たい雰囲気の女性。深い海のような紺色の髪を肩口で綺麗に切り揃えられたボブヘアーが几帳面さを、眼鏡の奥の僅かに垂れながらも鋭さを宿した冷たい眼光が知的さを感じさせる。その瞳に危ういモノを感じ、一層警戒心を引き上げる。

 

「……あれ、そーだっけ? まぁ、別に俺の自己紹介とかどうでも良いと思うんだけど………それじゃ、時間も押してるし手短にねぇ! アライアンス技術開発部主任でオルカちゃんファンクラブ会員のNo001と名誉会長やってまぁーす!名前はアンドリュー・アシモフってねぇ! ……こんなもんで良いよね、キャロりん?」

 

「……申し訳ありません。何分、この方は少々気紛れなもので………申し遅れました、主任及び社の外部交渉を担当する、キャロル・ドーリーと申します。以後お見知りおきを。さて、それでは主任は作業準備に入って下さい」

 

「え? イヤイヤイヤ、その前にまずはパァーっとお披露目をさぁあ!?」

 

「時間が押していますので。その間、私は彼――烏丸絆さんに話がありますので。そんなものは後でお願いします。それでは絆さんはこちらへ――」

 

言いすがるアシモフさん……主任さんをバッサリと切り捨てて、ドーリーさんは俺をピットの脇に備え付けられた作業台に誘導する。随分と主任さんの扱いに慣れてるようだ。

 

「……それで、話って言うのは?」

 

「ええ、簡単な内容ですので身構えられずとも結構です。まず、貴方に貸与されるISですが……表向きは当社からの貸与という形になり、貴方がISを運用して得られたデータは我々の企業、アライアンスと貴方が所属されているIS学園を通じて日本国及びIS委員会で共有する事になります。勿論、我が社とIS学園に日本国及びIS委員会には得られたデータの守秘義務が存在し、またそれは貴方にも適用されます。まぁ、その辺りの細かい条項はこちらに記載されていますので、後程適当に目を通しておいていただければ問題ありません」

 

「……そんなに適当で良いんですか?」

 

「……おや? もしや、貴方はご存知ありませんでしたか? 質問に質問で返すのは失礼ですが、オルカさんからどの様な話を伺っておいです?」

 

「いや、ご存知もなにも……突然オルカにアライアンスにISコアがたまたま余っていて、俺のデータが欲しいからそちらで専用機を用意したいと伺っただけなんですが」

 

その言葉にドーリーさんはちらりと周囲を見渡して、周囲に誰も居ないことを確認すると、その口を開いた。

 

「……なるほど。織歌さんは貴方にもまだ何も教えていらっしゃらない様ですね。では……そうですね。我々が知っている範囲で良ければお話ししましょう。まず、織歌さんは当社に貴方の専用機を開発して欲しいと依頼されまして。貴方のデータ――貴重な男性操縦者のデータ収集と、出所不明の未登録のISコア一つを手土産に。まさかとは思いますが、貴重なISコアの一つが()()()()余っていたなどと言う話を鵜呑みにされていた訳でもないでしょう。……思えば去年、我が社で織歌さんを採用した際にも、同じように出所不明の未登録コアを持参した上で『これを貸してやるから私の専用機を用意してテストパイロットとして雇え』……と。あの時は我々も驚いたものです」

 

そう言って過去を思い出し、僅かにドーリーさんは微笑んでいる。

しかし………なんだそれ、イミガワカラナイ。メチャクチャするヤツだとは前々から思ってたけど、なに、その完全上から目線。それに何より。

 

「えーと……今さらっと未登録のISコアって言いませんでしたか?」

 

「ええ。出所が不明の……ああ、勿論彼女を採用し、機体を託すにあたって色々と調査させて頂きましたが、あなた方は中々面白い人脈をお持ちのようで」

 

そう言ってニッコリ微笑んでいるドーリーさんは、恐らくもうそのISコアの出所について粗方予想出来ているんだろう。

と、言うかISコアなんて個人がそう易々手に入れられる物ではないし、それも未登録となればなおさら入手は困難………と言うか、マトモな常識があればまず手を出さないだろう。

条約でもISコアの取引なんてものは当然の如く禁止されているし………何より、未登録のISコアとかどこの国も企業も喉から手が出るほど欲しい筈だ。

例え条約を侵す事になろうとも。

なにせ、何に使っても足のつかないISを保有できるんだから。まぁ機体やパイロットを調べれば話は別だが、その二点を隠蔽する事が出来ればどうにかなる。最悪、機体から足がついてもパイロットを切り捨てて機体自体は盗まれたとか言い逃れれば良い。こんな持ってるだけで国家や企業から狙われるようなモノを誰が好き好んで……そもそも、現存しているISコアが全て登録されているなら、未登録のISコアなんて新しく生産するしかないわけで。

