端末IF 〜決闘者は世界を渡るようです〜   作:星野孝輔

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実は生きていました。

こんな亀更新ですが、読んでいただけると幸いです・・・。


第六話ー後編 宴は突然に

 パーティが終わり、ユウキとエリアルは自室へと戻り就寝の準備をしていた。

 ヒカリはというと、久々に会えたレラやウィンダと一緒にいたいとのことでウィンダの家に宿泊している。

 ウィンダは二人も一緒にどうか、と聞いてきたが久々の二人っきりの時間を過ごしたいということもありお断りした。

 

「お風呂あがったよ~」

「はい。報告どうも」

 

 就寝前にもエリアルは魔術の研究を続けている。風呂上がりのユウキが彼女の作業机を見ると、どこかで見たことあるような腕輪が作られていた。

 ユウキがつけている物とほぼ同じデザインだが、色が黒鉄で鈍い光沢がある。まるで、何も宿っていない空っぽの器のようだ。

 

「それは?」

「ヒカリの召喚機。君風に言うと、デュエルディスク。あの子に宿った竜の魂を媒体に、召喚魔術を行えるようにするの」

「ほへぇ・・・・・・。でも、なんでわざわざ召喚魔術を? 魔力制御装置とかの方が良いんじゃない?」

「起こってしまうかもしれない『脅威』に対抗するためだよ」

 

 エリアルの言葉にユウキの表情が曇る。

 新たなる脅威____そんなことが起こってほしくないのは当たり前だが、そうなったときに対策を練るのでは遅い、ということだ。

 そんな怖い顔をするな、と彼に伝えるようにエリアルは肩の力を抜く。

 

「まぁ、まだ未完成品なんだけどね。それに、召喚機はただの力だけじゃないでしょ?」

「・・・・・・もしかしなくても、召喚獣か?」

「そ。君の銀河眼のようにしゃべることが出来なくても、近くにいて共に成長できるのは良いことでしょ?」

「なんかペットみたいだな・・・・・・。でも、相棒がいるのは良いことだね。何はともあれ、お疲れ。エリアル」

「ん~!流石に今日は疲れたなぁ・・・・・・。寝よ寝よっと」

 

 居間の明かりを消し、二人は寝室へよろよろと入っていく。出迎えたのは二人用のベッドでも、二つのベッドでもなく、ただのシングルベッド。

 一人用のベッドに二人くっついて寝ることが、もはや習慣となっていた。

 ユウキが毛布をめくると、エリアルが先に中へ滑り込む。その後に続いてユウキが彼女を抱きしめる形で入り込む。互いの顔に吐息がかかるくらい近い距離で、二人は静かに寝息を立て始め、部屋に静寂が流れる。

 時刻はすでに真夜中。銀河眼の召喚魔術を使用していることもあり、疲れは既にピークを迎えていた。

 

 

『____助けて、ユウキくん!!エリアルちゃん!!!』

 

 静寂を切り裂いたのは、切り裂くような女性の悲鳴だった。

 ベッドの横に置かれていたユウキのペンダントから響き渡ったカームの声で、二人の意識は一瞬で覚醒する。

 ベッドから飛び上がり、まだ開ききっていない瞳をこすりながらペンダントを手に取るユウキだが、もう声は聞こえてこなかった。

 

「エリアル!なにがどうなって___」

「さっさと着替えて。ガスタで何かあったに違いにないから」

 

 冷静を装った声で答えるエリアルだが、心からは焦りと恐怖が隠し切れてないのがユウキには分かる。久しく聞いていなかった悲鳴。既に消えたはずの声は未だに二人の鼓膜に張り付いてとれない。

 すぐに寝間着から普段着に着替え、外に設置されているガスタへの転移魔法陣と走る。

 いそげ、いそげ、急げ!その言葉だけが心を支配する。途中足を取られたり、頭をぶつけそうになりながら、なんとか魔法陣にたどり着く。

 既に二人とも息はあがっているが休む暇はない。エリアルは地面に手をつけ、魔術起動のための魔力を流し込むが・・・・・・。

 

「なんで・・・・・・? なんで起動しないの!!?」

 

