端末IF 〜決闘者は世界を渡るようです〜   作:星野孝輔

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注意:ただのいちゃつきとなっております


第三話 恋人

「____それで、何か言うことはあるか?」

 

 ユウキとエリアルの関係にひとまず決着がついた次の日の朝。集会場二階の会議室にて、ユウキは腕を組むアバンスの前で正座させられていた。

 アバンスの声には怒気・・・・・・というより、呆れ果てたような感情が込められており、その目はユウキを完璧に見下していた。

 一方のユウキは冷や汗をかきつつも、どう言い訳しようかどうか悩んでいた。

 

「・・・・・・朝起きてきたらおにいちゃんが正座させられているんだけど、なんで?」

「さぁ・・・・・・?」

 

 先ほどなぜか呼び出されたウィンダとファイは首をかしげ、すでに部屋にいたエミリアは苦笑いを浮かべていた。

 エミリアが無言のまま二人を椅子に座らせると、アバンスは再び口を開らく。

 

「ほら、何かあるなら聞くぞ」

「あのですね? 何か勘違いしておりませんか、アバンス殿?」

「何がだ? 今朝エリアルとお前が同じ部屋から出てきて、エリアルがどこか輝いたような顔だったことは知っているぞ?」

「____おにいちゃん?」

 

 アバンスに続いて、ファイまでもが黒いオーラをまとう。今まで何度か修羅場をくぐってきたユウキだが、なぜだろう。今が一番怖く感じていた。

 漫画のように大量の汗を背中に浮かべながらも、ユウキはとりあえず言い訳を始める。

 

「エリアルとは、特に何もやましいことはありませんでしたよ?」

「嘘つけ」

「いや本当だよ!!?」

「お前がそこまで我慢できるとは思えない」

「なぜ言い切れる!!?」

「朝から騒がしいわね・・・・・・何してんの」

 

 青年の言い訳の最中にもう一人の当事者が眠たそうに部屋に入ってくる。普段の黒ローブは今身につけておらず、一番薄着のベージュのローブだけ羽織っている水色の髪をした少女。

 他の誰でもない。エリアルである。どこか無気力そうに歩く彼女は、ごく自然にユウキの最も近くの椅子に座った。

 この行動でアバンスは確信を得る。

 

「ユウキ、昨日何があった」

「だから何でそんな自白を促すような刑事みたいな口調なんだぁ!!!」

「ねぇ、何があったの? 何でそんなにアバンスが怒っているのか、私には分からないんだけど・・・・・・」

 

 流石にこのままでは埒が明かないので、横で見ていたウィンダがユウキに助け船を出す。

 一旦落ち着いて、どうしてこんな状況が出来たのかをユウキとアバンスは説明する。

 

「さっきも言ったが、ユウキが今朝エリアルと同じ部屋から出てきたのを目撃した。別にお互いが好意を持っていることは良いんだが___ユウキはともかく、エリアルはまだ幼いんだぞ。普通にアウトだと思って正座させている」

「俺もさっきから言ってるけど、エリアルとは何もしてないってば。確かに同じベッドで寝たけど・・・・・・それ以上は何も」

「モラルの問題って事? それなら、エリアルにも聞けば良いんじゃ」

 

 皆の視線がユウキからエリアルへと移り変わる。エリアルは涼しい顔で特に中が怒ったわけでもないように爆弾をたたき落とした。

 

「昨日? ユウキと一緒に寝て、夫婦になったけど?」

「おにいちゃん」

(殺意ヤベェ)

 

 ファイの殺意が限界まで高ぶり、ユウキには彼女の背後に巨大な炎が燃え上がっているように見えた。当然のごとく、周囲の目線もどこか冷たくなる。

 どこにも味方がいない状況となってユウキは速くも絶体絶命のピンチ(笑)を迎えていた。

 

「で、言い訳は?」

「確かに!そんなことはあったけど___」

「『そんな』こと?」

「ナゼエリアルサンマデ」

「もう!まとまらないから、ユウキがちゃんと説明して!」

 

