端末IF 〜決闘者は世界を渡るようです〜   作:星野孝輔

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ついに明かされるタイトルの意味。

それを知ったユウキは___


第十一話ー前編 端末IF

____悪い夢を見ているようだ。

 

 

 

【もう、終わりのようですね】

 

 

 

____これが、私の夢見た未来なのだろうか。

 

 

 

【歯向かう者はもういない。立ち上がる者もない】

 

 

 

____見渡す限りの平地。あるはずの地表はもうない。

 

 

 

【この星は今、終わりを迎えるのです】

 

 

 

____転がっているはずの死体たちは、既に消滅させられた。

 

 

 

【ですが、嘆くことはありません】

 

 

 

____その原因である女神は、母親のように優しく私たちに声をかける。

 

 

 

【これから『再星』が始まる。この星は生まれ変わるのです】

 

 

 

____聖母のような笑みを浮かべながら、世界を終わらせる。

 

 

 

【さあ、母へと還りなさい】

 

 

 

____消えていく。私たちの全てが、消えていく。

 

 

 

____それは、ダメだ。

 

____それは、いやだ。

 

____だって、それじゃあ■■■■や■■■■、■■■■も生きていた意味がなくなってしまう。

 

 

____変えるしかない。変えてくれる誰かを呼ぶしかない。

 

____持てるすべてを投げ売って、私の文字通り『全て』を使って、この未来を書き換えよう。

 

「だから、私に協力して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______ナタリア

 

 

 

 

 

 

 時は創星神 Sophia復活の少し前までさかのぼる。

 ガスタの巫女 ウィンダは一人で歩いていた。

 

「……」

 

 近くにはパートナーのガルドも父親のウィンダールも妹のファイもいない。この戦乱の中、ただただ一人である場所へと歩いていた。

 その場所は戦いの火花が届いていない唯一の場所。その理由は___誰も、本能的に近づきたがらないからだ。

 驚くことにヴェルズやセイクリッドすらもここには近づかない。前の大戦ではインヴェルズや機械であるはずのヴァイロンもここには近づかなかった。巫女をしているウィンダも本来であれば近寄りたくない場所だ。例外として、ユウキだけは平気そうな顔をしていたが。

 そんな彼女がなぜそんな場所へと向かっているのか。

 

「……」

 

 ウィンダの眼は虚ろ。その姿は亡霊のようで、普段の彼女を知る者がいればすぐにその異常に気づくであろう。だが、今彼女は一人だ。

 誰にも気づかれることなく、彼女は歩き続けていた。

 

【さあ、こっちに来なさい】

 

 頭に響く声に言われるがまま、他に何も行動する気が起きなくなる。その場所を目指すことだけしか考えられなくなる。ウィンダという自我はすべて消される。

 そうしてたどり着いたその場所は、霧の谷の祭壇。ガスタの巫女が代々、祈りをささげる場所だった。いつものようにウィンダは祭壇の前に跪いて、祈りをささげる。

 

「……この星をつくりし女神……世界に破滅が訪れる刻……救済をもたらす為……降臨する……」

 

「捧げるは……穢れしこの星の魂……神の息吹が吹き荒ぶ刻……女神の降臨の合図とならん……」

 

「さあ……目覚めの刻は来たれり……今一度……この星に……『終焉』という名の再星を……」

 

 女神の思い通りに巫女は祈りを捧げ、光と闇の竜は神風を巻き起こした。すべて、神の思惑通りに事が進む。祭壇は崩壊し、無数の光と共に女神___創星神 Sophiaは復活した。

 

【よくやってくれました。星の機械竜と闇の邪竜。まずは褒めて遣わします】

 

『___なんなんだ、お前は』

「■■■■……」

 

 決戦の最中、突然現れた巨大な何かを目の前にしてトレミスとウロボロスは声を漏らす。事態が全く呑み込めない。こんなことは知らないと言わんがばかりに、困惑の色が見て取れた。それを無視して女神は言葉を続ける。

 

【ですが、役目はもう終わりました。自害しなさい】

 

『何をいい加減なことを!』

「■■■■■■■■……■■■■■■■■!!!!」

 

【もう一度だけ言います。自害しなさい。これは、慈悲です】

 

『突然現れたお前の言うことなど、聞けるわけがないだろう』

 

 一方的な会話を繰り返すSophiaにトレミスは戦闘態勢を取る。ウロボロスもそれは同じなようで、今まで戦っていたトレミスを無視するかのようにSophiaに光線を浴びせた。

 回避も防御もする様子はなく、ウロボロスの一撃は確かにSophiaに届いた。当たったところからは黒煙が上がり、それが晴れるころには消滅しているはずである。

 

【私は言いましたからね。母の言うことの聞けない悪い子は___消えてもらいましょう】

 

 消えていたのは、別の物だった。

 ウロボロスの一撃をSophiaの持つ黒い光球から一筋の光が二体の竜にあたったかと思えば、次の瞬間にはトレミスとウロボロスの体が消滅していた。

 破壊ではなく、消滅だった。

 先ほどまで確かにあった体はこの世界のどこにもない。体の大部分を奪われた二体の最強竜は____あまりにもあっけなく____戦場から脱落した。

 