そして、ISコアを製造できる人間なんて、当然限られてくる――と言うか、一人しか居ない訳で……あの人は確かに天才だけど、やることなすことぶっ飛びすぎだろう。

ISの産みの親『篠ノ之 束』。天災の異名で呼ばれる彼女が独力で製作したIS。そのISをIS足らしめる為に必要な主要機関であるISコアは、その複製どころか解析が完了したと言う話も未だに一切聞かない。

つまり、ISコアを製造できる人間は、未だに束さんしか居ないことになる。昔から身内贔屓どころか、人に対する好き嫌いが激しいと言うのも生温い位苛烈な人だったが……ふつう、ここまでやるか?

そんなだから、天災何て言う名誉なのか不名誉なのか判断の付きづらい異名で呼ばれるんですよ……。

 

「まぁ、我が社としては優秀なテストパイロットと自社所有のISコアを消費せずに我が社の製品の運用データが手に入りますので渡りに舟でしたが。ああ、それを使って悪用等と言う事は我々も考えていません。今、彼女を敵に回すのは余りにも部が悪いですし。まぁ、しかしそれでも流石に未登録のコア所有者に機体を貸与しているなど余りにも体裁が悪いので、織歌さんは我が社のテストパイロットに、貴方には日本国への要請を通してと言う形で、当社からISコアもろとも機体を貸与している……と言うのが表向きの理由になっています。機体はともかく、実際はコア自体の所有権はあなた方にありますので、あなた方は実質史上初のフリーランスIS操縦者と言うことになるのでしょうが」

 

そう言って彼女がニッコリ微笑んでいるのを見ていると、この人も中々イイ性格をしているんじゃ無いかと思う。恐らくこの人は話を聞いて、事態の面倒さに頭痛と胃痛を感じてる俺を見て他人事のように微笑んでいるんだろう。……本当にイイ性格をしてるよ。

ただ、いまの話を聞いていて惹かれなかった部分も無い訳じゃない。フリーランス………実に良い響きだ。実際は色々と制約はあるだろうが、生前独立傭兵街道まっしぐら立った俺には非常に馴染みぶかい。

 

「ご理解いただけた様で何より。それでは契約内容の確認へ戻らせて頂きます。我々は企業です。企業の所有物を外部に貸与するにあたって、なんの対価も無く貸与するなどあり得ません。我々が貴方……いえ、あなた方に要求することは二つ。一つは言うまでも無く操縦中の身体情報も含めたIS運用データ。そして、もう一つは――」

 

僅な溜めを作って、改めてドーリーさんは真剣に俺を見つめてくる。

 

「――強者であること。当社製造のISを使用する者が強者であれば、それだけで社の広告となりえます。この二つが叶えられ続ける限り、当社はあなた方への惜しみ無いサポートを約束しましょう」

 

強者であること……か。そんなことは言われるまでもない。元々俺も、弱者でいるつもりなんか更々無い。

 

「――良い条件ですね。何よりも分かりやすいって言うのが何よりも良い」

 

「では――取り合えずは契約は成立と言うことで。後は『証明』して下さい。貴方が、真に強者足る可能性があるのなら」

 

「……良いでしょう。試合の結果を楽しみに待ってて下さい」

 

「貴方のご健闘を心よりお祈りしています。それでは――主任? 準備の方はよろしいですか?」

 

「あはははは! 勿論だよぉ、キャロりん♪ それじゃキズナくん、こっち来て乗って貰えるかなぁー?」

 

そこに用意されていたのは、オルカのクリムゾンヘイトとと同じだが――色が真逆の、淡い青。藤色の機体が俺を待っていた。

これが俺の機体。俺だけの、俺の為の専用機――。

 

「うちの会社の試作第三世代型ISの二号機、ストレイドverウィスタリアグリーフ。オルカちゃんのクリムゾンヘイトを射撃戦特化型にした感じかなー? まま、取り合えず説明は置いといて、ちゃちゃっと装着してみちゃってよ」

 

言われて、俺は開いた装甲の中に入り込み――触れた瞬間に頭の中にこの機体の情報が流れ込んでくる――。

 

「……へぇ? 大分親和性高いみたいで何よりだよ。じゃ、そのまま機体に体を任せといてねぇ?」

 

