端末IF 〜決闘者は世界を渡るようです〜   作:星野孝輔

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一話まるまる投稿でっせ。奥さん


第十話ー後編 降臨

 戦場は混沌に包まれていた。いつ悲劇が起こってもおかしくない。もう『ありえない』ということはないのだ。

 

「ハァ……ハァ……」

「クソが……」

「こんなもんか? あん時、生き残ったのはまぐれかぁ?」

 

 二人の長であろうとその悲劇から逃げられないこともあり得てしまうのだ。蘇ったインヴェルズの長 グレズ改め、ジールギガスはボロボロになり膝をつくジルコニアとジャッジメントをつまらなさそうに見下ろしていた。

 ジールギガスとして蘇り、最強格の怪力とリチュアの魔術の力を得た。さらに、ジールギガスの生贄になったのはリチュアの長に宿っていたプシュケローネ。最強の肉体と魔術を得た悪魔の前に、今まで幾度となく死地を潜り抜けてきた戦士はボロボロになっていた。

 幾度となく力の差を感じてきたことはあった。だが、そのたびに仲間との結束で乗り越えてきた。戦いの中で築かれた信頼が最も深いクリスタとジャッジメント___その二人でも超えられない壁が反り立っていた。

 

「おら、よけろよ。『貫撃(スラスト)』」

 

 四本ある腕のうち二本の腕に魔法陣を展開し、黒い刃をジルコニアとジャッジメントに向けて放つ。さらに、今までのように一発だけが高速で放たれているわけではなく、マシンガンのように連続に『貫撃』が襲い掛かる。

 一度回避しても次の一撃が自身に襲い掛かる。瞬時に理解した二人は、なんとか立ち上がり全力で走り始めた。一度でも足を止めれば刃で鎧ごと貫かれると感じ取っており、必死になって回避に専念する。

 二人が回避した『貫撃』が地面を抉りとる。そこに空いた無数の穴が自分の体にも開くと想像すると背筋が凍てついた。一撃で絶命するであろう禁術を回避ながら反撃するのは困難だった。

 

「よけてるだけかぁ!!? その程度の力しかないのか!!!」

「言わせておけば……!」

 

 そんな中ジールギガスの売り言葉で、ジャッジメントは怒りの表情を見せる。ラヴァルのプライドがその言葉を許さなかった。走っている右足で踏み切りをつけ、足の裏で炎を噴出させる。噴出の勢いでジャッジメントの体は急加速しジールギガスに急接近。だが、まだ攻撃の圏内に入らない。次に踏み出した左足からも炎を噴出させ地面をけると、土が舞い上がり焦げた大地が出来上がった。

 勢いのまま炎を拳に宿し、渾身の右こぶしをジールギガスにたたきつける。

 

「くらいやがれぇ!!」

「フン」

 

 その拳がジールギガスにダメージを与えることはなかった。いとも簡単にジャッジメントの拳はジールギガスに受け止められる。ジャッジメントが何とか懐に入ろうと力を籠めるが、ジールギガスはそれすら許さない。使っているのは腕一本。他の三本の腕は使うこともないと言っているようだった。

 力を籠めるジャッジメントを腕一本で受け止め続け、別の腕の一本に水の魔力を集中させる。動きを封じられているジャッジメントにその一撃をよける手段はない。

 ジャッジメントの腹部にジールギガスの拳が叩き込まれ、風のように後方へ吹っ飛んでいった。

 

「___ジャッジメント!!!」

「他人の心配してる場合かぁ!!?」

 

 次の瞬間、ジルコニアに襲い掛かってきたのは四本すべての腕から放たれ先ほどよりも数が増えた『貫撃』の刃だった。回避が間に合わずとっさに腕で守りを固めるが、それは大きな間違いだ。

 今を生きる戦士たちの中で最も固いはずの巨大化した両腕は、ナイフを入れられたバターのようにあっさり切り裂かれ、ずたずたに切り裂かれた。当然、意味のない防御では体を守ることはできない。無数の刃が彼の体から輝きを奪っていった。

 

「があああああああ!!!!!」

 

 生命の証である大量の血液を腕から噴出させ、ジルコニアはクリスタへと戻ってしまう。彼の主戦力である両腕は完全に使い物にならなくなり、再起不能一歩手前にまで追い込んだ。

 吹き飛ばされたジャッジメントも口から血を吐き出し、まともに戦える状態ではない。彼が何とか立ち上がろうとするものの、体に走る激痛が大きく妨害する。

 ボロボロの二人を見下ろし、大きなため息をつくのはジールギガス。

 

「___なんだよ。この程度か。クソ天使の力がなければまともにやりあえねえとは……本当にこんな奴らに負けたのか……情けなくておちおち死んでいられねぇ」

「ここまでの、差が、どうして……」

「ああ? お前がよえーからに決まってんだろ。宝石野郎。さっさと失せろ」

 