【確かに星の騎士団や邪念自体は我が子ではないものの、慈悲を向けない理由にはなりません。そこでおやすみなさい】

 

 寝かしつけた母親のような口調でSophiaは二体の竜を再起不能に追い込む。そして、改めて世界に、すべての生命に宣言するのだった。

 

【我が名は創星神 Sophia。この星より生まれしすべての生命よ。母は怒っています】

 

 あまりにも突然の神の降臨は戦場に静寂をもたらした。先ほどまで多くの場所で命のやり取りが行われ、幾多の命が消えていった戦場は消滅した。全員が女神の方を向き、息をのんで見上げているだけだった。

 

【幾度となく行われる醜い争い。あまりにも理解ができない小さな理由で貴方たちは争い、殺し合い、そして再び争いを始める。母は愚者を生み出したわけではないというのに】

 

 母親のような口調であるというのになぜだろうか。この言葉を聞いているすべての者は、その言葉が一方通行な確定事項を話しているだけの無慈悲な宣言に聞こえた。

 

【ですが、ついに母は降臨しました。我が子たちよ。今から『再星』を行います。すべてを一度消滅させ、もう一度創ります。ですから___】

 

 

 

 

【ですから、新しい母の世界のために、おやすみなさい】

 

 

 変化は一瞬かつ劇的に起こり始める。Sophiaの持つ黒い光球から光が無数の方角へ向けて放たれると、その場所が先ほどのトリミスとウロボロスのように消滅していくのだ。

 その場所にあった大地は消され、真っ白な空白が世界中に生まれ始めた。

 Sophiaが言い放った『再星』が始まったと誰もが実感し、恐怖の声を上げた。

 

「「■……■■■■■■■■!!!!!」」

 

 本来世界を破滅させるはずだったヴェルズの邪竜たち、バハムートとオピオンは今まで戦っていた相手を無視してまでSophiaに襲い掛かる。

 邪念としての本能だろうか。ウロボロスが一撃で消されたことに本能的に焦りと恐怖を覚え、今すぐに消さなくてはいけないと感じ取ったのだ。

 その行為が、自分たちを破滅に追い込むとどこかで分かり切っていても。

 

【おろかな、氷結界。いえ、邪念でしょうか】

 

 はぁ、とため息をつきながらウロボロスと同じようにSophiaは残りの邪竜もウロボロスと同じように地に落とした。苦しむ声を上げることができず、世界を滅ぼすほどの力を秘めた邪竜たちは全滅した。

 時同じくして、異変を感じとったセイクリッドたちもSophiaの元にたどり着く。

 

「創星神 Sophia……どうしてこんなことを!!」

 

 ポルクスが声を震わせながら叫ぶ。ヴェルズだけを消滅させるのであれば、まだ話し合いの余地があった。だが、女神はこの星の希望となる存在であるトレミスも地に落とした。

 意味が分からなかった。

 必死になって生きようとしている者たちの総意を無視するかのようなリセット。この星の過去をすべて否定するような行為にセイクリッドたちは理解ができない。

 

【すべてはこの星のためなのですよ? セイクリッド】

 

「な____」

 

 何を可笑しなことを言っているんだ、と言いたげな声だった。

 

【貴方たちもこの星のために行動していたはず。ならば、母と同じですよね】

 

「ふざけるな……!!私たちは、この星に住まう全ての者たちを守るために戦ってきた!その者たちを消すなど……本当に星のことを思っているのか!!」

「お前のやっていることは質の悪いおままごとだ!」

 

【おままごと? 違います。母こそがこの星を創りし神。子は親に従うもの。当り前の摂理ではありませんか】

 

「……話が通じる様子はなさそうだな。あんたがこの世界を滅ぼそうとするのなら___」

「私たちは貴方からこの世界を守って見せる!」

 

 セイクリッドたちはSophiaを完全に敵として認識した。一斉に別方向へと飛散した後、各々がSophiaへと攻撃を仕掛け始める。

 あまりにも巨大な体の周辺を周る星の騎士団たちをSophiaは、邪魔な虫をはたくかのように振り払う。

 

【邪魔、ですね】

 

 イラつきを隠すことはない。女神は眉間にしわを寄せて(セイクリッド)を排除する。それは戦いではなかった。Sophiaにとっては作業でもない、誰もが行う仕草を取っているだけ。

 命がけで立ち向かうセイクリッド達ですらあまりにも無力だった。ぷちりと一人、また一人が命を散らしていく。そこには誇りも何も存在しない。ただの『無駄死』が待っているだけ。

 余興にすらならないただの茶番が繰り広げられていたのだった。

 

 

 絶望が世界を支配するのも時間の問題だった。その証拠に、先ほどまで活気ついていたはずの連合軍本拠地は静まり返っていた。

 ラヴァル、ガスタ、ジェムナイト。今まで生き残ってきた者たちは戦場から帰還し、ただSophiaの姿を見上げていた。

 誰も言葉を発さない。泣くことも悲鳴も聞こえない。全員が力なく絶望していた。何かに祈ることも、何かにすがることも馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