 いい加減ループから脱出するため、ウィンダが再び声を上げるとユウキは今一度昨夜のことを説明する。

 自分が銀河眼の魂を宿した召喚獣になってしまったこと、召喚者がエリアルで自分がいる限り彼女の魔力を使うこと、そのことが受け入れられず引きこもってしまったこと。

 そんな中でエリアルが部屋に来て思いの丈をぶつけたこと、自身も限界が来てしまいひどい言葉をぶつけたこと、そんな中でお互いの想いが通じ合ったこと。

 そして、その後何もなかったことを改めて話した。

 

「エリアルもお願いだから何か言ってくれ・・・・・・」

「確かにこいつの言うとおりよ。想いを伝え合った結果、私とこいつ__ユウキは召喚者と召喚獣で、ご主人様と召使い。そして、夫婦になった」

「だからそれは人前で言わなくても良いでしょ!!?」

 

 先ほどから何故か『夫婦』を主張してくるエリアルの言葉にユウキは照れくささ三割、周囲の目線が冷たくなっていく恐ろしさ七割で叫ぶ。

 そんな『ただの少女』のようなエリアルを見て、エミリアは言葉を漏らす。

 

「あれが、恋人っていうのかな。ちょっと羨ましいなぁ・・・・・・」

「エミリア?」

「ううん、何でもないよ。でもさ、アバンス。ユウキとエリアルが関係を持とうとそうでないとしても、私たちにはどうしようもないよ」

 

 エリアルと同じように恋する彼女は、そういうものなんだと想い人に伝える。

 ようやく実った恋。たとえ過ちがあったとしても、それはもうそうなるべくしてなったものなのだと、エミリアは二人から感じ取っていた。

 その言葉にアバンスはため息を漏らし、しかし見守るような微笑みを浮かべて答える。

 

「まったく、しょうがない奴らだ」

「ホントにね」

 

 一方で『恋』という点では取り残されているウィンダはふてくされているファイにつきっきりだった。

 先ほどから幼い子供のようにすねたファイを何とかしようとしているのだが、全く口をきいてくれないのだ。

 

「ファイちゃん、ここは祝ってあげるところだよ?」

「・・・・・・わかってます。でも、なんかモヤモヤしてイヤなんです」

「ううん・・・・・・」

 

 なんとなくファイの気持ちも分かる。今まで眠っていた義兄に突然恋人が出来て、さらにその人も自分の関係者となると、ちょっと複雑な気分になる。

 だからといって、このままではせっかくの祝い事も気まずくなってしまう。

 姉として認められた以上、なんとかしてあげたいのだが・・・・・・

 

「ファイ。私とユウキが付き合うのはイヤ?」

 

 声をかけたのはエリアルだった。本人からの質問に少しだけあっけにとられた後、ファイはムスッとした顔ではっきりと言い放った。

 

「イヤです。だって、私のお兄ちゃんがとられちゃうんですから」

「ま、リチュアだから奪うのは慣れてるからどってことはないし、私にとっても旦那なんだけど」

「私のお兄ちゃんの方が先です」

「後先なんて関係ないでしょ?」

 

 兄であることを強調するファイに対して、涼しい顔で返答していくエリアル。

 お互いに火花を散らしている、というより、ファイが一方的に敵対心を持っているだけのようにウィンダは感じていた。

 その心をあおるように、エリアルはビシッとファイに宣言する。

 

「今は良いわよ。私のことを義理の姉としてみてくれなくても。いずれ、必ず認めるときが来るんだからね」

「・・・・・・期待せずに待ってますよーっだ」

 

 舌をだして威嚇するファイを背中に、エリアルはこの状況にどう入って良いか分からず、アワアワしていたユウキの元へと帰る。

 ファイもとりあえずは黒いオーラを出すのをやめ、ウィンダの横の席に座る。

 そうして、この場にいる全員が一旦納得した後、四人は口をそろえて祝福の言葉を二人に投げる。

 

「「「「おめでとう、二人とも」」」」

 

 その言葉を聞いて、少女は微笑んで青年の腕へと抱きつく。表情の変化は小さいものの、彼女から感じられる幸せは青年にも伝わり、彼を笑顔に変えた。

 二人は思う。この笑顔をいつまでも、どうか、自分のそばで見ていたいと。

 いつか終わりが来ても、その時まで。叶うなら、最期まで。

 

