アバンスとユウキと別れたエリアルとウィンダは、エミリアに連れられリチュアの食堂に来ていた。
食堂内にはリチュアはおらず、他部族の女子が席に座ってお茶を飲んだり、お菓子を食べたりしていた。
「やっほ~、残りメンバーを連れてきたよ~」
元気な声で部屋のメンバーに声をかけるエミリア。その姿はリチュアの侵略者であることは全く感じられない、年頃の少女だ。
部屋にいたのは五人。ラヴァルとジェムナイトの女性だ。
「あら、やっと来ましたのね。エミリア。少し遅くはなくて?」
「レム、やめなさい。エミリア、用意してくれたお菓子はとてもおいしかったです。誘ってくれてありがとうございます」
「……モグモグ」
食堂の奥からお茶を入れてお盆で運んでいるのは、ティアラのような髪留めが特徴的なラヴァル。ラヴァル三姉妹の次女である『ラヴァル炎火山の侍女』。名前はレム。
お菓子を上品なしぐさで食べているのは、ワンピースを着たラヴァル。三姉妹の長女『ラヴァル炎湖畔の淑女』。名前はルノ。
ルノとは逆に、先ほどからお菓子を頬張り続けているのは、フードを被った少女。三姉妹の末っ子『ラヴァル炎樹海の妖女』。名前はファイ。
「ごめんごめん。エリアルが拗ねて、探すのに手間取っちゃって。ジェムナイトの二人もゴメンね?」
「そんなことないです!このクッキーすっごくおいしくって!ね、ラピス!」
「うん!いくらでも食べれちゃうよ!ね、ラズリー!」
二人のジェムナイトは体がとても小さく、姿もそっくりだ。
なんでも、ジェムナイトの女性は少ないらしく、ジェムナイト自体が鉱石から生まれたとか。そして、この二人はさらに珍しい双子のジェムナイト。
胸に輝石がなく、髪(?)が長いほうがジェムナイト・ラズリー。
胸に輝石があり、スカートが長いほうがジェムナイト・ラピス。
どちらが姉かはまだ決まっておらず、そのことでのみケンカするとか。
「あれ、ガスタの方は一人だけですか?三人連れてくるとおっしゃっていたような」
「ああ、それなんだけどレム。連れてこられる状態じゃなかったから、用意してくれたお茶は私が飲むからいいよ。さ、ウィンダとエリアルも座って」
ウィンダとエリアルが座った前には空のティーカップが一つと、おいしそうな匂いを漂わせるクッキーが置いてあった。
「お継ぎいたしますわ」
「ありがとう、レムちゃん」
「……ありがと」
泣いて落ち着いたからなのか、はたまたユウキに悩みを打ち明けたからなのか、エリアルは割と素直になっており、過去の彼女を知るウィンダとエミリアは彼女に微笑みを浮かべていた。
レムがお茶を継ぎ終わり席に戻ると、エミリアがその場で立ち上がる。
「えー、このたびは私、リチュア・エミリアの招集に応じていただいてありがとうございます」
「そういう堅苦しいのはいいよ。ね、ラピス」
「うん、ラズリー。楽しい女子会にしよ?」
今までのリチュアの侵略行為をまったく気にしていないかのように___きっと彼女たちは気にしていないのだろう、ジェムナイトの姉妹はエミリアに注意する。
それを受けたエミリアは驚いた後、満面の笑みで話をつづける。
「ではでは!同盟中ということもありまして、今は四部族で交流できる貴重な時!ならば、私たちも女子会を行っちゃいましょ~!」
「「おお~!!」」
「……モグモグ」
「こら、ファイ。人が話しているときはその人を見なさい」
「ごめんなさい、ルノ姉さん……モグモグ」
エミリアの宣言にジェムナイト二人は一緒に腕を上げて盛り上がり、ファイはグッキーを食べ続け、それをルノが注意する。そんな中、レムは上品な笑みを浮かべて彼女たちを見守っていた。
会場が盛り上がる中、ウィンダは不思議に思ったことをエミリアに問いかけた。
「ねえ、エミリア。いつの間にジェムナイトやラヴァルの人に声かけたの?それに、仲よさそうだし」
「ん?別に女子会しましょ、って言ったら参加してくれたよ?ラヴァルの三姉妹も、同性と話したかったんだって」
さらりと言うが、エミリアの行動力はすさまじいものだ。その行動力にウィンダは感心してしまう。
「昔からそうだけど、思ったことは即実行しちゃうもんね。エミリアは」
「ふふ~ん。もっと褒めてくれていいのよ?まあ、みんなを待たせるのもいけないし、四部族の女子会、始まり始まり~」
こうして、今まで実現しなかった四部族の交流会が始まった。
