端末IF 〜決闘者は世界を渡るようです〜   作:星野孝輔

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この作品は、作者が書け決闘にて敗北した事から生まれた物です()
遊戯王OCG公式様とは一切関係ございませんが、作者の作品とは関係がございます。
ご了承ください。



端末IF OutSide 決闘者は縁を紡ぐみたいです
EX 音楽魔人の悩める日


「はぁ・・・・・・本当に大丈夫なのかなぁ」

 

 とある劇場の舞台裏にて、小人の少女が不安混じりのため息を漏らす。

 藤色の髪をツインテールにしたその頭部からは小さな白い角が二本はえており、彼女が人間ではないことを周囲に知らせている。

 だが、『人間でない』ことなどはこの世界ではどうでも良いことなのだ。

 不安げな彼女の視線の先には、彼女の半身とも言えるピアノがぽつんと置かれている。

 

「ハミィ~。団長がそろそろ練習再開するってさ~」

「は、ハイ!!今すぐに!」

 

 舞台側から名前を呼ばれ、彼女はピアノに『飛び乗って』舞台へ飛び出していく。

 

 これは、魔導都市でのとある少女の日常の話である。

 

 

 

「はぁ・・・・・・やっぱりダメだぁ」

「そう落ち込まないでハミィ。ほら、トマト食べる?」

「あ、ありがとうございます。メロ先輩(なんでいっつもトマト持ってるんだろう・・・・・・)」

 

 魔導都市のベンチに藤色の髪の少女 ハミィこと『ハミハミハミング』と、彼女の先輩でギルドの仲間でもあるメロこと『メロメロメロディ』がトマト片手に座っていた。

 彼女たちはギルド『魔人交響団』の一員であり、『魔導都市 プロファシー』を中心に活動していた。

 ギルドには、探索業を主とする冒険者の集まりというイメージが強いが、彼女たちのように直接冒険に出向かないギルドも存在している。

 魔人交響団の開催するコンサートは、人々の心を踊らせる・震えさせる音楽だと評判で、活動して2年間ですでに少なくない数のファンも獲得している人気ギルドだ。

 ハミィはそんなギルドに数ヶ月前に加入したばかりの新人。元々音楽を得意とする一族に産まれ彼女自身も音楽が好きなこともあり、このギルドに加入するのは夢でもあったのだが、彼女の気分は落ち込んでいた。

 

「リハで上手くいかなくても、本番で巻き返せば良いのよ。ね?」

「そうですけど・・・・・・リハで上手くいかないんじゃ、本番でも・・・・・・」

 

 それは一週間後のコンサートにて初参加が決まったのは良いものの、リハーサルで上手く演奏が出来ないことが原因だった。

 しかも、今回は彼女の初舞台であり、主役として開かれるため余計に失敗が出来ない事がさらにハミィの心を沈ませる。

 メロを始めとした3人の先輩と団長に迷惑をかけ続けていると思うと、日に日に心が重くなっていく。次こそは頑張ろうと意気込んでも、やっぱり上手くいかない。

 そんな負のスパイラルにハミィははまり込んでしまった。

 メロからもらったスイーツトマトも、今は甘く感じなかった。

 

「ダメですね私。ちょっと散歩して頭冷やしてきます」

「いってらっしゃい。戻ってきてもモヤモヤしてるなら、遠慮なくあたしを頼ってね」

「ありがとうございます」

 

 街へと歩き始めたハミィの体と心は、フラフラと揺れていた。

 

 

 

 街を歩き続けて既に10分は経っただろうか。ハミィは晴れない心を抱えたまま、ただ何の目的もなくさまよい続けていた。

 通常の人間の半分もない背丈ではそこまで遠くへは行けない。周囲の風景は変わらず、人の話し声であふれた商店街だ。

 行き交う人の間を縫いながら、本当に幽霊のようにふらふらしているハミィ。せめてピアノに乗っていれば交響団の一員とみられるのだろうが、今は音楽から離れていたかった。

 