 

「____みんな!!しっかりして!!」

 

 沈黙を破るためにファイは声を上げた。光が見えないこの中で『灯』にならなくてはいけないと彼女は決心した。かつて姉に言われた言葉が彼女に勇気を抱かせる。

 それでも、誰も彼女の声に反応しない。反応できない。

 誰かがぽつりとつぶやいた。

 

「無理だ……我々はここで終わるんだ……」

「そんなこと、わからないでしょ!?」

「いや、わかる。創星神は降臨された。この世界のリセットが始まろうとしている。我々では、女神には___母には勝てないのだ」

 

「____ごめんね、ファイ。本当はあなたみたいに立ち上がるべきなんでしょう。でも、もう、ダメなのよ」

 

「リーズさん……」

 

 強気で勝気だったリーズですら顔に絶望の色が見える。近くにいるカムイも、治療が完了しエクシーズが解けてしまったカームも瞳に光がなかった。今まで誰かが必ず立ち上がり、そして立ち向かってきたはずなのに。

 今この場に、行動を起こそうとする者はいなかった。その事実がファイの中からも灯を奪い去ってしまう。

 

「もう……本当に、ダメなの? 私たちは……みんな、死んじゃうの?」

「……」

 

 嫌だとも叫べない。もうそれを覆すこともできないと理解してしまったから。涙は流れる。だが悲鳴は上がらない。この時ファイは理解したのだ。

 

 本当の絶望とは、『何もできない』ことなのだと。

 

 ふと、姉の顔が思い浮かんだ。優しくていつも自分のことを心配してくれて、頭をなでてくれていたもういない二人の姉の顔が浮かんでしまった。二人がいればきっとぎゅっと抱きしめてくれたのだろう。この体の震えを止めてくれたのだろう。

 

_____一筋の青い光が女神に向かって天空を走った。

 

 その光がファイに兄のことを思い出させ、声を上げる力となった。

 

「_____ユウキお兄ちゃん!!!!」

 

 銀河眼の背中に乗る青年はボロボロだった。リチュアから貸し出されていた黒のローブの一部は焼け焦げて穴が開き、鋭い刃物で切り裂かれている。その内側に着ている青いシャツや白いズボンもローブと同じような傷が見える。

 彼のくせ毛には一部灰が被っており、頬には切り傷が無数に見える。流れ出た血はすでに固まりかさぶたを作りあげている。そんな『普通』とはかけ離れている状況でありながらも、彼の眼から光は消えていなかった。

 

「……あれが、Sophia、か」

『怖気づいてるのか?』

「____めちゃくちゃ怖い。正直言って勇気なんか出ない。絶望をひしひし感じるよ」

『でも、戦えるんだろ?』

 

 銀河眼の背中に乗っているユウキの膝は震えていた。それでも、しっかりと前を向いていた。その絶望的な状況をはっきりと見ていた。

 それが今一番求められていることだと理解はしていなくても。その成長に銀河眼は笑みがこぼれた。

 

「なんでだろうね……バハムートの時はもうだめかと思ってたのにさ。Sophiaを見たらさ、一歩だけ踏み出せたんだ」

『多分、あいつがお前の母じゃないからだろうな』

「どうゆうこと?」

『あいつからすべての生命は生まれたのは知ってんだろ? おそらくだが、あいつはこの世界の生命に対して特攻能力を持ってんだろう。ヴェルズと言えど、憑りついているのはこの世界から生まれた生命の亡骸だ。だから『母』っていう存在にビビっちまってる』

「でも、俺はそうじゃない。この世界の住人じゃないからそれがないのか」

『ヴェルズは『生命』そのものを脅かす存在だから、お前もビビる……というより、お前が未熟だからだな』

 

 争いもない世界からきてまだ一年も経っていないのに、ヴェルズの前で怖気づくな、という方が無理な話だろ。ユウキはそう悪態をつきながらも、Sophiaから目線を離さない。

 Sophiaの宣言は聞いていた。その目的も思い出した。

 

 _____ふざけるな、と思った。

 

 ユウキがこの世界に来てまだ一年も経っていない。戦いもここでの生活も完全に慣れたとは言えない。知らないことも多くある。行ったことのない場所もある。まだ出会えていないモンスターもいる。まだこの世界でやりたいことはあった。

 

 そして何より、今日まで必死になって生きてきた者たちへの侮辱が、戦いのない世界から来たユウキにとっては許せない怒りとなっていた。

 

 端末世界の結末は思い出している。このあと、神殺しが行われるはずだ。だが、その間に何人もの人の犠牲が出るのか予想がつかない。それを抑えるのが今、彼にできること。

 自分は主役ではない。この世界のことはこの世界の住人が動かす。今までだってそうだった。

 ユウキは何一つとして、問題を解決していない。ただ、手助けをしていただけ。

 

「さぁて、行きますか!」

『気合入れて行けよ、召喚者!!』

 