言われた通りに体を委ねるように、機体の中に入り込み、全体重を預ける。すると、気の抜けた音とともに装甲が閉じていき、ISと『繋がる』。

特訓で、乗った打鉄ともラファールとも全く違う一体感。俺とウィスタリアグリーフの境界がひどく曖昧に思える程の。

それと同時に、すべての感覚が数段階UPしたような感覚。だが、それも決して不快じゃなく、とてもクリアで、ずっと前から知っているような馴染み深さ。

――いや、これを俺は知っている。これとよく似た感覚を。

AMSに接続した時に似ている。……が、あっちは酷いものだった。何せ、接続する度に痛みが走ったし、AMSが馴染むまでは気持ち悪かった。

だが――それを乗り越えた先にはこれと同じ感覚が広がっていた。

ISのセンサーで拡張された感覚が周囲360度の情報を、全て教えてくれる。数値化された情報を、ISのサポートにより違和感無く理解できる。

――確かに、こいつは訓練機とは全くの別物だな。

オルカが愉しそうににやけているのを、本音が若干心配そうにこっちを見ているのが、見えなくても分かる。

 

「……きっちー、行けそう?」

 

「ああ。コレと……いや、コイツとならオルカにだって勝って見せるさ」

 

不安げな本音の言葉に、俺は自信を持って返答を返す。友人の不安を払拭出来るように。

 

「キズナも面白い冗談を言うようになったねぇ? でも、そう言う事はまず――いや、今は良いや。リベンジ……楽しみにしてるよ」

 

オルカが前に回って、笑顔で拳をつき出してくる。俺はその拳にウィスタリアグリーフの拳をつき合わせて、笑い返す。

――待ってろよ、オルカ。

 

「うんうん♪ ハイパーセンサーの感度も良好みたいだねぇ! じゃ、後はISが勝手にやってくれるし……機体説明といきましょうかねぇ! まぁ、ホントはIS自体が教えてくれるだろーけど……ま、念のためねぇ!」

 

ここまでの流れをガン無視して、相変わらず何処かテンションがぶっ飛んでる軽薄な口調のまま、主任は俺たちの会話に割り込んできた。

 

「では、武装から。まず、初期装備(プリセット)として銃剣付きアサルトライフル《ネフティス》が二挺、銃剣付きハンドガン《セクメト》が二挺。次に背部に装備された非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)可変型レーザーキャノン《ハトホル》。こちらの武装はチャージを行い射程・威力・弾速を強化できますので、戦況によって上手く使い分けて下さい。そして、肩部両脇に浮遊しているのが肩部シールドも兼ねた散弾射出兵装《ムト》になります」

 

ドーリーさんが説明してくれた兵装の数々を聞いて、俺はかつての愛機を思い出していた。見た目もさることながら、武装までここまで似通っているとは。まぁ、武装に関してはオルカのオーダーのお陰だろう。

しかし、オルカのクリムゾンヘイトもそうだけど、このウィスタリアグリーフもなんか複合兵装が多いな。きっと趣味なんだろうが、強度とか大丈夫だろうか?

因みにウィスタリアグリーフの見た目はオルカと同じAALIYAHから腕部、脚部、、肩部、背部を外して生身に装備したような感じだ。そこに両手にAR-O700にをISサイズにミニチュアライズしたようなライフルを持ち、肩部両脇に浮かんでいる逆さにした二等辺三角形の装甲板が浮遊していて、背部には巨大な円筒形の物体が二つ浮いている。……ただ、背面に浮いている円筒形の物体――《ハトホル》の形状が対称(シンメトリー)で無いのが無性に気になる。右背面に浮遊している筒は太くはあるが、非常にスマートだ。一見、問題無さそうに見える。その反対側、左背面に浮遊している方は……右より若干太く、砲身下部に決定的な違いがある。

なんか、無数のパイプみたいなのがゴテゴテ取り付けられているのだ。非常に嫌な予感がする。

 

「因みに――拡張領域(バススロット)はとある兵装とシステムによって殆ど埋まっておりますので……後付け装備(イコライザ)は取り付けられませんのでご注意ください」

 

……え? バススロットが埋っててイコライザがつけられない?

つまりプリセットのみで闘えと?