「せっかく交響団に入れたのに、これじゃあお母さんたちに合わせる顔がないよ・・・・・・」

 

 彼女の両親はどちらも音楽関連の職に就いている。家では必ず音楽が聞こえてきたし、そんな家族が彼女は大好きだった。

 ピアノのコンクールで賞を取れば『天才』だとか、『努力家』だとか、よく褒めてくれていた。

 だが、今はどうだ。

 才能もなければ、努力してもどうにもならない現実が目の前に大きな壁となって立ち塞がっていた。

 これでは両親の言葉が嘘になってしまう。今の自分を形作ったあの優しい言葉が崩れ落ちてしまう。

 それだけは、絶対になんとかしなくてはいけない。

 

「っと言ってもなぁ。何がダメなんだろう。確かに緊張で少し堅いとは思うけど、団長はそれが原因じゃないって言ってるし・・・・・・」

 

『お前は、本当の意味で我々と演奏していない。その意味を考えなさい』

 

 団長である『マエストローク』から三日前に投げかけられた言葉だ。ずっと考えているが、未だに答えは見つからない。

 自分のパートはちゃんとこなしているはずだし、楽譜通りに出来ているはずだ。その楽譜が殺人的に難しいのは置いておいて。

 先輩であるテンさんこと『テンテンテンポ』も初めてにしては上出来と言っていたし、メロもよくやったと毎回言ってくれている。

 それなのに、団長はいつもリハーサルが終わると少しさみしそうな顔をするだけ。

 

「やっぱり、下手くそなのかな。私の演奏」

「___ちょっとごめんね。そのお店に入りたいんだ」

「え!ご、ゴメンなさい!!」

 

 悩んでいる内に店の前に立ち止まっていたらしく、背後から声をかけられたハミィ。

 振り向いて見上げると、人間と呼べる背丈に赤みがかった茶色の長髪と瞳の少女がハミィを見ていた。

 少しつり上がった強気そうな瞳に、ヘソ出しスタイルという服の上から薄茶色のローブを羽織っているその少女からは、今のハミィにはない自身が満ちあふれているようだった。

 

「お節介かもしれないけど、何か悩み事?」

「え、分かるんですか!もしかして占い師の方だったりします?」

「アハハ!あたしはそんなんじゃないよ。ただの冒険者。ただ、貴方の顔がどうも沈んでいるように見えたからさ」

「やっぱりそう見えますよね・・・・・・」

 

 赤の他人にすら分かってしまうほど、今の自分はひどい顔をしているらしい。そう実感するとますます自分が未熟者に思えてしまい、ハミィはさらに落ち込む。

 それを見た少女はふと何かを思いついたようで、少し待っていてほしいとハミィに伝えると目の前の店に入っていってしまった。

 その数分後、店から出てきた少女の手にはソフトクリームが握られていた。

 

「はい、これあげる」

「え、悪いですよ。私、貴方のこと何も知らないのにこんな・・・・・・」

「まあまあ、とりあえず受け取っときなさいって。あたしはさ、貴方の悩み事にどうこう言える立場じゃないけど、仲間を頼ってみたら?」

 

(そんなことは、言われなくても___)

 

 ハミィがそう思う中、少女は言葉を続けた。

 

「結局、誰も1人じゃ何も出来ないから。誰かを頼って頼られて、そこで生まれる何かで、誰しも生きてるとあたしは思うからさ」

 

「___」

「んじゃ、またね」

 

 明るい太陽のような笑顔を見せて、少女は再度店へと入っていった。

 名も知らない少女の何気ない言葉にハミィは顔を上げた。心にはびこっていた闇の中に灯火が生まれたように感じた。

 

『本当の意味で我々と演奏していない』

 

 マエストロークの言葉がハミィに再度響き渡る。そして、彼女はその言葉の意味をようやく気づくことが出来た気がした。

 気づけば彼女は劇場へと走り始めていた。

 