 いつものように青白い光を上げることはなく、魔法陣は起動しない。悲鳴に近い声で叫び焦っていくエリアルの後ろで、今度はユウキが冷静になって思考を巡らせる。

 エリアルの魔力に問題は感じられない。となれば、おそらく魔術の問題だ。

 もし向こうで事件が起こっていて自分たちを妨害したいのであれば、一瞬で移動できる魔法陣を壊すのは定石だろう。

 今、転移魔術を使わずにガスタの場所まで最短で移動する方法は、ユウキの中で一つしか思いつかなかった。

 

「落ち着こうエリアル。向こうから壊されたのかもしれない。___魔力振り絞れる?」

「言われるまでもないわよ!」

 

 吐き捨てるように怒鳴った声を了承と受け取り、ユウキは腕輪を起動する。

 魔力回復が十分でない状態での銀河眼召喚___エリアルの魔力によって存在を維持しているユウキ。両方の命に関わる行為だが、今はどうでもいい。

 彼の思いに答えるかのように、引いたカードには銀河眼の光子竜とフォトン・サンクチュアリの姿があった。パーティに行くときと同じ手札だが、状況は真逆。そのことに内心悪態をつきながら、銀河眼へと姿を変えてエリアルを背中に乗せる。

 

『飛ばすぞ、エリアル!!』

「当たり前でしょ!」

 

 もはや心に余裕はない。自らが持てる全速力で空を再び駆ける竜と必死にしがみつく女の間に言葉はなかった。

 思うことはただ一つ。無事であってほしい、というあまりにも望めない望み。

 一秒。また一秒と流れる中、魔力がこぼれ落ちて命が削られていく。想いばかりが加速する中、ようやく銀河の眼に湿地帯の姿が映る。

 炎が上がっているわけでも、何かに浸食されている様子でもない。あるのはいつもと同じ夜の静寂だけ。端から見れば何も起こっていないように見える。

 だが___戦場を見てきた二人には、静寂では隠せていない血生臭さを感じ取ってしまう。ヒカリが泊まっているはずのウィンダの家の前に銀河眼は降り立ち、一面に砂埃が立つ。

 すぐさま人の姿に戻ったユウキと背中から飛び降りたエリアルがノックもなし家の中へと駆け込むと、黒いもやが無理矢理人型に形取った『何か』が二人に襲いかかってくる。

 

「『魔弾』!」

 

 反応できたのはエリアルだった。既に準備していた得意魔術の『魔弾』の札を投げつけ、水の魔弾が何かを包み込む。かつて戦場で命を奪ってきた魔術は今まで通り、水の中で何かを跡形もなく分解し消えた。

 改めて部屋の中を見渡す。整理されていたはずの部屋は見渡す限り荒らされており、その元凶であろう黒い何かがこちらを観察していた。先ほど一体を消したことを理科しているのだろうか、あちらから仕掛けてくる様子はない。

 何かの正体も気になるところではあるが、二人が一番気にしているのは鼻につく血の臭いだった。この中にヒカリのものがないことを祈るしかない。

 足を止めたのは、数秒だった。

 ユウキはフォトン・クラッシャーを召喚し、追加でフォトン・トラインデントを発動。クラッシャーは混紡と三叉を装備し、何かへと突っ込んでいく。クラッシャーが振るう武器は瞬く間にもやを払い、二人が進むべき道を作り出す。

 

「クラッシャー!このまま任せられるか!?」

 

 ユウキの問いかけにクラッシャーから言葉はない。だが、こちらを見る単眼からは『何を今更』と不適に笑いながら伝えているようだった。

 息を整えることもなく、二人は走り出す。玄関から対した距離もないはずのウィンダの部屋がやけに遠く感じる。途中に出現するもやにはエリアルが魔術で対応し、苦戦することなく扉の前にたどり着く。

 ドアノブに手をかけることなくユウキが扉を蹴っ飛ばし、無理矢理に入室する。

 視界に入ってきたのは、玄関と同じように荒らされた部屋___先ほどまで何人かの人間が眠っていたであろう布団は引き裂かれ、綿がまるで臓物のように飛び出しており、整理されていた本も同じようにズタズタにされ、もう読むことは叶わないだろう。

 そして、鋭い爪を赤く染め侵入者へと振り向く黒い影と、その足下で身体を震わせおびえるレラ。

 