 

 

 

 

 それから数日後、特に何かが起こることなくナチュルの森への遠征が行われることになる。

 ユウキとエリアルの関係はあっという間に全体へと広まったが、遠征直前であったため特に何かイベントはなかった。

 一部、記念のための宝石を見つけてくると言って、全力で探索に出ようとしていた某ジェムナイトの長がいたことは内緒である。

 遠征当日。ここにクラス全員が二つのグループに分かれていた。

 一つは遠征を行うグループ。主なメンバーとしては、アバンスとブリリアントを中心とした戦闘が可能な面々に、カームやファイといった後方支援を入れた10名ほど。

 残りの面々はこの場所で待機し、10人が帰ってくるのを待つ。それに拠点が何者かに襲われる可能性もある。その防衛もあってのことだ。

 そして、肝心のユウキだが___

 

「ユウキは留守番の方が良いと思う」

「俺、行く気満々だったんだけど・・・・・・」

 

 アバンスから反対を食らっていた。せっかく目が覚めて、みんなのために何かしようと考えていた矢先にストップをかけられて、ユウキは不満足そうに唇を突き出す。

 もちろんアバンスが何も理由なしに止めはしない。彼とエリアルのことを思ってストップをかけているのだ。

 

「エリアルの負担のことを考えると、お前が召喚術を使えば魔力不足になる可能性が高い。で、召喚術を抜けばユウキは無力化する。足手まといになるだろ」

「うっ・・・・・・痛いところを・・・・・・」

「それに目覚めてまだ間もないお前に何かしろとは誰も言わない。だから、まだ休んでいたら良い」

「・・・・・・悪いな、アバンス」

「気にするな。前にも言ったが、今までの分はいつか返してもらうからな」

 

 意地悪そうな笑みを浮かべてアバンスはジェムナイトたち『遠征組』の集まりへと入っていった。

 彼の背中をなんとなく見つめていたユウキの肩を近づいてきたエリアルが叩く。

 

「何してんのよ?」

「いや、なんかこうして見ているとさ。やっと平和になったんだなーって。今まで戦争していたはずなのに、こうやって手を取り合って生きられるって証明できた気がして」

 

 ユウキは思い出す。自分がこの世界に初めて落下してきた場所。エリアルとウィンダと初めて遭遇した場所。

 それは、彼の中ではとても遠く想像上でしかなかった場所___『戦場』だった。

 あのときは運良くエリアルとウィンダしかいなかったが、少し離れた場所では幾多の金属音や血しぶき、うごめく声、そして、冷たい死体が転がっていたことだろう。

 あの時を始まりとして、ユウキは少なくない数の戦場に立っていた。

 その中で感じられる、戦って奪うことのむなしさが彼の精神を少しずつだがむしばんでいた。

 どうしてわかり合えないんだろう。どうして戦わなくてはいけないのだろう。

 争いを身近で感じたことのない異世界から来た青年は、言葉にはせずともそう考えてしまっていた。

 

「証明と来ましたか、英雄サマ?」

「だーかーらー! 俺は英雄じゃないってば」

「結果として、そうなっているんだから否定しても無駄。実際、この光景が出来たのはあんたが関わったからだと思うわよ?」

「・・・・・・そっか」

 

 言葉にされるとやはり嬉しかった。自分のうぬぼれなどではなく、誰かのために本当になれたのであれば。

 温かい気持ちになりながらユウキは徐々に出発していく遠征組を最後まで見送る。最後に出発したブリリアントに小さく手を振り、遠征の成功を祈る。

 彼女らの背中が小さくなり、ようやくユウキは動き始める。

 

「さて___いろいろ説明してあげるから、部屋に戻りましょうか」

 