 

 

「___団長!!」

「どうしたんですかハミィ。今日はもうお休みですよ」

 

 劇場にまだ残っていたマエストロークの元へ息のあがったハミィが駆け寄る。

 マエストロークは少し驚きながらも、彼女の目線に合わせるようにかがむと背中をさすり始める。

 息を整え、ハミィがマエストロークに伝えた最初の言葉は___

 

「調子に乗っていて、スミマセンでした!!」

 

 ___謝罪の言葉だった。

 何も謝罪されることなどないと、マエストロークは首をかしげるが、ハミィは言葉を続ける。

 

「私、ずっと1人で演奏をしていると思ってました。ピアノのコンクールでは1人で演奏するのが当たり前だから。楽譜と向き合って、自分を出すのが今までの演奏だったから!」

 

 ピアノを演奏する時に彼女は一人だった。自分の世界に入り込み、その世界を他人に見せつけることが彼女の当たり前だったのだ。

 だが、今は違う。

 

「団長の言葉の意味、自分なりに答えを出しました。私は、先輩たちの音を聞いていなかったんですね。だから、団長は本当の意味で演奏していないっておっしゃったんですね」

「___その答えを持って、君はどうしたい?」

「私は、先輩たちと演奏したいです!メロ先輩、テンさん、ムズ先輩、団長と一緒に、最高の演奏を、聞きに来てくれている全てのお客さんに!」

 

 ハミィの言葉にマエストロークは静かに、確かに微笑んだ。

 その言葉を待っていたんだと、歓喜するかのような微笑みだった。

 

 

 

「はぁ・・・・・・本当に大丈夫かなぁ・・・・・・」

 

 舞台裏にてハミィはあの時と同じ言葉をつぶやく。だが、彼女がその言葉を漏らしたのは以前までの自分への不安ではなく、大勢の客衆の中で演奏する事への緊張からだった。

 あと数分後には、魔人交響団としての初めての仕事が始まる。

 リハーサルは何度も行ってきた。あの日以来___あの少女と出会った日以来、ハミィは本当の意味での演奏を行ってきた。

 今まで何も言わなかったムズ先輩こと『ムズムズリズム』もリハーサル終了後に、グッとサムズアップを送ってくれるようになった。

 マエストロークもニコッと笑ってくれるような演奏が出来ていた。

 だが、いざ本番となるとやはり緊張はしてしまうものだ。

 

「ハミィ」

「ムズ先輩」

「楽しい演奏をしよう。大丈夫だ」

 

 毛むくじゃらのムズは口数が多い方ではない。ハミィを気遣う言葉をかけ、彼女の肩をポンと叩いて劇場へとあがっていく。

 だが、それこそが彼にとって最大の心遣いだとハミィはあの日以降に知ることが出来た。

 

「よ~し!僕たちも行こうか、メロ!ハミィ!」

「ええ。ハミィ、準備は良いかしら?」

 

 テンとメロもハミィへ期待を秘めた瞳で彼女を見つめる。

 ゆっくりと息を吸う。そしてあの少女の言葉を思い出す。

 

『誰かを頼って頼られて、そこで生まれる何かで、誰しも生きてるとあたしは思うからさ』

 

 先輩が自分に期待してくれているように、自分も先輩を信頼する。

 そして生まれる演奏で誰かに何かを届けられたら、それは交響団の彼女にとって一番幸せなことだ。

 

(ありがとう。また会うことがあったら、今度は私が貴方に何かを届けさせてね)

 

「はい!魔人交響団の一員ハミハミハミング、行きます!」

 

 

 その日、魔人交響団はさらなるファンを獲得し、さらにその名を世界に響かせる。

 彼女たちが奏でる音楽は、きっとこれからも笑顔を届け続けるのだろう。

 そして願わくば、そんな素敵な日々が続きますように___。

 

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