いや、まぁ……それはネクストの時で慣れてるが……色々な武装を詰め込んで見たかった俺としては少し残念だ。しかし、そのバススロットを殆ど占領しているって言う兵装とシステムに、余計俺の中で嫌な予感が強くなる。

 

「ちょっとちょっと! 酷いじゃないキャロり~ん。俺の台詞殆ど持っていかないでよねぇ! 俺にも説明させてくれないとさぁ! じゃ、拡張領域(バススロット)の大半を占めてる兵装とシステムの説明しちゃうねぇー! 実はソレこそがこのストレイドを第三世代にしてるイメージ・インターフェースを使ったシステムと武装なんだけど――」

 

話を聞きながら、俺は思った。

この男はアホかと。

バカじゃないのかと。

なんてモノを搭載してるのかと。

イメージ・インターフェースを使用した主要システムに関しては兎も角、それを使用した第三世代兵器に関して言えば、完全な欠陥品だと思う。

有澤やトーラスが普通の企業に思える位の変態っぷりだ。

 

「――って、ワケだからぁ………ぜーーーーったいに使っちゃだめだからねぇ? どーしても使いたいってなったら、しょうがないから是非使って良いけどさぁ? 一応……一応、使っちゃダメだからねぇ? 期待してるよ。どーしても使いたくなったら……しょうがないけどねぇ!」

 

「もうメチャクチャだよ! てか、あんたは使わせたくないのか使わせたいのかどっちなんだよ! 後、期待ってなに!? もし使用するって意味だったら、絶対に使いませんから安心してください!!」

 

もう、やだこの会社…………変態過ぎるだろ?

オルカのクリムゾンヘイトにも、同じシステムと似たような装備が搭載せれてるそうだ………戦闘狂だがオルカもバカじゃないから、多分安易には使わないだろう………多分。

 

 

 

 

 

「コレが織斑くんの専用IS『白式』です!」

 

純白の白があった。

装甲を展開し、俺を待ち焦がれるように光を照り返す、白いIS。コレが、俺の――そう思い、俺は知らず知らずのうちに手を触れていた。触れる――ただ、それだけの動作で理解できる。コレが俺のために、俺の為だけに用意された事が。

初めてISに触れたときの、膨大な量の情報が流れ込んでくる……なんていうことは無い。ただ、機体から、触れた場所から馴染むような暖かみを感じる。

 

「背中を預けるように……そうだ。ただ座る感じで良い。後は機体が勝手にやってくれる。……とは言え、時間が無い。フォーマットとフィッティングは実戦の最中に行うことになる。……出来なければ負けるだけだ。分かったな」

 

「分かっているとは思うが……一夏、相手は()()絆だぞ。正直……」

 

後から、箒が真剣な顔で話しかけてくるのが見なくても『分かる』。周囲360度の情報をISがハイパーセンサーを通して教えてくれる。

分かってるさ、箒。アイツ、普段は織歌より自分の方が大人しい様に言うけど……実際のところ、火が着けば絆も織歌とどっこいどっこいだ。今のところ俺が知ってる人間で割りと本気の千冬姉と戦えるのなんてあの二人位だ。それで、多分今回は火の着いた絆が相手となれば………IS操縦歴が俺と殆ど同じって言っても油断して良いような相手じゃない。何より、結局二日しか取れなかったIS操縦訓練でも、絆の方が上達するペースは早かった。

 

――全く、俺もとんでもない幼馴染みを持ったもんだよ。

 

そんな絆が本気で来るとなれば、箒だって真剣になる。……もっとも、箒の場合いつでも真剣そうに見えるけど。

 

「――ああ、正直厳しい闘いになると思う。けど、やれるだけやってみるさ。この一週間、俺の特訓に付き合ってくれた箒の為にもさ」

 

「こ、この馬鹿者が! だ、男子たるもの勝ってくる位言ってみせろ!」

 

……顔を真っ赤にして怒られてしまった。確かに、勝つって断言出来ない俺は情けないと指摘されれば情けないとは思うけどな………幾らなんでも厳しすぎるだろう。何も真っ赤になって怒らなくても良いと思うんだ、俺。

 

《戦闘待機状態のISを確認。操縦者、烏丸絆。機体『ストレイド』名称『ウィスタリアグリーフ』。全距離対応射撃型。特殊装備を確認》

 

俺の意識にISのハイパーセンサーが確認した絆の機体が表示される。準備万端で、アイツはもうアリーナで俺を待ってるらしい。

 

知らず、口角がつり上がるのを感じる。

 

きっと、この白式ならアイツとも互角の闘いが出来る。絆には……アイツらには、世話になりっぱなしだ。この一週間も、ソレ以前からも。千冬姉にも、ずっと。

俺は色んな人達に世話になってる。ソレは、コレからもきっと変わらないんだろう。それでも、少しずつでも返していけたらって思う。だからまずは。

 

「……そうだな。じゃあ、勝ってくるよ、箒」

 