 ジールギガスに距離を詰められたクリスタに四本の腕から繰り出される拳の嵐が叩き込まれる。自慢の固い体も悪魔の長には通用しない。ピキリとクリスタの体にひびが入り始めると、そのまま亀裂が体全身に広がっていく。亀裂からはとめどなく赤い血が流れ始め、彼の全身は赤く染めあがった。

 防御も反撃も許されない。自分の体が悲鳴を上げていることだけは感じ取れる。幾度となく命の危機にさらされてきたクリスタは今度こそ自分の『死』を確信する。

 

「クリスタぁ!!へばってるんじゃねぇ!!!」

「炎野郎、おめーが来たところで何も変わりやしねえよ!!」

 

 なんとかクリスタを逃がす隙を与えようとジャッジメントが炎を放つが、ただの拳でかき消される。目の前で好敵手の命が消えようとしているこの状況であるにも関わらず、彼にできることは何もないと悪魔は言い放つ。

 

「うるせぇ!!無理やりにでも変えてやる!!!」

 

 それを素直に受け入れるジャッジメントではない。先ほどと同じように足の裏から炎を噴出させ急加速。わずかではあるがクリスタに意識を向けているジールギガスの背後を取ることに成功する。

 突如自分のほうへ向いた悪魔の手に驚くことはしない。すでにその行動は読んでいた。今度は右手から炎を放出し体勢を低くすることで、『貫撃』の射線上から外れ、今度は左手から炎を出して体を上昇。そのまま勢いのまま右のストレートを腕に叩き込んだ。

 少々侮りすぎていたジールギガスは若干体勢を崩し、その隙をついてジャッジメントは自分から動けないクリスタを抱え上げ一旦距離を取った。

 

「おい!!!返事しろ、クリスタぁ!!!」

「……すま、ない……ジャッジメント」

「んな虫の息で答えても説得力ねぇぞゴラぁ!!!!」

 

 全身から血を流すクリスタの声は弱々しく、その声がジャッジメントに衝撃を与えていた。いくら叶わない強敵が現れても恐れないラヴァルの長の声が、震えている。

 ありえない、絶対にあってはいけないと心から現状を否定する。

 自分が強敵と認めた、あのジェムナイト・クリスタが

 

 

 

 

 

 死ぬ直前だという現実を。

 

 

 

「ジャッジメント……私が……」

「___それ以上言うな」

「だが……」

「今は休め。あの悪魔は俺がやる」

「___だめ、だ」

「はん!今のてめーじゃ俺を止められねえよ!!いいから休んでろ!」

 

 その真実すらも、今のジャッジメントには余計なものだ。クリスタを地面に寝かせて自分は立ち上がる。

 両腕と瞳、そして心に再び炎を宿し、竜人の戦士は古の悪魔と再び向き合う。好敵手に背中を見せ、言葉を投げかけた。

 

「お前を倒すまで、俺は死なねえよ。お前と決着着けなきゃ、満足して死ねないからな」

 

 咆哮を上げる。両足で大地を蹴る。炎を手に宿す。一つ一つの動きがクリスタにはスローモーションに見えた。彼の顔は見えない。悪魔は満足そうな笑みを浮かべて彼を迎え撃とうとしている。

 ダメだ、逃げろ。そう叫んだはずの口は只々空気を漏らすだけで音にすらならない。力が入らない。立ち上がる気力すら今のクリスタにはない。

 腕を震えさせながら必死に『好敵手』に手を伸ばす。かけがえのない『宝』を失いたくないと、彼は必死になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待ち受けていたのは_____惨劇だった。

 

 

 目の前で赤い血潮がまるで噴水のように吹き出し、クリスタの顔にかかる。

 めぎゃりと、本来なら聞くことのないような音をたてながらジャッジメントの体が折れる。

 ぶちりと、彼自慢の腕がちぎれる。

 ぐさりと、俊足の足に魔術が刺さる。

 魂の炎は徐々に消え失せ、今、目の前にあるのは消えかけの火。

 

 

「___ふぅ。ま、少しは楽しめたぜ。炎野郎」

「…………」

 

 現実は無常だ。志がいかに高くとも、力の差は変えられない。何の根拠もなしに格上に挑んで無事でいられるはずがない。戦いの最中、奇跡が起こって自分の力があがる、などはただの幻。

 そう、すべてわかっていた。____分かっていても、譲れなかった。

 全身から血が流れる。自身を守っていた白い鎧は完全に粉砕されて使い物にならない。残った片腕はありえない方向へ向いている。腹部には風穴が開いていた。

 ラヴァル・ジャッジメント。彼はもうじきその灯を消すだろう。

 

「ジャッジ、メント……!」

 

 彼が戦っていた間、立てるまでには回復したクリスタがジャッジメントの元へ駆け寄る。どちらも血まみれだが、そんなことは気にせずクリスタはジャッジメントの手を握りしめる。何とか両手が使えるまでには回復しているものの、ジールギガスには到底かなわないだろう。

 

「死ぬな、ジャッジメント!!」

「それはぁ……無理だろうなぁ……」

「君らしくないことを言うな!!!」

 

