あと11日からのイベント無理っぽい(HGのレベル、艦これ初秋イベ等の理由)
「ふわぁーっ。もう6時か。」ビーッ、ビーッというまるで時限爆弾のカウント音のような目覚まし時計のアラーム音で意識を覚醒させる。ベッドを整え、洗顔をした後グレーのトレーナーに着替える。朝食前の運動をするためだ。この世界の前線基地に
指揮官室を出て正面玄関へ向かう。戦術人形たちは、非常時を除いて午前7時に全機起動するようにセットされている。カリーナー本人はカリン、と呼んでほしいと言っているがーも同様に7時に起きる。そのため、この時間に起きている者は私と朝食準備をする調理員しかいないだろう。
いや、もう一人いたか。
「遅いわよ、司令官。いや、もう指揮官と呼ぶべきかしら。」腰に手を当てて少し膨れっ面をしている私のパートナーが。
叢雲と一緒にランニング、腕立て伏せ、上体起こし、スクワット等のメニューをこなしていく。この朝の運動は、鎮守府に着任した日の、「そんなヒョロヒョロの体じゃ体力が持たないわ。明日から毎朝トレーニングね。」という叢雲の言葉から始まった。元々私は軍人ではなく、偶々艦娘司令官の適性検査に引っかかったに過ぎない。一応体力検査も受けたのだが、ギリギリ合格レベルだった。そのような中でのトレーニングだったから、最初は全く体が動かず、筋肉痛が何日も取れなかった。疲れて勤務中に何度も意識が飛び、その度に叢雲にどやされたのも今ではいい思い出である。
「そういえば、I.O.P社での艤装調整はどうなったんだ?」屈伸をしながら、昨日まで出向していた叢雲に話しかける。
「お陰様で、艤装を陸でも使えるようになったわ。ペルシカさんってすごいのね。戦術人形の構造を応用させて艤装を改造したもの。まるで明石みたいだわ。」
叢雲の説明によるとこうだ。元々軍艦であった彼女が陸上で行動するためには、まず艤装本体を陸用に改造する必要があった。艦娘の艤装は、浮力を発生させて艦娘本体を海に浮かせると共に、艦娘を移動させるためのモーターとしての機能を有している。艤装によって艦娘は体力を余計に使うことなく航行し、戦闘を行うことができる。しかし、当然ながら陸には浮力や航行の概念が存在しない。先日のように、艤装を背負って地上を走り回り、敵に向かって砲撃することは可能であるが、艦娘の運動を補助する機能は今の艤装に備わっていないため、行動中に艦娘がバテてしまう。
そこで、ペルシカさんは、叢雲の両足の部分を半自動で移動するように改造した。早い話が電動ローラースケート化である。両足にモーター駆動のホイールを装着することにより、陸上でもスキーのように移動できるようになった。最も、燃料の消費量は重巡洋艦レベルに悪化したが。
一方、装備については特に改造する必要がなく、また出来なかったためそのままとなった。12.7連装高角砲(後期型)が2基と、試製61cm六連装(酸素)魚雷の発射管。前者は、1分間に4発砲撃できる砲塔が2×2=4塔搭載されている。当たれば鉄血の人形を一網打尽にできるが、問題は命中とリロード時間である。命中はまだしも、1発撃つために15秒は必要である。カームショットもびっくりのロマン砲である。
後者の魚雷は一見無用の長物とも思えるのだが、これには深い理由がある。まぁ、それは置いておき。
「そうか、では今日の攻略で叢雲を投入することにしよう。期待してるぞ。」
「任せなさい!あンたもしっかりするのよ。さて、そろそろ宿舎に戻りましょうか。」体操を終え、二人で施設に戻る。
「おはようございます!指揮官さま!ムラクモさんもおはようございます。」
「「おはよう、カリーナ(カリン)。」」叢雲と食堂で朝食を取っていると、カリーナが朝食のプレートをテーブルに置きながら挨拶をしてくる。