「ではでは、はじめに自己紹介と行きましょうか。まず私から」
開始宣言から続いて、エミリアが話し始める。
「私はエミリア。所属はリチュア!部族内では、儀式の勉強だったり料理もしてるかな。あ、クッキーのレシピは私が作りました!どうかな?」
「ウマウマだよ!エミリア!」
「ウマウマ~!今度教えて、エミリア!」
「ありがとー!二人にはあとでつくり方教えてあげるね」
先ほどから言われているように、全員の前に置かれているクッキーは彼女が作ったものだ。ウィンダも一つ頬張る。
すると、サクッといい音がした後口の中に甘さが広がった。
ガスタの中で一番料理がうまいカームと同じ__下手をすると、それ以上かもしれない美味しさだった。
「美味しい!エミリア、美味しいよこれ!」
「……美味しいことは確かね、ええ」
エリアルも渋々といた感じだが、クッキーのおいしさは認めた。
そんな二人の称賛の言葉でエミリアは笑顔になる。
「それから、趣味はお菓子作りと小物つくりかな。ヘアピンだったりペンダントとかは作るの好きだね。好きな食べ物はお刺身!」
「お、お刺身?リチュアって魚人の方が多いですよね?」
「さすがにリチュアの皆をそんな目で見ないよ~。……食べてもおいしそうじゃないし」
ルノの思い浮かんでしまった質問に、エミリアは目線をそらして答えた。
(あれは、一度くらいは思ったことある顔だ……)
(そんなこと考えてたこともあるの……)
昔馴染みの二人は、少なくとも一度くらいは食べてみたいと思ったことがあることを見抜いていた。エリアルはそれに呆れ、ウィンダは少し引いていた。
「ま、まぁ!そんなことはよくって、ここからは質問タイム。好きなこと聞いていいよ?」
一番初めに質問したのはレムだ。
「それでは、よろしいでしょうか?」
「いいよ、レムちゃん」
「クッキー以外に作れるお菓子は何かございますか?」
「ケーキは三回くらい作ったかな。あと、羊羹だっけ。異世界のお菓子も作ったことあるよ。基本的になんでも作れるかなぁ」
「では、私にも教えていただいても?」
「いいよ~」
お菓子は基本作れるという女子力の高さに皆驚いたようで、料理が得意なレムも興味津々のようだ。
「じゃあさ、エミリア!」
次に聞いたのは、ラピスだ。元気よく手を上げている。
「何かな、ラピスちゃん」
「あの髪の長い人とはどんな関係なの?」
「ん?ノエリアお母さんのこと?」
「違うよ!あの髪の長い男の人のこと!」
髪の長い男の人。それに該当するのは一人しかいない。
「ああ、アバンスのこと?あいつは幼馴染だよ。リチュアができる前からの付き合いなの」
「じゃあ、私たちが生まれる前から?」
「うーん。多分そうじゃないかな?母親同士が友人関係だったし。今じゃ義理の姉弟だけどね。あんまり気にしてないかな」
「好きな人なの?」
ぶっー!と勢いよくエリアルが飲んでいたお茶を吹き出す。
目の前にいるウィンダにそれは直撃し、彼女の顔にお茶が襲い掛かった。
「……なんでエリアルがお茶吹いてるのよ。はい、タオル」
小型の魔法陣からタオルとを取り出し、エミリアはウィンダに渡す。ゴホゴホとむせりながら、エリアルはラピスを見る。
「いや……そんなことジェムナイトが聞くんだって思って」
「私たちだってクリスタさんのこと好きだもん!ね、ラズリー!」
「うん!アクアマリアさん、ルビーズさん、パーズさんも好きだよ!ね、ラピス!」
この子たちはまだまだ幼い。なので、『好き』の意味が違うのだ。
「もしかして、エリアルさんもそのアバンスさんのことが『好き』、なのでしょうか?フフ」
「__そうなの?」
エリアルをからかうために出したレムの質問に、エミリアが不安の色を出してエリアルを見る。
が、自分でも不安を出していることが分かったのか、エミリアはすぐに笑顔を作り上げた。
「どうなのさ~エミリア?」
その顔を見て、エリアルは素っ気なく、でも確かに答えた。
「アバンスのことは超える目標として見てる。当然、エミリアも」
「めちゃくちゃ堅苦しかった!?」
「当たり前でしょ。『家族』になるためにも、あんたたちを超えなきゃいけないんだから」
エリアルの本音にホッとしたのか、無意識に胸をなでおろすエミリア。
そんな彼女の行為にジェムナイトの二人を除き、会場全体がほっこりした。
「ラピスちゃんの質問に対する回答は、昔から隣にいる大切な人、ってところかな」