 自分と同じく、最後まで見送っていたエリアルと共に自室へ戻るために。

 リチュアの自室へと戻ると、ユウキはベッドに腰掛ける。その後、部屋の鍵を閉めたエリアルが自然に彼の横に腰掛ける。

 その近すぎる距離に照れを感じながらも彼女の顔を見ると、頬が緩みきっているのがすぐに分かった。

 ユウキの肩に頭を乗せてくっついてくるエリアルは、本当にあのエリアルなのかとユウキですら疑ってしまうレベルで乙女だった。

 

「改めて、僕と君の状態を説明するね」

 

 一人称が僕に変わり、ユウキのことも君へと変わる。今の状態がエリアルの素。

 ユウキ以外にはほとんど見せない、仮面をつけていない少女の姿。それがあまりにも可愛くて、ユウキは彼女の顔を直視できなかった。

 

「君は召喚獣の魂を入れたことで、人間と召喚獣の間みたいな存在になってる。君が何か魔力を使うことを行うと、僕の方から魔力が持って行かれる仕組みになっているみたいだ」

「ん? てことは、俺がただの生活をしている分には、エリアルの魔力消費はないって事か?」

「そうじゃないんだ。君はカードの術式が代わりをしてくれていたけど、本来召喚術を実行し続けるためには継続的に魔力を消費しなくてはいけない。つまり、君がいるということだけで、僕の魔力は持って行かれる。ここまではいい?」

「うん・・・・・・。改めて聞くと、やっぱり複雑な気分になるなぁ」

 

 それでも、今自分が生きていること。彼女が必死になって自分を蘇らせてくれたことは純粋な嬉しさしかない。それに、あーだこーだ言ってもこの前の繰り返しになるだけ。

 ユウキは何も言わずに、エリアルの次の言葉を待つ。

 

「当たり前だけど、僕もこのままじゃいけないと思ってこんな物をエミリアと一緒に作ってみました」

 

 エリアルが懐から取り出したのは、小さな小箱。側面の中心に線が入っており、そこから上下に開くタイプの物らしく、ユウキにも見覚えのあるタイプだった。

 箱を開くと白いクッションが入っており、その中心には銀色に鈍く光るサイズ違いの指輪が二つ挟まっていた。

 

「ブッーーー!!!」

「・・・・・・? 何、どうしたの?」

「い、いや、だってこれ・・・・・・」

「? これ、自然から魔力を取り入れる道具なんだけど?」

「・・・・・・あ、ああ!そうだよね!魔法の道具だよね!!」

 

 ユウキの世界ではこのような指輪を何というか。おそらく大勢の人間が知っていることだろう。

 だが、この世界ではそうではないようでエリアルは本当に分からなさそうに困った顔をして____そして顔がいつかの昔のように真っ赤になった。

 

「・・・・・・へぇ、君の世界には指輪にそんな意味があるんだぁ」

「!!!」

 

 召喚者と召喚獣の心は繋がる。隠し事は絶対に不可能。

 エリアルは真っ赤になった顔でチラチラと、期待したまなざしでユウキを見つめる。

 もちろんユウキも顔真っ赤。その勘違いが知られてしまい、穴があったら入りたいくらいには恥ずかしさで一杯だった。

 

「君の口から聞きたいんだけど、何と勘違いしちゃったのかな?」

「心繋がっているから分かるでしょ・・・・・・」

「君の、口から、聞きたいんだけどなぁ?」

「っ・・・・・・」

 

 小悪魔のような笑みを浮かべ、見つめられたユウキには物理的にも精神的にも逃げ場なし。

 エリアルの方は見ずに彼は恥ずかしさと勢いに任せて、言葉をぶちまける。

 

「結婚指輪!!夫婦でつける、結婚指輪と勘違いしました!!」

 

 その言葉にエリアルは幸せな笑みを浮かべてユウキを押し倒す。華奢な身体とはいえど、十分な勢いと不意打ちであれば彼を押し倒すことは簡単だ。

 仰向けになった彼の胸に顔を擦り付け、首に手を回してそのまま抱きつく。

 胸からトクントクンと心臓の鼓動が聞こえてきて、エリアルは自然と肩の力が抜けていく。

 

「そっか。結婚指輪、かぁ。いい文化だね」

「やっぱりそういうのには憧れる?」

「憧れるも何も、自分の家族が出来ること自体が僕にとっては奇跡だから」

 