 銀河眼は飛行の速度を緩めずに口にエネルギーを貯め、女神に向かって放つ。それは母に反抗する一撃であるとともに、この星をかけた最後の戦いが始まる合図だった。

 銀河の光がSophiaにぶつかり体の一部分から煙が上がる。明確なダメージはなさそうだが、女神の意識をこちらに向けることはできたようだ。

 

【やはり来ましたか。異世界の青年】

 

「そりゃ誰でも来るでしょ。こんな世界が終わりかけてるのに」

 

【我が子たちは母の行うことに異論を唱えていませんけど】

 

「その権利すら与えていない奴が何を言っているんだよ。お前が母親を名乗るんじゃない。クソ女神が」

 

 殺意を込めてSophiaをにらむユウキに反比例するようにSophiaは何一つ動じることなく会話を続ける。そのことにユウキは疑問を覚える。敵意どころか対峙しようとする意思すら彼女からは感じられなかった。

 今まで戦ってきたリチュア、インヴェルズ、ヴァイロン、ヴェルズから向けられてきた独特の雰囲気をなぜか最大の敵であるはずの女神からは感じられない。

 

【高屋ユウキ。疑問に思わなかったのですか? なぜ、貴方がこの世界に呼ばれたのか】

 

 その言葉にユウキの動きが止まる。その答えは誰にもわからなかったものだ。ずっと求め続けていたものだ。その反応を見てSophiaは笑みをこぼす。

 

【やはり知らなかったのですね。かわいそうな異世界の子】

 

『おい、耳を貸すな!お前のやることは___』

 

【少し黙りなさい。銀河の竜。母は貴方の召喚者に話しています。それで、知りたくないですか? この世界の真実を】

 

 ユウキ以外は誰にも聞こえないはずの銀河眼の声にSophiaは反応し、無理やり黙らせる。ユウキは動揺し、どう返事をしたらいいのかわからなくなっていた。

 Sophiaは彼の返事を待つ前に、この世界の真実を話し始めた。それは今までのおかしな点___本来の歴史とは異なった点が発生した理由。

 

 

【高屋ユウキ。貴方が呼ばれたのは____未来を変えるためですよ】

 

「……どういうことだ」

 

 

 

 

 

 

 

【この世界は_____一度『再星』を迎えているのです】

 

 

「!!? どういうことだ!!? この世界は、端末世界はまだここにあるじゃないか!」

 

【正確に言えばそれは違います。この世界は、二度目なのです】

 

 二度目

 その意味がユウキには分からなった。自分の知っている端末世界にそのことを表す出来事はない。確かに、自分が何とかしようとして皆が行動した結果で本来の歴史とは異なったものになったことはある。ラヴァルの全滅や、ノエリアの最期___

 

「……ノエリア?」

 

 すべてを思い出した今ならわかる。リチュア・ノエリア。彼女の歴史が圧倒的におかしいことに。彼女は確かにヴェルズに浸食され、リチュアを非道な部族に変えた張本人だ。だが、その最期は、アバンスとエミリアを守るために身を挺してジールギガスを討ち倒した。

 だが、ジールギガスはクリスタと対峙しており、なによりノエリアことプシュケローネはエリアルと戦っていた。

 そんな邪悪な存在が、わざわざ自分をこの世界に呼び出す意味が分からない。銀河眼が言った通りなら、この世界にユウキを呼び出したのはノエリアとナタリアのはずだ。

 

【そう、ノエリア。彼女とその同志であったリチュア・ナタリア。その二人が貴方をこの世界に呼んだ。ただし、その時のノエリアは既にヴェルズには憑りつかれていなかった。母が既に降臨した後の世界でしたからね】

 

「Sophiaが降臨しているのに……ノエリアが生きている?」

 

【そう。その時点で本来の歴史とは違うのですよ。貴方の知る端末世界とは違う世界がここ。いうなれば、『端末IF』といったところでしょうか】

 

 IF___もしもの世界。そうであるなら可能性はあるだろう。だが、それでもユウキが呼ばれる理由がわからない。そもそも二度目の意味とはなんなのか。

 すべての真実を話すSophiaはどこか楽しそうだった。その感情が純粋に楽しみからきている元は到底思えなかった。

 

【その世界は母が一度再星を行いました。しかし、あの儀式師 ノエリアはそれを認めなかった。なんとかしようと思い立ったのでしょうね。この世界の力では母は倒せない。ならば、異世界からの知識と力を操ることができる人物なら、もしかしたら、と】

 

「だから……俺が呼ばれたのか。二回目___過去に介入して未来を変えるために」

 

【その通り。貴方はただ偶然選ばれてしまっただけ。被害者なのですよ。母はその事をお詫びしたいのです】

 

 想定外の言葉を聞いてユウキは驚きを隠せない。詫びる__とこの女神は言ったのだ。これから戦おうと思っていたユウキに対して、全知全能であるはずの創星神が謝罪するなどと誰が想像できたのだろうか。

 Sophiaは本気で悲しんでいるようで、未だに敵意を見せることもない。騙そうとしているのであったとしても、そうするメリットがない。いくらユウキが異世界から来たとはいえど、その力なら一瞬で消すことは可能なはずだ。