「へー。ありがと、エミリア!」
「じゃあ、私への質問はこれくらいにして、次ウィンダ!」
次の自己紹介はウィンダに振られる。ウィンダはエミリア同様に席から立ち上がって自己紹介を始める。
「ガスタの巫女 ウィンダです。ええっと、気になる異性はいません。それから、ガスタの皆が好きです」
「特技は?」
「ええっと……天啓を聞くこと?」
「ウィンダってさ、こんなに話せなかったっけ?」
苦笑したエミリアが聞くが、ウィンダ自身も困惑しているようだった。
「あ、あれ……?そういえば自己紹介とかあんまりしなかったかも。ええっと、質問とかあればどうぞ」
「天啓とは、どのようなことを聞くのですか?」
救いの手を差し伸べるように、ルノが天啓について質問する。
『天啓』
魔術的な予知でも、戦士の直感でもなく、神からのお告げ。ガスタの神官家でもウィンダのみしか聞くことのできないもの。
密かにリチュアが狙いをつけている力でもある。
ルノの質問にウィンダは困った顔で答えた。
「具体的なものはないの。明日雨が降って誰かが転ぶー、みたいな感じじゃなくて、近いうちに悪いことが起こるよー、みたいな」
「とても大雑把なんですね、この世界の神様は」
「う~ん。否定はできないかな?私自身も神様の名前知らないし。でも、昔話によると神様ははるか昔は二人いて、それがいつしか一人になっていたって」
「それは……初めて聞いたわね。エリアル知ってた?」
エリアルは無言で首を横に振る。神に詳しいガスタならではの情報だろう。
「じゃあ、ウィンダはヴァイロンのこととか知ってたの?」
「うん、それ気になる~」
「ヴァイロン様のことは知ってたよ。インヴェルズのことも知ってたけど……あんまり信じたくなかったな……」
ウィンダのその一言で、各々自分の部族が捕食されていく様を思い出してしまい、雰囲気が一気に落ち込む。
コトン、と机に小物が置かれ皆の視線がそちらに注目すると、レムが新しくお菓子と飲み物を置いていた。
「今は女子会。楽しみましょう。これは先ほどいただいた、ちょこ?という物らしいです。あと、ラヴァル特製マグマジュースです♪」
レムがニコリと笑うと、幼いジェムナイト姉妹とファイは一目散に新しいお菓子に手を伸ばす。ニコニコと笑うレムは一人一人席を周り、マグマジュースを継いでいく。
「ええっと、レム。このマグマジュースっていうのは?」
「内緒です♪」
その笑顔は飲んでみろ、と脅迫している笑顔だった。
正体を知っているルノは苦笑いを浮かべ、ファイとジェムナイト姉妹は既に飲み切っている。が、特にまずそうな反応はしていない。
恐る恐るウィンダが飲んでみると___
「!お、美味しい……」
「これ、アセロラってやつじゃない?暑い日とかによさそうな味ね!」
「あら、異世界ではそういうのかしら。私たちは火の実と呼んでいますわ」
正体はアセロラジュースだったらしく、エリアルもすまし顔で飲んでいる。
「でも、なんでマグマジュース?」
脅すような名前にエミリアがレムに聞くと、小悪魔のような顔でレムは答える。
「だって、びっくりさせられますもの。皆様の不安そうな顔、いただきましたわ」
「はぁ……。ごめんなさいね、皆さん。こう見えてもレムはいたずら好きで」
ルノの顔には苦労の色が見える。何度もいたずらをされ続けてきたのだろう。上品なしぐさで、レムは自己紹介を始める。
「せっかくなので、自己紹介しますわ。ラヴァル三姉妹、次女のレムですわ。趣味はお世話。仕事として炎火山のお世話をしているからかしら。好きなものは、姉と妹ですわ」
「……レム姉さん。少し照れくさい」
「あら、ファイも自己紹介、します?」
レムに促されて、ファイもゆっくりと立ち上がる
「……ラヴァル三姉妹の末っ子、ファイ。趣味は散歩。好きなのは頭を撫でられること。……これでいい?」
「こんな妹たちですみません……。ラヴァル三姉妹、長女のルノです。趣味は読書。リチュアの皆さんからいただいた本はとても面白く、今でも部屋で読んでいます」
「ありがと~!」
「はい、ありがとうございます。エミリアさん。好きなことは、姉妹たちと話すことかしら。よろしくお願いしますね」
重い空気を変え、ラヴァル三姉妹の自己紹介が終わる。
小悪魔なメイドのレム。無愛想だが甘えん坊なファイ。そして、その妹たちを大事に思っているルノ。