 エリアルのつぶやいた言葉はあまりにもさみしい物だった。

 両親の顔すら分からず、属していたリチュアでも孤独。認められようとした義母も、結局最後まで彼女を娘とは呼ばなかった。

 だからこそ、今彼女のことを心から想い、そして最も近い存在となった彼がエリアルにとって最大にして最高の心の支えなのだ。

 

「そんな奇跡を、みすみす手放したりしたくないでしょ?」

「・・・・・・うん。俺もエリアルと会えたこと自体が奇跡だから」

 

 ユウキは箱の中にある指輪を手に取って、エリアルの左手を自分の前へと持ってくる。

 そして、彼女の薬指にその指輪とはめた。

 

「結婚指輪って、左の薬指につけるものなんだよ。だから、これで、な?」

「そこは、なにか言葉があっても良いんじゃないかな?」

「うっ・・・・・・わかったよ」

 

 いまいち締まらないがエリアルの指から指輪を外し、わざとらしい咳払いをしてユウキは覚悟を決める。

 

「エリアル、愛してる」

 

 シンプルに、短く、今自分が思っていることを全て込めた言葉と共に、ユウキは再び指輪を彼女の指につける。

 鈍く光る指輪をエリアルはまじまじと眺めて、満面の笑みを浮かべた。

 そのまま指輪を眺め続けるエリアルにどこか気持ちが晴れないユウキは意地悪な仕返しをする。

 

「エリアルからも何か言葉があっても良いでしょ?」

「僕は別に___」

「お願い、エリアル。エリアルからもちゃんと聞きたいんだ」

「・・・・・・しょうがないなぁ」

 

 言葉はやれやれといった感じだが、その表情から嫌々言っているわけではないと一目で分かる。ユウキと視線を合わせ、彼女も愛の言葉を伝える。

 

「僕も、愛しています。未来永劫、いつまでも。貴方のそばにいさせてください」

「・・・・・・少し、重くない?」

「僕は本気だよ」

「・・・・・・そっか。じゃあ、そんな風にいつまで思ってもらえるような男になれるように頑張るよ」

 

 ぎゅーっと抱きつかれたユウキはエリアルの頭を撫でながら、彼女に誓う。

 そのまましばらく抱きつかれた後、エリアルは満足した顔でユウキの横に移動して添い寝の形に落ち着く。

 

「で、この指輪なんだけど、効果としては大気中にある魔力を少しずつ自分にためられる物なの」

「外付けバッテリーみたいな物ね。速度と貯蓄量は?」

「今の環境だと下級モンスター召喚に三日。銀河眼レベルになると10日。エクシーズになると、半月くらいかなぁ。大体エクシーズ二回分くらいはたまると思うよ」

「つまりためられて一ヶ月ってことね。環境で変わるの?」

「うん。この場所は周囲が荒廃してて魔力が発生しにくいから___あ、それから、これ。返し忘れてたから」

 

 指輪についての説明を終えた後、エリアルはポッケからある物を取り出した。それは彼がリチュアに向かう前にウィンダから受け取っていたペンダントだった。

 が、何か形が違う。それどころかなんかいろいろ追加されて豪華にいるようだ。ユウキは数秒の間考えて、返し忘れてたという言葉から自分が身につけていた物だと思い出した。

 

「なんか、豪華になってない?」

「見つけたとき破損してて、それを見たジェムナイトが直すって言うから渡したら、こんな風になって返ってきた」

 

 水色のクリスタルを基盤に、赤、緑、青、黄、白、紫の玉が埋め込まれたもの。当たり前だがファッションにほど遠いユウキにとってはいかにこれがすごい物か全く分かっていない。

 よいしょっとエリアルはユウキの首にペンダントをかけると、彼の顔にある物がむにゅりと当たる。

 

「・・・・・・えっち」

「えいやその・・・・・・ごめん」

 

 その考えはすぐに彼女に読み取ってしまい、ジト目で彼をにらむ。そこにはいつものような冷たい感じはなくどこか甘えたような感じだった。

 