 

「詫びる、だって?」

 

【はい。母と約束をしてほしいのですよ。これから母はこの世界を再星、リセットします。しかし、そこに異世界人である貴方が巻き込まれる必要は全くありません。ですから、貴方がこの世界にもう干渉しないと約束するのであれば、元々暮らしていた世界に戻してあげましょう】

 

「それは……」

 

【貴方も知っているでしょう? 母の力、それがどれほどのものなのか】

 

 創星神の力。それは両手に所持している黒と白の球体。『創造』と『破壊』の力を宿したオーブにある。あれがある限り、どんな生物だろうと勝てない。誰も太刀打ちできない。だからユウキは時間稼ぎしかできないのだ。

 

 もし、ここでうなずけば、全知全能の女神はユウキを元の世界に戻してくれるだろう。セイクリッドが作り上げたヴァイロンですらそのことが可能だったのだ。星を創りし者であれば確実に行えるだろうと、ユウキはどこか確信していた。

 被害者、と女神は言った。その通りなのだろう。もし自分以外、他の遊戯王プレイヤーでもきっと同じような結果を齎しただろう。もっと言えば、自分よりも優れた人物であればもっと多くの人を救えたかもしれない。

 きっと、高屋 ユウキ という存在じゃなくてもよかったのだ。誰でもよかったのだ。

 もういいのではないか。

 このまま戦えば、たぶん、いやほぼ確実に、自分は死ぬ。

 バハムートですら倒せなかった自分と銀河眼で、あの竜を一瞬で地に落とした女神に勝てる理由がない。気合でどうにかできる世界でも相手でもない。

 このまま頷けば、またあの世界に戻れるのだ。必死になって戻ろうとしていた、あの平穏な世界に。

 それにこの世界が終ろうと、元の世界ではただの物語でしかない。フィクションの世界だ。それもIF、もしもの世界となれば、誰がどうなってもいいはずだ。

 

【さあ、頷きなさい。そうすれば貴方は____】

 

 

 

 

 

 

 

 

「頷くとでも思ってるのか? Sophia」

 

 ユウキの答えは変わらなかった。再び敵意を込めてSophiaをにらむ。

 

「被害者? まあそうなんだろうな。勝手に呼び出されたあの時は、そりゃ腹が立ったさ。お前の言う通りならきっと俺でなくてもよかった。____でもな、ここに住む人たちは決して『悪』じゃない。そんな人たちを俺は短い期間だけどずっと見てきた」

 

「それをお前の『やり直したい』っていう我儘だけで滅ぼされてたまるか。今まで生きてきた人たちに対する侮辱を見過ごせるか。そして何より____エリアルを、消させてたまるかってんだ!!!このクソ女神!!!」

 

 その魂の叫びが響き渡り、女神も黙り込んでしまった。その言葉はあまりにも予想外だったのだろう。今度はSophiaが驚く番だった。

 

『マジかよwwwwwwwお前そんな理由で戦うのwwwwwwwwwwwwwww』

「笑うなぁ!!それに、未来を変えるために呼ばれたくせにそれを目の前にして逃げるわけにはいかないだろ!それが今の俺にできる、最大限のことだからな!!」

 

 思いっきり草原を出現させる銀河眼にイラつきながらも、ユウキは闘志を燃やす。

 今さら逃げるなんてできない___のではなく、しない。理由は単純。死んでほしくないからだ。生きていてほしいからだ。この世界が、ユウキは好きなったからだ。

 ヒーローでも英雄でもない。それでも足掻いて、もがいて、未来を変えたい。

 ただの人である高屋 ユウキはそう思った。

 

【そうですか……自分から生み出した命以外を消滅させるのは、とても心苦しいのですがね】

 

「セイクリッドを潰しておいて、よくそんなセリフが言えるな。ドロー!!」

 

 もう戦わない理由は存在しない。ユウキは剣となるカードを引き、Sophiaは破壊の力を銀河眼に振り落とす。黒い光線が雨のように降り注ぐ中を銀河眼は素早く回避し、Sophiaの周囲を飛び回る。銀河眼が動いた軌跡は青白い光となって地上から見ている者たちへ希望を与え始めた。

 ユウキの手札は回復し4枚。次にドローできるのはまだ先。墓地、手札、フィールドのカードを活かしてSophiaに攻撃を仕掛け始める。

 

「あれやるか!クリフォトンを墓地に送って銀河戦士を特殊召喚!銀河の魔導師を手札に加えて召喚!」

 

 見慣れたモンスターであるソルジャーとウィザードが姿を現す。ユウキの覚悟を知っているかのように、少しだけ彼の顔を見た2体の顔は笑っているようだった。銀河眼は回避を、ユウキは指示を続ける。

 

「ウィザードの効果で銀河遠征を手札に!発動して、フォトン・スレイヤーを特殊召喚!そして、ソルジャーとオーバーレイ!!」

 

 レベル5以上のフォトン・ギャラクシーを特殊召喚できる銀河遠征の効果で呼び出された大剣を持つ戦士、フォトン・スレイヤーはそのままソルジャーと共に宇宙の渦に吸い込まれ、新たな銀河の誕生を示すような爆発を起こす。

