唯が兄の十四郎と感動の再会を果たしてから数週間後。
買い物から帰ってきた銀時と神楽が、玄関の引き戸を開けたとほぼ同時だった。奥から唯の悲鳴が上がったのは。
「どうしたアルか!?」
「何? 何? なんか事件かッ!?」
バタバタと足音を立てながら廊下を走った銀時と神楽は、和室にてがっくりと肩を落としている唯を視界に入れた。
「やられた……。やられたァァ!」
意味が分からない。銀時と神楽は、お互い顔を見合わせた。
「なーにが、やられた訳?」
銀時が問えば、くるりと顔を向けた唯が怪しく銀時を睨む。
「坂田さん、まさか……」
「まさか?」
「わたしの下着盗んだの坂田さんでしょうォォ!」
探偵が犯人を当てるかの如く、ズバリと指を指す。
「エッ、えェェェー!? 何で俺がァァ~!」
「銀ちゃん最低アル」
隣にいた神楽は二、三歩距離を置き、銀時に下着泥棒の疑惑の目を向けた。
「オイッコラ! いくら銀さんでもな、下着盗むほど女に飢えてねェぞ」
しかしいくらそこで弁明しようとも、唯と神楽は疑いの眼差しを向け続ける。
マジで勘弁してくれこの状況。銀時が頭を抱えたその時、タイミング良いのか悪いのか、万事屋に一本の電話がかかってきた。二人から容疑をかけられた銀時が震える手で電話に出ると、かけてきた相手は新八であった。今すぐファミレスの『でにぃす』に来てほしいとの事。
なんとか誤解を説きたいと思っていた銀時ではあるが、このまま一人で去れば真実味が増してしまう恐れがある。なので、疑ったままの唯と神楽を連れて仕方なくファミレスへと向かった。
「あ~~? 下着泥棒だァ?」
新八と姉のお妙が待っていたファミレスにて、この二人から話を聞き終えるや否や、銀時が店中に響き渡る声で言った。
どうやら新八が家に帰っていない間に、お妙の下着が二回も盗まれたのだそうだ。
「えーッ! お妙さんも!?」
それを聞いた唯はお妙の隣で驚くと、自分も下着が盗まれた事を話した。
「あら、唯ちゃんもなの?」
「もしや姉御の下着も……」
神楽の冷たい視線の先は、銀時である。
「オイッ! 誤解すんなッて……。ったくよ~」
この視線から逃げたい。しかし逃げれない。頭を掻き、苛立ちながら銀時はパフェを食す。
「銀さん、誤解されるような事したんですか? まァ、それは良いとして、なんとかならないスかね?」
新八が溜め息を漏らすと、銀時は食べていたパフェを一旦止め、何処か遠い目をして語りだした。
「昔の人はよォ、着物の下はノーパンだったらしいぜ。お姫さまも。お姫さまなのに、着物の下はもう暴れん棒将軍だよ。お前。そのギャップがいいんだよ。おしとやかな顔して、暴れん棒将軍かい! みたいな……」
「てめーのノーパン談義はどーでもいいんだよ。こちとら、お気に入りの勝負パンツ盗られてんだぞコラ」
黙って聞いていたお妙が、苛つきのあまりに銀時の前髪を掴んだ。
「勝負パンツってお姉サン、誰かと決闘でもするのかぃ?」
髪を掴まれながらも、抵抗せずに身を委ねる銀時が問う。
「てか、大体何がしたいんだお前は。その勝負パンツが戻ってくれば気が済むのか?」
「パンツを取り戻したうえで、パンツを盗んだ奴を血祭りにしたい。ね、唯ちゃん?」
怒りの笑みを浮かべるお妙に話を振られた唯は、口元をひきつらせながら『うん』と頷いた。
「もう発言がパンツをはく文明人の発言じゃねーよ。裸で槍をもって野を駆ける人の発言だよ」
軽くツッコミをいれてみるが、掴まれた前髪は離されない。
「下着ドロなんて女の敵アル。姉御、私も一肌脱ぎますぜ! ま、銀ちゃんじゃないって信じてるけど」
「お前、散々疑った目ェして俺見てただろ?」
「よし、よく言った。ついて来い、杯を交すぞ」
銀時のツッコミを軽く無視った神楽は、『いざ行かん』とお妙共にくり出そうとする。