一週間付き合ってくれた、箒と絆に返そう。

俺に出来るだけの、自信を込めた笑顔で箒に返す。

 

「…………う、うむ!」

 

……何だったんだろう、今の間は。未だに顔真っ赤なままだし、突っ込んだら怒られそうだから、そっとしておこう。

 

「大した自信だが、精々無様な敗北だけはしないよう心掛ける事だ。……行ってこい、一夏」

 

全く、こんなときでも鬼教官しなくたって……とも思うけど、呼び名がプライベートになってる。それに、声が若干震えている。ISのハイパーセンサーを通さなければ分からないほど、微かな声の震え。全く、千冬姉も素直じゃない……

 

「無様に負けた時は……たっぷり補習をしてやろう。なぁ、お・り・む・ら?」

 

……コレはきっと千冬姉なりの照れ隠しのはずだ。いや、そうに違いない。心の中を読まれたとか、そんなことはきっと無いはずだ。多分。

 

「下らん事を考えてる暇があったらさっさと玉砕してこい」

 

……多分。いや、もう考えるのはよそう。このままだと闘う前に俺の精神がマッハで蜂の巣になりそうだ。

 

「……じゃ、千冬姉、行ってくる!」

 

 

 

 

 

俺がアリーナに躍り出ると、目の前には淡い青色に身を包み、瞳を閉じて悠然と佇む絆の姿があった。

 

「白式………か。何て言うか、お前にピッタリな機体だな」

 

ゆっくりと目を開いて、俺に語りかけてくる絆。精神的なコンディションは絶好調見たいだ。それに、俺も自然とテンションが上がる。

 

「――待たせて悪かったな、絆」

 

言って、俺は拡張領域(バススロット)内から展開できる唯一の名称不明の近接ブレードを展開し、構える。

――装備が刀一本だけって言うのは、流石に偏り過ぎだと思うけど。

……まぁ、この一週間、剣の修練が殆どだったんだ。俺には分かりやすいコレでちょうど良い。

 

「いや、別に? 丁度、俺も今来たばっかりだしな?」

 

絆もライフルを展開するが、構えは取らない。柳生新陰流の無行の位………じゃないな。銃だし。

 

「ハハッ、それは良かった。しかし、変なもんだな……俺達がISを操縦して、こうして向かい合ってるなんてな。藍越学園の受験勉強してたときは想像もしてなかった」

 

ああ、本当に想像すらせずに諦めてた。

俺の家族を、大切な人達を守りたい。

その願い。その思い。鍛える事は続けたけど、どこかで諦めていた。

 

「ああ、全くだな。本当に――一夏と居ると飽きないな。俺まで巻き込んでくれて………なぁ? けど、まぁ……これに関しちゃ感謝してる」

 

言って、漸く絆もライフルの銃口を俺に向ける。そろそろ始めるつもり見たいだ。

――ああ、そうだな。始めるか。

俺はもう守られるだけは嫌だ。

もう、守られるだけでいた現状から抜け出そう。

俺だって、誰かを守れるって証明しよう。そうだ。まずは――。

 

「俺も感謝してる。だからまずは――お前に勝って、俺はこの一週間の借りを返す!」

 

「それでこそだ、一夏ァ!」

 

そして舞台は動き出す。俺は前へ、絆は後へ。

俺にはこの名称不明の刀一本しか無い。なら、もうやることは一つしかない。

 

――距離を詰めて、斬る!

 

絆は木の葉が舞うようにゆらゆらと揺れる様に、緩やかな円を描きながら後退、両手に持ったライフルで『出鱈目』に弾幕を張っているためになかなか接近出来ない。

出鱈目に撃っているライフルの弾を、体を振って避ける避け……!?

 

突然、ゾクリ、と。

 

背筋に言い様の無い悪寒が走り、その直感に従って動きを止める。動きを止めた事で、ライフル弾が何発も白式を叩く。

だが、そんなことよりも。

俺の真横を眩い輝きを放つ一筋の青白い光条が抜ける。

 

「……良く気付いたな?」

 

絆の声にそちらを見れば、ウィスタリアグリーフの背中に浮かんで居る巨大な筒が二つ俺の方を向いていた。

 

しかも、左側のは未だに砲身が青白く輝いて――

 

瞬間的に、本能が鳴らす警鐘に従って、急いで右に逃げる。

その直後、青白いレーザーがさっきまで俺がいた空間を焼きながら貫く。

 

「ッ!」

 

レーザーを回避し、安堵する暇も無く、突き刺さる何かを感じて、更に横へ。

 

「……ッ!」

 

ライフル弾の一斉射撃。それが回避した後も執拗に俺を追い掛けて来る――!