とても戦闘狂のラヴァルには見えない。
「三姉妹の皆は、その、戦闘とかは好きなの?」
「「「嫌い」です」ですわ」
「即答!!?」
ウィンダの質問にシンクロ即答する三姉妹。全員嫌いな理由は様々だった。
「姉として、妹がケガして帰ってくるのは嫌ですし」
「野蛮ですわ」
「……必要なら、激しい運動はイヤ」
その理由から、本当にラヴァルらしくない三姉妹だと全員が感じた。
「仲の良さなら負けないよー!ね、ラピス!」
「もちろん!私たちほど仲良しはいないよ!ね、ラズリー!」
姉妹による対抗心か、ジェムナイト姉妹が自己紹介を始める。
「私、ジェムナイト・ラズリー!ラピスとジェムナイトの皆が好き!」
「私、ジェムナイト・ラピス!ラズリーとジェムナイトの皆が好き!」
「同じこと言ってるだけじゃない……」
呆れるエリアルに、二人はまったく同時に反論する。
「「同じじゃないもん!!」」
「同じじゃない……」
「でも、仲のいいことはいいよね。うん。……羨ましいな」
無意識のうちか、ウィンダが切なそうに本音を漏らした。
「あの、失礼でなければなんですけど、ウィンダさんも兄弟が?」
「……妹がいたよ。今は、どこにいるかは知らないけど」
「すみません……。急に聞いてしまって」
「ううん。気にしないで、ルノさん。さ、最後はエリアルだよ」
自己紹介を促されたエリアルは、無言で席から立ちあがる。
「リチュアのエリアル。趣味は魔術の勉強。好きなことは儀式。以上」
こう、誰にもが反応しにくい自己紹介をした。
そもそも彼女がだれかと関わることは少ない。リチュア内でもそうである。
その理由はただ一つ。ノエリアに認められるためだ。
彼女は一人で、そのことだけのために生きている。だから、誰かと関わる必要なんて、ないのだから。
が、それをこの女子会が許すことはない。
そもそも、ウィンダがいる時点でそれは詰んでいるのだから。
「で、エリアルはユウキのことが好きなの?」
「ぶふぅ!!!?」
興味がない、と思わせるためにマグマジュースを飲んでいたエリアルがまた口から吹き出す。
「さすがに二度目はわかるよ……」
今度はそれを被ることなく、ウィンダは横によけて苦笑していた。エミリアは何も言わず、ニヤニヤしている。
「ゴホッゴホッ……ふ、ふざけたこと言わないで!生贄にされたいの!?」
「好きな人、いらっしゃるのですね♪ぜひ、詳しく聞きたいですわ」
「……モグモグ」
「ノーコメントです!」
「「聞きたいな!!」」
何人か否定しているが、皆の視線はエリアルに集まっている。エリアルは今までの経験を活かし、無言を貫こうとするが___まあ、無理です。
「ユウキへの返事はいつ返すの?」
「へ、返事?」
「好きって言われてたよね?」
「あああああ!!!!!!!!!!」
ガスタから抜け、リチュアへ帰る日の朝のこと。
可愛くて好き、と言われたことを思い出し、一気に耳まで赤くなるエリアル。
「あら、愛の告白までされていたとは。しかも、相手はあの異世界のお方でしょ?フフ、面白くなりそうではありませんか」
「面白い、ゆうな!」
「……いいと思う」
「何が!?」
「ええっと、その人のことはどう思っているのですか?」
「なんとも思ってない!!」
「「異世界の人のこと、好きなの!?」」
「同時に言うなぁ!なんとも思ってないってば!!!」
怒涛の質問に顔真っ赤にしてエリアルは律義に答える。
そして、ついに悪魔が動いた。
「ふーん。なんとも思ってない、ねぇ。へぇー」
「な、なにが言いたいのよ。エミリア」
「ユー君とでも呼んであげたら?」
「ふっっっざけんなぁ!!!だから、あいつのことなんとも思ってないからぁ!!」
「嘘だぁ。だってあんたさぁ。」
ニヤニヤとしながら、エミリアはとどめを放つ。
「他人には興味ないんでしょ?なのに、ユウキのことだけムキになってる。つまりさぁ、彼に興味があるってことでしょ?」
「そ、それは……」
「ほら、言い返してみなさいな?興味ないんでしょ?」
「……ううう!!!!」
机に頭を抱え、突っ伏してしまうエリアル。彼女の頭はもうぐるぐるである。
(興味なんてない!どうだっていい!あんなやつなんて、あんなやつなんて!!でも、気にかけてくれたのはあいつだしいや、何思ってるの私!?あいつに負けたんだよ!?なのに、どうしてあいつのことが憎らしいだけじゃないの!!?)
