ISACfA《インフィニット・ストラトスAnd Counting for Answer》 作:傭兵No41
今回も烏丸さん家の日常をお楽しみください。
『白騎士事件』
突如、日本を襲った2341発のミサイル。
それらは、日本を攻撃可能な各国のミサイル管制システムが一斉にハッキングされ、制御不能に陥った事により巻き起こった。
戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視 衛星8基。
突然の事態に各国の政府が慌て用意し、日本近海へと寄越した迎撃戦力の数である。
絆と織歌は、ニュースを見ながらぶちギレていた。
「…自国の攻撃システムすら管理できないか。たいした国家だな。笑わせる。抑止の為の兵器がこれじゃあな…無能な政治屋共め」
「話にならないね。何のための税金なんだか。…結局、どこの政府も、結局は金喰い虫の税金泥棒の役立たずってことかな。…馬鹿馬鹿しい」
と、こんな感じで本気でぶちギレていた。お互いが、お互いの変化と言動に気付かない位には。
ただ、何よりも二人が憤慨しているモノは、国家でも政府でもない。
今の自分の身の力の無さ。
自身の脆弱さ、無力さこそが、忌々しい。
もし、仮に――ネクストがあったなら。
こんな事態…簡単に蹂躙して粉砕して見せるのに。
二人ともそう思わずにはいられなかった。
因みに、普段だったら家にいる二人の母親は、運良く出かけていて、未だに帰ってこれないでいる。
「うぅ…待っててね絆、織歌…お母さんすぐ帰るから…心細くて泣いてるかも知れないけど…お母さん、すぐ帰るからね…! だから、待ってて…絆、織歌…」
実に、知らぬが仏とはこの事か。
二人が苦虫を噛み潰した様な表情で、モニターを見つめていると…モニターの向こうで、状況に変化があった。
それにいち早く気付いたのは、誰でもない絆と織歌だ。
「「ん? 」」
「画面の奥で…何か光った?」
「戦闘機…? それにしては…」
「うん。小さい。小さすぎるよ、コレ」
「ミサイル…? いや、でも到達予想時刻にはまだ余裕があるし…それに、一発だけ…?」
モニターの向こうでもその存在に気付いたのか、モニターにそれを拡大した映像が映った。
((え? 白い…こ、れ、鎧? 白い鎧を来た人間?))
画面に映ったのは衝撃的な映像だった。それは、剣を持った白い鎧。それが空を高速で飛行しているのだ。いくら転生と言う名の超常の体験を継続中である二人であっても、それは驚くべき光景だった。
二人して目が点になっている。気が付いたらお互いがお互いのを頬を掴んで抓っているが、やはりお互いになにも言わない。
やがて、二人で顔を見合わせて、
「「なに? これ?」」
そう呟いた。しかし、そんな事はお構い無く、画面の向こうでは事態が加速していている。
見れば、空飛ぶ白い鎧は各国の防衛戦力に接近し――
「「え?」」
戦闘機とすれ違い様――
「「ちょ、はぁあああああああああああ!? なにやってるんだ
手にした剣で、戦闘機を真っ二つに、ぶった斬った。
絆と織歌からすればたまったものではない。いくら急遽寄せ集められた急造の、恐らく連携も儘ならないであろう烏合の衆ではあるかも知れないが、ミサイルを迎撃するには必要な戦力だ。心許ないが。
そんな二人からすれば白い鎧の取った行動は、正に『何してくれてるのオマエ!?』である。たまったものではない。
しかし、そんな二人の心境を知るよしもない白い鎧は、最初の一機を斬り墜とすと、流れる様な動きで次々に戦闘機を墜として行く。
すれ違い、追い縋り、時には纏めて複数機。
戦闘機とて、ただ黙ってやられて要るわけ出はない。機銃で、ミサイルで、搭載されている武装で反撃してはいる。
ただ、その反撃の悉くが、圧倒的な機動で以て避けられ、あるいは斬り伏せられ…全てが徒労に終わり、敢えなく撃墜されていく。
もはや、白い鎧の無双状態である。
しかし、白い鎧がどんなに優れていようとも、数の上では迎撃艦隊の方が勝っている。白い鎧の異常性を指揮官もようやく認めたのか、点による迎撃から面による制圧に切り替えた。