 

 

 

 

「……絆くんって本当に素人なんですか?」

 

「? それは……どういうことですか、山田先生? 初心者ならばまだ分かりますが……素人、ですか?」

 

山田君の言葉に疑問を持ったのか、箒が訊ねる。……無理も無い。今の絆が使った技術は箒にはまだ理解できないだろう。

 

「そうだな。アレは無駄に勘の良い一夏だから避けられたのだろうが……そうでなかったら一発目のレーザーでSE(シールドエネルギー)を大幅に削りとられて、その次のライフルの射撃で終わっていただろう。そうだな………囮、と言えば分かり易いか?」

 

「……囮、ですか?」

 

「ああ、そうだ。最初のライフルによる一見大雑把に見える射撃………アレは一夏の回避方向を限定させる為の囮だ。ただ、丸っきり囮と言うわけでもないがな。当たらない射撃では囮にはならん。そうして回避方向等を限定した上で、本命を撃つ。ただの予測射撃よりも相手を誘導している分、より難度は高いだろう。相手が自分の予想通りに動くとも限らんからな。剣道経験のあるお前なら、多少は分かるだろう。それをアイツは剣道とは違う、銃で、かつ中距離でやったというだけだ」

 

言うのは容易いが、実際にやる難度は高い。至近距離で打ち合い、かなり動きが限定される剣道であっても、ソレが出来るのはある程度の上級者だ。だと言うのに距離があり、選びうる選択肢が多い射撃戦で相手を誘導することが、どれ程の至難か。

まぁ、近接ブレード一本しか武装がない一夏だからこそ、こうまで嵌まったのかもしれないが。

 

(お前といい、織歌といい………)

 

あの二人とは古い付き合いだが、幼い頃から妙に達観していた事と言い、子供とは思えない身体能力。

更には乗って間もないISでこの動き。いや、動き自体はまだまだ拙いが、それを忘れさせる程のいやに堂に入った戦闘機動に戦術。一体、何があの二人にそこまで力を求めさせるのか。

 

(ISを動かした事といい……お前らと付き合っていると驚かされてばかりだ、全く)

 

「しかし………織斑くんも頑張っていますが……幾らなんでも相性が悪すぎじゃありませんか?」

 

山田君の声で、思考に没頭していた意識が引き戻される。まぁ、ただの杞憂だろう。

 

「相性が悪かろうと、どうにかできなければ織斑が負けるだけです」

 

「……せめて、最適化処理(フィッティング)一次移行(ファーストシフト)が終わってくれれば………」

 

 

 

 

先程から一夏は果敢に絆に接近戦を挑もうとするが、一向にその距離を詰められずにいた。絆の張る弾幕が、一夏が近付く事を拒む。

だが、近付けないだけであればまだ良いが、白式の(シールド)(エネルギー)はじわりじわりと削られて居る。

ISの闘いとは、言わばSEの削りあい。

 

通常、ISには二種類のシールドが搭載されている。

シールドバリアーと絶対防御。

シールドバリアー・絶対防御共にISに標準装備されている不可視の防壁で、これがISと通常兵器とを隔てている大きな要素の一つであると言える。シールドバリアーは常時展開されている防御壁で、ISを包むように三六〇°に展開されており、あらゆる方向からの攻撃を防いでくれる優れものである。ただ、シールドバリアーも完全ではなくある程度の攻撃を受けると貫通されてしまう。そう言った時に発動するのが絶対防御だ。シールドバリアーが貫通され、操縦者の生命に危機があった場合に発動し、理論上はあらゆる攻撃を防ぐ絶対の盾。ただし、シールドバリアーを貫通しても生命に別状がない場合には発動しない。

さて、ここで先程の説明に戻るが、SEはシールドバリアーで攻撃を受ける度に消費され、絶対防御は発動する度に大量のSEを消耗する。

他にISの機動や一部の攻撃する際にもSEは消耗されているが、最もSEを消耗させる方法としては、やはりシールドバリアーを貫通させ絶対防御を発動させる事だろう。そうして、攻撃をヒットさせていき先にSEがゼロになった方の敗北と言うシンプルなルール。

SEを格闘ゲームにおけるHPやLPに置き換えてもらうと分かりやすいかもしれない。

 

未だにクリーンヒットは貰っていないとは言え、一夏の操る白式のSEはじわじわと削られ続け、既に半分以上消耗している。どうにか近付きたい一夏ではあるが、近付こうとする度に進路上に弾幕を築かれ妨害される。