「って、無視かよ!」
「待て待て待て! 死人が出るよ! 君ら二人はヤバいって!!」
これは地獄絵図になる。慌てた新八が止めに入ったが、二人はもうヤル気満々でファミレスから去って行ってしまった。
「まずいよ、最凶コンビがユニット組んじゃったよ」
「ほっとけよ。ホシの目星はもうついてるだろ」
テーブルに伏せる新八を横目に、やっと放された自分の前髪を労わりつつ銀時が言う。
「坂田さん、それって……」
誰が犯人なのか既にわかっているのかと、不思議に思った唯が問おうとした次の瞬間である。
新八がテーブルの下から感じる視線に気づき、そしてソレを発見して固まったのだ。
「え? 新八くんどうしたの?」
一体何を見たのか。唯は新八の視線の先が気になり、座っている席からテーブルの下を覗いた。
「ひっ……!」
これは見てはいけないものを見てしまった。まるでホラー映画だ。テーブルの下で仰向けに寝っ転がりながら蹲っている近藤と目が合った。
「なんだァァァ!! まさか俺を疑っているのかアァ! 侍が下着泥棒なんて卑劣なマネするわけないだろーがァ!!」
「侍がストーカーなんてするわけねーだろーが」
テーブルの下から出て来た近藤を、まるでゴミを見るような目で見ながら銀時が返した。
「ストーカーはしても下着ドロなんぞするか! 訴えるぞ貴様!!」
「訴えられるのはテメーだよ!」
皆からの総ツッコミである。
「これで真選組解体かァ」
実にめでたい。と、薄ら笑いの銀時。
「今の今まで坂田さんが犯人だと思ってたけど、まさか近藤さんだったなんて……。お兄ちゃん可哀想」
信じられない。唯が嘆けば、近藤は焦りの色を見せる。
「唯ちゃん違うから! コレ! みんなコレ見てくれ! コレを!」
懐から『大江戸新聞』を取り出し、紙面のある部分を指差した。
「なんスかコレ? 『またも出没、怪盗ふんどし仮面』?」
「最近巷を騒がしてるコソ泥だ。その名の通り、風体も異様な奴でな。真っ赤な褌を頭にかぶり、ブリーフ一丁で闇を駆け抜け、キレイな娘の下着ばかりをかっさらい、それをモテない男達にバラまくという妙な奴さ」
まるで鼠小僧の変態バージョンじゃないか。紙面に注目したままの新八が言う。
「そうか、このパンツにはそういう意味が! 俺ァてっきりサンタさんのプレゼントかと……」
ひとり何かに納得したらしい銀時は、自分の懐から女性物のパンツを取り出して見せた。
「アンタ、もらってんのかィィ!」
新八がその隣で勢いあるツッコミを入れた。
「ま、それかちっとばかし唯のじゃねぇかと思ったりもしたんだが……。唯のはレース付きの濃いピンクとか、イチゴ柄だの小さな花柄だの、地味にゴチャゴチャと派手なのばっかだしなァ。こんなシンプルはまず無────」
「ちゃっかり色々観察してんじゃねーよ! てかいつも触ってんだろ!!」
思わぬ銀時の発言に驚きを隠せない唯は、顔を茹で蛸のように真っ赤に染めながら、銀時の頭をハリセンで叩いた。
「フハハハハハ! そりゃあお前、モテない男と見なされた証拠だよ。哀れだな~!」
近藤の懐から、少しだけパンツがハミ出しているのが視界に入る。
「オーイ、見えてるぞ。懐からモテない男の勲章がこぼれ出てるんだけどォ!」
これはアウト。ツッコミ担当と化した新八は、すかさず指摘した。
「ま、先ずは話を聞いてくれ」
近藤は咳払いをし、一枚の写真を三人に見せる。
「んで、お妙の下着や唯の下着をかっぱらったのもコイツの仕業だと?」
「ああ。今や江戸中の娘達が被害にあってる。しかし民衆、特にモテない男になまじ人気がある為に、同心連中もなかなか捕まえるのに苦労してるようだ」
「ケッ、ただの変態のくせにいっぱしの義賊気どりか。気にくわねー、気にくわねーぜ」