 

「エクシーズ召喚!現れよ、ランク5!シャーク・フォートレス!」

 

 現れたのは猛々しき鮫たちの巣。巨大な鮫を形どった飛行要塞。ユウキのエクストラデッキに残された数少ないエクシーズモンスターだ。攻撃表示ではなく守備表示で特殊召喚された。

 

「そして効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、銀河眼はこのターン、2回攻撃ができる!」

 

【無力ですね】

 

「そうかな? 銀河眼!Sophiaを攻撃!破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

 ユウキが狙うはSophiaの眼。銀河眼は指示を受け取り、周囲の光を口に集結させ一筋の光線として女神に放つ。銀河眼の攻撃はそのまままっすぐに女神の眼へと走っていく。

 だが、それは無情にもあっさり打ち消される。Sophiaが創造のオーブを光らせると白い障壁が生まれ攻撃を消滅させたのだ。そのまま創造の力を攻撃に変える。ユウキがかつて見たことのある武具___ヴァイロンの創り出した黄金の装備が無数に展開され、天使たちの裁きの光が銀河眼へと振り落とされた。

 

 だが、光は銀河眼から突然方向を変えると、シャーク・フォートレスの元へと向かっていった。

 これはシャーク・フォートレスのもう一つの効果。このモンスターがいる場合、相手は他のモンスターを攻撃対象にできないというものだった。破壊されることは理解していたからこそ、ユウキは守備表示で特殊召喚したのだ。

 

「ありがとう、フォートレス。銀河眼、少し距離を!」

『了解!』

 

 爆発して破壊されるフォートレスに礼を言いながら銀河眼へと指示を出す。銀河眼のスピードなら十分に脱出可能な距離まで離れられる。風を切り、Sophiaの上半身が確認できるところまで移動すると、彼の元によってくる影が一つあった。

 

「高屋 ユウキ君だね!?」

「セイクリッド・ハワーさん!ご無事でしたか!」

 

 トレミスに合体せず、残って戦っていたセイクリッドの一体であるハワーだった。蛇使い座を司る彼は他のセイクリッドとは少し役割が違う存在だった。彼がまだ生存していることに安堵を漏らす。彼の存在なくして、神殺しを行うことはできないからだ。

 

「なんとかね!君も無事そうで何より!」

「ハワーさん、お願いしたいことがあるのですが頼めますか」

「うん。なんかわかるよ? 僕なら、蛇使い座を司る僕だからできることなんだろうね___ここを、任せてもいいかい?」

「はい。早く戻ってきてくださいね」

 

 了解、と言ってハワーは戦場から離脱する。彼はこれから破壊の力を奪い取る役目がある。下手にけがをさせたり、死なせることはできない。前を見ると、シャーク・フォートレスは既に跡形もなく消滅しており、こちらに裁きの光と消滅の黒い光線が同時に襲い掛かってきた。

 舌打ちをする暇もない。すぐさま回避行動に移ると、デッキが光りドローができるようになった。手札はない。この1枚で次の一手を考えなければ、持ちこたえることは難しいだろう。汗が流れ、震えた手でカードを引く。

 

「ドロー!……銀河眼、回避優先!」

『だろうな!!しっかり捕まってろ!』

 

 引いたカードは罠カード。すぐさま使えるわけではないので体とカードを伏せると、銀河眼は急加速する。一気に急降下を開始し、風を切り裂いていく。その冷たさと風圧の強さにユウキは目も開けられないが、しがみついている銀河眼の感触が彼に安心感を与えていた。

 銀河眼は後ろを振り向かない。自身が持つ感覚だけで神の裁きを避けていく。背中にしがみついている召喚者を守るために、すべての神経を回避に使う。重力に従い、真下へ急加速していくと数秒もすると地面が見えてくる。地面に衝突する直前に移動方向を一気に真横に変えて、地面を滑空する。後ろから破壊の力は消えていない。いくつかは地面に衝突して大地とともに消滅したようだが、まだ完全回避はできていない。翼をはためかせて、さらに加速する。

 

『ユウキ!もう少しつかまってろよ!』

 

 返事はない。握られている手の力が強くなったのを承諾と受け取って、今度は急上昇を行い暗雲で覆われた空を目指す。太陽の光も遮られ、今の正確な時間も分からない。この世界を照らしているのは、創星神の光だけだ。

 それが、希望を奪う絶望の光であるのなら、銀河眼はそれを覆さなくてはいけない。そのために、このデッキは、モンスターたちは意思を持たされたのだ。

 

(ったく……別世界のノエリアとナタリアの野郎。こんな場所にユウキを放り込みやがって。もう少し配慮をしてからにしろや)

 

 生みの親である二人に悪態をつきながらも、銀河眼は端末世界の空を飛ぶ。今の速度で飛べる最高度まで飛び上がると、再びSophiaに接近し始める。次の目標も女神の眼だ。

 