「今日も運動ですか。お二人とも朝は早いんですね。」
「まぁ、これは日課だから。カリーナもどう?体を動かすと頭がスッキリするけど。」
「・・・遠慮しておきます。朝くらいはゆっくりしたいので~」カリーナがやんわりと断る。彼女はグリフィンの社員としてここの前線基地の業務のほぼ全般を受け持っている。貴重な自由時間に踏み入ることは野暮だろう。因みに叢雲はグリフォンの特殊戦闘社員として採用され、私直属の部下になっている。本人は「人形たちと同じように扱って構わない」と言っているが。
「ところで指揮官、今日の作戦はM4 SOPMODⅡ及びAR-15さんの救出ですが、既に編成は決めているのですか。」カリーナが尋ねる。
「第1部隊はそのままだが、第2部隊に叢雲を入れる。攻略は第一部隊がメインで、第二部隊はその補佐だ。今回の出撃で叢雲の能力を知っておきたいからな。」
「いきなり実践投入ですか!?、ムラクモさんはそれでいいのですか。」
「向こうでの調整ばかりで体が鈍っているから、リハビリにはちょうどいいわ。それに、私の体が人形の攻撃にどこまで耐えられるのか知っておかないと。」
「そうですか、あまり無理をしないでくださいね。」「ありがとう、カリン。心配してくれて。」気が付くとカリーナはプレートを片付け、食堂を出て行った。早い。
「そろそろ私たちも行くぞ。」「そうね。私も艤装の確認をするわ。」二人で朝食をかき込み、プレートを返却口へ持っていく。
「作戦概要は以上になります。みなさん何か不明点は。」
午前8時、カリーナが戦闘部隊に対して指示を出す。第2部隊は既に司令部に配置され、第一部隊も既にヘリに乗り込んでいる。
「第1部隊、問題ありません。」リーダーの一〇〇式が静かに、しかし強く返答する。
「第2部隊も大丈夫だよー。しいて言えばムラクモちゃんが前に陣取る理由かな。」こちらはリーダーのスコーピオン。
「ムラクモさんは耐久が非常に高いので、敵の攻撃を防ぐ「壁」になってもらいます。もし重傷を負った場合は、後列に下げてください。」カリーナが返す。
「了解。後は大丈夫かな。」
「分かりました。では、指揮官の号令を以て、作戦を開始させます。指揮官、宜しくお願いします。」
「皆、重傷を負った場合は直ちに退避するように。第2部隊は今回初めて叢雲が加わることで色々勝手が異なるかもしれないが、連携を忘れるな。最後に、単に作戦開始とするのはつまらないから、これを合図にしよう。
皆、暁の
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「暁の地平線、ね。司令官も中々面白いことを言うじゃない。よし!叢雲、抜錨するわ!着いてらっしゃい!」艤装が体に取り付けられ、エンジンが作動、モーターが稼働する。ギュイィィィンという音と共に、叢雲は出撃装置から飛び出していった。
「ちょっ、ちょっと、ムラクモ待ってよ!速過ぎだよ!」スコーピオンと第二部隊(スプリングフィールド、MG42,AK-47)が慌てて追いかける。
「敵艦、、、、じゃなくて敵の人形が見えたわ。人形の数からみて戦闘は避けられそうにないわね。」目を凝らしながら私は後ろの人形たちに言う。
「えっ、ムラクモさん、鉄血の人形が見えるのですか?」スプリングフィールドが尋ねる。
「ええと、赤いスカウターをかけた奴が4体、ヘルメットを纏った奴が6体、黒いスカウターをかけた奴が2体といったかしら。」
「RipperとVespidはまだしも、Jaegerは厄介だね。私とAK-47はRipperとVespidを、スプリングフィールドさんとMG42はJaegerを集中的に狙うように。ムラクモはそうだね、できるだけ敵の攻撃を引き付けておいて。」