 背中から胸まで貫通する穴を開けられ、無残に床へ横たわるカームだった。

 

 ____真っ白になった頭が、どす黒く塗りつぶされたのは、部屋の現状を把握してまもなくだった。

 

「___銀河眼ぅ!!!」

 

 室内であることなど忘れ、ユウキは魂に宿った力を爆発させた。伸ばした右腕のみが銀河眼の光子竜の形を取り、影をつかんで壁へと叩きつけた。

 まるで紙を潰すかのように銀河眼の腕は住居をたたき壊す。穴が開いた壁から影をつかんだままユウキは飛び出し、下に見えた地面へと投げつけた。

 着地のことは考えていなかった。強度はただの人間と同じなため、当然高いところから落ちれば怪我は免れない。もう一度全身を銀河眼へと変化させて、衝撃を和らげると共に影の上へ着地して、さらにダメージを与える。

 

『お前は・・・・・・なんなんだ!!?』

 

 踏みつけた影は既に霧散しており、ユウキの叫びに答えることはない。姿を戻した後、隠す気もない舌打ちをして、玄関へと走り始める。

 玄関では敵を殲滅したであろうクラッシャーが彼を出迎え、共にウィンダの部屋へと急行する。

 

「カームさん!レラちゃん!!」

「ユ、ウキ、さん・・・・・・?ユウキさんユウキさん!!」

 

 先ほどの光景がちゃんと眼に入っていなかったのか、今初めてレラはユウキがいたことに気づいたようで、安堵なのか絶望なのか、どちらか分からない涙を流しながら彼の胸に飛び込んできた。

 震えながら嗚咽を漏らす彼女の背中をさすりながら、改めてユウキは部屋を見渡す。

 惨劇があったことは既に分かりきっている。横たわっているカームのそばでエリアルは処置を施しているようだが、その表情は釈然としない。

 

「エリアル、カームさんは生きているか?」

「あんたなんで直球でそんなこと聞くのよ。心で聞けば良いじゃない」

「こんな状況だからこそだろ。娘であるレラちゃんは知っておかなきゃいけないでしょ」

「ったく・・・・・・息はまだあるわよ。レラも落ち着いてね。処置として私が使っている肉体時間停止の魔術を使ったから、とりあえず今は大丈夫」

 

 エリアルが施した魔術が効力を発揮し始め、カームの身体から流血は止まる。ただ、目をそらしたくなるほどの開いてしまった穴は塞がっていない。エリアルが行える治療魔術では施しのしようがないようで、一旦仮死状態にするのが今は精一杯だった。

 痛々しい傷を隠すように、カームの身体に毛布をかけるエリアルの顔には強く悔しさがにじみ出ていた。

 

「レラ、ゴメンね。私の力じゃ今はこれが限界。でも、絶対に大丈夫だから、ね?」

「はい・・・・・・」

「レラちゃん、何があったか。ゆっくりで良いから話してもらっていいかな」

 

 床に座らせたレラの背中をさすり続け、落ち着かせようとする二人だが彼女の動悸が治まる様子はない。そのことを見越してか、先ほどから指示を待っていたクラッシャーが自分から動いて、水の入ったコップをレラに手渡す。

 彼女は戸惑いながらもクラッシャーからコップを受け取り、水を一口で飲み干す。ぶっちゃけると、ユウキも特に指示をしたわけではないので内心クラッシャーの行動に驚いていた。

 

「その・・・・・・眠っていたら突然お母さんの声がして。目を覚ましたら、お母さんが部屋に入ってきて、その直後にさっきの奴が・・・・・・」

「それで、カームさんはレラちゃんを守ってた訳か」

「はい・・・・・・でも、誰も助けに来なくて・・・・・・それに、同じ部屋で寝てたはずのヒカリも姿が見えなくて・・・・・・」

 

 その一言が、二人から冷静さを奪いかけた。イヤでも鼓動は大きくなり、頭の中がどんどん狭くなっていく感覚に襲われる。

 暴れそうになる感情を押さえつけるように深く深呼吸をして、二人はレラの瞳をまっすぐ見つめた。

 

「じゃあ、何があったかとか、犯人が誰かとか分からないだね?」

「ごめんなさい・・・・・・何も分からないんです・・・・・・」

「・・・・・・ねぇ、レラ。ウィンダは見なかった?」

 