そうなると流石に白い鎧も避けきれなくなってきた様で、一発のミサイルが命中し、白い鎧の姿が爆煙に包まれ、そこに艦隊の火力が集中する…のだが、白い鎧は何事も無かったかのように
「「………」」
二人とも普段では決して見せないような、ポカーンとした表情をしているが、しばらくすると二人同時に「ハッ!」と、なにかに気付いた様に意識を現実に呼び戻した。
「キズナ、ちょっと録画の準備! 私ビデオ探してくる!」
「分かった! 確かビデオなら父さんの部屋に使ってないのが一杯あったはずだから、それ持ってきて!」
そうして、暫くして録画を始めると、二人して食い入るようにテレビ画面を凝視している。
「これ…何だろうね? …パワードスーツ…かな?」
「そうじゃないかと思う…サイズ的に。少なくともネクストじゃないよ」
「だよねぇ…どういう原理で動いてるんだろう…やっぱりAMSみたいな神経接続かな?」
「流石にこの映像だけじゃ…むしろ俺としては、これの機動力が気になるかな…慣性制御とか姿勢制御とかどうなってるのか…」
「これ、殆ど生身みたいなもんだよねぇ…対G性能なんて大してないように見えるけど…さっきから滅茶苦茶Gかかる様な動きしてるよね?」
「攻撃を受けたところ見た分だと、何か特殊なフィールドで身を守ってるんじゃない? PAみたいな…この映像だけじゃ良くわからないけど…」
「PAかぁ…汚染とか大丈夫かな?」
「どうだろう…って、あぁ!?」
「ッ! どうしたのキズナ!…って、あ…」
反射的に絆を見た織歌は、なにかに気付いたのか固まってしまった。絆は絆でまるで、暫く油をさしていないない機械が動くようにぎこちなく首を回して織歌に視線を向ける。二人に共通する事は、どちらも引きつった微妙な笑みを向けあって、「やっちまった」と言う顔をしている。
「ねぇキズナ?」
「なぁオルカ?」
「「今オマエ何て言ってた?」」
「「………」」
再び流れる沈黙。
そして、暫く見つめあったあと、二人してその部屋から出て、別々の方向へ。
(そっかそっか…うんうん。なんか変なやつだと思ってたけど、オルカも
キズナはそんな事を思いながら台所へと来ていた。包丁を収納しているケースから、包丁を2本取り出すと、台所を後にした。
(そっかぁ…まさか、キズナもそうだったなんて…普通思わないよねぇ~…ちょっと変わったとこはあったけど…まさか私と
織歌は物置小屋に来ていた。やがて、目当てのモノを探し出すと、満足したのか物置小屋を後にした。右手に小型の鉈を持って。
そして、二人は偶然廊下で再開した。二人ともニコニコ不気味な笑顔を浮かべて、両手を後ろに回して隠しながら。
二人がちらっと居間のテレビ画面に目を向けると、迎撃艦隊を殲滅した白い鎧が、今度はミサイル相手に大立ち回りしているところだった。
二人は視線を戻す。
織歌は絆へ。絆は織歌へ。そして二人同時に口を開いた。
「ねぇ? キズナは…」
「なぁ、オルカは…」
「「
「「………」」
「…私はORCA」
「俺は…カラード」
「「………」」
沈黙。二人は知らず知らずのうちに隠し持った得物を握る手に力を籠める。場に流れるのは緊迫した空気。
「「えっと…」」
「キズナ?」
「オルカ?」
「「
「「………………」」
「「………はぁ」」
溜め息と同時に二人の雰囲気がめで見て分かるくらい弛緩し、揃って得物を下ろした。
「ちょ、オルカさん!? どこいってるのかと思ったら、そんな物騒なもん持ち出して来たのかよ!」
「…こんな可愛い美少女相手に、包丁二本も持ち出したヤツがそれを言う?」
「美少女? 誰が?」
「あぁ? やっぱ殺るか?」
「すみませんごめんないオルカサマ、俺の思い違いでした」
「よろしい」
言って、オルカは満足したのか、腰に手を当てて胸を反らす。そして、二人同時に、
「「プッ…アハハハハハハハハハ♪」」
と、笑いだした。
「あー…笑った笑った。笑ったし、ちょっとスッキリした」
「私も。なんかスッキリしたなぁ…」
「取り敢えず、お互い手に持ってるの片付けようぜ。母さん、帰ってくるの遅れてるけど、いつ帰ってくるか分からないし」
「そうだね。さっさと片付けちゃおっか。…お母さんがこんなの見たら卒倒しそうだし」
二人はうって変わって軽やかな足取りでそれぞれ持ってきたものを戻しにいった。