 ジャッジメントの瞳からは既に光が消え、クリスタの顔すらもう見えていないだろう。クリスタは大声で呼びかけるが帰ってくる声は弱々しいものだった。

 その光景を、静かにジールギガスは見ていた。

 

「なあ……クリスタ」

「なんだ!!?」

「負けるんじゃ……ねぇぞ」

「ジャッジメント!!!」

「お前を倒すのは……俺、なんだからな……」

 

 最期に、ラヴァル・ジャッジメントは小さく笑みを浮かべた。

 

(ったく、そんなに泣くなよ……こっちも少し泣きそうになるじゃねえか)

 

 ジャッジメントがこの世界に生を受けてから、戦いに明け暮れていた。それ以外知らなかった。両親からはただひたすらに戦い方を教えられ、殺し方を叩き込まれ、それを実践してきた。

 ただただ力を誇示すれば長になれる。あまりにも単純な種族に生まれたことに彼は疑問を抱いた。これで本当に部族としてまとまるのかと。これから先、生き残っていくことができるのかと。

 だから、彼は学んだ。他の部族の技とこれから長として部族を導いていけるような知識を学び、戦闘に取り入れ、誰からも認められる長となった。

 彼は今まで、自分の隣に立つ存在___『友』がいなかった。

 自分の壁となってくれる存在が今までいなかった。自分を横から支えてくれる存在がいなかった。自分の背中を預けられる存在がいなかった。ラヴァル・ジャッジメントは、孤独だった。

 生涯、孤独だった長は、たった一人の友を守るために魂を燃やし尽くした。

 

「じゃあな……好敵手よ」

 

 そう言い終えると、ジャッジメントの手がクリスタの手からこぼれ落ちた。力なく落ちたその手をクリスタはもう一度握り、静かに肩を震えさせた。

 獣のように吠えるわけでもなく、怒りの声を漏らすわけでもなく、只々友の死を悲しんでいた。

 

「___別れは済んだか、宝石野郎」

「どうゆう意味だ。ジールギガス」

「そいつはお前の体力を回復させるために挑んだ。そんな恩人に礼も言わせないのは流石にあれだからな。さて、お前はどう楽しませてくれる?」

「____ふざけるな」

 

 自分が楽しみ、そして喰らうことしかこの悪魔にはない。友の死をこの悪魔は結局あざ笑っただけだ。クリスタの中に、再びどす黒い感情が芽生えようとしていた。

 ___この悪魔をもう一度見る。元をたどれば、自分がこの感情を抱いてしまったから邪念は復活してしまった。それをもう一度繰り返してどうする。もしそんなことをしてしまったら、ジャッジメントに笑われてしまうだろう。

 お前は俺ら以上にバカだな、と。

 憎しみを飲み込む。だが、そのまま消化するのではない。その感情を闘志に変える。この悪魔を倒さなくては好敵手に合わせる顔もない。この世界を守ることもできない。

 うつむいた顔を上げ、ジールギガスを直視する。そこに憎しみはなくなっていた。そして、好敵手の言葉をまねして、悪魔に宣言した。

 

「私は、負けるわけにはいかない。友とはそういう約束だからな!!」

「意気込みだけで勝てる訳ねえだろうがぁ!!」

「だが、諦めることはできない!!!!」

 

 現状は最悪であることはクリスタが一番知っている。共に戦ってくれる者もおらず、自身の力のなさも理解している。それでも、逃げることはしない。

 戦って勝ち残る。それが最大の好敵手と約束した。

 ジールギガスから放たれる無数の魔術に臆することなく突っ込むクリスタ。体にはすでにヒビが入っている。自慢の拳も悪魔には通用しない。

 必死に、確実に魔術をよけるクリスタをあざ笑うかのように、ジールギガスの罠が発動する。地面に発生した魔法陣から無数の鎖が発生し、クリスタに巻き付こうとする。想定外だったのはかつてクリスタはその魔術を受けており、反応をすぐに行えたということだ。

 追尾能力が高いことは既に把握している。ならば、それを振り切る速度で駆け抜けるのみ。

 大地を一歩、強く踏み込み急加速を行うと一気にジールギガスの元へと駆けよる。その間、いくつもの光線がクリスタに襲い掛かったが最小限の被害で切り抜ける。___無傷と行かせないのが悪魔の実力だろう。

 

「怪我覚悟で突っ込んできたか!それで、勝てるつもりか!!」

「うおおおおおお!!!!」

 

 ノーガードのジールギガスに拳を叩き込む。だが、悪魔にダメージは全く内容だ。痛みもなさそうにジールギガスの表情は全く変わっていない。セイクリッドから託された星の光を込めても、今までのヴェルズのように黒い煙が体から上がることはない。

 二、三発体に拳を入れさせたあと、ジールギガスは鼻で笑ってクリスタを四本の腕で殴り飛ばした。とっさのガードも意味がない。ひびの入った腕はさらに亀裂が走り再び血が噴出し始め、蹴られた勢いでクリスタは吹き飛ばされる。間髪入れず、ジールギガスの魔術が迫る。全身に走る痛みを必死にこらえ体勢を整えると、横に飛び魔術から避けるクリスタ。