それを絆は涼しい顔で淀みなく、まるで手慣れた作業であるかのように繰返し、一夏を近付かせまいとする。

そう、決め手であるはずのレーザーキャノンだけは一度も被弾していないと言うのに、それでも動じた様子も見せずに、だ。決定打を悉く避けられ続ければ、普通であれば多少なりとも焦れてくるだろう。だが、絆にはそれはない。

 

それが一夏の心を余計に焦らせる。

 

もう、十分は回避し続けて居るだろうか。

初心者でありながら十分間避け続けている一夏を褒めるべきか、それとも十分間も涼しい顔で一夏を手玉に取っている絆の技量を褒めるべきか。

 

(……不味い。このままじゃじり貧だ。いっそ、多少の被弾を覚悟で突っ込んでみるか……?)

 

戦場に初めて出た者が、勝ち、生き残る為に迫る弾幕の前に身を投げ出すことに、果たしてどれ程の覚悟が必要なのか。それは、ともすれば破れかぶれのやけっぱちと紙一重なのかもしれない。だが、どちらにせよ動き出さなくては勝ちはない。

その決断を一夏が下そうとした、まさにその瞬間。

 

 

 

 

 

「いやぁ、オルカちゃんもそぉーだったけどさぁ、とてもじゃないけどIS乗り始めて一週間の人間とは思えない動きだよねぇ、彼も。まぁ、君らの幼なじみ君も頑張ってるほーだけどねぇ?」

 

あい変わらず軽薄な主任の言葉を黙って聞き流しながら、私は視線をモニターに向けていた。

昔とまるで変わらない、私の記憶に焼き付けられたその動き。……とは言っても、昔はもっと隙も容赦も無かったけど。まぁ、ネクストとは勝手が違うし、乗り始めたばかりだからだろうって言うのが理由かな。

だが、その詰め将棋を見てるかのような戦術を見ているとつくづく思う。

本当に、えげつないと。

今戦ってる一夏には同情してあげても良いかもしれない。今頃、一夏の内心はかなり焦れて来てる筈だ。そろそろ破れかぶれの特攻でも画策してそうだなぁ……。

 

「ほへぇ~……」

 

隣で見てる本音も、予想外の結果だったのかただただ感心してモニターを眺めていた。だけど。

 

「あ、あれ~? きっちーもしかして……弾切れ~!? ま、不味いよ~おるるん~! 」

 

本音の言葉通りにモニターの中で、絆が銃口を一夏に向けて何度かトリガーを引くが、ライフルはウンともスンとも言わない。

 

「うわぁ……」

 

その光景を目の当たりにして、まるでどうしようもないものを見た様に顔をしかめた。

モニターの中では絆がライフルを白式に向かって投げつけ、これぞ好機と見た一夏が全力で白式のスラスターを吹かして、ウィスタリアグリーフにここぞとばかりに突撃してる。

 

「これで終わりかなぁ……まぁ、もった方かな、うん」

 

 

 

 

 

 

 

(今しかない!)

 

未だに名称不明のブレードで、投げ付けられたライフルを払いながら、全速で絆の駆るウィスタリアグリーフに肉薄する。

 

「チッ……させるか!」

 

新しくハンドガンを二丁一夏に向けて射つものの、一夏は被弾を恐れずに前進する。その一夏の気迫に押されたのか、ハンドガンでの射撃は散漫としか言い様のないもので、当たらない弾丸もちらほらとある、正に今までの嫌らしい射撃が嘘だった様に乱雑なものだ。

それを、絆さえ予期せぬ弾切れだったと捉えた一夏は、近付くほどに上昇していく被弾率とシールドエネルギーの消耗すら意に介さすに、駆け抜けーーー遂に一夏はこの試合で初めて自分の間合いの内にウィスタリアグリーフを捉えた。

 

「キィィィィズナァァァァァ!」

 

一夏は雄叫びを上げ、肉薄した勢いのまま、唯一の武装である近接ブレードを両の手で天高く振り上げる。

この一刀に全身全霊、必勝の意志を込めて。

 

「……一夏」

 

白式がブレードを振りかぶり、己に降り下ろさんとする正にその刹那。

 

「それじゃダメだろ?」

 

絆は笑った。

 

その直後、ウィスタリアグリーフの肩部に浮かんでいた装甲板ーーームトが跳ね起き、内側を白式に向けると同時に内側の装甲を展開。

一夏が身の危険を感じ取り反応するも、既に攻撃に意志を割いていたため行動が一泊遅れ。

装甲板内側に潜んでいた無数の鋼弾は無慈悲に、一斉に一夏と白式を襲った。

至近距離で発射された散弾を漏れ無く全身で受けた白式は、その衝撃で数メートル吹き飛ばされ、更にそこに絆は追い討ちとしてチャージされていたハトホルのレーザーキャノン二発を撃ち込み、二丁のハンドガン(セクメト)の銃口を油断なく白式へと向けてーーー