「・・・・・・さわる?」

「あっと、えっと・・・・・・いいの?」

 

 エリアルは無言でユウキの手首をつかみ、自分の胸を触らせる。

 

(エリアルのお、おおおおおおおおおおおおおお)

 

 彼女いない歴年齢+女性との関わりほぼなしであるユウキの頭から理性は一瞬で蒸発した。今彼の頭の中は右手から伝わる感触で埋め尽くされる。

 無意識のうちに指は動き、エリアルの胸の形が歪む。気づけば両手とも彼女の胸をもみしだいていた。ただ、気づいても止める気もないのは事実だった。

 エリアルの口から甘い声が出ていても、ユウキの意識はほとんどなかった。

 

「ゆう、き・・・・・・」

「っ!ご、ゴメン!!」

 

 あまりにも童貞くさすぎる行動だった。エリアルに名前を呼ばれてようやく正気に戻るユウキ。すぐに手を離すが、今度はエリアルがその手を握る。

 熱を帯びた瞳で彼の顔を見つめるエリアル。その感情がユウキの心にも伝わってくる。

 無言のまま見つめあう二人。そのまま顔が近づいて、唇が合わさる。

 もうそれだけでは止まらなかった。口を開いて舌を互いに絡め合う。お互いに初めての行為だが、雄と雌の本能がやり方を覚えていた。

 数分間の間、お互いを貪り合った後に二人は名残惜しそうに顔を離す。

 

「ねぇ・・・・・・しないの?」

「それは・・・・・・」

 

 とろけきった顔でユウキに覚悟を決めさせようとするエリアル。ただの大学生だった青年は少しの間躊躇して___覚悟を決めた。

 命を削って助けてくれたこと、自分に愛を誓ってくれたこと、そして、彼女に指輪を渡したこと。

 責任は必ずとると、心に決めて彼女を再度抱きしめる。

 

「エリアル・・・・・・いい?」

 

 少女は無言でうなずく。そして____

 

 

 

 

 

 

 

「それで、デッキなんだけどね」

「うん」

 

 夕食後、再び部屋に戻ってきた二人は同じようにベッドに腰掛け、肩を寄り添っていた。

 食事後ということもあり空気はかなりまったりしており、ゆるい空間が創り上げられていた。

 今、エリアルの手にはユウキのデッキが握られており、カードを一枚一枚再確認している最中だった。

 

「特に変化はなかった。僕の魔力が整っていれば、多分以前みたいにいける、はず」

「そこは徐々にね。基本的には使わないようにしていく・・・・・・というか、俺が前に使ってたとき魔力ってどうなってたんだ?」

「術式が組まれていて、名前にかけてるわけじゃないけど勇気とかを変換していたみたい。でも、僕が銀河眼の魂を入れたときに術式が崩れちゃったみたい。かなり無理させたからね・・・・・・」

 

 申し訳なさそうにデッキを見つめるエリアル。その理由は一つ。

 

「せっかく、僕が知っている優しいお義母さんがくみ上げた物なのに」

「エリアル・・・・・・」

「結局異世界の話だし、仮定の話だからね。それに__ユウキと出会えてない世界はこの僕はイヤだから」

「___そっか」

 

 笑顔を見せるエリアル。それを見て、やっと彼女に笑顔を取り戻すことが出来たんだと感じるユウキ。

 モンスターカードに変化はない。次に魔法・罠カードに移ると一枚だけ色が抜けているカードの存在に気づく。

 

「死者蘇生のカード。あの時から色が抜けたままだな」

「そうだろうね。無条件で蘇らせるカードなんだからかなりの時間がかかるみたいだね。環境が変わっても、あと数十年は無理かも」

「銀河眼の言っていたとおりだなぁ」

 

 エミリアを蘇らせたときから、死者蘇生は使用不可となっている。使用したときから結構な時間が経っているがまだまだ魔力がたまっていない。

 そもそも、このカードをデュエル外で二度と使うことがないようにとユウキは思う。

 メインデッキの確認が終わり、エクストラデッキに移行するとエリアルは一枚のカードを持ってユウキの前に突きつける。

 それは神を討ち倒した赤き光の龍。彼の魂のカード。『超銀河眼の光子龍』

 