 

「オラオラどうしたぁ!!!」

 

 ジールギガスに返す言葉も出せないクリスタ。回避もおぼつかない。攻撃も全く通用しないこの状況。絶望がすぐ近くにあり、その闇の中に身を落とすこともできた。

 ____でも、その選択だけは絶対にしない。

 

「負けられない、退くわけにはいかない。私は、仲間を、好敵手を、もう失わないためにも!!!私は、戦う!!!」

 

 体はボロボロとなりながらも、心は光り輝く宝石。ジェムナイトの美しさと強さはその『心』にある。何度も折れそうになりながら、何度も心がくすみそうになりながらも、彼らは戦い抜いてきた。

 何度も、何度も、何度も、クリスタの心は傷つき、そしてそのたびに鍛えられ研磨し、そうして輝きを増してきた。____そして輝きは、今、最高潮に達した。

 クリスタに埋め込まれている胸の核石が突然輝き始める。

 

「!?」

 

 驚くクリスタを完全に無視して、ジールギガスはその隙をついて引導を渡すための光線を彼の胸にまっすぐ放った。驚くクリスタはとっさに反応できず回避できなかった。

 それでも彼が今生きているのは、水のように美しく輝く青い盾が突然クリスタの前に現れ、必殺の光線を明後日の方向へとはじき返した。

 

『悪いけど、僕たちのリーダーにこれ以上の手出しはさせないよ?』

 

 ___その声はもう二度と聞けないものだと思っていた。

 

 クリスタの胸の輝きに導かれ、盾を持った青き戦士がこの刹那の間だけ戦場に駆け付ける。かつて、ユウキ達と共にインヴェルズと戦い命を落とした、クリスタの大切な仲間の一人であり、勇敢な戦士だった男はクリスタのほうへと振り向き笑みを浮かべた。

 

『大丈夫だった? クリスタさん』

「アクア……マリナ、なのか……」

『うん。貴方の輝きが、僕たちの魂を導いてくれた。貴方を助けるために、ここに参上したよ』

 

 突然の再会にクリスタの声は震えていた。嬉しいのか、驚いているのか、過去の悲しさを思い出してしまったのか、それすら今の彼には冷静に考えることができなかった。

 いつの間にこんなに泣き虫になったのかと、アクアはクスリと小さく笑う。

 

「てめぇ、どこの誰だか知らねえが邪魔するんじゃねえ」

『邪魔するさ。何度でもね。クリスタさん、駆け付けたのは僕だけじゃない。みんなあなたのことが心配で集まったんですよ』

「それは……」

 

 クリスタが上を向くと、ジェムナイトの棲み処に祀っているはずの核石が___今まで戦場で散っていった戦士たちが、誕生したもののその存在がなくなった戦士たちが、彼を助けるために集結している。全員が笑みを浮かべ、自慢の長を見つめている。

 

「ルビーズ、マディラ、パーズ、アメジス……みんな……」

『泣いている場合じゃないよ、インヴェルズを倒さなきゃ、ね』

「そうだな。どうやら、少々介入が遅かったようだ……」

「てめー……まさか!?」

 

 ありえないはずの第三者の介入にジールギガスも驚愕の声を上げる。

 今のこの世界を駆け巡っている『観測者』は落ち込んだ声を出し、音もなくクリスタの前に降り立った。右手の中には白い光を持ち、金と黒の体を持った星の悪魔。

 

 

 元々は、名前もない下級の絶対捕食者。

 そんな彼が蘇った元長と出会うとは、どんな運命だろうか。

 

「ああ。その通り。私は『元』インヴェルズだ。ジールギガス____いや、グレズ」

「紛い物とはいえど、絶対捕食者がそっちにつくとは___何してやがる」

「今さらだろ。元長よ」

 

 腰のサーベルを一閃し、ジールギガスに威嚇するローチ。今彼がすることはジールギガスを倒すことではない。まだ彼にはやることがある。

 

「ジェムナイト・クリスタ。これを」

「貴方は……?」

「私はローチ。元インヴェルズだ。だが敵ではない。」

「___そうか」

「話が早くて助かる。これはジェムナイト・セラフィのものだ___っ!」

 

 この時間を待つほどジールギガスは寛大ではない。無数の魔術を発生させクリスタとローチに砲撃する。ローチはとっさにクリスタの手にセラフィの光を託し、そのまま姿を消した。

 クリスタへの攻撃はアクアマリナが防御する。だが、長く持つものではないのは十分わかっていた。防御しながら、背中にいるクリスタに伝える。

 

『クリスタさん!僕たちの力を使って!』

「……すまないな。情けないリーダーで」

『面白くない冗談だよ____勝ってくれ、我らがジェムナイト・クリスタ』

 

 集った六つの光がクリスタの核石に入り込む。仲間の魂の宿った核石が彼の全身に力を蘇らせる。体の傷は消え、瞳に再び闘志が宿る。

 そして、蘇った絶対捕食者の長を打ち倒すため、彼はさらなる高みへ到達する。

 