ふざけんじゃねぇよ。銀時の中で沸々と怒りが湧き上がり、パンツを持つ手に力が入る。
「なんで俺がモテねーのしってんだァァァァァ!!」
メキメキと音を出して伸びていったパンツは、銀時によって無残にも引き千切られてしまった。
それから数十分後。お妙と新八の家に集まった銀時達は、打倒犯人の為、囮としてお妙のパンツを使う事にしたのである。因みに、集まった者達の中で唯と新八以外は、全員武装万端だ。
「いいかー、相手はパンツの量より娘の質を求めている真性の変態だ。だからまた、必ずここに忍び込んでくる。そこを叩く。フンドシ仮面だかパンティー仮面だかしらねぇが、乙女の純情と漢の誇りをふみにじったその所業許し難し。白ブリーフを鮮血に染めあげてやるぞ!」
「オオォォ!!」
気合いを入れる為に瓦を割り続ける神楽に、薙刀で刺す構えをするお妙。そんな二人の姿に唯と新八は唖然と見つめている
「スイマセーン。下着泥棒ぐらいでちょっと殺気立ち過ぎなんじゃないですか? っていうか、アンタなんでいんの?」
新八が視線をずらせば、当たり前のように参加し、一人で何かを構えている近藤に気づく。
「細かいことは気にするな新八くん。それよりコレを頼む!」
「何ですかコレ?」
「地雷だ。これを庭1面に敷き詰めれば、こんなボロ屋敷も立派な要塞になるぞ」
「ボロ屋敷のままでいいわ! アンタ、戦争でもするつもりですかァ!」
近藤に詰め寄ろうとすれば、お妙が新八の肩に手を置いて塀の外を指差す。
「新ちゃん、ここはもう戦場なのよ。遊び気分なら帰りなさい」
「姉上、ここが僕の帰る所なんですけど」
「戦場が帰る所とはよく言ったわ。それでこそ、侍よ」
「いや……、そういう意味じゃなくて」
完全に入りきってるお妙にはこれ以上何を言っても無駄だ。新八は諦めることにしたのだった。
その様子を縁側に座りながら、まるで他人事のように見ていた唯が深い溜息を吐いた。
今日は折角の休みだったのになァ、しかもお気に入りの下着盗まれるなんて……。
休日を下着泥棒に潰され、その泥棒を退治する為にいつの間にやら自分も参加してしまっているこの状況には溜息しか出てこない。
「オイコラ」
すると、視界を遮るかのように目の前に銀時が現れる。
「お前、自分のパンティ盗まれた割には人事のように落ち着いてんな」
「これでもすっんごいヘコんでるんですけど。ていうか、あんなに武装して気合い注入できる気分じゃないわ」
「ま、パンティ盗まれる女の気持ちなんて俺にゃあわかんねぇが、確かに気分は悪ィよな。しっかしお前のパンティ盗むなんてよォ……、泥棒も趣味悪ィぜ」
それには異議を申し立てたい。唯は眉間に皺を寄せて銀時に指を差した。
「ちょっと! それどういう意味? あのパンツ結構高かったんだから! それに、さっきからパンティパンティって! セクハラも大概にしてよねッ」
「セクハラ? パンティのどこがセクハラか教えてくれや」
「だからその言い方もろもろ、セクハラよ!」
「はっ、ちゃんちゃらおかしいな。笑っちまうぜ。パンティ発言ごときでセクハラなんてよ」
「だからやめてってば!」
ぎゃあぎゃあと二人が言い争うのをやがて新八が止めに入り、なんだかんだで気付けばいつの間にか夜も更けていった。
辺りはすっかり闇に染まり、銀時達は庭の草むらに身を潜めて下着泥棒が現れるのを待っていた。しかし、待てどくらせど泥棒は一向に現れない。
「ちょっと、全然泥棒来る様子ないんですけど。コレ、ひょっとして今日来ないんじゃないんですか?」
待ちくたびれた新八が口を開いた。
「大丈夫だよ。来るって」
「いや、だから何を根拠に今日来るって言ってるんですか?」
「あんなこれ見よがしにパンツがぶらさがってるアル。下着泥棒がほっとくわけないヨ」