 

『試合終了。勝者ーーー烏丸絆』

 

 

 

 

 

「きっちー~、お疲れ様~」

 

ピットに戻ると、労いの言葉と共に近付いてきた本音とハイッタッチを交わし、続いてオルカ、主任さんにドーリーさんも上機嫌でこちらに近付いてきた。……いや、オルカだけは苦笑いを浮かべている。ーーーいや、まぁ、理由は何となくわかるけどな。

 

「いやいやいやいや! 絆クゥン、キミもなかなかやってくれるじゃないの~! で、どうだったぁ? オレの造ったウィスタリアグリーフはぁ?」

 

「良い機体です。正直、予想以上ですよ。これで拡張領域に色々装備を詰め込めれば言うことなしだったんですけど」

 

「あっれぇ~? もしかしてキミってロマンとか理解できないタイプ? そう言えばさっきの試合でもアレ、使ってなかったしねぇ」

 

「あんなモン、アリーナでの一対一での状況下じゃ使えませんよ! それに戦いにロマンとか求めないでくだい!」

 

主任は残念そうな顔をしているが、戦いにロマンとか求められても困るし。そもそも、あんなモンをサシで使えるか。色々とリスクがでかすぎる。

 

「お疲れ様でした。まぁ、機体の相性的にも当然の結果だったと言えるでしょう。対戦された織斑一夏さんにはお悔やみ申し上げます。むしろ、次の対戦カードこそ本命……そちらの方であなたの実力を拝見させて頂く事にしましょう。わが社が支援するに相応しい方であるか……ご健闘をお祈りします」

 

……ドーリーさんはドーリーさんで、その、笑顔で容赦ないな。一夏、お前ドーリーさんの中で完全に前座扱いされてるぞ。いや、まぁ、確かに近接ブレード一本しか装備の無い白式とじゃ相性は悪いんだけど。

……って言うか、初心者に近接特化型、それも装備がブレード一本しか無い機体を渡すって……一体、制作者は何を考えているんだ?

 

「相変わらず、えげつない戦い方をするねぇ………絆も」

 

「……さぁ? なんの事を言ってるんだか、俺には分からないなー」

 

苦笑を浮かべながら他の人間に聞こえない様に言ってきたオルカに、俺は惚けて見せた。

 

「あの弾切れ……わざとでしょ? 一夏が突っ込んで来やすい様にお膳立てして、しかもご丁寧に動揺したフリまでして、一夏の気が変わらないように適度に外して……ホント、昔っからイイ性格してるよねぇ?」

 

……まぁ、やっぱりオルカには全部お見通しか。実はアレ、弾が切れてた訳じゃなくて、ISを通してトリガーをロックしてただけなんだよな。勝負を一気に決める為に。いや、武装が近接ブレード一本しか無い白式だったからこそ使ったが、他のマトモな射撃武装のある機体相手じゃこの手段は使わない。近接ブレード一本しか無い白式だったからこそ、こうまで上手くいったわけだし。

 

「素人相手に卑怯だって怒るか?」

 

ニヤニヤ笑いながら、俺はオルカに訪ね返す。俺がニヤニヤ笑ってるのは……まぁ、コイツがどう返すかなんてだいたい予想できるからだ。

 

「いいや、変わってなくって安心したよ。むしろ、素人だからって手を抜いてる方が失望したし」

 

「ハハ。やっぱ、お前もイイ性格してるわ、オルカ」

 

そう言って、俺とオルカはお互いに手を掲げーーーパァァァン!と、ピットに小気味良い渇いた音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 




次は絆VSセシリア………頑張ろう。
例によって次回がいつ投稿出来るか、私自身にも分かりませんが、なるべく早く投稿できたらと思いますので、引き続き拙い文章では有りますが、お楽しみ頂ければ幸いです。

オリジナルIS
ウィスタリアグリーフ(和名:藤色の悲哀)

織歌の専用機クリムゾンヘイトと同様に、機体モチーフはAALIYAH。その機体名が現す通り機体のカラーリングは藤色となっている。クリムゾンヘイトとは同タイプながら中~近距離での射撃戦に特化している。
クリムゾンヘイトと同様のイメージ・インターフェースを用いたシステムと、そのシステムを用いた兵器を装備している。


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