「____ジェムナイト・フュージョン、スタート!!!」

 

 神秘の渦がクリスタを飲み込む。その中で七つの光が混ざり合い、新たなる力を生み出すジェムナイトの『融合』。だが、今回は規模が違う。

 七つの融合戦士の魂がここに一つになるという、今までジェムナイトの歴史の中でも例を見ない大きな融合が、今ここに果たされる。

 神秘の渦から一つの影が飛び出し、ジールギガスと対峙する。クリスタを核として誕生した戦士の体は美しく輝きを放っていた。水晶(クリスタ)よりもさらなる輝きを放つその鉱石の名は、誰もが知っている宝石の王と同じ物。

 その手に持つ王の剣には七つの宝石が埋め込まれている。融合した七つの魂が剣に宿っている証拠。剣を大地に突き刺し、戦士は高らかに宣言する。

 

「我が名は____ダイヤ。ジールギガス、貴様を倒す騎士だ!!!」

「多少はできるようになったか___試してやるよ!!」

 

 四本の手の中に紫色の光弾が生まれ、ジールギガスは絶える間もなくクリスタに投げつける。一発一発が死を呼ぶほどの威力の魔弾だ。___だが、ダイヤはそれを避けようともしない。ただ右手を前に伸ばすだけだ。

 

「アクア、力を借りるぞ!!」

 

 剣に埋め込まれている宝石のうちの一つ。アクアマリンが輝くと、水の渦でできた盾が生み出され、すべての魔弾を絡めとる。そして、ダイヤが手を横に振ると魔弾がジールギガスへと跳ね返された。ジールギガスも禁呪『妖革』を発動し、自身が放った魔弾を防御。結果としてどちらにもダメージが入らなかったという結果が残る。

 突き刺した剣を抜き、大地を蹴って疾走するダイヤ。目標はもちろんジールギガス。ジルコニアの時とは違い、機動力も上昇しておりこの姿こそがクリスタの到達点だと彼自身は実感する。

 ジールギガスも下手な魔術は隙になることを感じ取っており、今までとは違い迎え撃つ態勢をとる。四本すべての腕に禍々しい魔力が集結する。

 ダイヤも二つの宝石__自身のダイヤとセラフィナイトを輝かせ、剣に眩い光をまとわせる。

 光の剣と闇の拳、今ここに激突する。他人のために戦うダイヤか、自身のために食らうジールギガスか。

 このもう一つの大一番が幕を開ける。

 

「うおおおおおおお!!!!」

「んんんんんんんん!!!!」

 

 闇と光が激突し、混ざりあうこともなく周囲に衝撃を広げていく。お互いに咆哮を上げ、一歩も引かない。均衡が崩れることもなく数秒が過ぎ、両者が同時に後ろに飛んだ。

 ダイヤはトパーズを輝かせると剣に雷をまとわせ、そのまま剣を横に振ってジールギガスに雷撃を飛ばす。ジールギガスも『呪砲』を飛ばし、再び衝突が生まれる。

 土煙が上がる中、ダイヤはその中を突き破ってジールギガスに再接近。今度はルビーとマディラシトリンを輝かせ、炎の聖剣をつくり上げる。

 

(ジャッジメント……私に、力を貸してくれ!)

 

 『好敵手』のように炎を自在に操れるわけではないが、威力はそのレベルに匹敵するであろう。彼の無念と共に、悪魔に紅蓮の炎をたたきつける。

 ジールギガスも真正面から炎を受け止める。白刃取りの形でダイヤの剣を止めた。

 すぐにでも焼け焦げた臭いがするはずなのだが、ジールギガスにダメージが入っているようには見えない。そのことを決定づけるように、悪魔はバカにした笑い声を上げた。

 

「ハン!この程度か」

「そう思うのなら___受け止めて見せろ!!」

 

 ダイヤが叫ぶとルビーとマディラシトリンの輝きがさらに増す。それに比例して、炎の量が多くなり、その色は更に透き通るような紅蓮に変わる。それは壊すだけではない、浄化の炎。この変化にはジールギガスも驚きを隠せず、四本の手にやけどを負ってしまった。

 今近づくのは悪手だとジールギガスはダイヤとの間に魔法陣を展開。そのまま水柱を発生させ一時的だがダイヤとの間を遮断させ、一歩後ろに下がる。

 

「___遅い!!」

 

 セラフィが持つ光を自身に使用することで、ダイヤは一時的に光速と化す。遮断された接近ルートは諦め、遠回りにジールギガスに接近。既に剣は振り上げられた後だった。

 ジールギガスの腕が空に飛び、重力に引かれてボトリと落ちた。

 

「ちぃ!!!」

「っ!」

 

 つかみかかるジールギガスをすり抜け、ダイヤは後ろに飛んで体勢を立て直す。剣を構えなおすころには、ジールギガスは切り口から新たな腕を再生させていた。

 ただでは倒せないという事実を改めて実感したダイヤ。そもそも、先ほどから魔術を何度連発しても息すら上がらないことにようやく疑問を感じる。

 

(いくら最上級インヴェルズだったとしても、魔力の減りもなく魔術を連発できるものか? 何か仕掛けがある、のか?)