 エリアルの声は震えていた。見たくないもの、信じたくないものを知ってしまったかのように。その質問にユウキの頭にも最悪な結末が思い浮かぶ。

 また大切な存在を失う恐怖で二人は立ち上がり、今すぐに外へと飛び出そうとするがギリギリ耐える。ここまで心身が弱っているレラを一人にするわけにはいかない。

 

「クリフォトン!レラちゃんのそばにいてあげて!」

「フォト!」

 

 呼び出されたクリフォトンはユウキの周りとぐるりとした後、現状に気づいてレラのそばへ駆け寄る。心配そうに目尻を下げ、彼女の顔を下からのぞき込む。

 レラは困惑するが、抱きしめろと言わんばかりに胸に飛び込んできたクリフォトンの瞳を見つめ、静かにぎゅっと出し決めた。

 クラッシャーも彼女を守る意思を見せるように隣に立ち、二人の背中を押すかのようだった。

 

「じゃあ、頼むね。クラッシャー、クリフォトン!」

「レラ、ちょっと行ってくるね」

 

 レラを一人にしてしまうことに罪悪感はある。だが、姿の見えない息子のことを無視できる親はいない。

 親としての本能のまま、二人は得体の知れない闇へと飛び出していった。

 

 

 

 

 月明かりもない暗闇の中をユウキとエリアルはただ走る。どこにいるかも分からない息子の姿を求めて周囲を血眼になって見渡す。

 声を張り、ヒカリの名前を叫び続けるが返事は闇へ吸い込まれるだけ。それどころか、本来眠っているはずのガスタすら誰も彼らの前に姿を現さない。

 

 何か決定的な異変が起こっている。

 

 その事実は分かっているのに原因が全く読めない、あまりにも突然の異変。

 予兆はなかったのか。犯人は誰か。何が引き金になったのか。

 今を生きるエリアルはもちろん、前世界の知識がなくなったユウキにも分からない。肝心の時に役にたてない自分の知識にユウキは歯を食いしばる。

 

「ユウキ。怪しいと思う場所ある?」

「全部だね。なんせ、ガスタの外にいるかもしれないし」

 

 襲撃から大して時間はたっていないはずだが、相手が魔術を使用できれば遠くへ行くことも難しくはない。だが、ガスタの外となればあまりにも探す範囲が広くなりすぎる。下手をすると、異世界にまで範囲は広がってしまう。

 とにかく今はガスタの中を探すしかない。そうやって必死に探すが何者にも遭遇しない。

 ヒカリにも、ウィンダにも、先ほど襲ってきた影にも。

 

「くそっ!どこにいるんだヒカリ!ウィンダ!!」

「ヒカリ・・・・・・お願い、返事をして!」

 

 一通り探し終えても、ウィンダとヒカリの姿はなかった。息を上げながら悪態をつく二人の心は今まで一番荒れていた。

 どうしてこんなことになってしまったのか。そんなことを考えていてもしょうがないのに、自分たちがヒカリのそばにいてあげられなかったが故に起こった異変。悔しさがあふれ出てしょうがなかった。

 息を整え、頭の中でまだ訪れた場所をひたすら潰していく。そして、二人がまだ探していない場所を思い出したのは、全く同じタイミングだった。

 

「「祭壇跡!」」

 

 かつて神をまつっていた祭壇はその神の復活と共に崩れ去り、今ではただ瓦礫が積み上がっているだけの跡地。

 あそこにヒカリがいるかもしれない。ただその一つの望みだけで二人は祭壇へと走り始めた。走っている最中も脳裏に浮かぶのは息子の顔だけ。今はただ、走る。

 そうして、瓦礫の山の前にたどり着いた二人はようやく探していた姿を見つける。

 

「___ヒカリ!!!」

「しっかりして!」

 

 瓦礫の山の上でうつ伏せになっていたヒカリのもとへ、一直線に駆け寄るユウキとエリアル。瓦礫に足を取られそうになることも気にもせず、愛する我が子のもとへ駆けつけた。

 ヒカリは静かに眠っているようで、目に映る身体に傷は見られない。ひとまずそのことに安堵の息を漏らす二人。

 

 

 

『じゃあな。異世界の異物たち』

 

 

 

 聞き慣れない男の声の正体を確認する時間もなく、親子三人は地面に吸い込まれた。

 

 

 

(やられたな・・・・・・。エリアル、ここってどこか分かる?)