『ユウキ!』

「ドロー!!……補給いっとっくか!魔法カード、貪欲な壺発動!」

『困ったな』

「困ってるよ」

 

 貪欲な壺。現状、1枚でデッキから二枚ドローできる数少ない壺魔法だ。墓地にあるフェルグラント、銀河騎士、フォトン・スレイヤー、銀河の魔導師、ガーディアン・オブ・オーダーの五体をデッキに戻して、2枚カードをドローする。

 

「_____ここでこいつを引くとは。効くかどうかはわからないけど、一応対応できるかな!銀河眼、引き続き攻撃!」

『おうさ!』

 

 目の前からくる攻撃を回避するのはそこまで難しくない。問題なのは突然来る後ろからの奇襲。考えではなく感覚だけで回避する。考えて避けていては追い付かない。感じ取った殺気から回避ルートを飛翔するのみ。

 強烈な風にあてられながらもユウキは引いた二枚のカードから戦略を考える。1枚は魔法カード『■■■■■』___今はこのカードは使えない。本命はもう1枚のほうだ。

 

(オネスト___これを使えば確実に戦闘に勝つことはできるはずだ。もっとも、カード効果がそのまま反映される世界じゃない。だから、もう1手仕込む!)

 

 チャンスはSophiaからの攻撃を受けた時。Sophiaが一度でも倒れれば確実に時間は作れるはずだ。現に、先ほどハワーは新たなる力を生み出しに行った。ここに来る前に、一緒についていくと連呼していたラズリーことセラフィも何とか説得し、もう一つの神殺しの力を生み出すように向かわせた。

 すべては、順調。神殺しが行われるのも時間の問題。

 あとは、自分が考えて組んだデッキを信じるのみ___!

 

【しつこいですね。はやり母の力が通用しないのは少々面倒です】

 

 はじめは何も感じなかったSophiaもここまで周囲を飛び回られ反逆されたことに、少々腹が立ち始める。異世界の生命であるユウキとその世界の知識から生み出された銀河眼たちには創星神の力である、生命に対する特攻が効かない。

 

【母を手こずらせたお仕置きをしなくてはいけませんね】

 

『!なんか来るぞ!』

「銀河眼!備えて!」

『お前もしっかり捕まってろ!転落死とかシャレにならねえぞ!』

 

 Sophiaの創造のオーブから今度は青白い糸状の光が銀河眼へと襲い掛かる。この攻撃はおそらくディシグマと同じような捕縛攻撃だろう。実質的な攻撃力は0だ。

 小さく舌打ちをしてユウキは銀河眼にしがみつく。先ほどのように高速で移動する銀河眼だったがSophiaは本気だったのだろう。いくら回避しようと次の光の糸が目の前に現れる。

 

『このままじゃやべぇか!ユウキ!無茶やるぞ!』

「マジデ? なんて、言ってられないよなぁ……」

 

 銀河眼の言う『無茶』はすぐにわかった。下手をすれば落下死なのだが、このままでは捕まってしまう。それでは意味がない。時間を稼げないのは非常にまずいのだ。

 ごくりと唾をのみ、ユウキは自殺行為ともいえるであろう宣言を行う。

 

「銀河眼の光子竜の効果!このモンスターを戦闘を行っているモンスターと共に除外する!」

 

 宣言通り銀河眼は次元の狭間に姿を消した。だが、ユウキの予想通りSophiaの姿は健在だ。モンスター効果が正しく発動しないのは既に体験済み。落下するのも体験済み()

 ふっと視界が一気に乱れると、目の前には端末世界が見えた。ただし、真下の地面のみだが。風を切り、冷たい空気が肌に直撃し、さらに変に口を開けないこの状況。いわゆる紐なしバンジー状態。ぐんぐん重力に引かれてユウキの体は加速していく。

 まさか銀河眼を消すとは思っていなかったのだろう。Sophiaが操る攻撃がユウキに直撃することはこの時点ではなかった。

 

(死ぬ死ぬ死ぬ!!!!銀河眼早くもどってぇええええええええ!!!!!)

 

 泣きながら落下を続けるユウキ。彼に直感はないが、間違いなく振り向けばSophiaの攻撃が迫ってきている。先ほどの銀河眼の動きについてこられる攻撃だ。こんな単純な落下運動についてこられない訳がない。

 そのユウキの懇願にデッキが答えたのか、デッキが光る。すぐさまドローするとそこには見慣れたモンスターが描かれていた。

 

「フォトン・スラッシャーを特殊召喚!守備で!」

 

 守備表示で呼び出されたにも関わらず、フォトン・スラッシャーはユウキに迫る光の糸を銀河の光が宿る大剣で切り裂いた。自我があるスラッシャーは召喚者を守ることができ、笑ったような顔をした。だが、切り裂いたはずの光の糸はすぐにつながり、そのままスラッシャーの体を突き刺して墓地へと送ってしまう。

 スラッシャーの特殊召喚から消滅まで刹那な間ではあった。だが、それは無意味ではない。ユウキの下に光が集まり、竜の形となって彼を受け止めた。

 

「遅い!!」

『死んでねえだけましだろ!捕まれ!』

 