 

 魔術には疎いはずのダイヤだが、ジールギガスの無限の魔力について気づくことができた。

 思えば思い当たる節はあったのだ。ジールギガスに攻撃が入り黒い煙が立ち上がることはあっても、次に見た時にはそこに傷はなかった。余裕がなかった先ほどまでは、それが攻撃が通用しない、と勘違いしていたのだ。

 黒い煙__それは間違いなくジールギガスにダメージが入っている証拠。なのになぜ傷がないのか。その答えは__

 

(超高速で再生していた___からか? 今の腕のように。だが、そのための魔力は無尽蔵……ではないはずだ)

 

 拳と魔術の嵐の中を、アクアマリナの力を借りつつ回避し防御するダイヤは冷静に考える。この知識もリチュアのヴァニティと融合して生まれたアメジスから受け継がれた物。

 融合___魂を一つにする召喚方法。その融合体には元となった者たちの特徴と力が現れる。今のダイヤにはジェムナイトの地の力だけでなく、光のセイクリッド、水のリチュア、そしてマディラが受け継いだ炎のラヴァルの力がある。力を一つにし、ダイヤは活路を見出す。

 

(ジールギガスは儀式体……ならば、儀水鏡がウィークポイントになっているのではないか!? あれを破壊すれば!)

 

 儀式体となったグレズをこの世にとどめているもの。それは他でもなく儀水鏡だ。破壊されれば当然儀式は終わり、ジールギガスは消滅するであろう。

 もちろん、ジールギガスもそれを分かっている。今までクリスタとジャッジメントの二人を相手している限り、力の差から狙われることはあっても破壊されることはないと確信していた。だが、今相手にしているダイヤはそれを可能にすることができるだろう。

 余裕は失わない。だが、油断もできない。ジールギガスは隙を見せない。

 

「オラオラオラァ!!!」

「くっ……!」

 

 ダイヤモンドの固さを持つダイヤであってもジールギガスの攻撃を数発まともに受ければ即座に砕け散ってしまうだろう。先ほどとは一転して、攻撃する隙すら与えない猛攻の前にダイヤは防御に徹するしかなかった。

 アクアの力で魔術を防ぎ、拳を剣で受け流す。自身の体の硬さも上昇させ、致命的なけがを負うことはなくても反撃に出れない。必死に防御するダイヤを見て、ジールギガスは再び笑みを取り戻す。

 

「結局、さっきと同じだなぁ!!」

「何がだ!!」

「姿形が変わろうが、お前は何も変われていない。お前じゃ、俺には勝てねぇ!」

「___そうだ。私は何も変わっていない。変われてなどいない」

 

 予想外の答えにジールギガスから再び笑みが消えた。その意味は焦りではなく、失望だった。今のジールギガスはただの虐殺を求めているわけではない。

 『食事前に腹を減らすための準備運動』をしているのだ。

 だから、その運動には強い壁がいる。先ほどまでの一方的な虐殺ではなく、ある程度楽しめ、そして食べられる食物がいる。

 ダイヤが変わっていないのであれば、今のジールギガスが求める物はここにはない。そのことに悪魔は落胆したのだ。

 

 

 もちろん、ダイヤの言葉の意味はジールギガスの思っていることではない。

 

「仲間に支えられ、同胞に支えられ、友に支えられ。支えられ続けている。一人では弱いままさ。___けれどな、忘れたのか。その『弱い者』たちが結束し、団結したとき生まれる力で『インヴェルズ』は滅ぼされたんだ」

「___てめぇ」

「あの時から、今でも。そしてこれからも変わらない。私は、他人と共に歩み続ける。そして、戦い続ける!私が信じる___守りたいモノのために!!!」

 

 ダイヤの剣から発する光が一つから二つに増える。青と黄の二つの光が発せられると水の盾に電撃がまとわりつく。ダイヤは水と雷の二体の蛇をジールギガスの魔術の中へ叩き込む。

 二体の蛇は魔術を消すのではなく絡み取りながらジールギガスへと接近する。会話しながらも隙を伺い続けたダイヤのカウンターは、まっすぐにジールギガスの胸にある儀水鏡を狙う。

 とっさに魔法壁を展開するが対応が遅すぎた。ジールギガスの見下しているが故の慢心だった。何とか回避する者の自身の魔術ごと儀水鏡にカウンターが叩き込まれ、ピシリとひびが入る。それに連動して、ジールギガスの体が一部消滅した。

 

「やはり、そこが弱点か!」

「だからどうしたぁ!この程度で喜んでんじゃねぇ!!!」

 

 ダイヤが振り下ろした剣を二本の腕で受け止めると、残りの腕はダイヤの体に叩き込まれる。ダイヤモンドの硬度を持ってもジールギガスが繰り出す至近距離からの打撃には耐え切れない。儀水鏡と同様にダイヤの体にもひびが入ってしまう。