うう、とか、ああ、とか、もう何も言えなくなってしまったエリアルを見て、エミリアは全員に笑顔で言った。
「まあ、リチュアって言ってもこんなんだから。あんまりエリアルを怖がらないで上げてね」
「なんでそんな話になってるのよぉ!!!!?」
「ひどい目にあった……」
女子会終了後、エリアルは満身創痍で自室に帰還した。すぐさまベットに倒れこむ。
あれから、ユウキのことばかり聞かれ非常に疲れ切っている。頭も顔もオーバーヒートして、冷却期間がいるくらいには。
「どうでも、いいんだってば……。あいつなんて、どうでも……」
そう思うと、どうしてもエミリアの言葉が思い出される。
『他人には興味ないんでしょ?なのに、ユウキのことだけムキになってる。つまりさぁ、彼に興味があるってことでしょ?』
それにどうしても答えられない。
へらへら笑いながら話しかけてきて、自分をかわいいとか言って、それで、家族のことも、自分の行動理由にも理解を示してくれて……
(悪い奴じゃ、ないのよ。でも、元はと言えばあいつが侵略を邪魔したからで……)
でも、その邪魔のおかげで彼女は少し優しくなっている。
少しだけ、笑顔になれたことは彼女も気づかされた変化だ。
「……馬鹿馬鹿しい。寝よ。そうすれば考えなくていいし」
___だが、彼女の心が休まることはなかった。
数時間後。
「……ダメッ……まだ、ダメだってば!!……ふぇ?」
自身の寝言で目を覚ます。気づけば汗をかいていて、顔は熱い。
上半身を起こし、深呼吸して。
エリアルは____死にたくなった。
「何、あの夢……。何が、エリアル姫、よ……」
昔描いた絵本の夢だった。姫が悪魔にさらわれて、勇者がそれを退治して姫と幸せになる話。幼いころのエリアルが描いた、どこにでもあるような童話のような話だ。
問題なのは、それが夢に出てきたこと。姫が自分だったこと。
そして、勇者が、ユウキだったこと。
最後のキスされる直前で目が覚めて、本当に良かったと思っている。
頭を抱える。寝ても覚めてもユウキがまとわりついているこの事実が、彼女を混乱に陥れる。
「『
全てをあきらめたエリアルは、自分に魔術をかける。それは、対象を強制的に眠らせる魔術で、夢も見させない。
本来なら人質をさらうようなときに使うものだが、疲れ切っている彼女は早く寝たかった。
強烈な睡魔に襲われ、そのままエリアルは意識を手放した。
そんなことしても、ユウキのことからは逃げられないと知っていながら。
「へくちゅい!」
「ん?どうしたの、風邪でもひいた?」
とある場所。緑髪の少女がくしゃみをすると青髪の少女が心配する。
緑髪の少女はほわほわ~とした笑みを浮かべて、心配ないと答える。
「心配ないよ~?それより、ほら遅れちゃうよ、エリア!」
タッタッタと足音を立てて駆けていく友人を、一足遅れたエリアは追いかける。
「待ってよ、ウィン!」
これは端末世界とは別の世界の物語。
交わるのは、■■■の咆哮によって……
エリアルイジリタイだけのお話でした()
ちなみに■■■の正体はのちにわかる……はず!