(多分次元の裂け目。以前リチュアも研究『しようとしてた』場所)

 

 三人が放り出されたのは、無重力の空間。上下左右の感覚は全く正常に機能していないようで、周囲は暗黒のようでどこか遠くに無数の光が見える。

 自分の肉体すら実感がなく、エリアルの直感はここに居続けることは『死』を意味すると警告していた。

 あの声は誰だったのか。なぜあのような事をしたのか。

 そのほかにも気にかかることは幾つもある。だが、考える時間も確かめる方法も、今の彼らにはない。

 今、お互いの姿も目視できていないユウキとエリアルが真っ先にやること。それは___

 

(んじゃ、何とかしてヒカリをあっちに戻さないとね)

(僕たちは無理でも、ヒカリ一人なら何とかいけそうだし)

 

 息子の救出だった。

 自分たちよりも、ただ我が子には生きていてほしい。たったそれだけの、親としての想い。

 落ちてきたであろう方向を見上げると、わずかだがまだ端末世界が見える裂け目が見つかる。だが、徐々にその大きさは縮小しており、数十秒後には完全に閉じきってしまうだろう。

 決断を済ませた二人の行動は早かった。

 ユウキはごく自然に___自分が死ぬと分かっているという極限状態であるにも関わらず、腕輪からカードを引く。

 フォトン・サンクチュアリ、銀河騎士、トークンをリリースして、銀河眼の光子竜を特殊召喚と、前の世界で何度繰り返したか分からないコンボを決め、彼のフェイバリットエースを出現させる準備を整える。

 

 これが、きっと最期。

 

 そう確信しながら、ユウキはいつも通りに宣言した。

 

「俺は、レベル8の銀河眼の光子竜と、銀河騎士でオーバーレイ!現れよ!銀河究極竜、No.62 銀河眼の光子竜皇!!」

 

 銀河眼の光子竜の真の姿、プライムフォトンはこんな光どころか闇すら飲み込んでしまうような裂け目の中でも、未来を照らす光を放っていた。

 その姿に見とれながらも、ユウキは未来の竜に、自分たちの『光』を託す。

 

「銀河眼!あの裂け目の奥まで、この子を届けてくれ!頼んだぞ!」

 

 主人の指示通り、プライムフォトンは右手にヒカリを抱えて、流星のように飛び立つ。閉じかけている裂け目には、口からの光線をぶつけて無理矢理こじ開けて、中へと飛び込んだ。

 そして、プライムフォトンが裂け目の中に姿を消して数秒後、完全にユウキの眼から端末世界の姿が消えた。

 もう戻れない。

 そう感じてしまい、ユウキは思わず俯いたときに、やっと自分の異変に気づいた。

 

「___ああ、魔力切れ、なんだな。エリアル」

 

 透けていく身体を目にして、エリアルからの魔力が途切れていることに気づく。銀河眼たちを召喚した時から、彼女の声が聞こえなかった。

 今日、休息もなく銀河眼たちを召喚し続けており、おそらく彼女の魔力はとっくに限界を迎えていたはずだ。

 それでも今までユウキが存在できていたのは、予備の魔力だけではなく、彼女の強い意志があったからこそだと、ユウキは確信していた。

 

「ゴメンね、エリアル。本当は、皆で戻りたかった。ヒカリが成長していく姿を、二人で見守りたかった」

 

 後悔も、無念もある。それらは涙になって彼からこぼれ落ちていく。涙と共に、彼の身体も粒子になって崩れ去っていく。

 

「母さんにも三人で会いに行きたかった。ヒカリの恋人とか、孫にも会ってみたかった。でも、もう叶わないんだな」

 

 つぶやく声は誰の耳にも届かない。彼と心で繋がっている最愛の人からも、返事はなかった。

 その後何も起きることがなく、異世界から来た英雄(ただの青年)はあっけなく、闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

第二部 端末IF After ~決闘者は終末後を生きるそうです~

 ___終幕

 




そして、神との戦いが、再び幕を開ける。


Next・・・・・・端末IF Next ~決闘者は絶望にあらがうようです~
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