「今から言うことは絶対に覚えておいて。君と__超銀河眼のことだから」

「お、おう」

 

 一人称は変わらないがその表情は真剣なエリアルに、甘い空気に酔っていたユウキも一瞬で現実に戻された。

 そして伝えられた事実は、彼の存続をかけた物だった。

 

「超銀河眼の光子龍___君が召喚する時に言っていた言葉通りのカードになっているの。すなわち、君の魂。このカードを召喚して君が負けた場合、君は文字通り死ぬ」

「それは____エリアルもか?」

「・・・・・・そこから聞くの? 自分の心配を優先してよ・・・・・・嬉しいけどさ」

 

 予想を外れた彼の質問にジト目&照れ顔で返すエリアル。緩んだ空気を引き締めるために、今一度表情を引き締める。

 

「僕には影響がないよ。召喚獣が消えるだけだからね。まあ、君を追うだろうけど、ね」

「つまりあれか。死んでほしくないなら、死ぬなと」

「そういうこと。戦い方には要注意してね。それから、リチュアに奪われてたナンバーズっていうカードも入れておいたよ」

「おお!助かる!!」

 

 今まで15枚未満だったユウキのエクストラデッキがようやく元に戻り、彼のデッキがついに復活する。

 追加されたカードは、魔法カードを無力化する希望と海の竜 No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー、もう一体の銀河眼 No.107 銀河眼の時空竜とその進化形 CNo.107 超銀河眼の時空龍。闇の銀河眼 No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン。そして、彼の最強モンスターである__

 

「やっと戻ってきてくれたな、プライムフォトン!!」

 

 No.62 銀河眼の光子竜皇。銀河眼の光子竜が昇華した、もう一つの進化形態。その美しさにユウキは久々に惚れ惚れしてしまう。

 それもそうだろう。このカードは彼が一番思い入れのあるカード。そのイラスト、その効果、全てが気に入ってしまい登場時に思わず変な声が出てしまったほど。

 

「お気に入りのカードなの?」

「おう!俺の最強モンスターだからな!」

「・・・・・・僕は?」

「・・・・・・嫁、デス」

「うん・・・・・・」

 

 今度はエリアルの発言で甘い空気になり始める。流石にまだ話が終わっていないので、今度はユウキから話を戻す。

 

「と、とにかく、ネオフォトンを出すなら必ず勝たなくちゃいけないのね」

「そう。あとは魔力とかに注意してね。ほかに聞きたいことは?」

「まあ、今のところは良いかな。もう遅いし、エリアルも部屋に戻らなきゃ」

「・・・・・・え?」

「え?」

 

 夜も遅くなり、明日も活動はある。そう思ってユウキは立ち上がってエリアルの部屋へと送っていこうとする。だが、エリアルは何故そんな事をするのか分からないと首をかしげていた。

 何度目になるだろうか。無言で見つめ合っていると、お互いの考えが心に流れ込んでくる。

 そして理解したユウキは、照れ隠しに頭をかいてからベッドに再度座り込む。

 

「んじゃ・・・・・・寝ますか?」

「うん!」

 

 明かりを消してベッドに横になるとエリアルが抱きついてくる。視線を彼女に合わせると今日何度見ただろうか、幸せそうな笑みを浮かべていた。

 その笑顔を見ることが自分の幸せだとユウキは心から感じていた。そしてそれが、これからずっと変わらないことも確信していた。

 だから、もう一度彼女に伝えよう。

 

「エリアル、大好きだ」

「僕も、ユウキのことが大好きです」

 

 何度言っても、何度伝えても、この胸の鼓動は高まるばかりだ。だが、その高まりが心地よくて笑みがこぼれてくるのだ。

 これがきっと、恋であり、そしていずれは愛になるものなのだと。

 

 瞳を閉じる。感じるのは自分ともう一つの体温と鼓動。

 そのぬくもりに包まれながら、二人は眠りにつくのだった。




遅れた理由ですか? 騎空士になってました()

大変お待たせして、すみませんでしたあああああ!!!!!!!
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