「分かったわ。所で、スプリングフィールドだけさん付けなのね。」少し疑問に思ったのでスコーピオンに尋ねる。
「うーん。特に理由はないけど、何か私たちと違って「オトナの女性」って感じしない?」私たち、には私も含まれているのだろう。確かにスプリングフィールドは、芯があり、それでいてどこが母性がある雰囲気を感じさせる戦術人形だ。そして、着目すべきは、藍色の制服でも隠し切れない豊満な胸だろう。巷によると、彼女の水着姿は多くの男性指揮官を虜にしているという。
「・・・貴方とは何処かで分かり合えない部分があるわ。」己の限界を認識され、恨めし気に彼女を見やる。
「私にどこか問題でも?ムラクモさん。」彼女は気づいていないようだ。
「ムラクモ、そろそろ行くよ!構えて!」スコーピオンの言葉で我に返り、慌てて戦闘態勢に入る。しかし、動作が遅れたのか、敵の弾がこちらに飛んでくる。
「しまっっ!」弾丸が胸の中央に当たりーーー
コツンッと軽い音が響いた。
「あれ?」音がするまで弾が命中したことに気づいた。弾が何十発とこちらに向かい命中するが、何れもコツコツッと軽い音が鳴るのみである。痛みは全くというほど感じない。
(そりゃ、こちらは軍艦だもの。機銃の攻撃じゃビクともしないわ。)どこか安心し、スコーピオンに指示を出す。「とにかく攻撃はこっちが引き受けるから、援護頼むわよ!」
「よーし、分かった!全員、ムラクモに続けー!」全員が敵の人形に向けて攻撃を行う。
それから先の戦闘はただの殲滅戦だった。私が戦闘区域を走り回り、時には仲間の人形たちの盾となって弾丸を受け、その間に攻撃をさせる。仕留め損ねた人形は、自ら砲撃をする。この戦法が功を奏したのか、こちらの人形の損傷はほぼゼロだった。私も、艤装が少し凹んだくらいで済み結果としては十分満足のいくものだった。第1部隊も先程敵の司令部の占領とSOPMODⅡの救出を終えたという。
「すごいよ、ムラクモ!」スコーピオンが抱き着いてくる。
「流石指揮官が見込んだ女だな」「尊敬しましゅ」
「ムラクモさん、本日はありがとうございました。基地に帰りましたら、スコーンとコーヒーを御馳走しますね。」
「いえいえ。今日の結果は皆のお陰よ。これからもよろしく頼むわ。」全員と握手を交わす。戦術人形と艦娘、その違いは無いようなものね。
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「叢雲よ、失礼するわ。」作戦を終え、フィードバックを各部隊に行った後、私は叢雲を指揮官室に呼び出した。
「来たか。今日の作戦、ご苦労だった。戦闘の感触としてはどうだ。」
「まずまず、といったところかしら。今後は回避能力を強化する必要があるわね。」凛として答える。
「そうか。ところで、叢雲、お前は作戦中、スプリングフィールドとの会話に夢中で敵の攻撃に気づかず、そのまま受けてしまったことがあったな。もし、その攻撃が急所に当たっていたら、どうなっていたと思う。」あえて尋問するように言う。
「うっ、それは・・・おそらく戦闘不能になっていた可能性は否定できないわ。これは私の責任よ。彼女は悪くないわ。」
「いいや。部隊において一人のミスは全体のミスに繋がる。よって、今回の件はスプリングフィールドにも責任があるな。そうだな、今回二人に与える罰は・・・・
叢雲はスコーンとコーヒー抜き。叢雲の分は私が頂く。以上だ。下がっていいぞ。」
「そんな・・・甘いスコーンにほろにがコーヒーが・・・」叢雲は両手を地面に着き、orzのポーズで絶望するのであった。
春田さんをすこれ。
次は日常回の予定。