 

「これでてめぇも同じだ。さあ、決着着けようヤァ!!!!!」

「望むところだ!グレズぅ!!!!!!」

 

 お互いに確実な一撃が入ったことによってスイッチが入る。魔術では致命傷を与えられないと確信したジールギガスは魔法陣を消し、魔力をすべて肉体強化に使用する。

 ダイヤも剣に宿るすべての宝玉を輝かせ、今持てるすべての力を使用する。炎、水、地、光の力が剣に宿る。

 激突する『聖』と『魔』。ジールギガスの拳とダイヤの剣がぶつかるたびに大気が震え、衝撃が走る。お互いの体にも負荷がかかり、ひび割れがさらに進行する。

 崩れゆく体と魂。だとしても止まらない。互いに考えることは全く違っていても『生きる』ことだけは共通している。目の前にいる敵を倒さなくては、それを叶えることはできないと。

 ジールギガスに斬撃が叩き込まれ、ダイヤに打撃が撃ち込まれ、何度も何度も激突が起こる。ひび割れ、血が噴き出し、それでもやめない決闘は終盤を迎える。

 

「ぎゃはははっはは!!!!!楽しいなぁ!!そうだろ、宝石野郎!!!」

「ただ__苦しいだけだ!!戦いなど、本当はないほうがいいに決まっている!!」

 

 笑いを上げるジールギガスに弱音を漏らすダイヤの姿は対比。その意志の強さが出ているのか、状況はダイヤが若干押されているように見える。それを見抜いているジールギガスは更に攻め立てる。剣を無理やりどかし、腹部だけでなく顔面にも打撃を叩き込み始める。

 

「そんな弱い言葉を吐くやつに俺は殺されねぇ!!とっとと失せなぁ!!」

 

 ジールギガスの猛攻によりダイヤの意識が消えていく中、彼の耳に響く声があった。

 

 

『おいおい、俺を犬死にさせるつもりか?』

(____そのつもりは、ない)

『なら、勝ちな。戦いがどうとか、今はどうでもいい。守るために戦うお前に、誰も何かを言うことなんぞできねぇ』

(そう、か?)

『ああ、俺たちよりよっぽど立派だ。あんな悪魔の言葉なんぞ真に受けるな。お前は__強いんだからよ』

(力を、貸してくれ。わが友よ)

『ああ。いくぜ、俺の友よ!』

 

 友の言葉で意識を取り戻す。腕の力が再び戻るとダイヤは顔を上げ、剣にありったけの魔力を注ぎ込む。

 ___宝石の剣から発せられたのは、紅蓮の爆炎だった。

 その威力と規模は埋め込まれている宝石だけで発生させられるものではない。生まれつき炎を操れるような、炎の扱いに慣れているエキスパートにしか不可能だろう。

 

「その炎、まさか!!!」

「いくぞ、友よ!!!!」

 

 爆炎をまとい今再びダイヤはジールギガスに挑む。その熱量はジールギガスが無効化できる許容範囲を大きく超えている。体が消滅している証拠である黒い煙が全身から上がり始める。

 逃げ場はないと、周囲に炎の壁も発生している。葬ったはずの敵が蘇ったかのような光景にジーギガスは理解ができないと怒り狂う。

 

「ふざけるな!!!!さっき殺した奴がどうして今邪魔をしやがる!!!!さっさとくたばってやがれぇ!!!」

「お前に分かる訳がない!」

「どこまで____どこまで邪魔しやがる!!!下等生物どもがぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「どこまででも邪魔してやる!いくらでも限界を超えてやる!結束を、この世界の生命を、なめるなぁぁぁぁああああああ!!!!!!!インヴェルズぅぅ!!!!!!」

 

 爆炎をまといし剣が悪魔の肉体を切り裂いていく。邪気をまとった拳が騎士の体を砕いていく。もはや防御をすることが意味をなさなくなった。斬撃、打撃__ひたすらに攻撃を繰り返し、どちらかを打ち倒すまで終わらない。

 挙がる声は雄叫びだけ。

 

「ぬあああああああああああああ!!!!!!!!」

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

 ダイヤはジールギガスの肩に繰り出し体に蹴りを叩き込む。少しだけ距離を開け、すぐさまジールギガスへと突撃する。

 

「これで____終わりだぁあああ!!!」

 

 決着をつける一撃__ダイヤが持てるすべての属性をまとった光り輝く剣が高速でジールギガスの儀水鏡へと投げつけられた。

 

「___そんな単調な攻撃!!!」

 

 破壊力はあるが単純な攻撃。それをジールギガスは受けることはない。四本の腕を前に出し、闇と水の力をまとい剣を受け止める。バチバチと火花を散らしながらも剣はジールギガスを貫くことはできなかった。腕を振り払い剣を大地に跳ね返す。

 

「___そうだろうな。だが、私たちの得意戦術はわかっているだろ?」

 