そして、再び居間へ。二人は先程と同じように、白い鎧――白騎士がミサイルを次々破壊している光景を観察している。
「ねぇ、キズナ?」
「なに? オルカ?」
「キズナはどうやってこっち来たの?」
「ん? あぁ…あんまり、思い出したくないんだけど…そうだなぁ…」
そして絆は語り始めた。こっちに来る切っ掛けになった事を。
アルテリア・クラニアムの決戦を。
そこで、紅いホワイト・グリントと闘い、最後に敗れた事を。
懐かしむ様に…悲しそうに。
特に紅いグリントとの決戦は、怖かったと言いながらも、相手を賞賛する様に楽しそうだった。
が、それを黙って聞いていた織歌の顔は段々と気まずいものになってくる。青くなったと思ったら、今度は心なしか顔も赤くなったり。
「ん? どうした、オルカ?」
「あー…いや、なんかその、色々とゴメン」
「へ…? 何でおまえが…え? ま、ま、さか…」
「うん、それ私だわ」
「オマエかあああああああ!? オマエがあの紅いグリントのリンクス!? オマエのお陰であの光景思い出すと、今でもションベンチビりそうになるんだぞ!?」
「だからゴメンってば! だいたい、あれは私に負けたあんたが悪いんでしょうが!」
「あぁ。それに関しては負けた俺が悪いんだが…文句の一つくらい言っても良いだろ! てか、俺を殺したオマエが何でここにいるんだよ!?」
「あー…それは…最後、私OB使ったじゃん? アレでアンタ倒せたのは良かったんだけど…機体に無理させ過ぎちゃって、止まれなくなって壁にぶつかって機能停止して…そのままコクピット内でシェイクされて…どうにかコクピットから這い出して、クローズ・プランが成就したのを見届けたら力尽きちゃいました。テヘ♪」
「あ、ああ。それは…良く即死しなかったな?」
「だよねぇ…」
「「………」」
再び二人の間に沈黙が流れる。なんと言うか、お葬式のような沈痛な空気。
「リベンジ…する? するなら付き合うけど」
「いや、今はいいよ…リベンジする機会ならこれからいくらだってあるんだし。…もう、オマエ相手に殺し合いはしないよ。母さんも父さんも悲しむし」
「それもそうだね。良い人だもん、お父さんもお母さんも。まぁ、どうせ
「…ハイハイ。オルカのその無駄に大きな自信は何処から来るのかね。まぁ…
二人とも見つめあってから、ニィと笑う。楽しくてしょうがないと言う感じに。
そして再度テレビ画面に目を向ける。そこにはミサイルを全て破壊しつくした白騎士が、今度は増援でやって来た戦力を悉く蹂躙していた。二人の目には、その姿がとてもイキイキしいている様に見えた。
「……なぁ、オルカ」
「何、キズナ?」
「この白いのの動きって言うか、太刀筋って言うか…何処かで見た気がするんだが」
「…奇遇だね。今私もこないだ束が『うわーーーん! おーちゃん! せっかく束さんが作った子を、学会の老害共に馬鹿にされちゃったよー! ぐぬぬぬ…覚えてろよ、老害共め…! 貴様等には水底が似合いだ…!』って愚痴ってたのを思い出したとこだよ」
「「………」」
「「何やってんだ、あの馬鹿共…!」」
「この騒動が収まったら覚えていろよ…二人とも」
「アイツラには説教が山程あるからね…」
こうして、二人は密かに
後日。
突如現れた、白銀の鎧を纏った一人の女性によって、全てのミサイルと迎撃戦力の全てが無力化された。その後も、 各国が送り出した増援を、一人の人命も奪うことなく破壊された事件は、後に『白騎士事件』と呼ばれて世間に認知され、浸透した。
そしてその直後、世紀の天災・篠ノ之束博士によるISの発表。この二つを以て、ISは「究極の機動兵器」として一夜にして世界中の人々 が知るところになった。そして「ISを倒せるのはISだけである」という束の言葉と、その事実を、『白騎士事件』にてまざまざと見せつけられた敗北者たる世界は、無抵抗に受け入れるしかなかった。
更に後日。
烏丸家の絆と織歌の部屋へ招待され、自分たちより幼い小学一年生の双子の兄妹に正座を強要され説教をくらう、
さて、今回で過去編は一応の終了となります。
ようやく次から本編だー!
皆様の感想、ご意見お待ちしております。