「いや、あからさますぎるよ! なんか罠まる出しだし」
確かに言えてる。暑苦しく会話に参加する気にはなれない唯は、心の中で新八に賛同した。
あーだこーだと言い合いを続ける新八とお妙に、横にいる銀時は苛々が募る。
「オイ、デケー声出すんじゃねーよ。泥棒にバレたら、全部パーだぞ」
我慢の限界。新八も、ついに苛々がMAXに達する。
「パーなのはオメーらだよ。このクソ暑いのによ!」
「なんだと、この野郎。コンタクトにしてやろーか!」
キレた新八の発言をキッカケに苛立ち始めていたお妙と神楽も、銀時と一緒になって取っ組み合いを始めてしまう。
「うっさいんだよ! アンタらッ」
横で見ていただけの唯も遂に切れ、その目は瞳孔が開いていた。
「あーもう、止めて止めて。喧嘩しない!」
以外と冷静でいられたのが近藤ただ一人である。皆が騒ぐ中、近藤は必然的に止めに入った。
「暑いからみんなイライラしてんだな。よし、ちょっと休憩。なんか冷たいものでも買ってこよう」
「あずきアイス!」
「なんかパフェ的なものッ」
「破亜限堕津!」
「僕お茶ッ」
まだ取っ組み合いを続けつつも、続け様に皆はリクエストしていく。
「じゃあ、わたしはアイスティーお願いします」
最後に近藤と目が合った唯が手を挙げてお願いすると、近藤は『ハイハイ、大人しくしてなさいよ』と重い腰を上げ、仕方ないなぁと買いに出しに行った。
近藤が去って数秒後である。大きな爆発が起こり、驚いた銀時達がその方向へと振り向いてみると、地雷に巻き込まれて無惨な姿で倒れている近藤が目に入る。
「……アラ、近藤さんが爆発したわ」
「あー、きっと暑かったからアルヨ」
「んなわけねーだろ。自分で仕掛けた地雷踏んだんだよ。バカだね~」
呆れた眼差しを向けつつ、ふと数秒黙り込んだ全員がある事を思った。
「アレ? ちょっと待って。ひょっとして、地雷どこにしかけたかみんな覚えてないの?」
新八が言ったその一言で、皆が一斉にお互いの顔を合わせて固まる。
「大変だわ。明日、新聞配達のオジさんが爆発するわ」
「言ってる場合ですかァァ!」
こんな状況でのお妙のすっとボケた発言でも、新八は忘れずにツッコミを入れた。
「僕らこっから身動きとれなくなっちゃったんですよ! もう、泥棒とか言ってる場合じゃねーよ!!」
最悪だ。唯は今の現状に耐えられなくなり、軽く目眩を起こしそうになった。
「アハハハハハ!」
突如、謎の笑い声が志村の屋敷に木霊する。
「滑稽だ! 滑稽だよ、お前ら!!」
誰だ。声のする方へ注目すると、真っ赤な褌を被り、白いブリーフを穿いただけのいかにも怪しげな謎の男が立っていた。
「パンツのゴムに導かれ、今宵も駆けよう漢・浪漫道! 怪盗、フンドシ仮面見参!!」
決めポーズはカッコよく決めているのに見た目が異質過ぎる。一同は驚きと気持ち悪さが混ざったような複雑な表情で男を見つめる。
「最悪だァァァ! 最悪のタイミングで出てきやがったァァ!!」
「アッハッハッ、なんだか俺の為に色々用意してくれていたようだが、全て無駄に終わったな!」
自称フンドシ仮面は、こ憎らしいほど余裕の挑発を始める。
「こんな子供だましに俺がひっかかるとでも? 天下の義賊、フンドシ仮面も見くびられたものよ。そこで指をくわえて見ているがいい。己のパンツが変態の手に渡るその瞬間を!!」
笑いながら爽快な身のこなしで屋根を伝い、囮のパンツを盗ろうと屋敷の中に入ろうとした。
──が、床に足をついたその瞬間。フンドシ仮面は爆発した。
その光景を、唖然と眺める。
「床の下にも地雷をセットしてたんですね」
「そうみたいだな」
打ち上がった花火を見終えた後の様に、銀時と新八が言った。