 再び出現した銀河眼の背中に落ちた時の痛みは一旦こらえる。すぐさま先ほどのようにしがみついてから銀河眼は急加速。スラッシャーが稼いだ刹那で銀河眼は一気に急降下する。

 光の糸が接触する寸前に銀河眼は加速した。この現実にSophiaは苛立ちを隠せない。

 

【たかが召喚獣ごときが……】

 

「それは誉め言葉だな」

『ああ!さいっっっこうのなぁ!!!』

 

 その挑発がついに女神の逆鱗に触れた。今までは虫を払う程度の行為だったが、もはや慈悲はない。敵対者の排除に乗り出す。

 突如として破壊のオーブが輝きを増す。三次元すべてを包囲する黒の壁がユウキと銀河眼を点として集まり始める。速さはもう関係ない。回避不能のファイアウォールは完成した。

 

【宣言します。消えなさい】

 

 女神の宣言で黒の壁が急加速する。中心にいる除外対象(ユウキ)は冷や汗をかきながら、宣言する。

 

「頼む、反応してくれ!リバースカードオープン!!」

 

 ユウキの宣言は___通った。伏せられていた赤紫のカード__銀河眼が描かれたその罠カードから発する光は黒い線と拮抗するようにユウキ達を守った。

 

「ぃよし!!罠カード発動!『反射光子流(フォトン・ライジング・ストリーム) 』!このカードは俺のドラゴン族・光属性モンスターが攻撃対象にされたとき、攻撃してきたモンスターの攻撃力分アップする!」

 

 このカードを発動できた、ということがユウキの狙いだった。彼の説明通り、このカードは攻撃対象になったときにしか発動できない。つまり、この攻撃によって銀河眼とSophiaの戦闘が行われているということなのだ。

 身体が輝きだした銀河眼が咆哮を上げると、立方形だった破壊の壁は黒い粒子になって銀河眼の体内へと吸収される。破壊の力を銀河眼がカードの力で光へと変えて、Sophiaにむけて一気に解き放つ。

 

「もう一押し!このダメージ開始時に手札のオネストを墓地に送って発動!」

 

 油断はしない。ユウキは追撃をかけるために手札を墓地に送る。その直後、銀河眼の体がさらに発光し始め口からの光線がさらに強くなった。

 オネスト。昔からある光属性のサポートカードでその力は反射光子流と同じ。さらに銀河眼の力が加えられ、光線の太さはSophiaの顔を吹き飛ばせるだけのサイズになっていた。黒と白が混ざり合った文字通りの『破壊光線』を女神にたたきつける。

 

「少しはこの世界の怒りを知れ!オネスティ・フォトン……ストリーーーーーーム!!!」

 

 創星神の力である『破壊』なら多少は効果があるとユウキは睨んだ。そしてそれはその通り。読み通りだったのだ。

 

 

 

 

【それは失策でしたね。高屋ユウキ】

 

 効かない攻撃は無視すればいい。当り前だ。逆に効く攻撃には? 簡単だ。防御もしくは反撃すればいい。

 ユウキが犯した最大のミス。それは、『今使っている力がSophiaの全力である』とどこか油断していたことだった。

 Sophiaは更に破壊のオーブを輝かせると、そこから放たれた黒の光線が銀河眼の破壊光線と衝突して、何もなかったかのように破壊光線を押し戻す。

 

「嘘、だろ……」

『踏ん張れぇ!!!ユウキぃいいいい!!!』

「!___うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

 銀河眼に怒鳴られて、今一度気合を入れ直す。ここで時間を稼がなくてどうする!今、自分にSophiaの意識が向いている今が一番の稼ぐポイントのはずだ!

 ユウキの闘志の高ぶりに反応して、銀河眼が放つ光線も太くなる。今まで以上の光がSophiaに向かって放たれ始めると、破壊の黒と一瞬均衡状態へと変わった。

 だが、それもすぐさま打ち砕かれ、再び黒の光線が銀河眼たちに押し返される。

 

「ああああああああ!!!!!!」

『うおおおおおおお!!!!!!』

 

 叫ぶ。叫ぶ。叫び続ける。もはや移動することはできない。今のこの瞬間に必死になるしかない。例えどうしようもと、何も変わらないことがわかっていても。

 無情にもユウキ達のほうへと向かってくる黒色。確実に破壊をもたらすであろうそれが間近となったとき、Sophiaは別れの挨拶を送る。

 

 

【さようなら、異世界の子供。そして、残りカスの召喚獣】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おちたように感じた。

 目には白く輝く女神が見えてあと、何も見えなくなった。

 さっきまで緊張して、全身の感覚が敏感になっていたはずなのに。

 今はもう、何も感じない。何もわからない。

 いや違う。一つだけわかる。

 そう、分かったのは自分のライフポイントが0になったということ。

 

 

 

 

 自分が_____高屋ユウキが、死んだということ。

 

 何かを思う時間すら与えられず、彼の意識は消滅した。

 

 




異世界の青年は地に墜ちた。

希望の光は途絶えた。

『再星』は遂行され続ける。
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