 その声はジールギガスのすぐ近くで聞こえた。前を確認すると、ダイヤの腕に爆炎と宝石の煌きを右手に宿していた。

 

 

 その一撃は、もう止められない。

 

 

 ついに訪れる最期の時、ジールギガスはダイヤの後ろに炎をまとう竜人の幻影を見た。

 

 

 ____バキリと儀水鏡がついに破壊される。

 

 

 

 

 

 

「く___そがああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 必死に手を伸ばそうとするジールギガス。だが、彼は既に儀式体。儀水鏡を破壊されれば現世にとどまることはできない。そのルールは絶対だ。

 体はすぐさま煙になって消えていき、その場には何も残らなかった。その姿を見ていたは、ボロボロになったダイヤ___クリスタだけだった。

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■!!!!」

『ぬおおおおおおおおおお!!!!!!!』

 

 上空で激突する破滅の邪龍と神聖なる昇降龍___ウロボロスとトレミスM7。二体の力は完全に互角だった。激突しあうたびに、世界が震える。

 最強の光と最凶の闇。お互いにダメージはあるものの、今一つ決定打にかけているのが事実だ。ウロボロスが放つ邪気と冷気もトレミスが放つ光と熱波によって打ち消される。トレミスの浄化もウロボロスには効かない。

 強気光の後ろに深き闇があるのと同様に、この二体の竜が互いを消しあうことは現状不可能だ。

 

(だったら、その力を少しでも増してやれば……可能性は、ゼロじゃないはずだ)

 

 そう考えながら地上から二体の竜に近づく一人の戦士がいた。純白の体は既にボロボロとなり、拳は赤く染まり強く握ることすらできなくなったエクシーズの戦士___ジェムナイト・パールは最後の賭けをしようとしていた。

 プシュケローネとの戦いでもう戦うことができないと悟った彼。思えばずいぶん奇妙な生涯だったとパールは笑う。

 敵であったはずのジェムナイトとリチュアの二体からエクシーズで生まれ、暴走したディシグマをアバンスと共に打ち倒し、気づけばジェムナイトのナンバー2にまで上り詰めていた。

 一年にも満たない人生だった。だが、その中でも『誰かを守る』ために彼は戦い続けた。

 

「ならば、今も同じだろ? 俺はリチュアで、ジェムナイトで、誰かを守るために戦ってきた戦士。___そのために、俺は生まれてきたんだからな!!」

 

 右腕を胸に当てる。体から光が漏れ始め、それに気づいたトレミスがパールの元へと駆けよってくる。

 

『ジェムナイト!? 何故ここにいる!!君たちは地上の者を……』

「いや、俺はもう守れない。戦えないんだよ。それは俺が一番よくわかってる。だから、この星の希望に賭けようと思ってな」

 

 光が強くなるたびにパールの体が粒子となって消えていく。トレミスにはその意味が分かっていた。

 パールは、自身の魂を自分に受け渡すつもりなのだと。

 

『ジェムナイト……君は』

「ああ。頼んだぞ、セイクリッド。俺の魂を受け取ってくれ!!!」

 

 ついにパールの体は完全に粒子となって消えてしまい、その粒子はトレミスの中へと溶け込んでいった。

 伝わってくる最後まで戦えなかった悔しさ、最後まで誰かのことを考えていた優しさ、そして__エクシーズの結束の力。その温かい力と心を感じ取ったトレミスの眼の輝きが強くなる。今一度翼をはためかせ、ウロボロスと対峙する。

 

『そろそろ、決着をつけよう。ヴェルズ・ウロボロス___お前を浄化する!!』

「■■■■■■■■!!!!!」

 

 今一度、二体の竜は激突し世界は震えた。

 

 

 

 

 

【そう_____それでいい】

 

 

 

 

 二度目の激突によって、再び世界が震え____風が吹く。

 

 

 

 

 

【あと____三回】

 

 

 

 

 何も知らない傀儡は激突し、神風を吹かせる。

 

 

 

 

 

【あと______二回】

 

 

 

 

 

 本当に世界に破滅をもたらすのは、邪竜でも、古の悪魔でも、もちろん星の騎士でもないのに。

 激突をして、神の息吹を吹かせる。

 

 

 

 

 

 

 

【さあ_______時が来た】

 

 

 

 

 

 

 

 真なる破滅の引き金は二体の竜が激突したことによって引かれた。

 霧の谷の神風が祭壇へと集う。

 その時、世界の全ての生命が同じ方角を向いた。インヴェルズの時と同じように見えるが、今回動きを止めたのは原住民たちだけではない。星を守るために降臨したセイクリッドも、星を滅ぼすために誕生したヴェルズも、その気配を感じ取った。

 _____この世界の住民でもないユウキですら、その気配を無視することはできなかった。

 祭壇が____割れた。

 

 

 

 

 

 

 

 光と共に中から現れたのは、あまりにも巨大な______女神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【我が名は_______創星神 Sophia】

 

 

 

 

 

 

【今こそ、再星の時】

 




最後に降臨したのは____絶望の女神
創星神___降臨
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