無様に倒れているフンドシ仮面。爆発の影響で、囮のパンツがヒラヒラと落ちていく。だが地面に落ちる寸前、倒れているフンドシ仮面が手を伸ばし、そのパンツを掴んだ。
「フフフフ、甘いよ」
身体中が傷付きながらも、フンドシ仮面はゆっくりと起き上がる。
「こんなものじゃ俺は倒れない。全国の変態達が俺の帰りを待ってるんだ。こんな所で負けるワケにはいかない。最後に笑うのは俺よ!!」
勝利の笑みを浮かべ、パンツを掴んだままその場から立ち去ろうとした。がしかし、何かに足を掴まれるのを感じる。気になったフンドシ仮面は、足元へと視線を流した。
「待てェイ」
それは、地雷にやられた筈の近藤であった。
「汚ねェ手で、お妙さんのパンツさわるんじゃねェ!! 俺だって、触ったことねーんだぞチクショー!!」
近藤は、必死にフンドシ仮面の足を掴み押さえた。
「銀時ィィ、何やってんだ早くしろォ! 今回は、お前に譲ってやる」
銀時は『うるせーな』とだけ一言。腰に差していた木刀を握り締める。
「言われなくてもいってやるさ。しっかり掴んどけよ」
木刀を握る手に力を込め、声を上げながらフンドシ仮面に立ち向かっていった。
束の間。フンドシ仮面にあと一歩の所、地雷を踏んだ銀時は、爆発と共にあっけなく倒れてしまった。
「銀さん!」
「フ、フハハハハハ。やっぱり最後に笑うのは俺──」
言いかける途中、倒れている銀時を踏み台にしたお妙が薙刀を振り上げてきた。
「女を、なめるんじゃねェェェェ!!」
決着。下着泥棒ことフンドシ仮面は、お妙によって無様に敗れた。
「終わった……」
これで安心だ。唯を残し、新八と神楽がお妙の元に走った。
「アッハッハッハッ姉上ェェェ!!」
「やっぱり姐御が一番アル!」」
──さてと。唯も二人に続いて向かおうとしたその時である。
新八と神楽が地雷を踏んだのか、お妙を巻き込んで爆発してしまったのだ。
目の前の出来事に呆然とし、唯は息を飲む。
「あ、地雷、どこに埋まってるのかわかんなかったんだ……!」
踏み出そうとした足を引っ込める。なんということでしょう。唯はその場から一歩も動けなくなってしまった。
「うっそおォォォ!? 誰かあぁ、助けてー!」
唯の助けを求める声は、夏の夜に蒸し暑く響き渡った。
閑話。
真選組屯所では、ちょっとした騒ぎが起きていた。
「聞いてくれよ 俺のところにフンドシ仮面のほどこしパンツがァァ!」
「お前もか!? 俺のところにも来たぜ」
「モテないって証だよな……」
がっくりと肩を落とした隊士らが、偶然にも通りかかった山崎を呼び止める。
「あっ、山崎、お前も勿論来ただろ?」
「えっ? 何が?」
「バカ。フンドシ仮面からのパンツの贈り物だよ」
「ぁあー、最近巷で騒がれてるフンドシ仮面の?」
「っで、どうなんだよ」
贈られた者らで山崎を見つめれば、山崎は軽く笑いながら答えた。
「来てないよ。パンツなんて無かったし」
「はァ? マジでか?」
「くっそ、ふざけんなよ。山崎のとこにはほどこしパンツ来てないのかよ~」
山崎に負けたと隊士らが悔しがっていれば、なんだなんだと沖田が現れる。
「お前ら何やってんでィ」
「沖田隊長! えっとですね……」
「実は、例のフンドシ仮面から俺ら二人、ほどこしパンツ来ちゃって……。そんなくだらないことを話してたんですよ」
「山崎は来なかったみたいで。むかつくッスよ」
特に惹かれる話でもないと思っていた沖田は、それを聞いた途端に腹を抱えて大笑いをした。
「アハハハハハ!! マジでかィ? てか、土方さんのところにも来たぜ。全く……、傑作にもほどがありますァ」
「副長のところにも!?」
その頃土方はというと。贈られたフンドシ仮面のほどこしパンツを自室で見つめたまま、ひとり吼えるのだった。
「絶対ェ、叩斬ってやる!!」